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第二話

ルアナの転生したこのゲーム世界には魔力などといった超常的なエネルギーが存在する。

魔力は世界中の人間のほとんどと、魔物と呼ばれる生物が持っており、魔力にはさまざまの特性が存在する。


1つ目の特性は魔力を纏った物体、あるいは生物は全性能が強化されることだ。

簡単に言うと人間が魔力を纏った場合、その身体能力は纏う前よりも増幅するのだ。

強化の幅は魔力を纏った量や純度によった変化する。


2つ目の特性は魔力を操作できると、魔術という力を使えるようになるということである。

魔術には無変換魔術と変換魔術という二つの種類があって、無変換魔術は魔力をそのまま使う魔術のことだ。

先ほど挙げた魔力を纏うことも、無変換魔術の一つである。


それに対して、変換魔術は魔力を炎や氷などといった別のモノに変換する魔術である。

変換魔術を扱うには想像力が必要となっており、想像力とそれを行うだけの魔力量があれば、なんでもできると言われている。


そんな変換魔術には、四つの基本属性である火属性、水属性、風属性、土属性があり、さらにその中に複数の系統が存在する。


✚✚✚


「一番槍は私が行かせてもらいます。皆さんはルアナが逃げないように出入り口を塞いでいてください。」


風紀委員たちの中からそんな名乗りを上げたのは、黒髪に全てを凍りつかせるような蒼い瞳を兼ね備えた、僕と同学年の女子生徒であった。

名も知らぬ同級生はこの場にいる風紀委員たちの中で、1、2を争うほどの大きな魔力を持っている。

準備運動には…まぁ、もってこいの相手だろう。


「ルアナ…あなたのことは前から嫌いでした。問題ばかり起こして、我らが風紀委員長…シュナ先輩の手を煩わせる厄介者ですからね。ですがシュナ先輩に止められていたので、私たち風紀委員はあなたに手出しをしなかった。ですが今は違います。シュナ先輩の許可を得た今ならば、私たちはあなたのことを全力で殴れる。」


「いや…君たちの事情なんて知らないよ。長々と喋るのは、僕にボコボコにされた後にしてほしいな。興味もない話をされるこっちの身にもなってくれない?今にもあくびが出そうだ。」


次の瞬間、視界がまばゆい光につつみ込まれる。

それは相対している女子生徒が魔力を解放した証だ。

無数の氷の槍が空中に生成されていく。


「はて…どう対処したものかねぇ。まぁ全部斬れば済む話……っと、危ないなぁ。」


あごに手を当てて対処法を考えていると、眼前に氷の槍が迫っていた。

上半身を後ろに反らして攻撃を避け、僕に向けて振り下ろされている氷の剣の刃を右手の人差し指と親指でつまむ。


「もう少し加減を考えてくれないかい?今のが当たってたらさ…僕、死んでたよ。これは命懸けの決闘じゃなくて、あくまで僕を止めるための戦いだろう?」


「誰かを殺そうとしてたくせに、自分が殺される覚悟はなかったのですか?てっきりそれくらいはできているものだと思っていましたが……それはがっかりですね。」


こちらをバカにするような笑みを浮かべ、そんなことを告げる女子生徒。

たしかに彼女の言う通りだから、反論する気が起きないね。

だけどさ、その理論でいくのなら……。


「僕を殺そうとした君も、当然殺される覚悟はできているんだろうね?」


ようやくだ、ようやく…魔力が練り上がった。

ピシリ、ピシリとつまんでいた氷の剣にヒビが入っていき、ものの数秒で粉々に砕け散る。

それと同時に、僕は左拳でジャブを放った。


それは僕の左拳を掴もうと構えられた女子生徒の手のひらに吸い込まれていき……女子生徒を吹き飛ばした。

女子生徒は何が起きたのか分からないまま壁に叩きつけられ、口から血を吐き出す。

何があったのか…それは単純なことである。

女子生徒が僕のジャブの威力を殺し切れなかった、それだけだ。


「君は弱いね。いや…今代の風紀委員長殿が強すぎるだけで、君の実力が普通なのかな?まぁでも、どっちにしろ僕に挑むにしては弱すぎるっていう事実は変わんないんだけどさ。」


この程度の実力で僕に挑むとは……身の程知らずなのか、あるいは余程の自信家か。

まぁどちらだったとしても蛮勇だったということは間違いない。

しかし…ほとんど期待はしてなかったけど、ほんとにここまで弱いとは。

風紀委員長殿の後継に満ち足りるようなやつはいるのかな?


パチリという音とともに、視界の端で蒼白い閃光が奔ったような気がした。

だがほんの一瞬のことだったので、気の所為かと思ったその瞬間……僕の身体を蒼雷が貫いた。


幸い魔力を身体に纏っていたので、そこまで大きなダメージは入らなかった。

もし魔力を纏ってなかったら、ちょっとじゃ済まないほどのダメージになっていただろう。

そう考えると、警戒を解かなくて良かったね。


そんなことを考えつつ、バチバチと蒼い閃光を身体から放ち続けている先ほど吹き飛ばした女子生徒に目を向ける。

おそらく彼女の得意な変換魔術は火属性雷系統なのだろう。

つまるところ、本番はこれからということだ。


「アハッ、いいねいいね。勝負はまだ始まってなかったってわけか!!これは楽しめそうだよ。」


無造作に女子生徒が僕のほうに人差し指を向ける。

彼女の指の延長線上にあるのは……僕の頭であった。

反射的に身体を横にずらし、指の射線上から脱する。

直後、先ほどまで僕の頭があったところを蒼雷が駆け抜けていった。


「弱いと言ったことは詫びさせてもらうよ。君は強い。たぶんだけど、君は今代の風紀委員長殿を超えることもできる可能性を持っている。だからこそ……惜しいね。」


火属性雷系統を使っている彼女と相対して感じたこと……それは惜しいの一点に尽きた。

魔力は多い、技術もレベルが高い…ならばなぜこんなふうに感じたのか。

それは彼女に信念というものが存在しないからだろう。


信念…それは美学と言い換えてもいいかもしれない。

僕の信念は“敵対者は確実に潰す”と言ったところだろう。

他の人だと、風紀委員長殿ならば“正義に反するな”、この学院の生徒会長ならば“従う者には恩恵を、反発する者には制裁を”とかかな?


「君には信念がない。今こうして風紀委員として僕と戦っているのも、あくまで自分以外の風紀委員が僕と戦おうとしてるからじゃないのかな?まぁそれ自体を咎める気はないよ。ただ信念…確固とした自我がないヤツは弱いんだ。大事な時に何もできないからね。」


どれほど強かったとしても、信念がないヤツに運命は変えられない。

なぜならそういうヤツは運命の分岐点で、自分を信じることができないからだ。


「そういうことだからさ……信念はあったほうがいいと思うよ?じゃないと、今後の人生で大きな損失が出るだろうからね。」


まぁ実際にどうなるかは知らないけど。

今後彼女がどんな人生を送るかなんて、今の僕に分かることじゃないからね。

しかし……長々と話しすぎちゃったな。

これじゃあアレだ…特大ブーメランってやつになってしまう。


「まぁ、ダラダラと話すのはこれくらいにしようか。僕としてはもう少し楽しみたかったんだけど、めんどくさいのがこっちに近づいてきてるからね。」


僕たちのいる食堂に向かってきている膨大な魔力の持ち主。

その相手が誰かは分かっている。

彼女がこの場に到着する前にこの場を離れなければ、少し…いや、結構めんどくさいことになるだろう。


直後、黒い閃光が僕の身体から放たれる。

僕はゆっくりと拳を後ろに引いていき、女子生徒も応戦の意思を示すかのように拳を構える。

しかし、彼女は気づいていない。

彼女の立っている位置が僕の間合いの内側だということを。


スキップをするかのように軽く地面を蹴る。

身体から黒い閃光がほとばしり、次の瞬間には女子生徒の目の前に移動していた。

彼女が反応するよりも早く、ノーガードの腹に拳を叩き込む。


再度、壁に叩きつけられる女子生徒。

が、その痛みは先ほどの比ではないだろう。

先ほどのジャブに込められた魔力と今の一撃に込められた魔力では、圧倒的なまでに純度が違うからだ。


「悪いけど、今回はこれで幕引きだ。次に君と戦うのは、君に信念ができてからがいいな。」


意識がもうろうとしているであろう女子生徒にそう告げる。

それから首をひねり頭だけを後ろに向けて、背後から僕に向けてなんらかの魔術を放とうとしていた別の風紀委員たちに視線を送る。


「それはやめておいたほうがいいと思うな。残念だけど今の僕には時間がないからさ……殺さずに無力化できるか分からないんだ。」


そんな言葉と同時に、魔力の解放を応用した威圧をする。

言い換えるならば、殺気を放つとも言えるだろう。


僕の威圧に風紀委員たちは、大なり小なり後ろに退いた。

彼ら彼女らの中にはそれだけで済まず、顔を青くしている者や腰が抜けて地面に座り込んでいる者も多くいた。

少しやり過ぎた気もしなくないが、これは全てアップルパイを台無しにしたクソガキたちのせいなので、僕はそんな考えを振り払って食堂の出口へと向かう。


「あっ、そうだ。アインさーん!!」


食堂の出口の手前で大事なことを思い出し、後ろを振り返って大きな声を出す。

僕が呼んだのは、この食堂の統括者である料理長のアインさんだ。

アインさんは月に一度のアップルパイを作っている人でもある。

僕の呼びかけに対しての返事が、厨房の中から返ってきた。


「ルアナぁ、どうしたー!?」


「食堂の修繕費、どこに置いとけばいいですかー?」


僕が進んでやろうと思ったわけではないが、食堂を壊したということに変わりはない。

それに進んでこういうことをしていれば、学院のスタッフからの印象も良くなる。

なのでこういう時は修繕費より少しだけ多いお金を渡すのだ。

余ったお金がどんなことに使われているのかは知らないけど、次の日とかは少しサービスされるので、印象が良くなっていることは間違いないと思う。


「カウンターの前の机に置いといてくれぇ!!」


アインさんの言葉に従い、風紀委員たちにジロジロと見られる中で、カウンターの前の机に金貨を3枚置く。


「それじゃあ、今度こそお暇させてもらうよ。」


そう言って、僕は足早に食堂から出ていく……そういえばこの雷娘の名前はなんていうんだろうか?

今度学内で会ったら聞いてみよ。

そんな締まらないことを考える僕であった。



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