冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレ職人の朝は早い
ファンタジー作品にありがちな魔力を計る『アレ』をご存知でしょうか?
最近は一昔前ほど見かけなくなってきた感はあるものの、強すぎる力を秘めたチート主人公が冒険者ギルドの受付などでよく壊しているアレである。形に関しては水晶玉だったり機械装置っぽかったり色々ですが、まあ大まかなイメージだけでも思い浮かんだのなら進行に支障はございません。
アレの使い方に関しては色々ですが、大抵そんなに難しいものではないことが多いでしょうか。単に触れるだけで魔力が……場合によってはその他の筋力やスピードや使える技能までもが、一発で明らかになったりするわけです。
ごく普通に体力テストやペーパーテストをやっても近い結果は出るにせよ、このお手軽さと正確さは実に魅力的。秘めたる才能や適性まで一発で判明してしまうのは考えようによっては残酷かもしれませんが、それも利便性を否定するには至らないでしょう。
地球における現代科学ですら、まだまだ再現は難しそうなアレ。
作品ごとの設定や世界観によって多少の差異はあるにせよ、自然とアレの実が生るアレの木がそこらに自生しているみたいな尖ったケースでもない限りは、専門の技術や知識を備えた職人が頑張って作っていると考えるのが妥当でしょう。
ある種のファンタジー作品の定番ガジェットとして愛されるアレ。
今回は、そのアレを作る職人に取材を試みた次第でございます。
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冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレ職人の朝は早い。
まだ日が昇ったかどうかという早朝に身支度を整えて工房に現れたのは、今回我々の取材を快諾していただいたアレックスさん(36歳)。一昨年に先代親方だったお父さんが急逝するも、今や息子である彼が新たな親方として立派に工房を切り盛りしているのだそうで。
「ええ、元々いつかは跡を継ぐつもりで腕を磨いちゃいましたけどね。やっぱり一介の職人と経営者である親方とじゃあ何かと勝手が違うもんで。親父がやり残してた仕事をキチンと終わらせたりだとか、付き合いのある冒険者ギルドやら親方衆への挨拶回りやら書類上の手続きだとか、親方になって最初のうちは寝る間もないほどの忙しさでしたよ」
そのあたりは他業種の職人さんや商会などでもよく耳にするお話ですね。
とはいえ、そんな大変な時期を無事に乗り切って今は立派に工房の運営を軌道に乗せているのだから大したものです。それでは早速ですが、アレックスさんに冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレを作るところを見せていただきましょう。
「はいはい、お任せを。冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレと一口に言っても色々ありますけどね、ウチが代々やってるのは比較的オーソドックスな水晶玉タイプでしてね。ほら、占い師さんが使うみたいなアレ。実際の素材は水晶とは限らないんですが」
ええ、私も子供の頃に学校に入るときだとか、それから今の職場に入った時にも同じようなので計らされた覚えがありますよ。なんとなく冒険者ギルドの付属品みたいな印象が強いですけど、やっぱり便利な道具ですからね。社会のあちこちで有効に活用されているのでしょう。
「それに関しちゃあ我々の営業の成果もあるかもしれませんねぇ。うちの爺さんの頃までは、それこそ本当に冒険者ギルドだけ相手にするような零細稼業だったそうですがね、経営難に苦しんだ親父や同業の皆さんが他業種に営業をかけまくった成果だとか。まっ、そのあたりのお話は先に作るところをやって時間が余ったらゆっくり喋らせてもらいましょうかね」
それはそれで聞きごたえのありそうなテーマですが、たしかに早々に脱線というのもよろしくありません。それでは冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレの作り方の説明をお願いします。
「作る上でのテクニックもそりゃあ色々ありますが、やっぱり第一歩の素材選びを失敗したら何にもなりませんからね。ほら、この棚に金属だの宝石だのがズラっと並んでるでしょう?」
おお、これは壮観ですねぇ。
ちなみにお節介だったら申し訳ないんですけど、こんな無造作に宝石を置いておいて盗難対策とか大丈夫なんでしょうか?
「ああ、なるほど。たしかに知らなきゃ金目の物に見えるかもしれませんね。でも実際は、ほら。よくよく見ると色合いが濁ってたりくすんでたり、傷やヒビが入ってて貴金属としては使い物にならないクズ石ばっかりなんですよ。まあ、それでもウチらの冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレの素材として使う分には問題ないですからね。そういうのを宝石関連の工房や商会から買い取る契約をして定期的に届けてもらってまして」
そうしてアレックスさんが棚から取り出したのは真珠に琥珀に、あれはオパールでしょうか。それぞれを年季の入った編み籠いっぱいに、ざらり、と掬い上げました。たしかにどれも一個あたりのサイズは小さめですし、色合いが今ひとつだったり欠けて形が悪かったりするようです。
ちなみに今回選んだ素材以外にも色々な材料があるようですが、いったいどのような基準で冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレに使う素材を変えているのでしょう?
「たとえばこいつは南方の国の冒険者ギルドに卸す用のやつなんですが、あちらは気温も湿度も高いでしょ? モノがモノだけに腐ったりカビたりってのはないですけど、ここいらの国のギルドで使ってるやつと同じように作ったんじゃあ、割れやすくなったり魔力の測定結果にブレが出たりするんですわ」
なるほど。意外と言ったら失礼かもしれませんが、こうしてお話を伺うまではどこの国でも全部同じような冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレを使っているのかと思っていましたよ。
「ははっ、ウチらみたいな作る側でもなければそれが普通ですって。むしろ環境が違う国や地方でも、どこでも同じような使用感になってるのが良い仕事ができた証拠ってね」
話しながらもアレックスさんの手は休まず動き続けています。
取り出した素材を拡大鏡のレンズ越しにチェックして、特に状態の悪いものや不純物を選り分け、カゴに残った分をすり鉢でゴリゴリ砕いたり何らかの薬品に浸したり。手が仕事を覚えているとでも申しますか、繊細な作業でありながら微塵の迷いもありません。
「で、普通ならこのまま溶剤に浸したまま二日ばかり待たなきゃいけないんですがね、今回は新聞の取材ってことで予め二日前に準備しておいた同じやつを用意しておきました」
これはこれは、お気遣いいただきありがとうございます。
おや、元が宝石だというのにドロドロに溶けてますね。普通の硫酸やなんかではこうはならないでしょうし、どうやら先程の薬品に秘密があるのでしょう。ちなみに、その配合のほうは?
「ははは、そいつは企業秘密ってことで勘弁してください。そいでドロドロに溶けたコイツを泡立たないようそうっと型に流し入れて……と。あとは冷暗所に置いて固まるのを待ちつつ、時々魔力を注いでやるのを五日くらい繰り返したら冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレの完成ですかね。そんで、例の如く完成したアレがこちらにあるわけなんですが」
これはこれは、重ね重ねお気遣いありがとうございます。
へえ、これまで似たような品を見る機会は何度かあったのですけど、できたては心なし透明感が違うというか綺麗なものですねぇ。
「いくら丁寧に作っても、長く使い込んでいくうちに多少の劣化は避けられないもんで。使い込むうちに、どうしても濁りが出てきてしまうんですわ。ウチで作ってる冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレに関しちゃ、だいたい五年くらいでの買い替えを想定してますね。まあ、どこもなるべく節約したいのか実際には十年二十年と同じのを使い続けてるお客さんもいるようですがね」
ははは、経費を削りたいのはどこも一緒ですからね。
ちなみに、この冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレはもう使える状態なんですか?
「ええ、もう触れば普通に魔力の数字が球の表面に浮かんできますね。あとはキチンと動作するか確認してから目の細かい絹布で丁寧に磨けば、梱包して出荷するだけですね。よろしければ試しに計ってみます?」
おや、よろしいんですか?
これで私の魔力が強すぎて一発で壊れちゃったりしたら、ここまでの大変な過程を見ているのもあって心が痛んでしまいそうですねぇ。
「ははっ、そこに関しては望むところだと返しておきましょうか。冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレなんて言われてますけどね、実際のところは許容できる魔力量の限界は製法の改善で一昔前より段違いに大きくなってますし、壊れることなんて今じゃ滅多にないですからね。それも劣化してない新品を一発で壊せたら大したものですよ。もし壊れても破片で怪我したりしないような壊れ方をする仕組みもあるので、どうぞ遠慮なくいっちゃってください」
すごい自信ですね。
では遠慮なく試させてもらいましょうか……っと、流石に言うだけのことはあるようです。おっと球の表面に魔力の数値が浮かび上がってきましたけど、まあ普通ですね。可もなく不可もなくといったぐらいで。
「まあまあ、それこそ名の知れた勇者か大魔法使いでもなけりゃあ誰でもこんなものですよ。では私のほうでも動作確認をしまして……よし、問題なし。これで今度こそ本当の本当に完成ですね」
お疲れ様でした。
いやはや、昨今は当たり前に見かける冒険者ギルドの受付でよく壊される魔力を計るアレを作るのにも大変なご苦労があるようです。それではアレックスさん、本日は朝早くから取材にご協力いただきありがとうございました。月並みですが、今後のご活躍をお祈りしております。
【以上。王立魔法新聞、地方欄掲載のインタビュー記事より抜粋】




