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神様のなり方

おいらはカイドウ。酒が三度の飯より大好きな御年…えーと、いくつになったっけな?まあ、いいや。とにかく長い事生きている。

おいらの本性はイタチ。小麦色のしなやかな体躯を持った生き物だ。

それがどうしてだか、今の大神と兄弟弟子になった。


昔々、ずっと昔の話だ。

おいらは他のイタチと何か自分は違う事に気が付いた。

食べる為に小動物を追う。子孫を増やす為に雌を見つける。そして、子どもを育てる。子どもが一人前になれば、独立させてまた雌と子どもを作る。

…それがどうしても堪らなく嫌になった。


おいらは群れから離れて、あてもなく彷徨った。

とある古ぼけた神社の鳥居の傍で、ユラユラ揺らめく陽炎を見つけて、何の気なしに陽炎の中に飛び込んだ。

飛び込んだ先は、まるで違う世界だった。


季節関係なく満開の桜が咲いていたり、そこだけ夜だったり、はたまた夕方だったり。




おいらはそこで過ごす内に、イタチからヒトの形をとれるようになった。

そうなってくると、前みたいに小動物を追って食べる気にもなれず…というか、この世界では肉を食べる動物は皆無で、魚を釣ったり畑を耕して暮らしているモノが殆どだ。


そんなある日、おいらは一人の狼と出会う。

そいつは、おいらよりちっとだけ年下で寡黙な奴だ。ずっと川の流れを見ていたり、小さな草の実を手の中で転がしてみたり。まあ、ちっと変な奴だった。

そのくせ、喧嘩は滅法強くておいらと喧嘩したり議論したりして、この世の中の事を二人で考えていた。


桜が咲き誇る夜の森を出て、二人であてもなく歩いていると、明るい光が射し込む開けた場所に出た。

そこにいたのは、神様だった。

長く生きているおいらでさえ、初めて会う。


「お前たちを待っていた」


そこからあっという間においら達は神様の弟子になった。

ちなみにじゃんけんで負けて、年上のはずのおいらが弟弟子に。


おいら達は、神様が治める土地の色んな揉め事や悩みなんかをちょこっとずつ手伝うのが仕事だ。

枯れた池があれば水を引いてやり、生長の遅れる植物にはチカラを込めてやる。

民の声を聴いて、神様へ伝えるのもおいら達の役割だ。


何年も何十年もやってきて、自然に奴が神様の跡継ぎになった。おいらは自然と奴に声を届ける為の神社に落ち着いた。


奴が神になって、土地の名前が変わった。


おおかみ、大神、大上…と。

おいらがいる神社は、大上神社。



異世界へと通じる入口は、あの時のまま鳥居の傍にある。

ああ、そう言えば奴の名前は何ていったっけ?


まあ、いいか。

名前なんぞ、無くったって。

あいつはおいらの兄弟子で、この土地の神サマなんだから。


そうだな、気が向いたらまた聴いてやろうか。

初めて会った時みたいに、


「お前の名前、何て言うんだ?」


ってな!

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