第7話 滅びの刃、因果の果てに見た真実
夜の闇が降り注ぐ王都の廊下。アリエル・ローゼンベルクは冷え切った手で壁を支え、苦悶の息を吐いた。
「これ以上は……限界なのかもしれない」
胸の奥深くに刻まれた凍りつく痛みは日に日に重くなり、呼吸すらままならなくなることすらあった。
それでも、彼女の瞳は決して暗くはならなかった。燃える復讐心が冷たい因果の鎖を断ち切ろうとしていた。
「──いや、諦めはしない」
側に寄り添うリリアが不安げな声をかける。
「アリエル様、お身体を……」
「私が倒れれば、この復讐は終わる。絶対にそれだけは許せない」
その時、邸宅の深奥から密かな気配が迫る。
黒ローブの男が静かに姿を現した。薄暗い光の中で、その顔は冷酷に、不敵な笑みだけを浮かべている。
「感情に溺れる女は、己の運命すら見失うものよ」
男の声は静かに響き、アリエルの胸に冷たい風のように忍び寄った。
「あなたは、この国を闇へと導く疫病でしかない」
アリエルは苦痛に耐えながらも剣を構え、覚悟を込めた瞳で男を見据えた。
「私がここで倒れたとしても、私の意志は滅びない」
「ならば最後の一撃を見せてもらおう」
黒ローブの男が片手を掲げると、空間が歪み、因果の糸が絶え間なく絡み合う光景が広がった。
アリエルは己の因果断絶の力を呼び覚ます。
「断ち切れ、刻まれた因果の鎖。砕け散れ、偽りの未来」
圧倒的な力の奔流が黒幕の放つ闇の封印を裂いた瞬間、アリエルの身体は限界を超え、膝をつく。
しかし、その目には以前よりも一層、覚悟の炎が灯っていた。
「私は、この運命を破る――たとえ千の命を刈り取っても。来世の呪いなど、恐れはしない」
リリアが必死に支えながら言う。
「アリエル様、どうか無理を……!」
「安心して、私はまだ戦える。これは、終わりではない」
深い闇の中、ふたりの影がしっかりと未来を見据えていた。
しかし、王国の深奥で蠢く真実は、彼女の復讐者としての戦いを更なる混沌へと誘うのだった。
お読みいただきありがとうございました。
好評でしたら、続きの話を考えたいと思います。