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第25話 反逆者の旗、王都に靡く

王家の心臓の扉での戦いが収まったとき、アリエルは再び現実の玉座の間に立っていた。

壁に走る亀裂からは微かな光が漏れ、床には因果の糸の残滓が散っている。

静寂の中、胸の奥で二つの鼓動が重なって聞こえた。自分自身の心臓と……影を抱えた“廃墟の胎動”。


「……終わったのですか?」

リリアが震える声で問う。


アリエルは左手を見下ろす。黒い紋様は消えず残っていたが、かつての痛みは消えていた。むしろ、血潮のように確かな力が流れている。

「いいえ……これは始まり。その証を刻んだだけ」


その時、外から轟音が響いた。

窓を突き破るように光が差し込み、遠方の王都の光景が視界に広がる。

群衆、兵士、そして燃え上がる旗――そこに描かれていたのは「反逆者アリエル討伐」を掲げる紋章。


ヴァルシュの声が背後から届く。

「布告は既に民心を煽っている。王都はお前を討つための戦場へと変わった」


続いてセラフィエルの声が冷たく重なる。

「廃墟の主よ。お前が“自分を抱える”と決めた以上――この国もまた選択を迫られる。抗うのか、呑まれるのか」


アリエルは静かに息を吐き、そして玉座を睨み据えた。

「ならば私は、反逆者として旗を掲げる。民にとっては恐怖でも、同時に希望であることを証明する」


リリアが目を大きく見開き、次第にその言葉に呼応するように表情を引き締める。

「……王都全体を敵に回す覚悟ですか」

「ええ。因果に操られる王国を打ち壊す。それが新しい未来を繋ぐ唯一の道だから」


すると、玉座の間の奥から鎧をまとった兵士たちが雪崩れ込んできた。

「反逆者を討て!」

怒号と刃の煌めきが迫る。


アリエルは紅と黒の光を纏った剣を抜いた。

「来なさい……王都が私を拒むなら、私の手で未来を切り拓く!」


刹那、彼女の一振りが兵士たちの因果ごと斬り裂き、剣圧は窓外の空へと昇り上がる。

その光の柱は王都全体から見えるほどの輝きであり、人々は口々に叫んだ。


――反逆者の旗が、王都に翻った、と。

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