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第55話 亀裂の街、迫る外敵

「聞いたか? 総鳴を抑えたらしい!」

「いや、抑えただけだ。まだ残骸の鼓動は生きてる!」

「結局、あいつが持ち込んだ影だろう!」

「違う! 彼女がいたから生き残れたんだ!」


「ふざけるな! あの光に頼れば、いつか自我を失って街を呑み込む!」

「黙れ! 旗印を罵るな!」

「やめろ! また争ってどうするんだ!」


「……もう各区で小競り合いになっています。民同士が剣を抜き始めました。」

「評議も全くまとまらねえ。座ってる暇はない。」

「アリエル様……このままでは本当に内乱に。」


「……分かっている。だが、私は王ではない。未来を決めるのは皆だ。だから私は導くだけ。」

「導くだけでは収まらない、と皆が思い始めているのです。」

「アリエルよ、優しさが逆に人を裂いている。」

「……なら、どうすれば。」

「引き受けりゃいい。恐怖ごと、全部正面で。」

「……それが私にできる唯一の手だ。」


「見ろ! 東の街道から武装集団が!」

「外から!? 今の混乱につけ込んで!」

「傭兵どもだ! 王都が乱れてると踏んで略奪に来やがった!」


「内も外もかよ……!」

「アリエル様!」

「行く。旗を揚げるのは今しかない!」


「王都の人々! 聞きなさい!」

「……解放者だ!」

「怪物がまた……!」


「恐れても、罵ってもいい! けれど見よ! 外敵は今まさに街を食おうとしている! ここで争えば本当に滅ぶ!」

「……」

「私の裂け目が怖いか? 怖くて当然だ。だが、この刃で守る! 怖れる声ごと抱え、私は前に立つ!」


「兵よ、聞いたな? いや……民でもいい。誰でもいい。旗印の隣に立つ者は、剣を取れ!」

「……俺は行く! 命を拾われたんだ、借りは返す!」

「私もだ! 怖いが、それでも盾になる!」

「馬鹿な! 奴は怪物だぞ!」

「怪物でもいい! 守ってきたのは確かだ!」


「……アリエル様、兵も民も集まり始めています!」

「カリサ、先陣を!」

「任せろ! 炎槌で蹴散らす!」

「リリア、後陣を固めて!」

「はい、祈りで皆を守ります!」

「私は……旗としてここに立つ!」


「セラフィエル、光景は?」

「ふふ……面白いわ。裂け目を抱えた旗に、人々が群がる。罵声も飛び交うままにね。」

「ヴァルシュ、記すがいい。“旗は恐怖と希望を両手に掲げ、人をまとめ外を拒んだ”。」

「歴史は進む。だが裂け目は確実に深くなる。」

「そう。旗印が立ち続ける限り、いずれ必ず――自壊へと導かれる。」

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