風邪
「浩二君ってさ、わたしと付き合い始めてからよく風邪ひいてない? わざとなの?」
「いやいや、そんなわけないだろ。彼女に自宅に来てもらっておかゆを食べさせてもらおうなんて、考えるわけないじゃないか。――あ、でも一度くらいは体験してみたいかも」
「ほら~、やっぱり考えてるじゃん。ところで浩二君、もしかしたら鼻の粘膜が弱いんじゃない?」
「弱いだと……? たしかにその通りだな。さっきから鼻水が止まらなくて困ってるぜ。おっと、また垂れてきた」
「本当に大丈夫? ちゃんと栄養のあるもの食べてる? なんだったら、明日のお弁当はわたしが作ってこようか?」
「いや。お前がいる限り、俺の鼻の粘膜は治らないだろうよ」
「はあ? 何それ? 浩二君ってば、わたしのせいにするつもり?」
「ああ、そうだ。なぜなら、暖かく甘酸っぱいきみのその匂いに、俺の粘膜は耐性がないからさ」