第1話
…何処からか爆発音が聞こえる。
懐かしいようなそうでないようなこの音は、街が壊される音。
『死の三日間』が起こってからあちこちで街や村が破壊されている。
……『あの人』の仕業だ。
『死の三日間』というのは『あの人』が世界制服をした三日間のことだ。
逆らう人は皆殺され、沢山の血が流れた。
人は皆、『死の三日間』と呼んだ。
中には『あの人』が世界制服をしたお陰で世界がひとつになった、という者もいるがそれは間違いだろう。
現に今、『あの人』による大量虐殺が行われているのだから。
夜中だというのに止まない爆発音を子守り唄に僕は眠りに落ちた。
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朝日がちょうど僕の顔の辺りに差す。
「うーん…。」
ゆっくりとベッドから起き上がると、ドタバタと階段を上がってくる音がした。
「おい、燐!起きろ!今何時だと思ってんだ!」
「あ、おはよう、ギレさん。今何時?」
「もう10時だよ、寝坊助が!」
「え、本当?すぐ準備するよ。」
溜息をつきながら部屋を出て行くギレさん。
彼はギレハル・ウィザードといって、酒屋を営んでいる。
僕は今、彼の所に居候している。
しかし、低血圧な僕には朝起きるのがとても辛くて毎朝起こしてもらってしまっている。
着替えて下に降りるとギレさんは忙しそうに接客をしていた。
「ギレさん、頼むよ〜。今月金がなくてよぉ…」
「駄目だ駄目だ!貧乏人はさっさと帰んな!」
少し何か食べてから仕事を手伝おうと思いキッチンに入ったその時だった。
ギレさんの声が辺りに響く。
「おい!待てこの泥棒!!」
僕は慌てて表に出た。
僕が降りて来た時にギレさんにねだっていた男が酒を持って逃げたのかと思ったがそれは間違いだった。
ギレさんの前にその男はいた。
「…ギレさん!」
「燐!酒を盗まれた!あっちの方向だ!行ってくれ!」
「わかった。」
そう言って僕は走り出した。