【45】全ての始まり~中学生時代、修学旅行の夜★
45-1◆脚本家が最後に探すもの◆
三月十五日、終業式。
担任の烏丸の気の抜けた、しかしどこか安堵したような声が、俺たちの高校二年生の終わりを告げた。
教室は、一年間が終わった後の解放感と明日から始まる、春休みへの浮かれた期待で満ち溢れている。
「音無!この後、カラオケ行こうぜ!」
山中が、柴田や斎藤、結城たちを引き連れて、俺の席へとやってくる。
その顔には、ただ対等な「友人」としての親しみが浮かんでいた。
俺は、静かに、首を横に振った。
「悪い。今日は、少し用事がある」
俺には今日、この二年生が終わる最後の日に、必ずやっておかなければならないことがあった。
ミラー:「…王との“契約”も果たし、お前はもうこのリーグの頂点に立った。これ以上、何がある?」
奏:「まだだ。まだ終われない」
ミラー:「ほう?何が?」
奏:「…最後の“謎”が残っている」
天宮とのあの対話で、俺は確かに“外の世界”の呪縛からは解放された。
『教室リーグ』というちっぽけな王様ごっこ。その虚しさを知った。
だが俺の内側には、まだあの中学3年の修学旅行夜から、ずっと心に引っかかる本当の“牢獄”がある。
その牢獄の鍵を握る一人の少女。
白瀬ことり。
ただ一人、俺の〈観識スカウター〉が機能しない相手。
唯一の小学生からの同級生。
そして俺が、あの夜、その心をズタズタに引き裂いてしまったであろう少女。
9月初旬、あの図書室で一色栞と共にいた時の彼女のあの人間的な笑顔。
あの図書室での優しい時間と空間。
俺はあれを忘れることができなかった。
俺は山中たちに、軽く手を振ると、一人教室を出た。
喧騒に満ちた本館を抜け渡り廊下を渡り、あの古い旧校舎へと向かう。
ミラー:「…聖域へ向かうか。観測不能のあの少女の元へ」
奏:「ああ。天宮が俺を「王様ごっこ」から、目覚めさせる最後の“教師”だったのなら」
奏:「白瀬ことりは、俺の心の内面を解放してくれる教師だと考えている」
それは彼女のためだけではない。
俺自身のこの呪われた魂を、救うための最後の“仕事”だ。
俺が、自らの意志で書き上げる「決着の脚本」の始まりだった。
45-2◆聖域の門番、最後の問い◆
旧校舎の廊下を抜け、図書室の扉を開ける。
紙とインクの乾いた匂いが、懐かしいほどに胸を満たした。
窓際のテーブルに、ふたりの姿。
白瀬ことりと――卒業したはずの三年生、図書委員長の一色栞。
小さな声で談笑する二人の雰囲気は、春の光みたいに穏やかだった。
ことりが俺に気づき、わずかに目を見開く。
栞先輩は席を立ち、静かな足取りでこちらに歩み寄ってきた。
「……やっぱり来たのね」
低い声。けれど、その瞳は俺の奥を試すように深い。
俺は頷くだけで言葉を失う。
栞先輩は柔らかく微笑み、問いを投げた。
「音無くん。ひとつ、聞いてもいい?」
「あなたは――彼女が、どうして“図書室”にいると思う?」
一瞬だけ言葉に詰まる。
ことりの横顔が視界の端で揺れ、俺は小さく答えた。
「……ここだけにはヒエラルキーが存在していないから、です」
「なるほど」
栞先輩はわずかに口元を緩め、次の言葉を慎重に選ぶ。
「じゃあ、もう一つだけ」
「もし、あなたが彼女のことを“知りたい”のなら――」
「まず、あなたが言えなかったことを、彼女にすべて伝えてあげて」
「言葉を惜しんだままでは、何も始まらないから」
息を呑む俺を見つめたあと、栞先輩はことりへ視線を戻す。
柔らかく微笑み、「あとは二人で話してね」とだけ告げると、
そのまま静かに出口へと向かった。
扉の前で、一度だけ振り返る。
その微笑は、最後の許可証のようだった。
「――わたしの役目はここまで。じゃあね」
残されたのは、俺と白瀬ことり。
ようやく、真正面から向き合うときが来た。
扉が閉まる音は、許可証の裏面に押された見えない印鑑みたいだった。
45-3◆彼女の証言、罪の名を呼ぶ前に◆
静かな図書室で、白瀬ことりと二人きりになった俺。
彼女のガラス玉のような瞳が俺を真っ直ぐに捉える。
彼女は俺がここに来ることを、最初から知っていたかのようだった。
俺は彼女の向かいの席に、静かに移動した。
沈黙が落ちる。
その気まずい静寂を、破ったのは意外にも彼女の方だった。
「…小学校の頃から、奏くんはずっと私のヒーローでした」
そのあまりにも唐突な告白。
俺は、返す言葉を失う。
彼女は続ける。その声はどこまでも静かで、そしてどこまでも透き通っていた。
「五年生の時。上級生に絡まれていたクラスの子を、奏くんはたった一人で助けましたね。殴られても、蹴られてもあなたは、決して動かなかった。…私は、物陰からただ見ていることしかできなかったけど」
「六年生の、雨の日も」彼女は続ける。
「帰り道に捨てられていた、仔猫に奏くんは自分の傘を差し出して自分はずぶ濡れになって、走り去っていった。…でも奏くんはすぐに、戻ってきてその仔猫を、大事そうに抱いて連れて帰った。…あの光景を私は今も忘れられません」
俺は、思わず言葉を挟んだ。
「…ああ。あいつは今も俺の家で元気にやってるよ」
その俺の言葉に、彼女は初めて、ほんの僅かだけ微笑んだ気がした。
しかしその笑みはすぐに消える。
俺は、意を決して彼女に告げた。
「…でも白瀬。俺は、君が思うようなヒーローなんかじゃないんだ」
「君はすでに知っているかもしれないけど、俺は言わなければならない。俺がそんな綺麗な人間ではないということを」
俺は初めて彼女に自らの本当の「罪」を告白し始めた。
中学のあの修学旅行の夜。
三好との因縁の始まり。そして俺がヒーローでなくなったあの夜のことを。
45-4◆台本どおりの命令、ヒーローの死◆
奏:「俺と白瀬は同じ小学校から、洛北祥雲学園中等部へ入学した。俺たちはたった二人だけの仲間だった。内部生が強い学園で、俺たち外部生は目立たないように過ごしてた」
ことり: 「うん。『波風を立てない』が私たちの合言葉だった」
奏: 「中三の修学旅行の夜、俺は三好たちと同室だった。確か5人部屋だったかな。あいつは…昔から最低な奴で、王様ゲームの“台本”を用意してた。仲間と示し合わせて、誰が王様になっても同じ命令を出せるように…。」
ことりは黙って聞いている。そのガラス玉のような瞳は、揺るがない。
まるでこれから語られるであろう罪の全てを、静かに受け止める覚悟を決めているかのように
奏:「あのころの俺には同調圧力、空気感に逆らう勇気がなかった。本当に臆病だったんだ」
俺は一度、言葉を切り、思い出すように目を伏せる
奏: 「後で知ったことだが、女子の部屋では、中払恭子が三好たちに脅されてた。『入浴中の数十分、部屋の鍵を開けておけ』って」
ことり: 「……うん。知ってる。恭子ちゃんから、直接聞いたから」
奏: 「え…?」
ことり: 「ううん、続けて。あなたの口から、ちゃんと聞きたい」
奏: 「…ああ。三好の取り巻きの富田は見張り役。…そこまでが、あいつらの仕込みだった。女子が入浴中で、廊下に誰もいなくなる時間を見計らって、王様ゲームが始まった。そして王様を引いたやつが、台本通りに、最低な命令を…」
俺の声が、かすかに震える
奏: 「それは『女子部屋から白瀬の手帳を探して、音無奏、つまり俺のことが書かれたページを持ってこい』と」
ことり: 「…そう。狙いは、最初から私たち二人だったんだね」
彼女の声には、怒りも悲しみもなかった。ただあまりにも残酷な事実を、静かに受け止める響きだけがあった。
奏: 「俺と富田は、女子部屋に向かった。鍵は…言われた通り、開いてた。君の鞄を開けて、手帳を見つけた。指示通り、“俺について書かれた記述”を探した。…震える手でページをめくって、見つけてしまったんだ」
奏: 「『上級生からクラスメイトを救った。殴られても正義のために、立ち向かう――やっぱり奏くんは私のヒーローだ。』…小学校で、俺が上級生に絡まれた子を庇った日のことが書いてあった」
ことり: 「それは…誰にも見せられない“聖書”のようなもの。私の“大切な想い出”だったの」
奏: 「……そのページを、俺は破った。監視役の富田に逆らえなかったんだ。“ビリ”って乾いた音がして、指が勝手に震えた。その紙切れを持って、俺たちは命令通り、部屋に戻った」
奏: 「戻るなり三好が俺に言った。『声に出して朗読しろ』って。後から思えば、テーブルの端に伏せてあったスマホで、録音してたんだ」
ことりの表情には、俺がその場で感じていたであろう屈辱への、深い共感が滲んでいた。
彼女は、責めるのではなく、俺の痛みにも寄り添おうとしてくれていた。
奏: 「俺は…声に出して読まされた。『……やっぱり、奏くんは、私の、ヒーローだ。』…部屋は、嘲笑で満ちてた。その笑い声だけが、黒い鏡の中に吸い込まれるみたいに残った」
「その直後、三好は録音データをElysionの上位グループLINEに流したらしい。“面白いから”ただそれだけの理由で…」
長い沈黙。俺は、それ以上言葉を続けられない。
ことりは、その沈黙を静かに受け止めてから、ゆっくりと口を開いた
ことり: 「…翌朝、食堂でね。久条さんと結城さんが『録音が回ってる』って話してるのを、恭子ちゃんが聞いたの。それで私のところに来て、全部話してくれた。『私が鍵を開けたせいだ』って泣きながら…多分、彼女は責任を感じていたんだと・・・」
奏: 「……」
ことり: 「それから、恭子ちゃんと二人で、結城さんにお願いして、その音声を聴かせてもらった。ノイズの奥に、あなたの声の癖。語尾で息が少し上がるところ。……それに、ほんの小さな…『ごめん』って声が、聞こえた」
ことり: 「奏くんの声だって、私には一瞬でわかった。その瞬間、私の中で“犯人はクラスの誰か”じゃなくて――奏くんになった。私の“ヒーローの死”が、確定したの。…本当に、ショックだった」
奏: 「…そうだったのか」
ことり: 「だからね、今日、奏くんが勇気を出して話してくれたこと、私はほとんど知ってた。でも、ずっと奏くんの口から直接、聞きたかったの。“あの夜、何があったのか”を、奏くん自身の言葉で」
奏: 「…あの夜から、俺は決めたんだ。『二度と、誰にも期待されず、注目もされず、息を殺して、目立たぬよう嵐が過ぎ去るのを待つ』って。それが俺の生存戦略になった。あれから俺は、そうやって生きてきた」
ことり: 「うん。私があの朝に知った事実と、今、奏くんが語ってくれた夜の中身。空白が、全部埋まったよ」
奏: 「王様ゲームの仕込み、鍵を開けておく、部屋へ侵入、手帳を発見、ページを破る、強制朗読、録音、拡散…。これが、全経緯だ。俺は、白瀬の心を踏みにじった。…今も後悔してる」
ことり: 「……うん。全部、受け取ったわ。話してくれて、ありがとう」
ことりは一度、目を伏せる。そして、再び顔を上げた時、その瞳には新しい光が宿っていた
ことり: 「じゃあ、次は私の番。奏くんが、あの学園祭のクラス会議で手に入れた“力”が、どこから来たのか。――今度は、私が説明するね」
奏: 「何となく、おかしいとは思っていたんだ。まさか?あの能力は…白瀬が?」
45-5◆祈りが形になるとき~ことりの独白
図書室の窓から差し込む光が、ゆっくりと赤みを帯びていく。ことりは俺の正面で、静かに息を整えた。
「――全部話すね。ここからは、私の話」
その声は、どこまでも静かだった。
「小学校の頃、奏くんは私のヒーローだった。朝顔に水をやる背中も、いじめられていた子の前に立った肩も、ずっと覚えてる。でも、中学の修学旅行の夜で、それは終わった」
「翌朝、手帳の破れた跡に触れた指は震えて、食堂のざわめきの中で、私は世界から切り離された。声の主が奏くんだと知った瞬間、胸の中で何かがはっきりと死んだの」
「修学旅行から帰った日、家に帰って、私は――眠れなかった。枕を濡らしたのは、怒りや憎しみじゃなかった。絶望とそして罪悪感。『私が、奏くんを勝手にヒーローにしてしまったから、奏くんは壊れたのかもしれない』って。『私が期待しすぎたから、あなたは“空気”に屈してしまったのかもしれない』って」
「それからの日々、私は毎日あなたを見てた。教室で、目立たない席を選んで、人の視線をうまく外して、呼吸を浅くして――『嵐が過ぎるのを待つ』奏くんを。かつてのヒーローは抜け殻になってしまった」
「その光景が、私を決定的に追い詰めた。失望は自分に向かって、罪悪感は熱に変わった。そしてある夜、私は祈ったの。たった一度でいいって」
彼女の瞳が、俺を真っ直ぐに射抜く。それは懺悔のようであり、祈りのようでもあった
「『どうか、この人に“真実”が見える目をください』」
「『もう二度と、空気や圧力に負けないように』」
「『あのときのヒーローを――私の手で、作り直させてください』って」
「その祈りは、ただの願望で終わらなかった。…一度きりの奇跡が、起きたの」
奏: 「待ってくれ…。じゃあ俺のこの眼は…この〈観識スカウター〉は君が…?」
ことり: 「うん…。私の一生に一度だけの“奇跡”を使えたの。名前は…〈スキル・エンダウメント〉私が『この人』と決めた、たった一人にだけ、新しい力を授ける能力…」
奏: 「一度だけ…?じゃあ、君は…」
ことり: 「うん。もう二度と、私に力は宿らない。全部、あなたにあげたから」
奏: 「なっ…なんだよ、それ…。そんな馬鹿なことがあるか!代償は?何かとんでもない代償があったはずだ!」
ことり: 「…私の、“ぜんぶ”。これから先にあったかもしれない、私の全ての奇跡や幸運、可能性。それを…全部、奏くんにあげてしまったの」
奏: 「……っ!」
言葉を失う。彼女が支払った代償の、そのあまりにも壮絶な重さに、俺の魂が軋む音がした
ことり: 「スキルは“無”からは生まれない。ベースは、授ける相手が元々持っている資質。方向性は、私の願い。この二つが噛み合ったときだけ、形になる」
奏: 「俺の…資質…?」
ことり: 「うん…。奏くんは、昔から…人の心の動きに、すごく敏感だったから。他の誰も気づかないような、ほんの少しの表情の変化や、声の震えを…感じ取ってしまうでしょう?」
奏: 「…ああ。だから、人を信じるのが怖くなった」
ことり: 「うん…。私は、奏くんのその繊細すぎる“眼”が、いつかあなた自身を壊してしまうんじゃないかって、怖かった。だから、祈ったの。『どうか、その眼が、奏くんを傷つける刃じゃなくて、奏くん自身を守る“武器”になりますように』って…」
奏: 「…それが、〈観識スカウター〉の正体か…」
ことり: 「奏くんの“眼”と、私の“祈り”。それが奇跡的に融合して、ああいう形になったんだと思う。あなたの観察眼が、人間関係を読み解き、戦況を制する“眼”に昇華された。教室という戦場で勝てるように。スクールカーストの頂点に立てるように」
(彼女の言葉が、俺のこの半年間の戦いの全てを、全く違う景色へと塗り替えていく)
ことり: 「奏くんの能力が発動した瞬間は、私のほうでは、雷みたいでも、花火みたいでもなかった。ただ静かにスイッチが切り替わるみたいに、世界のノイズが整理されて…。その瞬間から、あなたの目にUIみたいな何かが宿ったはず。そして同時に、私は――ただの無力な“共犯者”になった。もう二度と、誰にも、何も授けられない普通の人間に」
奏: 「…じゃあ、俺がお前を観測できなかったのは…」
ことり: 「うん。それは副作用かな。スキルを授けた人間は、そのスキルの“外”に立つ。起源に対する免疫、あるいは聖域。だから奏くんの〈観識スカウター〉は、私にだけは届かない。奏くんの眼がどれほど正確でも、私だけは分析できない。それは、私があなたに授けた側だから。贈り物は、贈る側の心までは分析できないように、できているみたい」
「――これが、全部。奏くんの“眼”の由来であり、私の罪と、選択の記録です」
「私は、奏くんをもう一度ヒーローに“作り直した”。それは救いであると同時に、呪いでもあった。奏くんが勝つたびに私は胸を撫で下ろして、奏くんが誰かを切り捨てるたびに、胸のどこかが冷えるのを感じてた。だって、その刃は、私が研いだものだから」
「だから今日、ここで話したかった。祈りは形になる。けれど、その形は、誰かの未来を差し出した跡でもあるって。奏くんがこれから、どの道を選ぶのか――その自由は、はじめから奏くんのものだよ」
白瀬ことりは、そっとカップを置き、俺を見る。窓の外は、もう赤く染まっていた。
(「王様ゲーム 日記強制朗読事件」)
◆コンセプト
彼は中学時代「空気」という名の見えない暴力に一度、完全に殺された。
そのトラウマから**「二度と、誰にも期待されず、誰にも注目されず、息を殺して、嵐が過ぎ去るのを待つ」**という、生存戦略を選んだのです。
「普通」の少年である音無奏が、スクールカーストという名の「空気」と「同調圧力」に屈し、
自分を信じるたった一人の少女の“魂”を、自らの手で売り渡してしまう瞬間を描く。この、取り返しのつかない“罪”の記憶が、二人の高校時代を決定的に支配する。
◆経緯
白瀬ことりと音無奏は同じ小学校から、共に洛北祥雲学園中等部に入学。
閉鎖的な内部生コミュニティの中で、彼女は居場所を作るために俺たちは目立たぬように過ごした
しかし、中学の修学旅行の夜、全てが崩壊する。
内部生の三好央馬たちが主導した『王様ゲーム』。それは、外部生である二人を辱めるための、悪意に満ちた儀式になってしまった。
◆音無 奏:
「普通」でいたいと願い、1軍グループから目をつけられることを恐れる、臆病な少年。
◆三好 央馬:
クラスのカリスマ・天宮蓮司の威光を笠に着る、1軍の取り巻き。嫉妬深く、自己顕示欲が強い。
〔事前仕込み〕
三好央馬:王様ゲームの“台本”を用意。誰が王様になっても同じ命令を出す段取りにする。
岩崎恭子(女子):三好に脅されて「女子入浴中の数十分、部屋の扉を少し開ける」役を強要される。
富田茂輝(三好の取り巻き):廊下の見張りと実行時の補助を担当。
天宮蓮司:別室(不在)。
奏・ことり:外部生。目立たぬよう日常をやり過ごしている。
〔当夜:女子入浴中〕
男子部屋で王様ゲーム開始(三好が主導)。
三好が“命令”:「奏、女子部屋から白瀬の日記を探して、おまえのことが書かれたページを持ってこい」
女子入浴中で廊下が空、見回りも浴場側へ偏る“死角の十数分”。
岩崎恭子が約束どおり部屋の鍵を開けていた
富田と奏が侵入。荷物から手帳を発見。
奏、指定ページ発見(小学校時代の**“ヒーロー”記述**)を破る。
小学校時代の、「クラスメイトを上級生のいじめから救った」思い出が書かれたページ
そこには、こう記されていた。
『殴られても正義のために、立ち向かう やっぱり奏くんは私のヒーローだ。』
奏と富田が男子部屋へ戻る。
三好が“強制朗読”を要求。テーブル端に伏せたスマホでひそかに録音。
奏、震えながら自分の声で読み上げる。部屋は嘲笑。録音は継続。
〔直後:三好がエリシオン上位グループLINEへ拡散〕(面白半分)。
☆翌朝、ことりは自分の手帳が破られていることに気づく。彼女の、最も神聖な秘密が、世界に暴かれたことを知る。
彼女は、誰がやったのかと、クラスメイトたちへの不信感に打ち震える。
岩崎恭子は、おそらく自分が女子部屋のカギを開けていたことが原因だと罪悪感にさいなまれる
〔翌朝:露見と確信〕
久条×結城の会話で「昨夜の録音が回っている」のを岩崎が耳にする。
岩崎恭子は関与の重さに罪悪感をさらに募らせる。
岩崎恭子、耐えきれずことりへ“開扉の経緯”を告白。
二人は結城に頼み、エリシオン上位グループの録音をことりが視聴。
ノイズの奥で、奏の肉声の朗読と小さな息遣い。
ことり、即座に同定――犯人は「不特定の誰か」ではなく、音無奏であることに気づく。
この瞬間、“ヒーローの死”が確定し、二人の関係に決定的な断絶が生まれる。




