第6話 凍てつく因果、壊れゆく絆と裏切りの影
舞踏会の豪奢な空間は、戦いの激烈な火花で波立っていた。剣が交差し、蒼い閃光が鋭く光る中、アリエルは己の意志を強く握りしめていた。
「因果断絶――その力が、いかなる未来を切り拓こうとも、私が選ぶのはこの道だけ」
だが、力の代償は容赦なく身体と精神に襲いかかる。胸を貫く激痛が彼女の視界を歪め、赤く染まった瞳が薄く曇る。
「まだ、耐えられる……」
足元から冷気が這い上がるように広がり、心と体が徐々に凍りついていく。だがその凍てつきも、アリエルの燃え盛る復讐心までは止められなかった。
敵の包囲網は徐々に狭まり、背後から義妹セレナの鋭い刃が再び迫る。
「姉様、ここで終わらせましょう。それが私たち家族のため……」
しかしアリエルは決して退かなかった。振り払うように差し伸べた手が、因果の鎖を手繰り寄せ、断ち切る。
「違うわ、セレナ。血の繋がりだから許す? 甘い幻想は捨てなさい。私は、私の正義を貫く」
鋭い刃が近づく寸前、アリエルは因果断絶の力で時空の狭間に刃を跳ね返す。それは一時の余裕を生み出したが、次の代償が襲い掛かる。
ふらりと一歩下がった彼女の耳に、リリアの慌てた声がかけられた。
「アリエル様……お身体が……!」
「――限界かもしれない」
苦しい息の中で言葉を絞り出す。過度の因果断絶の使用は、彼女の魂を凍りつかせる呪いそのものだった。
だが、そのとき、会場の片隅で、暗い影が動いた。
謎の黒ローブの男が一枚の文書を差し出すように手を伸ばし、冷笑を浮かべていた。
「呪いだけではない。彼女の運命には、かつてない破壊力が待っている――」
その声は低く、冷酷で、これからの戦いがさらなる闇を呼ぶ予兆となった。
リリアは必死に仲間へ伝令を走らせる。
「急げ、強力な援軍を呼ぶのです! ここでアリエル様を失うわけにいきません!」
アリエルは膝をつきながらも静かに顔を上げた。
「まだ終わっていない。私は……絶対に、負けたりしない」
凍てつく因果の鎖に縛られながらも、彼女の瞳には強い決意の炎が灯っていた。
その炎の先に待つのは、救いか、さらなる破滅か。
しかし一つだけ確かなのは、彼女の復讐劇は深く、容赦のない波紋を王国に広げつつあるということだけだった。