第5話 流血の交錯、因果断絶の代償
暗闇を裂くように、舞踏会の華やかな室内に鋭い蒼光が走った。
アリエル・ローゼンベルクはその中心に立ち、紅の瞳に宿る決意が一層燃え上がる。
「これが、私の復讐の刃――因果断絶」
リュシエール侯爵の盟友、侯爵ヴィクトルは急激な痛みに顔を歪めたが、すぐに怯むわけもなく、冷酷な目でアリエルを睨み返す。
「愚か者よ。力を乱用すれば己の首を絞めるだけだ。お前の代償は既に始まっている」
アリエルはその言葉に微笑みを返す。
「それでも、私が背負う。ただし、これ以上大切なものを奪わせはしない」
胸の奥を締め付けるような激痛が走り、彼女の体温は一瞬にして下がった。
「……これが、因果断絶の代償」
使うたびに刻まれる魂の凍結。だが感情は凍てついていない。怒りと決意が凍結を溶かし、彼女を強く突き動かす。
だが、油断はできない。敵もまた因果の糸に手を伸ばし、動き始めている。
「リリア、すぐに脱出ルートを確保して。敵の包囲はこれからよ」
「すぐに用意します、アリエル様!」
背後の影が一層濃くなり、義妹セレナが大広間の端からゆっくり歩み寄る。
「姉様、あなたの運命はもう狂い始めている。私たちが終止符を打ちましょう」
その言葉と同時、鋭い刃が空を切り裂いた。
アリエルは間一髪で身をひねり、剣で受け止める。
「ここで終わるわけにはいかない」
剣と剣が激しくぶつかり合う音が、会場の静寂を突き破った。
戦いの火蓋が切って落とされ、因果断絶の力を持つ令嬢の復讐は、より深い闇へと沈み込んでいく。
その顔には微塵の迷いもなく、ただただ強烈な意志だけが燃えていた。
こうして、複雑に絡み合った因果の糸が引き裂かれ、王国の未来は激しく揺れ動き始めていた。
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