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家族

作者: さあ?

 詳しい状況ですか……。家族構成から話した方がよろしいでしょうかね? 私の家は4人暮らしだったような、5人いたような……。アレ? おばあちゃんはどうだったかな? 物心つく前に亡くなって4人暮らしだったのかな? どちらにせよ記憶のある限り、祖父と両親と私ですかね。そこそこ幸せでしたよ。そんなにお金はないみたいでしたけど、祖父も両親も優しかったですからね……。

 それで……ああ、そう、家族を殺害したときの状況でしたね。その日のことはよく覚えてます。家族の命日ですから。

 暑かったですねえ、あの日は。え? そうですか? とても暑い日でしたよ。林間学校から帰ってきた日でした。明日には宿泊先に台風が直撃するというので、突如1日帰るのが早まったんです。家の近くはそんな気配なんて感じないくらい、1日中ピーカンでしたけど。

 昼ごろに帰ってみると、珍しく母がいました。何でも私が帰ってくるというので、パートを早退したそうです。母にただいまを言って、祖父の部屋に行こうとしたところ、母に止められました。何やら祖父の調子が悪いそうで。その頃には祖父は呼吸器系の難病を患ってまして、常時寝たきりだったんです。声もろくに出せず、ヒューヒューと掠れた声をいつも響かせてました。

 しょうがないので、祖父の部屋には入らず、大人しく2階の自分の部屋に行きました。

 暫くして、母が食材を買いに行きました。夕方くらいでした。

 それから1時間くらいですかね。私は部屋でゲームをしていたのですが、BGMに混じって変な音が聞こえるんですよ。すぐに下の祖父の呼吸音だと思い当たりました。

 急いで私は階段を下りて祖父の部屋に行きました。普段呼吸音が2階まで聞こえるなんてことはなかったので、これはただ事じゃないなと思いました。

 部屋に入ってみると、顔を皺くちゃにして、必死に呼吸をしている祖父がいました。水面に上がって呼吸する魚みたいな。一目見て死にそうだということが、素人の私にも分かりました。

 何か対策を講じなければならない。そう思い、救急車を呼びにリビングに行こうと、振り返ったんです。

 そしたら、能面みたいな顔をした母がいました。うっすら口をゆがめて、目を細めた気持ち悪い笑顔です。でも私は安堵して、母に状況を伝えました。

 母は大丈夫と言って私を部屋から出しました。少しして呼吸音が小さくなり、母が部屋から出てきて、また部屋に入らないようにと言いました。

 夜に父が帰ってきて、私には目もくれず、母と共に祖父の部屋に入りました。

 入って1分ぐらいして、両親が出てくると、父がリビングの電話で落ち着いた様子で、慌てた口調で、言うんですよ。祖父の様子がおかしいって。

 それが家族を殺した時の状況の全てです。あの日に家族は皆死んじゃいました。母も父も祖父も。

 え? 去年の冬? さあ? その日に家族を殺した覚えはないですねえ。

 その日殺したのはただの殺人鬼ですよ。ただの二人の殺人鬼です。

 

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