表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/78

第51話 旗を巡る声

「……街は落ち着いたか?」


「いいえ、落ち着いたとは言えません。救われたと安堵する者たちと、恐れを募らせる者たちで完全に分かれています。」


「やっぱりな。戦っても戦っても、結局は人の心が裂け目を広げやがる。」


「カリサ……言葉が乱暴です。でも、嘘ではありません。」


「アリエル様、あなたの力を讃える声も確かに届いています。信じる者も増えています。けれど同時に、“怪物”と呼ぶ囁きも止まりません。」


「……怪物でもいい。旗印でも、反逆者でも。私はここに立ち続ける。だから……二人は、まだ隣にいてくれる?」


「当たり前だ。あんたを放り出したら、この拳は何のためにある。」


「私も離れません。……怪物だと呼ばれようと、あなたは私の救いであることに変わりありません。」


「二人とも……ありがとう。」


「でもよ、アリエル。いつまであんたが一人で全部支えなきゃなんねぇんだ? 王都そのものを動かす仕組みが要る。旗印ひとりに全部背負わせたら、そりゃ潰れる。」


「正直、それは正しい意見だと思います。臨時評議は割れていますが……人々が自ら選び、決める場を残すべきです。」


「……私は剣を振るう者として前に立つ。でも、未来を定めるのは皆で、だ。」


「けどな。人は弱い。すぐに恐怖に流される。お前の裂け目を見て、その力を怖れる。」


「その恐怖を受け入れるしかない。私自身が背負って……その先で繋ぐ。」


「繋ぐ、か。綺麗ごとじゃねえな。だが――今まで全部そうしてきたか。」


「……胸は痛みますか?」


「ええ。けど、この痛みは私の証。滅びも抱え、希望も抱えて進む。」


「アリエル様……」


「よし。なら俺も腹を決める。評議だろうが群衆だろうが、誰が何を言おうが、この大槌はお前の旗を守るために振るう。」


「私も支えます。あなたが一歩でも間違えたら、その時は私が必ず隣で正す。だから……恐れないでください。」


「二人がそう言ってくれる限り、私は歩ける。」


「なら歩こうぜ、旗印さん。街はまだ半壊だ。これからが本当の勝負だろ。」


「はい。これから、人々にも自ら選んでもらわなければなりませんね。」


「ええ。旗印に従うだけでなく、旗を共に支える未来を。」


「……行こう。朝が来る。次の戦いはもう始まっている。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ