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異世界商売記  作者: 桜木桜
第三章 拡大編 第二部
28/60

第27話 従業員

12月から3月までの収支報告が間違っていたので修正しました。

 「じゃあデニス。店番よろしく頼むぞ。石鹸を渡して、料金を受け取るだけだ。インテリなら簡単だろ?」

 ハルトはデニスにそう言うと、デニスは深くため息をつく。


 「はあ、仕方ない。これも少しの辛抱だ。まったく、なんでインテリである僕が安月給で店番をしなくちゃならないんだか……」

 デニスはぶつぶつ言いながらも、店頭に向かう。やる気はあるようだ。ハルトは安心して人材確保のために外出した。


_____


 取り敢えずハルトはウンディーヌに向かった。残りの人材について、マルソーにも相談してくれるとハンナが言っていたからだ。


 「こんにちは。マルソーさん」

 ハルトはマルソーに声をかける。マルソーは笑って返した。


 「こんにちは。アスマさん。人材についてですが、最近職を失くした常連客が2人いまして。その人で良ければ……」

 「これはありがとうございます。どんな方何ですか?」

 ハルトがそう聞くと、マルソーは言葉を濁した。


 「ええっと、会ってみれば分かります。アスマさんに差別意識がなければ雇ってやってください。根はいい人達ですから。いつもならこの時間に来るはずです」

 ハルトとしては優秀な人材は喉から手が出るほど欲しい。マルソーの言い方だと相当の変人のようだが、ある程度は寛容できる。


 ハルトはテーブルに座って待つことにする。しばらくすると大柄な男性?が二人現れた。

 「こんにちは。マルソーさん、いつものお願いできるかしら?」

 「あたしもいつもの。全然仕事が見つからなくて」

 そこにはオカマがいた。


_____


 「この坊やがあの石鹸の?すごいじゃない!」

 「あたしいつも使ってるわ!」

 「これは……ありがとうございます」

 取り敢えず3人は席に着くことにした。頼んでもいないのに酒とつまみが出てくる。ハルトは出された酒を飲んでから言う。


 「ところで御二人のお名前は?」

 「私はアレン・アッシュ」

 「あたしはエレン・アッシュ」

 そういう二人の顔はとても似ていた。おそらく双子だろう。


 (それにしてもオカマキャラは何でみんなマッチョなんだ?)

 ハルトはそう思いながら2人の体を眺める。2人とも素晴らしい筋肉だ。労働者としては素晴らしいだろう。


 「そんな情熱的な目で見ないで」

 アレンがそう言って体をくねらせる。ハルトの背筋に冷たい物が走る。


 「それで仕事を首になったとかで?」

 ハルトがそう言うと、二人は激しく頷いた。


 「そうなのよ。職場の和を乱すからって。ひどいわよね?」

 「そうよ。オカマだからって仕事を首にするなんてひどいわ」

 話を聞くと、オカマという理由ですでに7回も仕事を首になっているらしい。


 「ならうちの従業員になりませんか?」

 ハルトは本題を切り出す。業務に支障が出なければオカマでもなんでもいいというのがハルトの考えだ。


 「いいの?あたしたちオカマよ?」

 「ええ。構いませんよ。むしろ迫力があって良いです」

 これだけ存在感があれば2級労働者を従えられるだろう。少なくとも自分だったら逆らわない。


 「じゃあお願いします」

 2人はハルトに頭を下げる。ハルトは早速契約書を取り出してサインさせた。


 「じゃあ他の従業員に紹介するんで夕方、店に来てください。仕事は明日からで」

 ハルトはそう言って立ち上がった。


______



 「というわけで新しく従業員になったアッシュ兄弟だ」

 ハルトはロア達に2人を紹介した。


 「始めまして。私は姉のアレン・アッシュです」

 「あたしは妹のエレン・アッシュです」

 2人は丁寧にお辞儀をした。


 「元ニートの次はオカマですか……なんか心配になってきました」

 「よろしく。俺はラスクだ」

 「よろしく!私はプリン。それにしても2人ともすごい筋肉だね!!元傭兵だったりする?」

 「にぎやかになってきたね!!」

 「はあ、なんで僕はこんなところに就職したんだ?」

 5人は口々にそう言った。


 「ところであなたかわいい服着てるわね。どこで買ったの?」

 アレンがロアに話しかけた。

 「これですか?私の手作りですが……」

 最近ロアはメイド服を手作りするようになってきた。手作りといっても既製品にアレンジを加える程度だが。


 「すごいじゃない!!」

 「そんなことないですよ。買った服を改造してるだけですし。……あなたの服もお作りしますか?」

 ロアがそう言うと、アレンは手を合わせた。


 「そんな!良いの?」

 「ええ。材料費とどんな服にしたいか教えていただければ」

 アレンはロアの手を握る。


 「ありがとう!!」

 「いえ、そんなこと……痛いです。手を振り回さないでください!!」

 ロアは悲鳴を上げた。


 一方エレンはデニスに詰め寄っていた。


 「あなたなかなかかっこいいわね。それに頭も良さそう」

 「良さそうじゃないよ。良いんだ。僕は大学を卒業してるんだ」

 デニスが自慢げに言うと、エレンはデニスの手を握る。


 「すごいじゃない!あたし頭の良い男好きだわ。今度あたしとデートしない?」

 「い、いやそう言うのは間に合ってるというか……うわあ、近づくな!!」

 デニスはエレンから逃げる。エレンはそれを追いかけまわす。


 「うん。仲良くやれそうだな」

 「「助けて!!」」

 ロアとデニスの悲鳴が響いた。


_____


 「さて雇ってから1週間たったわけだが……デニスとアッシュ兄弟の調子はどんな感じだ?」

 ハルトの問いにロアが答える。


 「デニスさんは何だかんだでちゃんと仕事をしてます。煽てればすぐ動きます。頭がいいこともあって書類整理も上手ですね。まだ人格が分からないんでお金は任せていませんが……大丈夫そうです」

 ロアはそう言ってお茶を飲み、話の続きをする。


 「アッシュ兄弟……自称姉妹ですが、よく働いてくれてます。子供たちも最初は驚いたようですが今は馴染んでいます。7回も首になったと聞いて不安でしたが、本人達の能力には問題はないですね。力も強いようなので頼りになりそうです」

 ロアの報告を聞いてハルトは安心する。


 「そうか。これで2級市民を集められるな。5月のサマラス商会の開店に合わせて石鹸改を販売しよう。様子を見て劣化石鹸、いけそうだったら牛乳石鹸だ」

 ハルトはそう言ってお茶を飲んだ。


 「ところでハルトさん!!」

 ロアはハルトに詰め寄った。


 「何だ?」 

 「今日は休業日ですよね?予定はないですよね?」

 「無いけど……どうした?」

 ハルトがそう聞くと、ロアは2枚の紙を取りだした。


 「人形劇のチケットです。今から行きませんか?」

 「最近、宝石展覧会に行ったばかりじゃないか?」

 ハルトがそう言うと、ロアは頬を膨らました。


 「あの時はお邪魔虫(アイーシャさん)がいました。たまには2人っきりで出掛けましょう」

 確かに最近はロアと2人っきりでいる時間は少ない。夜は会計で忙しいため、あまりゆっくりできていない。人形劇が何なのか分からないが、息抜きに行くのはいいかもしれない。

 

 「そうだな。行くか」

 「やった!!」

 ロアは嬉しそうに笑った。


_____


 「恐れるな!!所詮は動物!道を作り、いったんやり過ごした後に上に乗っている兵を射落とせ!!歩兵は像の腱を斬れ!!」

 エンダールス一世人形はそう叫ぶ。兵士人形はその指示通りに動き、象兵を次々と倒していく。


 「なあ、エンダールス一世はクラリスにとって侵略者じゃないのか?それを人形劇にして客は来るのか?」

 ハルトは小声でロアに聞いた。ロアも小声で返す。


 「いえ、エンダールス一世はクラリスでは一切略奪はしませんでした。それにエンダールス一世によって侵略された後、急速にクラリスは発展したんです。感謝する人はいますが嫌う人はいませんよ」

 「へえ」


 再び人形劇に目を移すと、エンダールス一世が敵将と一騎打ちをしていた。その動きは驚くほど精巧だ。人形を操っている人も見えないし、糸も見えない。ハルトの目には人形が自動的に動いているように見え。


 ハルトは一騎打ちが終わるのを見計らって、ロアに尋ねる。


 「あれどうやって動いてるんだ?」

 「共鳴の魔法です。AとBという二つの人形があったとして、Aの手を上げさせるとBの手も上がるという魔法ですね」

 「それはすごい魔法だな。日常生活にその技術を持ち込めたら便利そうだが……」

 ハルトがそう言うと、ロアは首を振った。


 「そんなに便利な物じゃないですよ。あんな風に精巧な動きをさせるには距離が10メートル以内でないとダメなんです。それ以上離すと大雑把な動きになります。それに共鳴はとても難しい魔法なんです。だから共鳴の魔法具はとても高価なんです。一つ100万ドラリアは下らないとか。実際エンダールス一世人形と敵将人形以外は糸で操ってます」

 「なるほどね。いろいろ欠点があるわけか」

 

 この世界の魔法は案外大したことがない。少なくともハルトが見てきた中では。現代日本の知識で十分に代用できるものばかりだし、そもそも魔法具を使うよりも原始的なほうほうの方が安上がりだということもある。


 「でも魔法の先進国である帝国は分かりませんよ?あの国は国を挙げて魔法の研究をしてますから。もしかしたらすごい物を作りだすかもしれません」

 ロアは楽しそうに笑った。


_____


 「楽しかったですね!!」

 「まあ、そうだな」

 なかなか面白い戦記ものだった。この世界の歴史に詳しくないハルトでも十分に楽しむことができた。


 「お前軍記モノ好きなのか?」

 ハルトはロアに聞くと、ロアは頷く。

 「軍記というより歴史全般が好きですね。エンダールス一世は特に好きです」

 ロアはそう言って帝国の歴史の薀蓄を話し始めた。異世界人のハルトにとってまったく聞いたことのない人が出てくるが、それはそれで新鮮だ。ハルトはロアの話に聞き入る。


 そうこう話している内に家兼店に着いてしまう。


 「ロア」

 ハルトはロアに声をかけて抱き寄せた。

 「ハルトさん?」

 ロアは困惑した表情をする。ハルトは少し笑ってから、ロアの唇にキスした。


 「!?」

 目を見開いて驚くロア。顔も真っ赤になっていく。


 ハルトは10秒後、唇を放して言う。

 「じゃあ、日常に戻ろうか」

 ロアは静かに頷いた。。

4月


収入 約2250万(石鹸4万5千個)1億(借金)

支出 約1500万(石鹸4万5千個の材料費と傭兵の給料など)+80万(石鹸改の材料費)+200万(工場の借用料)+45万(新従業員の給料)+2800万(利子40%と返済)67万(売上税)6万(馬車レンタル)225万(所得税)

売上-支出(元手は含まない)=-673万

負債1億

残金9600万

実質財産-400万


その他財産

奴隷60

従業員

会計担当兼奴隷取締役 ロア・サマラス

会計輔佐 デニス 

現場指揮 アッシュ兄弟(姉妹)

傭兵 ラスク&プリン


材料費が高くなってるのは物価が上がってるからです。

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