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ジ・コンビス!!

作者: 衣乃 城太



 この日誌は。


 一年に一回。


 新品への交換日の時のみ。


 外部への持ち出し。


 及び第三者への。


 閲覧を許可する。


          ~「コンビス」業務日誌一頁目より抜粋~










 この作品は右記記載のルールを破り、特別に閲覧させるものである by奈☆々










  1―1


 俺の名前は―

「てんちょ~」

 ―周介(しゅうすけ)

 此処、コンビニエンスストア「コンビス」の店長だ。

「てんちょ~ってば~」

 知り合いはよく「名前を変えろ」と言うが今のところ変える予定は無い。

「てんちょ~!」

 うっさいな!


 俺はレジが置いてあるカウンターの内側で椅子に座って頬杖をついた。

「てんちょ~、コレ何処に置けばいいですか~?」

 十代後半の女の子の声がバックヤードから聞こえる。

「あー適当に置いといてー」

 体だけ向けてバックヤードにむけて叫び、体を戻した後店内に流しているラジオに聞き入る。

 最新J-popの曲が流れている。

「適当ってのが一番困るんですよぉ」

 先ほどの声の女の子がバックヤードから出てくる。


 メイド服で。


「ハハハ、ゴメンゴメン奈々ちゃん」

 俺は対して悪気が無さそうに謝る。


 この彼女は遥美(はるかみ)奈々(なな)、ここから電車に揺られて二駅の所の「東阿瑠(とうある)高校」の学生だ。


「笑い事じゃないんですー」

 文字通り頬を膨らまして怒る奈々ちゃん。


 ん?何故メイド服なんだって?そんなことを説明している暇はない。


「まぁまぁ。あ、いらっしゃいませー」

 俺はなだめようとした所で、ちょうど来店したお客に挨拶をする。

「あ、逃げた。いらっしゃいませ~」

 奈々ちゃんは俺のことを責めようとしたが、其処は接客業。ちゃんとお客に挨拶をする。


 入って来たお客は黒いパンツに同色のジャケットで上に茶色いコートを着ていて、帽子とゴーグルを付けていた。

 どうやら店の前にバイクを止めてあるらしい。

 まぁここから見えるのだが。

 バイクはどうやら二人乗りらしいが、後ろには大量の荷物を載せていて、人の乗るスペースなど何処にもないようだ。

 どうやら旅人らしい。

「あのーお客様・・・・・・」

「はい? なんですか?」

 俺が呼びかけると帰ってきた声は高めの声だった。

「わぉ、ソプラノヴォイス」

 奈々ちゃんの言葉は軽くスルーして旅人に更に話しかける。

「バイクなんですけれども、彼処だと他のお客様のご迷惑になりますので、もう少し端っこに止めてませんでしょうか?」

 俺が少し退き気味で言うと、旅人は「わかりました」と言うと外に出てバイクを動かした。

「奈々ちゃん、バックヤード戻って、飲み物補充してきて」

 お客が動かしてるときに俺は奈々ちゃんにそう言った。

「は~い、判りました~」

 奈々ちゃんがそう言ってバックヤードに戻っていったときに、先ほどのお客が戻ってきた。

 そこで俺はもう一点注意する点を見つけ、呼びかけた。

「お客様、帽子とゴーグルはお取り下さい」

 俺がやっぱり退き気味で言うと、旅人は「すみません」と言ってヘルメットとゴーグルを外した。 それらを取った旅人の顔を見ると十代後半だと思われるボーイッシュな女の子だった。

「おぅ、美少女」

 バックヤードから身を乗り出した奈々ちゃんがそうつぶやいた。俺はその瞬間、近くにあった空のペットボトルを奈々ちゃんの鼻に投げ込んだ。見事クリーンヒットし、奈々ちゃんはそのまま引っ込む。

「キュゥ・・・・・・」

 奈々ちゃんの断末魔が聞こえる。

「あの・・・・・・」

「はい、何でしょう?」

 今度は旅人が話しかけてきたので俺は返事をして旅人の方を向いた。

「携帯食料と・・・・・・水は売ってませんか?」

「ええ、有りますよ。此方です」

 俺はそう言うとカウンターからでて、携帯食料が並べられている所へお客を案内した。

「これが携帯食料で・・・・・・水は彼方のガラス張りの冷蔵庫のほうにありますんで」

「はぁ、有り難う御座いました」

 旅人はそう言うと何種類か有る携帯食料選びに専念し始めたので、俺はカウンターに戻った。


 ん?何か間違えたか?


 俺は椅子に座り、頬杖をついてラジオに聞き入った。

 まだJ-popが流れている・・・。

 そろそろチャンネル変えようか・・・。

「てんちょ~・・・・・・」

 後ろのバックヤードから呻き声みたいな奈々ちゃんの声が聞こえる。

「何?奈々ちゃん」

「冷蔵庫裏寒いですよぅ・・・・・・うー寒」

 そう言って奈々ちゃんは椅子を出し、俺の隣に座り膝掛けを掛けて手をさすっている。

「さみゅー・・・・・・」

 どうやら寒すぎて言語能力が低下しているようだ。

「そんなことないですよぅ・・・・・・くちッ」

「あーもークシャミなんかすんなよ、ほらティッシュ」

 俺はティッシュの箱を奈々ちゃんに渡す。

「あー・・・・・・有り難う御座いまし・・・・・・くちゅん」

 またクシャミをする奈々ちゃん。

「鼻拭け!」

 思わず叫ぶ俺。

「ハヒ・・・・・・」

 俺からティッシュをもらい、鼻を拭く奈々ちゃん。

 と、その時先ほどの旅人が品物を抱えてレジまでやってきた。

「コレお願いします」

 そう言ってお客はカウンターにドサッとかなりの量の品物を置く。

「ハイ判りました・・・・・・えー水が・・・・・・五本・・・・・・携帯食料が・・・・・・十五個・・・・・・、お客さん旅人?」

 俺がレジを打ちながら聞くと旅人は。

「ええ、まぁ」

 旅人(確定)は素っ気ない返事で返した。

「そうですか、気を付けて下さいね」

 俺はそう言って値段を告げた。

「合計で三千七百円になります」

「これで」

 旅人はそう言って五千円を出した。

「えーおつりが・・・千三百円になります。有り難う御座いましたー」

 俺は釣り銭を返し、頭を下げた。

「有り難う御座いました~、へくちッ」

 奈々ちゃんも頭を下げたが、下げたときにまたクシャミが出た。

 旅人は品物を持って出て行った。そしてバイクに乗って行ってしまった。

 俺はそれを見送った後、椅子に座りぼーっとし始めた。

「奈々ちゃん、アレルギーじゃないの?」

「何のですか?」

「そんなこと知らないよ。来る途中に犬に触ったとか」

「私犬アレルギーなんか有りませんよぅ」

「ふぅむ・・・・・・んじゃなんでだ?」

「多分さっき店長にペットボトル当てられたからだと思います」

「why? 何故?」

「私鼻強く押されるとクシャミ出まくるんですよぅ」

「出まくるのか」

「出まくるんです」

「何で?」

「知りません。どちらにしろ謝罪を要求します」

「ごめんなさい」

 俺は奈々ちゃんの方を向き、頭を下げた。

「判れば良いんですよぅ」

 奈々ちゃんはハッハッハと小さく高笑いして俺の頭をペチリと叩いた。

「ほら、頭上げて下さいよぅ。今お客様来たらどうするんですか」

 そう言われたので俺は顔を上げた。

「あ、もう三時ですね。おやつ食べましょうよ」

「お前のバイト代から引いとくぞ」

 俺がそう言うと奈々ちゃんは「えー」と言って。

「店長の生活費から引いて下さいよぅ」

「何でお前におやつなんか奢らなきゃいけないんだ」

「大切なアルバイトさんに対する恩義はないんですか?」

「雇われ娘が何を言う」

「あーさっきのペットボトル痛かったなー」

 わざとらしく鼻をさする奈々ちゃん。

「判ったよ! 好きなの持ってこい! ただし一個だぞ!」

「わーい! 店長ありがと~」

 そう言って奈々ちゃんはカウンターから出てケーキを持ってきた。二百三十一円なり。

 奈々ちゃんは下から使い捨てフォークを取り出し、ケーキを食べ始める。

「ん~! 美味しい~!」

 美味しそうに食べる奈々ちゃん。

 美味しそうに食べるコンテストとか有ったら優勝するんじゃないかこの娘は。

「美味そうだな・・・・・・」

 俺がそうつぶやくと、奈々ちゃんはこっちを向いて。

「一口食べます?」

 と聞いてきた。

「いいの?」

 俺がそう聞くと。

「いいですよぅ。はいアーン」

 そう言って一口サイズに切ったのをフォークに乗せて此方に向けた。

「どうも」

 俺はそう言ってケーキを食べた。

 奈々ちゃんは俺が食べたのを見てニッコリ笑い、再びケーキを食べ出した。

 ・・・・・・ん?

 今のは・・・・・・間接キスになるのか?

 そのフォークを使っていたのは目の前にいるメイド型女子高生。

「な・・・・・・奈々ちゃん?」

「はい? 何ですか?」

 ケーキを食べ終え、小さく「ごちそうさま」と言い、こっちを見る奈々ちゃん。

 俺は奈々ちゃんに顔を向けてまま、

「いや、なんでもない」

 口を半開きにしながらそう言って首を振った。

「? 変な店長」

 そういって奈々ちゃんは店員用の冷蔵庫からミルクティーを取り出しコクコクと飲む。

 何故か口元を見てしまう俺。

 変態だなコレじゃ。と思い目線を陳列棚の方に向けて、頬杖をついた。

 その時外からボボボボとバイクの音がしたのでそっちの方を見ると先ほどの旅人がいた。どうやら戻ってきたらしい。

「さっきの旅人さんじゃないですか」

 奈々ちゃんも気づいたらしく、そうつぶやいたときに旅人さんが入って来た。俺らは同時に立ち、

「「いらっしゃいませー」」

 俺と奈々ちゃんが声を揃えて言うと旅人は小さく頭を下げた。

 旅人さんは両腕をさすりながらカウンターの方に来て、

「あの・・・・・・防寒グッズはありませんか?」

 と聞いてきた。

 俺は旅人にカイロがあることを伝えると、

「じゃ、それを下さい。」

 と、言われたのでカイロが置いてある棚を指さし、旅人さんがそっちへ向かうのを確認すると外を見た。

「寒そうだな・・・・・・ねぇ奈々ちゃん」

 俺が外を向きながら言うと、

「そうですねぇ」

 奈々ちゃんも外を向いてそう答える。


 旅人はカイロを二十個程買い込むとバイクに跨って走り去っていった。


 さて、今日の夕飯は何にするかな・・・・・・。











 ―本日の業務日誌―          担当者:周介



 本日の販売商品―水、携帯食料、カイロ、その他諸々、後ケーキ。



 本日の顧客データ―「旅人」・・・・・・バイクに乗り、コートを来ていた。今思えば腰に拳銃を下げていたような・・・・・・。



 売り上げ―本日も赤字―







 ~奈々の☆日記~


 ハロハロ皆さんこんにちわ、奈々です。


 え? すごい気軽感じだって?


 気にしないで生きましょう!


 今日は旅人さんが来ました。


 凄いですね、私と同じ位なのに。


 私はあんなの出来ませんね。


 あ、もう上がる時間だ。それではまた次回? あるのかなー・・・・・・。


  1―2


 俺は業務日誌のメモ書きの欄の所に書いてあった奈々ちゃんの文章を読みながら震えていた。

「奈々ちゃん・・・・・・何コレ?」

 俺は高校の制服に着替えて帰ろうとしている奈々ちゃんを呼び止めて聞いた。

「え? ああ、それですか? 今日から書くことにしたんです、日記ですよ。」

「そんなことは見りゃ判るよ、なんで此処に書くんだよ」

「えー・・・・・・店長に楽しんでもらおうと」

「家で書け!」

 俺は奈々ちゃんにデコピンをした。

「みゅー・・・・・・痛いのです・・・・・・」

 どこの巫女さんだ。

「天罰だ」

「店長がやったんじゃないですか」

「俺が天だ」

「意味不明ですよ」

「うっさい、ハイお疲れ」

 俺は手をシッシッと振って奈々ちゃんに「帰れ」と言うメッセージを送った。

 奈々ちゃんはそれを感じたのか深々とお辞儀をして、

「お疲れ様でした」

 と言った。

 俺は伝票を見ながら、

「はいはい、後でね」

 と言った。










  1―3


 俺は時計を見た。現在八時四十五分。そろそろ店を閉める時間だ。


 店と家は繋がっているので其処まで苦労はしないが。

 店のシャッターを閉めてバックヤードに行き、其処にある扉を開く。

「ただ今ーっと」

 俺は靴を脱ぎ、リビングに入った。

「あ、店長。ご飯できてますよ」

「ああ、ありがと奈々ちゃん。でも店長は辞めてくれないか?もうオフタイムだ」

「ハイ判りました周介さん」

 そう言って私服の奈々ちゃんは鍋をテーブルの上に置いた。



 今日の夕飯はクリームシチュー。




















  2―1


 夢を見た。

 どこかの小説で「警告夢(けいこくむ)」と言うのを言っていたが、俺の場合はそんな生半可のもんじゃなかった。

 盆と正月ならぬ、黙示録(もくしろく)とマヤの予言が一変に起こったかのような物だった。阿鼻叫喚(あびきょうかん)地獄絵図(じごくえず)だった。

 此処では書けない恐ろしさ(手抜きじゃナイヨ)。

 勿論目覚めは最悪だ。

「あー・・・・・・」

 朝から頭を抱えて起きるなんて初めてだ、これっきりにしていただきたい。

 そんなことを重いながらガンガンガンガン絶賛ライブ中の頭痛を抱えながら俺はリビングに向かった。

「あ、お早う御座います・・・・・・周介(しゅうすけ)・・・・・・さん?」

 疑問系で聞いてくるのは凄く非道い顔をしているのだろう。

「やぁ・・・・・・お早う奈々(なな)ちゃん・・・・・・。顔洗ってきた方が良いよね・・・。」

 奈々ちゃんは高速で首を上下に振った。コクコクコクと。

 俺は洗面所へ向かい蛇口を捻って水を出し、顔を洗った。さっぱりして気持ちが良い。

 顔を上げて鏡を見ると、いつもよりはやつれた顔をしてるが多分さっきよりは幾分かはましな顔になっていた。

 タオルで顔を拭き、リビングに戻った。

「どう? 奈々ちゃん、さっきよりはましかねぇ?」

「ええ、さっきよりは」

「でもいつもより?」

「・・・・・・下ー・・・・・・」

「だろうね、朝ご飯は何?」

 俺は頭を掻きながら奈々ちゃんに尋ねた。

「ああ、ハイ。ご飯にお味噌汁にー昨日のクリームシチューから取り出した鶏肉を焼いた物です」

「なんで鶏肉を取り出して焼くのさ・・・・・・」

「だって周介さん、朝ご飯じゃないと文句言うじゃないですか」

 奈々ちゃんは頬を膨らまして言った。

 俺は、

「まぁ言うけどさ」

 と返した。

 俺は朝ご飯はご飯じゃなきゃ嫌な人だ。母親からは相当ウザがられた。

「で、「クリームシチューはご飯のおかずじゃなーい」って周介さん言うじゃないですか」

「まぁ言うね、アレはパンで食べるものだ」

 俺はクリームシチューはパンで食べる人だ。ご飯は何か合わない気がするのだ(おでんは別)。

「だから鶏肉取り出して焼いたんです。醤油で」

「てことは・・・クリーム醤油?」

「なんかそれだと醤油入りクリームみたいですけど・・・香ばしく焼けて美味しそうですよ」

「そう、じゃ食べようか」

「ハイ、いただきます」

「いただきます」

 俺と奈々ちゃんは手を合わせて挨拶をした後、俺は鶏肉を、奈々ちゃんは味噌汁を(すす)った。

「うん、意外と美味いね」

「意外は余計です」

「ゴメンゴメン。美味しいよ」

「有り難う御座います。あ、周介さん、ふりかけ取って下さい」

「はい、どうぞ」

「有り難う御座います」

 奈々ちゃんはふりかけご飯が好きだ。俺が毎朝和食にしてるから(してもらっているから)・・・・・・毎朝奈々ちゃんはふりかけご飯を食べていることになる。

 ふりかけ消費量日本トップレベルだ。

「奈々ちゃん、今日はなんかあるの?」

「いえ特に。あ、今日掃除当番ですね」

「成る程、判った少し遅いね」

「まぁたったの十分ですけどね」

「そうだね・・・あ、奈々ちゃん、もう時間じゃないのか?」

「あ、本当です。では行ってきます」

 ふりかけごはんを丁度食べ終えた奈々ちゃんは後ろに置いておいた学生カバンを掴んで俺にお辞儀をすると小走りで玄関に向かった。

 俺が味噌汁を啜って、お椀の中を空にしたとき、玄関の扉がパタンと閉まる音が聞こえた。

 俺は料理を食べきると食器を台所のシンクに置き、奈々ちゃんの食べかけの鶏肉をラップを掛けて冷蔵庫にしまい、テレビの前に置いてあるソファに座った。


 さて、今日もやるか。





 制服に着替え、シャッターを開けて店を開けた俺は昨日と同じようにレジがあるカウンターの裏に椅子を出し、座ってカウンターに頬杖を着いた。


 俺は今朝の夢を思い出していた。思い出すだけで腹の中の朝食をリバースしそうになるが、ただ一つ、一つだけ良かったようなことがある。しかしその良かったことが何で、どういう物だったのかは全く思い出せない。


 数時間後、俺がため息をつくと自動ドアが開く音がした。目をやると身長約百五十五センチのゴスロリ少女が入って来た。

 ゴスロリ少女が話しかけてきた!

「なんじゃ周介、しけた面しとるのう」

「そりゃドーモ、良いのかお前こんな所にいて? 売れっ子作家さんよ」

「ふん、息抜きぐらい必要じゃろう、誰だってな。いつものタバコ、おくれ」

「ハイハイ・・・・・・ファントムのマイルドだっけ?」

「そうじゃ。全く、何百回と買ってるのだから覚えたらどうじゃ?」

「確認だよ、大体お前は何千回と買ってるだろうが。ほらよエミリ、四〇〇円だ」

「判っておる・・・・・・ほれ、万札でいいか?」

「サンキュ」

「釣り銭は返せよ」

「チッ・・・・・・ほらよ」

「最初から素直に渡せ」

「煩いな・・・・・・」

 こいつの名前はエミリ・チャンツォーネ。

 こんな容姿だがとっくに成人を過ぎている。たばこも吸っている。

 何処国出身だかエミリ・チャンツォーネ。

 何十歳だったかエミリ・チャンツォーネ。

 職業は小説家、エミリ・チャンツォーネ。

 「中突(なかとつ)えみり」と言う名前なら誰でも聞いた事があるだろう。あの「中突えみり」だ。 代表作は・・・・・・

 その時ザンス(?)店のスピーカーから流れているラジオから、

『今週の、「小野大地(おのだいち)、小説読みました!」 このコーナーでは、毎週ぼく、小野大地が様々なライトノベルを自腹で! 読んでそのあらすじを紹介するコーナーです。今週の小説は「中突えみり」の「マイクにマーク!」。この作品は―』

「タイムリーだな、エミリ」

「タイミングが悪すぎる・・・・・・」

「いいじゃねぇか、褒められてるぜ?」

「嬉しくないわ」

「そうかねぇ・・・・・・」

「煩いのぅ・・・・・・黙れ! This is it!」

「何故King of pop・・・・・・」

「英語難シイデス」

「外人がそれを言うか・・・・・・」

「わしの所は英語圏ではない!」

「外国語難シイデス・・・・・・」

「わしのネタをパクるな!」

「スマンスマン。お、そろそろ十二時だな。飯食ってくか?」

「おう、もうそんな時間か。スマンの、作家仲間とランチを食べる約束をしとるのじゃ」

「そうか、んじゃまた来いよ。今度はタバコ以外も買えよ」

「買う物があったらの。じゃあな、周介」

「おう。じゃあな、エミリ」

 エミリはそうして店を出て行った。



 pm3:20

 そろそろ奈々ちゃんが帰ってくるなーと思いながら頬杖を突いて自動ドアの方を見ていると数人の学生が入って来た。制服を見る限り近くの・・・何高校だっけ? まぁいいや、今度エミリに聞こう。

 どうやら五人で来ているらしい。女三人男二人

 一人目から四人目は普通な感じだ。上げればあるが・・・。

 五人目は・・・うお!

 俺は思わず椅子から転げ落ちそうになった。

 見るからに不良かヤンキーだ。さぞ壮絶な喧嘩記録があるに違いない。

 両親は早くに離婚、引き取られた方には暴力を受け、学校では村八分・・・・・・。

 大人になったら伝記が書ける。いやいや、大人になったらこりゃマフィアだな。イタリアンも裸足で逃げ出す。まぁそれでも伝記は書けるか・・・。

 しかし学生達は五人とも仲良く話している、どうやら予想はハズレのようだ。

 そしてお菓子とジュースを買ってキャッキャウフフしながら出て行った。

 俺はカウンター下において置いたペットボトルのレモン果汁入りスポーツドリンクを喉に流し込んだ。酸っぱい。


 人ってのは難しい。


 ペットボトルをカウンター下に戻した後、俺はまた頬杖を突いた。考え事をしようと思ったが、その時、奈々ちゃんが帰ってきた。

「あのー店長?どうしました?」

 俺はため息をついて

「何でも無いよ、お帰り。奈々ちゃん」

 俺は微笑んだ。




















 ―本日の業務日誌―          担当者:周介



 本日の販売商品―タバコ、お菓子、ジュース、その他諸々。



 本日の顧客データ―「学生達」・・・多分近所の学生、五人組。



 本日の売り上げ―赤字。








 ~奈々の☆日記~


 やぁ、皆さん今日は。奈々ちゃんです。


 周介さんにはふざけるなって怒られたけど。


 二回目、やっちゃいます☆


 今日はエミリさんが来たらしいです。


 またタバコを買ったらしいのです。


 あの人そんなんだから背が伸びないんですよ。


 ではでは、また次回。奈々ちゃんでした。


  2―2


「なんでこんな事に・・・・・・」

 今日の夕飯はクリームシチュー。しかも鶏肉抜きだ。ハッキリ言って凄く虚しい。

「周介さんが我が儘なんですよぅ」

「もう何も言わない・・・・・・」

「明日はちゃんとしたおかずにしますから」

「マジで!?」

「ちゃんとこれを食べきったらですけど」

「そんなー・・・・・・」


 パンに入れて売ってやろうか、そう思った俺だった。


















「売っちゃダメですよぅ」

「バレてる!?」





がんばってます。がんばってください。お願いします。

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