表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/78

第27話 王都戦乱、燃え上がる旗の下

鋼の咆哮と人々の叫びが王都広場を揺らした。

近衛兵の槍衾が一斉に突き出され、民衆が押し返す。

混乱と恐怖の渦の中、ひときわ強い閃光が立ち上った。


アリエル・ローゼンベルクの剣だ。

紅と黒の光を纏い、彼女は矢の雨を切り払いながら前線に立った。


「恐れるな! これは新しい未来を刻む戦い!」

その声は兵にも民にも響き、広場全体を揺さぶる。


リリアは後方で負傷者の介抱にあたりつつ、叫ぶ。

「アリエル様を信じて! 生き残ることが勝利です!」


しかし近衛は精鋭。次々と波のように押し寄せ、民兵たちは圧され始める。

槍に倒れる者、盾を捨てて逃げる者――劣勢は明らかだった。


アリエルが再び因果断絶を発動すると、数本の槍が虚空に消え失せ、僅かな突破口が開く。

だが胸の裂け目が激しく疼き、力を使うたび自身が削られていくのを感じる。


「……まだだ……倒れるわけには……」


その時――広場奥で炎が噴き上がり、爆裂音が兵の列を裂いた。

「退け、この国の鎖ども!」


民の中から現れたのは、黒髪に額当てを巻いた女戦士だった。背に大槌を背負い、両手に炎を纏わせている。

近衛兵を薙ぎ払いながら、声を張り上げる。


「私はカリサ! アリエルの旗に従う者だ! 民よ、立ち上がれ!」


その気迫に鼓舞され、怯えていた人々が次々と武器を拾って立ち上がる。

「俺も戦う!」

「解放者のために!」


戦況が一気に揺らぎ、広場全体が火と怒号に包まれた。


アリエルは振り返り、カリサの瞳を見据えた。

燃えるような朱の瞳は、自分と同じ「復讐」と「誇り」を背負った者の色をしていた。


「……協力するのね?」

「当たり前だろう。鎖を砕くのは一人じゃ足りない」


二人が並び立った瞬間、兵士の勢いは確実に押し返された。

紅黒の閃光と、燃え盛る炎槌が交差し、王都の広場を切り拓いていく。


背後で揺れる市民の鬨の声。

――反逆者ではなく、解放者として。


だが同時に、広場の空に不気味な鼓動が木霊した。

王家の心臓の波動がこの戦乱に共鳴し、都市全体を震わせている。


アリエルは歯を食いしばり、剣を握り直す。

「行くわよ……これが、王都戦乱の始まり」


紅と黒、そして炎の旗が、確かに王都で翻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ