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第18話 玉座の闇、開かれた来世の扉

王城の最上階――厚い双開きの扉の向こうが、王国の中心、謁見の間だった。

天井は高く、壁面には歴代の王たちの肖像が厳かに並び、深紅の絨毯が玉座までまっすぐ延びている。


アリエル・ローゼンベルクは深く息を吸った。

胸の奥の凍えはまだ残ったままだが、それ以上に紅い瞳に宿る炎が強く燃えている。


「この先に、すべての因果を操る者がいる」

自らに言い聞かせるように呟き、剣の柄を握り直す。


リリアと仲間の兵士二名が背後に続く。

扉を押し開くと、冷ややかな空気が頬を撫でた。


玉座に座っていたのは――現国王ではなかった。

漆黒の衣をまとい、王冠ではなく銀の輪を額に戴く、高貴で威圧感のある女。

その背後には、淡く光る無数の糸が空中に漂っていた。


「……誰?」 アリエルの声は低く鋭い。


女は微笑む。

「我が名はセラフィエル。因果の守護者にして、来世の織り手。…そして、この国の“真の玉座”だ」


「来世の織り手…」 その響きに、胸の奥であの囁きが共鳴する。

彼女こそが、地下牢の囚人たちが恐れた存在――来世そのものを操る者。


セラフィエルは立ち上がり、指先で背後の糸を一筋引いた。

瞬間、アリエルの足元に淡い光が広がり、過去と未来の情景が断片的に流れ込む。

そこには、彼女がまだ転生する前の人生の影と、未来に待つ廃墟の景色が重なっていた。


「お前の〈因果断絶〉は、我ら織り手すら制御できぬ異質な刃。それを振るえば振るうほど、来世の因果は崩壊し、お前は“永久の彷徨者”となる」


アリエルは一歩前に踏み出す。

「たとえ来世を失っても、私はこの世界を正す。あなたがそれを阻むなら、切り捨てるだけ」


女の眉がわずかに上がる。

「面白い。マルセルなど、所詮は試金石に過ぎぬ。お前がどこまで抗えるか…見極めよう」


次の瞬間、糸が一斉に形を変え、無数の燐光の鎖となってアリエルに襲いかかる。

剣で受け止め、因果断絶を唱えると、一部の鎖が霧散したが、同時に激しい痛みで膝が折れそうになる。


「アリエル様!」

リリアが駆け寄ろうとするが、別の鎖が彼女を絡め取る。


セラフィエルの声が玉座の間に響き渡った。

「選べ、断絶の娘。仲間を救うか、己の魂を守るか。いずれにせよ、その選択が未来と来世を形作る」


紅い瞳が鋭く光る。

「選択なら…最初から決まっている!」


剣を高く掲げ、アリエルはさらなる因果断絶の詠唱に入った。

その瞬間、玉座の間は白い閃光に包まれ、すべての糸が悲鳴を上げるように軋んでいた。

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