第26話 迷宮
途中まで書いて寒いことに気付いたけど、折角書いたから投下します。反省はしている、後悔はしていない。
面白かったら評価点ください。
「ここが迷宮……大きいですね」
ロアは息を飲んだ。5人は酒で1億ドラリアすべて使い切ってしまったのだ。ユージェックは許してくれないだろう。酒で使いきるような奴に融資してくれるとも思えない。奴隷コースを逃れるためには一攫千金、迷宮攻略しかないのだ。
「大丈夫。私がいるからね!!」
幸運なことにこちらにはアイーシャがいる。アイーシャがいれば百人力だ。
「行くぞ!!」
ハルトを先頭に一行は迷宮に入った。
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「気を付けろ。罠があるかも、あ!」
ハルトがそう言った瞬間、ゴトっと嫌な音がした。そしてロアの目の前から一瞬でハルトは消えた。
「ハルトさーん!!」
突然開いた穴に頭を入れてハルトに呼びかけるが、ハルトからの返答はない。
「そんな……」
ハルトはいい人だった。ちょっと意地悪でエッチなところもあったけれど、ロアにとってはヒーローだったのだ。
「仕方ないよ。運が良ければ助かるかもしれないし。今はハルト君のためにも早く先に進もう」
一行は先に進んでいく。アイーシャの並外れた嗅覚、聴覚で罠を回避していく。
しばらく進んでいくとドラゴンが現れた。竜とドラゴンは似ているようで違う。竜は実在する生物で、大きいトカゲに過ぎない。一方ドラゴンはお伽噺に出てくる魔法を使い、人間以上にかしこい竜だ。
「財宝を狙う人間め!!」
ドラゴンはそういってアイーシャを一飲みにしてしまう。
「アイーシャさん!!」
「まずは一人だ。次はお前をっつ!!」
ドラゴンはそう言いかけ、言葉を詰まらせる。顔も青い。汗も流している。
「とりゃー!!」
そんな声とともにアイーシャがドラゴンの腹を槍で貫いて出てきた。ドラゴンは即死だ。
「先に進もう」
一行はどんどん先に進んでいく。アイーシャは出てくるドラゴンを全員突き殺していく。正直ロアもラスクもプリンも役に立っていない。
「よくも私の子供を殺してくれたわね!!」
母親ドラゴンが出てきた。アイーシャは先手必勝と槍を投げる。ドラゴンは槍を尻尾で振り払った。
「そんな!!」
誰もが絶望したその時だった。
「くらえ!!石鹸バズーカ!!」
突如大量の泡が現れてドラゴンに直撃する。ドラゴンはあっという間に洗われて綺麗になった。
「あれ?私はいったい何を……これからは人を襲わず、山の中でひっそりと暮らします」
ドラゴンはそう言って去っていく。
「今のは一体……」
ロアがそうつぶやいたとき、頭上から高笑いが聞こえた。上を見るとそこにはハルトがいた。
「ハルトさん!!」
「時空の歪みがあってな。運よくここに転移した!!」
何言っているか分からないが無事らしい。ロアは胸を撫で下ろした。
「安心するのはまだ早いぞ人間!!」
そう言って現れたのは……
「レ、レイナード!!」
ロアは慌ててハルトの後ろに隠れる。
「俺はレイナードではない。魔王だ!!」
魔王レイナードは高らかに笑う。
「死ね!!石鹸バズーカ!!」
「甘い!泡の実バリア!!」
ハルトの渾身の一撃は弾かれてしまう。
「こうなったら自爆しかない!お前らは先に逃げてろ!」
「そ、そんな!!」
「いいから行け!!」
ハルトはそう言って泡を体にまとい始める。
「はああ!!」
ハルトは気合とともに魔王レイナードに突っ込んでいく。
「ハルトさん!!ハルトさーん……」
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「ハルトさん、行かないで……」
「おい、ロア。いい加減起きろ!もう昼だ」
ハルトはいつまでも寝ているロアを叩き起こした。
「あれ?ハルトさんは自爆して死んでしまったはず……もしかしてここは天国?」
「起きろ!!」
ハルトはロアの耳元で鍋とオタマを叩きつける。ロアはビクリと体を震わせた。
「あ……なんだ夢か」
「どんな夢を見てたんだ?」
ハルトがそう聞くと、ロアは眠そうに目をこすりながら答えた。
「宴会で1億ドラリア使いきってしまった私たちは起死回生の策で迷宮に挑んだんです。確か『第67迷宮螺旋』と言うところです。迷宮に入ってそうそうハルトさんは落とし穴に落ちてしまいました。そのあとドラゴンが出てきてアイーシャを飲み込んだんですが、アイーシャはドラゴンの体の中で大暴れして倒したんです。でもドラゴンの親玉が出てきて大ピンチになるんです。そしたら落ちたはずのハルトさんが空から降ってきたんです。なんでも時空のゆがみを利用したとか何とかで。それでハルトさんが必殺石鹸バズーカでドラゴンを倒します。そしたらついに魔王が現れて絶体絶命の大ピンチになるんです。ハルトさんは石鹸を身にまとい魔王に突撃して自爆、死んでしまった……というところで目が覚めました」
「それはまた……愉快な夢を見ていたようだな。もしかして起こさない方が良かったか?」
ハルトは苦笑いで言うと、ロアは首を振った。
「いえ、あんな悪夢もう見たくないです。起こしてくれてありがとうございます」
ロアはハルトに軽く頭を下げた。ハルトは思わず首をかしげた。
「悪夢か?」
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「どっかの役立たずが寝ているうちに石鹸の材料は集めておいた。アイーシャ、確認してくれ」
「えーと、まず塩とアルカリ。つぎにオリーブオイル、パーム油、ひまし油、そして私たちが用意したココナッツオイル。そしてラードと牛乳?」
アイーシャは用意された材料を確認していく。
「すみません、ヘットはいいんですか?」
ロアが手を上げて質問した。
「ラードもヘットもあまり変わらないからな。集めやすいラードにした」
西方では牛よりも豚が好まれる。繁殖力が強いからだ。牛は食用というより労働力として使われる。
「この牛乳なにに使うの?飲むの?」
アイーシャが牛乳の入った瓶を眺めながら言う。今にも瓶を開けて飲みたそうな顔をしている。
「石鹸の材料だよ。さっき言っただろ」
「でも石鹸って油とアルカリで作るんですよね?牛乳って油ですか?」
ロアが不思議そうな顔で言う。あまり牛乳に油のイメージはない。
「バターは牛乳からできるだろ。牛乳にも油分があるんだよ。油分があれば石鹸は十分にできる」
ハルトがそう言うと、ロアとアイーシャは納得したような顔をする。
「さて、早速作ろう。まずはパーム油とひまし油、ココナッツオイルを使った石鹸……名づけて石鹸改!」
「安直ですね……」
ロアは苦笑いした。
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石鹸作りには火を使う。店の中では火は使えないので、3人は工場にやってきた。周りでは子供たちがせっせと石鹸を作っている。
「オリーブオイル、ココナッツオイル、パーム油、ひまし油を3:3:3:1の割合で混ぜてくれ」
ロアはハルトの指示通りに油を混ぜ鍋でかき混ぜていく。
「ねえ、いろいろ油を混ぜてるけどさ。なんで何種類も油を混ぜるの?」
アイーシャが鍋を覗き込みながらそんなことを言った。
「お前には別に仕事があるはずだが……まあ、いい。油にも長所・短所があるんだよ。ココナッツオイルで石鹸を作ると、固くてしっかりした泡が出る石鹸ができる。でも肌を乾燥させやすい石鹸ができるという欠点もある。だから保湿力のあるオリーブを混ぜるんだ。パーム油とかひまし油もそんな理由だよ」
「へえ、ハルトが考えたの?」
「違うよ。俺の故郷では石鹸は昔からあるんだ。だから適切な配合比率はたくさんの人に知られている。俺はそれをいじって自分が使いやすいような石鹸を作ってただけだよ」
石鹸作りが趣味の人間は多い。すこしインターネットで検索すれば石鹸の作り方なんてすぐ分かるのだ。ハルトのやっている行為はタダのパクリだ。
「この後どうします?」
鍋をかき混ぜながらロアは言った。
「ノーマル石鹸と作り方は同じだ。おい、イン!お前この油を石鹸にしておけ。ノーマル石鹸と変わらないから」
ハルトはちょうど近くを通りかかったインを呼び止める。不満そうな顔だ。石鹸の製造数は給料に直結するので当然だ。ハルトは大銅貨を投げ渡す。とたんに笑顔になった。現金な奴だ。
「さて、次はラードを使った劣化石鹸だ」
「ハルトさん。その劣化とか改とかは仮の呼称ですよね?まさか商品名じゃないですよね?」
「え?何かだめか?覚えやすくていいと思ったんだが……」
ハルトの言葉にロアはため息をついた。
「いくらなんでも安直すぎますよ。もう少し捻ってください」
ハルトはロアの言葉には答えず、肩をすくめてラードを用意する。
「ラードはパンに塗って食べると美味しいですよ」
「バターを買えるのに何でラードを塗らなくちゃならないんだ」
ハルトはラードを鍋に入れて煮詰めていく。アイーシャは溶けたラードを覗き込みながら言う。
「ほかの油は混ぜないの?」
「ココナッツオイルを少し入れる。泡立ちが良くなるからな。質を考えるならオリーブあたりも入れた方がいいんだが……できるだけ安く作りたいからな」
ラードとココナッツオイルが混ざり、完全に溶けるまで煮詰める。
「よしもういいだろ。ウルス!ちょうどいいところに来た!これをよろしく頼む」
ハルトは大銅貨を投げ渡して言った。ウルスはニコニコと笑いながら石鹸作りを始める。
「次は牛乳石鹸だな。まず牛乳を入れてくれ」
ハルトの指示通りにロアは牛乳を入れる。
「次は油を入れてくれ。量と種類は石鹸改といっしょだ」
ロアは4種類の油と牛乳を混ぜていく。
「なんかシチューみたいだね。美味しそう」
アイーシャがキラキラした目で油を見つめる。
「飲んでみるか?胸やけしたくないならおすすめしないが」
そんな会話を続けていると油が完成する。ハルトはキルを呼び止めて、大銅貨を渡す。キルは嬉しそうにしながら石鹸作りに取り掛かった。
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一先ず石鹸作りが終わったので、ハルトはラスクとプリンを探す。ラスクとプリンは離れた場所で弓の練習をしていた。よく見るとソルを含めた東北出身者もいる。
「なにやってるんだ?」
ハルトはラスクとプリンに尋ねる。
「あ!ハルト君!ソル君が弓を使えるっていうから貸してみたんだよー。そしたらすごい上手でねー」
ハルトはソルを見る。ソルは無言で弓を引いて、的に当てて見せた。見事に中心に刺さっている。
「これはすごいな!騎馬民族はみんなできるのか?」
ハルトはそう聞くと、ほかの子供たちも頷いて見せた。ソルはハルトを見つめながら口を開く。
「馬に乗りながらでもできる」
「そいつはすごいな。生まれながらの騎兵ってやつか」
ハルトは関心した。彼らにこんな特技があるとは思っていなかったのだ。
「調度いいな。ラスク、プリン。暇ならこいつらに武器の使い方を教えておいてくれ。ほかの子供たちにも見込みがありそうな奴には。自衛ができるようになれば楽だからな」
奴隷に武器の使い方を教える人間は少なくない。奴隷は絶対に主人には逆らえないからだ。下手な傭兵よりも信用ができる。
「別にいいよー。でもその分は……」
「給料を上げればいいんだろ。3万上げるよ。何しろ1億もあるからな」
もっとも、その1億は借金だが。
「それと信用できる傭兵を紹介してくれないか?できれば3人は欲しいな。2級市民を雇うとなるといろいろ心配だからな」
ハルトもロアも社会的に見ればまだまだ子供だ。従業員の大部分も子供の奴隷。大量の粗相の悪い大人を雇うとなるといろいろと心配だ。
「ああ。知り合いを呼んでおくよ。お前は金払いがいいからな。断らないはずだ」
「そうか。頼んだぞ」
ハルトはラスクとプリンに別れを告げて、工場から離れた。
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ハルトは馬車でシルフー亭を目指す。何度も乗っているとさすがに慣れてくる。ハルトは馬車を完全に克服した。
「こんにちは。ハンナさん。お久しぶりです」
ハルトはシルフー亭に入り、ハンナに挨拶する。久しぶりといっても、石鹸の販売でたびたび会っているが。
「これはハルトさん。何の御用ですか?」
ハンナは笑顔でそう言った。ハルトは用件を切り出す。
「実は石鹸の生産を拡大しようと思っているんですが……ロアと二人では厳しいと思いまして。誰か信用できる方を紹介いただけないでしょうか?」
ロアは非常に優秀だ。計算も早い。ハルトも日本で義務教育という高度な教育を受けてきた。事務仕事ならかなり優秀な部類だろう。
だが限界はある。2級市民を雇うとなるとますます複雑になり、仕事は増える。輔佐をしてくれる人材が欲しかった。
また、何度も言うようにハルトとロアは子供だ。それに経営の仕事もある。2級市民を指揮するのは難しい。だれか2級市民のリーダーになってくれる人材が欲しかった。
「人の紹介ですか……どんな何人ですか?」
「そうですね。3人ほど。1人は数字に強い人がいいですね。性別は問いません。お金を任せることになるんで本当に信用できる人がいいですね。2人は力仕事を頼みたいんで男性がいいです。現場指揮をしてもらいたいんで、迫力のある方がいいです」
ハンナは2階の方をしばらく見てから、ハルトに向き直る。
「数字に強くて信用できる人間ならいます」
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ハンナは2階に上がっていく。そしてハルトが泊った部屋の横のドアをノックした。
「開けなさい!!デニス!!」
ドアがゆっくりと開く。中から無精ひげを生やした男が出てきた。
「えっと、この方は?」
「不詳の息子です」
ハンナは言った。よく見ると目つきが悪いところがマルソーによく似ている。
ハンナとマルソーはどう見ても40は越えている。この世界では女性は早くて15歳、遅くても20歳で結婚する。だというのに子供が10歳というのはおかしいと思っていたのだ。
「それにしてもこんなに散らかして!!」
ハンナは怒鳴り声を上げた。
ハルトは部屋を覗いた。ゴミが大量に落ちている。埃まみれだ。きれい好きのハルトとしては今すぐに掃除したい気分だ。
「うるさいなー。別に死ぬ訳じゃないからいいだろ。僕は読書に忙しいんだよ。用件は早く済ませてほしいな」
「あんたは!!働いてもいないくせに。そういうセリフはちゃんと働いて孫を作ってからいいな!!隣の家のジェイソン君は結婚したって話じゃないか。それなのにあんたときたら……大学にも行ったのに」
「へえ、大学!それはすごいですね」
この世界にも大学は存在する。だが日本のように気軽に行けるところではない。入学するには多額の授業料と、天から与えられた才能、血のにじむ努力が必要なのだ。ハンナ一家はクラリスでも裕福な方だろうがお金持ちではないのは分かる。大学に通うには相当な苦労があったはずだ。
「ええ。特待生枠を使ってね。この特待生枠は試験の成績が5位でないと入れないんですよ」
そういうハンナは自慢げだ。日本で言えば東大入試で5位と言っているようなものだ。
「あれくらいは簡単だったよ。常識な問題って痛いよ母さん!」
「世間の常識ではあんたぐらいの人間は働いてるんだよ!」
ハンナはぽかぽかとデニスを殴る。大学まで行ってニートとは。人生どうなるか分からないものだ。
「それでこの少年は誰だい?」
デニスはハルトを指さして言った。
「私はアスマ商会の会長のアスマ・ハルトと申します」
「アスマ商会?」
「石鹸を作っています。ご存じありませんか?」
ハルトがそう言うと、デニスは手を打った。
「あの石鹸か!へえ、君があれをすごいな。その会長さんが俺をどうしようって?」
デニスの問いにハンナが答える。
「ハルトさんは会計を任せられる人材をお探しなんだ。あんたならできるだろう?無駄に頭はいいんだから。いい加減働きなさい。このチャンスを逃したらあんたは一生肉体労働者だよ」
ハンナの言葉にデニスは少し考えてから言う。
「うーん、本当は大商会の下で働きたいんだけどな……。贅沢は言えないか。でも僕は自分よりもバカな奴の下で働きたくない!いまから僕の質問に答えてもらうよ」
「何言ってるんだい!あんたに選ぶ権利があるとでも……」
「ええ、いいですよ。何でも聞いてください」
ハルトはハンナの言葉を遮っていった。デニスは得意顔でハルトに問題を出す。
「じゃあ宇宙について聞くよ。『宇宙には太陽と月とこの地球(異世界のことです。言霊の加護による翻訳です)がある。どのように動いているか?』ちなみに問題文はロマーグ語だ。まさかロマーグ語も聞き取れないなんて言うじゃないよね?」(無知な人間は太陽が地球の周りを回っているって答える。でも最近の学説じゃあ太陽の周りを地球が回るっていう方が主流なんだ。まあ、知らないだろうけどね)
デニスには悪いがハルトは言霊の加護を持っている。しかも太陽と月と地球の動きなんてちょっと頭の良い幼稚園児でも知っていることだ。そもそも答えも丸聞こえだ。
「月は地球の周りを回っている。そして地球は太陽の周りを回っている」
ハルトがそう答えるとデニスは目を見開いた。
「なかなかやるじゃないか。でも1問とは言っていない。あと9問だ!!]
デニスはそういって次々と質問を出してくる問題分もロマーグ語だけでなく、ゲルマニス語やガリア語など様々だ。ご丁寧にデニスは『本音』で解答を解説してくれる。ハルトは楽々9問答えてしまった。
「いいだろう。認めてやる。僕を雇わせてやろう」
デニスは偉そうに胸を張っていった。よく見ると冷や汗をかいている。ハルトはニヤッと笑って言った。
「雇ってくださいだろ?」
「え!?」
「え!?じゃないよ。分かっただろう。俺はお前と同じくらい、いやそれ以上に頭がいい。お前の代わりはたくさんいるんだよ。雇ってほしければ頭を下げろ。雇ってくださいお願いしますってな」
態度を豹変させたハルトに、デニスは目を白黒させる。
「ほら」
ハルトに急かされてデニスは頭を下げる。
「僕を雇ってください!!」
「仕方ないな。ハンナさんにも恩がある。雇ってやろう。これからは俺のことは会長と呼べ」
ハルトは笑いながら言った。
こうしてデニスが従業員に加わった。
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「っというわけで従業員になったデニスだ。偉そうなこと言ってるがメンタルは結構弱いから怒鳴ればすぐ動く」
「なんかいろいろ言われてますがデニスです。よろしくお願いします」
デニスはロア、アイーシャ、ラスク、プリンに頭を下げた。
「お前にはしばらく店番をしてもらいたい。俺は人材集めをしなくちゃならないからな」
「え!?僕は会計じゃないの?契約書にもそう書いたはず……契約違反だ!!」
わめくデニスを見て、ハルトはにやりと笑う。
「何言ってるんだ。店番も会計だろ。契約書はしっかりと見直せ。バーカ」
「そ、そんな!!」
ガックリとうなだれるデニス。プリンがデニスに駆け寄り、腕を引っ張った。
「じゃあ飲みに行こう!!新しい仲間なわけだからね」
「賛成だ」
「そうだね。飲もう!!」
「私も賛成です!」
「ロア。今夜は自重しろよ。また訳のわからん夢を見るぞ」
「そんな、飲み二ケーションなんて野蛮な……痛い!引っ張らないで!!」
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翌日
「ハ、ハルトさんが生き返った!!」
「またかよ……愉快な奴だ」
ハルトは飽きれながらロアの髪を撫でた。
デニスは面接でさっきの質問を繰り返してました。これなら落ちて当然でしょうね。
ちなみに現実世界には迷宮なんてありません。ロアの妄想です。




