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死ねない私の鉄のテディベア  作者: ノイズマリー
おかえりが聞こえない
12/12

12 引力

気に入らないので修正しまくってます。話の進行方向は同じなので気にしないでね。


 連続で緊急で駆り出されることはないから、今日は完全なオフ。

 昨日みたいに変なロボとペアを組まされて放り出される心配をしなくていい日。


 トレーニングを終えてそのまま自分の部屋に戻った。

 カップに水を入れて、広げたペーパーに乾燥した葉を乗せ、丁寧に巻く。

 静かな部屋に紙の擦れる音だけが響いた。


 葉っぱの吸い方も巻き方も、南部で覚えた。

 甘い煙か苦い煙。あそこの娯楽はその二つだけだったから。


 通信の呼び出し音が鳴って、作業を止めた。

 相手は以前私がいた部隊の戦友。

 ……ヨースケ。私の兄、みたいなもん。


 応答ボタンを押す指が止まった。でも、無視もできなくて、押し込んだ。


「……ヨースケ?」


「よう」


 少しの間があって、彼は続けた。


「マヤ。ちゃんと起きてたな。

 今何してる?」


 三年ぶりに聞く声が胸に染みてくる。

 本当なら彼と話すのは気まずいはずなのに、声を聞くと勝手に顔が緩んだ。


 「当たり前でしょ。もう10時だよ。今は別に……暇潰してたとこ。今日はヨースケの隊もオフなの?」


「ああ。俺もオフだ。

 あー……

 ちょっと話、聞きたくて。

 お前がロボとペア組んだって聞いたぞ」


 ……なんだ、カインのことか。

 胸の奥が波打つ。落ち着かせたくて、今巻いたばかりのジョイントに火を付けた。

 一口吸って、煙を吐き出す。


「……なんだお前。いつからタバコなんか」


 あまりにも兄貴ヅラの滲む言葉に笑ってしまった。

 彼の中の私はいつまでも小さいボディのままなのかもしれない。


「ニコチン中毒はヨースケの方でしょ」


「俺はいいんだよ! オリジナルの頃からの習慣だから!

 で、どうだったんだようちのスーパー戦術機体は」


「どうも何も。いかにも“ロボット”って感じ。でかくて硬いし、理屈っぽいし。バイク発進するたびに毎回落とされるなってアナウンスするの」


「なんだよそれ。VE軍のロボはクソかっこよかったのに、ウチのはポンコツか?」


「ん……そうじゃない。敵の車のカメラ、きっちりライフルで壊してくれたし、報告は勝手にやってくれるし、ヨースケよりも怪我の処置が上手だった」


「うるせーな。

 まあ、ロボットに興味無いって顔してたお前が、抜け駆けしたって噂が本当だってのは分かった」


「抜け駆けじゃない。緊急で組まされただけ」


 ふと、部屋の斜め上の方を見上げた。隣の兵舎の一つ上のフロア、ヨースケの部屋の方。

 あの散らかった部屋を思い出した。


「お前、俺の隊戻ってこい」


 ただのふざけた応酬をしていたはずなのに、突然妙な方向に話が飛んだ。

 口にジョイントを運ぶ手が止まった。


「……なに、いきなり。

 カインの話はどうしたの。

 無理に決まってるでしょ。私が何したか……」


 私が言い終わる前にヨースケが割り込む。


「ルカさんに許可は取ってある。歓迎するって言ってるぞ」


 ルカさんは現在の彼らの隊長だ。私もよく知ってる。私が何か言う前にヨースケが続ける。


「ロボットタイプの兵士の受け入れ先として俺の隊が立候補したいんだ。もちろんみんな狙ってる。

 でも、一度ペアを組んだお前がいた方が、少しは有利になりそうだろ?

 お前はおまけだ」


 そう言って、小さく笑った。

 何も言えないでいると、通信に小さくライターの音が入った。


「心配すんな。俺が守ってやるから」


 タバコを咥えて籠もった、ふざけた調子の声だった。


 でも彼の言葉で気付かされた。

 戻ってこいと言われた時、反射的に壁を作った。

 隊長のカリスマに引き寄せられて集まった集団だったから、私のしたことで隊の中はきっとめちゃくちゃになっただろう。

 ……戻れるわけがない。


 どんなに言葉を捏ねても形にならないこれは、罪悪感……だと思っていた。誰も触ろうとしない、壁にするには都合が良い。


 でも、それと同じくらい膨らんでいたのは、恐怖だ。

 かつてかわいがってくれた、共に過ごした彼ら。彼らがどんな顔で私を見るのか、今でも想像しようとすると……。


 純粋な罪悪感なんかじゃない。

 自分が潰れないために弱さの分だけ塗り重ねた――厚い壁。


 その壁の前に、ヨースケがお構い無しに近づいてきた。『俺が守る』なんて言いながら。


「あ、勘違いすんなよ、これ説得じゃねえから。

 決定事項だからな。こっちで入力済みの申請書送るから、さっさと提出しろよ」


「え?」


「まぁ、何か見返りが欲しいなら言え。一つだけだぞ」


 ……昔からそうだ。

 彼は「しょうがねぇなぁ」と言って、座り込んだ私を抱き上げる代わりに首根っこ掴んで運搬するような奴。


 じゃあな、と残して一方的に通信を切られた。

 すぐに掛け直そうかと思って、やめた。


 元いたプラトーンに戻るのは怖い。でもいずれは南から戻った以上、顔を合わせることになる。

 ……大丈夫。

 ヨースケが誘ったんだ。彼は私の横について歩く時、絶対に手を離さなかった。



 ――それに……私も、もう一度カインと行動してもいいと思ってた。


 昨日カインが処置を施した左脚に目をやると、欠損した部位を白い義組織が過不足なく満たしている。


 昨日の傷だらけのボディ、関節が壊れて伸びた腕。今頃は新しい装甲に変えてもらったりしているのだろうか。

 メンテナンスは当然技術開発部のヤツらがやるんだろうし、もしかしたら変な装甲にされてるかも。

 自爆機能の有無は次会う時に……いや会うたびに確認した方がよさそうだ。


 ヨースケが言ったみたいに、ロボットなんか興味ない顔をしながら、

 カインのことが気になってる自分に気付いて、ちょっと可笑しくなった。


一章終わりです。読んでくださってありがとうございます。

二章も書き終わってますがちゃんと直してから投稿したいのでしばらくはさようならです。

次の投稿まで期間は空きますが、最終的な収束までちゃんと考えてるのでエタることは無いです。気長に待っててね。感想くれたら嬉しいです。

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