表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
最終章:卒業と旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/46

【43】 脚本家の卒業式

43-1◆雪解けのチャイム◆

三月九日――洛北祥雲学園・講堂。

磨かれた床が高い天井の光を鈍く返す。

紅い緞帳、整列した椅子、揃えられた胸元。空気は冷たく、よく通る。咳一つ分の隙もない。


卒業生席。四十二名×八クラス分の背中が、列を揃えて波のように続く。

その列の中に――

轟木剛造、坂元要介の姿も確かにあった


半年分の音が、静けさの底で、かすかに鳴る。

・二学期の始まり。教室の机を挟んだ火花。

・学園祭での出し物を決めるクラス会議

・三好への報復

・中間試験でのElysion幹部へのサポート

・「現代版・高校ハムレット」。

・俺自身の奨学金入学の背景を知ってしまったこと

・英語ディベート選手権の照明。

・大槻追放のための、あの会見の白い光。

・ウィンターカップ、最後の七秒――。


奏:「…ミラー。長かったような、短かったような。不思議な半年だったな」

ミラー:「ああ。観客席で、死んだように生きていた半年前のお前が、この景色を見ているとはな。…悪くないエンディングだろ?」

奏:「…そうだな。本当にいろいろあった。2年1学期までと比べると、濃すぎる半年間だった」

全部が薄い層になって、この場の厳粛さに溶けていく。

マイクが小さく鳴る。教頭の声が落ちる。


「――これより、洛北祥雲学園高等部・卒業式を挙行します」

起立。礼。椅子の擦れる音が一拍で重なる。

国歌が始まる。旋律が梁をなぞり、講堂の四隅へ薄く伸びていく。

歌が静かに終わる。すぐに静寂が戻る。


在校生席。俺は前を見て座る。

右に久条、斎藤、結城。左に柴田。少し後ろに山中。

斜め前には、白瀬ことり。誰も喋らない。

だが、その沈黙は、もはや緊張ではない。

ただ過ぎ去っていく、この瞬間を惜しむかのような穏やかな静寂だ。


俺の視線が卒業生たちのその背中を、一人、一人、捉えていく。


轟木剛造と坂元要介。

もう彼らの周りには、暴力の匂いはない。ただ悪戯っぽく、しかしどこか誇らしげに背筋を伸ばしている。彼らはもう「影の帝王」ではない。

制服の袖口を直す仕草すら、穏やかだった。

この学園を卒業していくただの誇り高き「先輩」だ。


バスケ部の3年生たち。

上夷壮一郎、望月和成、石櫃智哉、

彼らの背中は、つい先日のあの奇跡のような激闘を、物語っている。

敗北の悔しさも、しかしそれ以上の仲間と戦い抜いた「誇り」がその肩には宿っている。


一色栞。図書委員長、白瀬ことりの先輩。

彼女はいつもと変わらず静かにそこにいる。まるでこの物語の、全てを最初から知っていたかのように。彼女は、ふとこちらを振り返り、俺とことりにだけに分かるように、小さく微笑んだ気がした。


そして俺は隣を見る。

久条亜里沙。

その横顔には、もはや「女王」としての鎧はない。ただ美しい一人の少女の顔だけがあった。

俺たちの視線が一瞬だけ交差する。そして彼女は、ほんの僅かだけ頷いた。

それはかつてのライバルへ送る、無言の「敬意」と「感謝」の証だった。


――そうだ。敵も味方もない

ここには同じ時間を、共に過ごしたクラスメイトや卒業生たちがいるだけだ。


そして卒業式の最も長く、そして最も単調なメインイベント、卒業証書授与が始まった。

担任の抑揚のない声が、卒業生の名前を、一人、また一人と、読み上げていく。

「はい」という、短い返事。椅子の軋む音。それだけが繰り返される時間。

轟木剛造、の名前が呼ばれた時、俺は、彼の背中がほんの少しだけ誇らしげに見えた気がした。


やがて校長のありきたりな、しかし心のこもった式辞が始まる。

俺はその退屈なBGMの中で、ただ静かに思考を巡らせていた。


43-2◆ゲームマスターの祝辞、そして王の送辞◆

校長の式辞が終わる。

教頭はマイクの前で一度、深呼吸をする。そして次の来賓代表の名を告げた。


「続きまして、来賓祝辞。本学園理事会を代表いたしまして、天宮財団の取締役であり本校卒業生、天宮澄玲あまみや すみれ様より、お言葉を賜ります」


その名前が、体育館に響き渡った瞬間。

卒業生からも在校生からも、そして後方に座る父兄たちからも、これまでとは全く質の違う熱を帯びた、どよめきが起こった。


俺の隣で山中が、信じられないという顔で、ステージを凝視している。

「…マジかよ…。天宮くんの姉ちゃんじゃねえか…」

「理事会代表って…あの人、まだ25歳とかそこらだろ?…」


ミラー:「面白い。ゲームマスターが、祝辞を述べに来たぞ」

奏:「ああ。俺たちの戦いをずっと天の上から見ていた彼女こそ、祝辞にふさわしい」


スポットライトの中を、彼女は静かに、そして圧倒的なカリスマを纏いながら歩いていく。

黒いシンプルなスーツ。しかしどんな宝石よりも彼女自身の存在が輝いていた。

彼女がマイクの前に立つ。会場の全ての音が消えた。


彼女は、まず卒業生たちへと深く美しい一礼をした。

そしてその鈴が鳴るような、しかしどこまでも力強い声で語り始める。


「卒業生の皆さん。ご卒業、おめでとうございます」

「あなたたちは、この洛北祥雲学園という、伝統と誇りの中で、三年間を過ごしてきました。そして今日、この場所からそれぞれの新しい“戦場”へと旅立っていきます」

「あなたたちに、私から贈る言葉は、ただ一つだけです」


彼女は、そこで一度、言葉を切った。

そして、その鋭い視線が、卒業生席に座る、轟木剛造と、そして在校生席に座る俺を、一瞬だけ射抜いたような気がした。


「自らの人生の、“脚本家”になれ」

そのあまりにも力強い言葉。会場が、息をのむ。


「誰かが用意した退屈な舞台の上で、決められたセリフを、ただなぞるだけの哀れな役者にはならないでください。」

「常にあなたたち、自らがその物語の主人公であれ。たとえそれがどんなに困難で孤独な道であったとしても、その脚本のページを、自らの手で書き上げることを決して諦めるな」

「…あなたたちならできる。この学園が、そして私がそれを保証します」


彼女はそれだけを言うと、再び深く一礼し、嵐のような拍手の中、静かにステージを降りていった。


ミラー:「…おい、奏。今のはお前に向かって言ってたんじゃ?」

奏:「…そうかもな。あの人は全てを知っている。そして俺に最後の“問い”を、投げかけてきたんだ」

(これからも自分自身の人生の脚本家として生きられるのか?と)


その答えを見つけられぬまま、式は次の次第へと進んでいく。

司会の教頭が再びマイクの前に立った。


「…続きまして、在校生代表、送辞。二年四組、天宮蓮司くん」


山中が、今度は呆れたようにため息をついた。

「…姉ちゃんの、次は弟かよ。まあ二人とも文句のつけようがない、人選だけどな」


ミラー:「…来たな。太陽王の演説だ」

奏:「ああ。あいつは、何を、語るんだろうな」


天宮蓮司が壇上へと上がる。

その一挙手一投足が、もはや芸術のように美しい。

彼は、卒業生席をゆっくりと見渡した。

その瞳には、一点の曇りもない純粋な「敬意」と先輩たちとの別れを惜しむ、確かな「寂しさ」が、宿っていた。


そして彼は語り始めた。

それは優等生のありきたりな言葉ではなかった。


「卒業生の皆さん。本日は、誠におめでとうございます」

「私は今日、先輩達を送るための気の利いた美しい言葉を、何一つ用意することができませんでした」


会場がわずかにざわつく。

しかし彼は構わず続ける。


「私は先日、痛感したことがあります。私たちが今当たり前のように享受している、この学園の“栄光”が、どれほど多くの名もなき先輩たちの犠牲の上に、成り立っているのかを、私はこの半年で知ってしまいました」


そのあまりにも重い言葉。

卒業生席の、轟木やバスケ部の先輩たちの背中が僅かに、強張ったのを俺は見逃さなかった。


「歴史は、常に勝者だけを記憶します。しかし本当の“誇り”とは勝者のその輝かしい栄光の中にだけ、あるのではありません」

「光が強ければ、影もまた濃くなる。その光の届かない場所で理不尽に翼を折られ、それでも次の世代のためにと、涙を飲んでバトンを繋いできた数えきれない、魂があることを、私たち在校生は、決して忘れてはならない」


天宮は、そこで一度、言葉を切った。

そして彼は静かに、しかし深く卒業生たちへと頭を下げた。


「だから私は今日、皆さんを送る言葉ではなく、誓いの言葉をここに捧げます」


彼は、顔を上げた。

その瞳には涙が光っていた。

「私たちは、先人が今日まで紡いだ想いを尊重し、洛北祥雲学園を、誰一人として涙を飲まない、本当の意味で光に満ちた場所にすることを、ここに誓います」


「…私からの言葉は、以上です。―ありがとうございました!」


一瞬の静寂。

そしてその静寂を切り裂くように、体育館が割れんばかりの万雷の拍手に包まれた。

それはもはやただの拍手ではない。

太陽王のそのあまりにも気高い「覚悟」に対する魂からの「喝采」だった。


43-3◆影の帝王の答辞、そして脚本家の戴冠◆

天宮蓮司の魂の“送辞”がもたらした深い感動。

その静かな余韻が、まだ講堂を支配していた。

次に、司会の教頭がマイクの前に立つ。その顔はまだ感極まったように赤い。


「…以上、在校生代表、天宮蓮司くんの送辞でした」

彼は一度、咳払いをして次の次第を告げる。

「続きまして、卒業生代表、答辞。…卒業生代表、三年七組――」


誰もが予想していた。

次に呼ばれる名前を。

前生徒会長か、あるいは成績最優秀者。それがこの格式高い学園の揺るぎない「ルール」だ。

しかし。

教頭の口から紡がれたのは、誰も予想しえなかったこの学園最大のバグの名前だった。


「――三年七組。轟木剛造くん」


その瞬間、講堂が文字通り揺れた。

「え?」「嘘だろ?」「あの轟木さんが?」

生徒たちの信じられないというどよめき。

教師たちの明らかに狼狽した視線。

その全ての混沌を切り裂くように、あの熊のような巨体がゆっくりと席を立った。


ミラー:「…はっ!面白い!最高のキャスティングじゃないか!誰がこれを仕組んだ?」

奏:「もちろん澄玲さんだ、学園が生み出した初の不良に、この晴れ舞台でスピーチをさせる」


壇上へと向かう轟木剛造。

その一歩一歩が、この学園の偽物の「品格」を踏み潰していくようだった。

彼は、壇上に立つと用意された原稿には一瞥もくれない。

ただその鋭い、しかしどこか穏やかな瞳で、俺たち在校生を真っ直ぐに見据えた。


そして彼は語り始めた。

その無骨で、しかし誰の心にも直接、響く魂の言葉で。


「…俺は、この三年間、ずっと勘違いしていた」

「拳の強さだけが本当の“強さ”だと。気に入らねえ奴は力でねじ伏せればいい、と。…だがそれはただのガキの自己満足だった」


彼はそこで一度、言葉を切った。

そしてその視線が俺を捉える。


「本当の“強さ”とは何か?。不覚にも俺は、後輩にそれを教えられた」

「それは暴力でも権力でもない。仲間を信じる勇気。そして何よりも自分自身のどうしようもない“弱さ”と向き合う覚悟だと」


「俺を変えてくれた後輩が。今日、ここにいる。そしてそいつのおかげで俺は、一切の悔いなく卒業できる。その後輩は・・・二年四組、音無奏!おまえだ」


その名前が呼ばれた瞬間。

講堂にいる全員の視線が、一斉に俺へと突き刺さる。

俺はただ黙って、その視線を受け止めた。


そして轟木は、最後のそして最大の“爆弾”を投下した。

彼は俺を真っ直ぐに指差す。


「俺は今日、晴れて、この洛北祥雲学園を卒業する。俺が守ってきたこの学園の『裏』の秩序。他校からの防衛。その全てを今日この場で――」


「――音無奏!お前に託す!!」

学年主任が眉をひそめ、生活指導の教師は立ちあがる。

隣の教師が肩に手を置いて止めた。


ミラー:「…来たな、奏。全く望まぬ王位継承だ」

奏:「本当だよ。ディベート大会のときの久条といい、マジで勘弁してくれよ」


俺の視界の隅で〈観識スカウター〉が、起動する。

クラス内序列を示すゲージが振り切れる。


【INFLUENCE: 100 → 測定不能 (LIMIT BREAK)】

【肩書『影の帝王の(継承者)』に更新】


驚きで、俺は立ち上がれなかった。

ミラー:「…どうした?奏。立てよ。お前のための戴冠式だぞ」

奏:「…無理だ。足が、動かない…言葉も出てこない・・・」

ミラー:「おまえが黙っているから、学園の番長の座を受け入れた雰囲気になってるぞ」

奏:「え!!!そうなのか?」


生徒たちの視線。山中の呆然とした顔。柴田と斎藤の信じられないという表情。

結城の戦慄する瞳。久条の全てを悟ったかのような静かな横顔。

そして天宮のただ面白いものを見るかのような太陽の笑顔。


【CLASS RANKING - TOP TIER】

1 天宮 蓮司 [INFLUENCE: --- (測定不能)]

1 音無 奏[INFLUENCE: --- (測定不能)]

3 久条 亜里沙 [INFLUENCE: 100]

要因:影の帝王からの公然たる指名


奏:「…ミラー。見ろ。俺の序列が、ついにあの太陽王と並んだぞ」

ミラー:「ああ。お前が、ずっと遠くから見上げているだけだった、あの“神”の領域に、お前はついに立ってしまった」

奏:「突然のことで、気持ちの整理がつかない」

ミラー:「奏。初代影の帝王が去り、二代目影の帝王が生まれた瞬間だな」

奏:「しかし…なぜ?それが俺なんだ…?」

ミラー:「最高の舞台じゃないか。最も厳粛なはずのこの卒業式のど真ん中でな」

奏:「…冗談じゃない。困ったことになった」

数字が天井を突き抜けても、俺の足はまだ床に貼りついたままだった。


轟木は、最後に魂の全てを、振り絞るように叫んだ。

「いいか?お前ら。この先、社会に出れば理不尽な“ルール”とくだらねえ“忖度”が山ほどあるはずだ。そんな時は思い出せ。この学園でたった一人で、そのくだらねえ全てに反逆した、二年生のクソ生意気な男のことを。そして勝ち取れ。自分の人生を!!」


真実の“重み”がこもった影の帝王のセリフ。

卒業生たちの背中が、わずかに震える。在校生たちもまた、その魂の叫びにただ息をのむ。

それは優等生の美しい言葉ではない。傷つき足掻き、それでも立ち上がった男の魂の言葉だった。


「俺たちの“戦争”は、終わった。…だから在校生のお前ら。もうこの学園で戦わなくていい。これからはただ馬鹿みたいに、笑って泣いて恋をしろ。…俺たちには無縁だった“青春”ってやつを、お前らは存分に生きてくれ!以上」


あまりにも不器用で、しかし誰よりも優しい「答辞」

それが俺たちのここまでの長い戦いの、本当の終わりを告げていた。

式典は、いよいよその最後のページをめくろうとしている。

PTAからの、ありきたりな記念品贈呈が滞りなく終わる。

そして最後の校歌斉唱。

卒業生たちの、少ししゃがれた歌声が講堂に響き渡る。

そのあまりにも真っ直ぐな旋律を、聞きながら俺は考えていた。

(…来年俺たちはどんな顔で、この場所に立っているんだろうな)


やがて校歌斉唱が終わり、万雷の拍手の中、教頭の張りのない声が、閉式の辞を告げた。

司会の教頭が、最後のそして最もありふれたアナウンスを口にする。

「以上をもちまして、洛北祥雲学園高等部・卒業式を、閉会いたします。これより卒業生が退場します」


43-4◆観測不能な旋律~そして全ての音が光になる◆

司会の教頭のそのありふれたアナウンス。

それがこの長かった物語の本当の「終わり」を告げるはずだった。


――講堂の、全ての音が、消えた。

ざわめきも、拍手も全てが嘘のように静まり返る。


卒業生が退場する予定の通路のすぐ脇。

そこにいつの間にか、一人の少年が立っていた。

その手には一本の美しいヴァイオリン。天宮蓮司だった。


ミラー:「…おい、奏。何が始まるんだ?」

奏:「…さあ?わからない。俺の脚本などとっくに終わっている」


司会の教頭が、慌てたように、どこか誇らしげな声でアナウンスを付け加えた。

「――あ、えー、皆様。先日、卒業生の皆さんから、たっての希望がございました。これより在校生代表、天宮蓮司くんによるヴァイオリンの特別演奏が行われます。卒業生の皆さんは、はなむけの演奏と共に、ご退場ください」


そのあまりにも異例なアナウンスに会場がどよめく。


天宮は誰に合図するでもなく、静かにその顎に楽器を当てた。

そしてその弓が弦に触れた瞬間。

講堂は、音の聖域になった。


奏でられたのは、誰もが知るあの別れの旋律。

『仰げば尊し』

山中が信じられないという顔で俺に囁いた。

「…嘘だろ…天宮くんってヴァイオリンまで弾けるのかよ…」

久条がその光景をただ静かに見つめている。

「…ええ。彼は王ですもの。…できないことなど何一つないわ」


それは俺たちが知る『仰げば尊し』ではなかった。

一音、一音が完璧なまでに、磨き上げられ、そしてその全ての音に太陽のような圧倒的な「熱」と「光」が宿っていた。

それはもはやただの音楽ではない。

卒業していく全ての先輩たちへの、天宮蓮司という一人の人間の魂からの“祝福*そのものだった。


卒業生たちの足が止まる。誰一人、退場しない。

誰もがそのあまりにも気高く、そして優しい音色に聞き入っていた。

轟木が、坂元が、バスケ部の先輩たちが、そして一色栞が。

誰もが、その美しい旋律の中で、自らの三年間を振り返っていた。

その瞳には涙が光っていた。


ミラー:「…奏。これが太陽の本当の力か」

奏:「ああ。俺の〈観識〉も、久条の支配も轟木の暴力も。…あいつの前では全てが無意味だ」

奏:「あいつはただそこにいるだけで、輝いてしまう、全ての人間の心を救ってしまう」


俺は初めて心の底から悟った。

俺は、この男と同格に並んだのではない。

スカウターの数値など無意味だ。俺自身が強烈に感じていた。

勝ったのでもない。負けたのでもない。

俺たちは最初から、全く違う次元で生きていただけなのだ、と。


やがて演奏が終わる。

最後の一音が、講堂の高い天井に吸い込まれていく。

一瞬の完全な静寂。

そしてその静寂を、破壊するように体育館が、割れんばかりの万雷の拍手に包まれた。

それはもはやただの拍手ではない。

王の、そのあまりにも気高い「魂」に対する魂からの「感謝」だった。


俺はその拍手の中で、ただ一人、静かに太陽を見つめていた。

(…ああ、眩しいな)

そのどうしようもない、事実だけを胸に抱いて。


その鳴り止まぬ拍手の中、卒業生たちが一人、また一人と、ゆっくりと退場していく。

誰もがその目に涙を浮かべ、しかしその顔は不思議なほど晴れやかだった。

俺たち在校生は、ただそのあまりにも気高い先輩たちの背中を、いつまでもいつまでも見送っていた。

ここまでお読みいただき、本当に本当にありがとうございます。

作者の京太郎です。


卒業式。

澄玲さんの蓮司くんの、そして轟木先輩のそれぞれの言葉。

書きながら私自身が胸を熱くしていました。

彼らの半年間の、そのどうしようもない戦いの日々が、この美しい儀式の中で、少しでも報われていればと願うばかりです。


さて。これで、全ての物語が終わったように見えるかもしれません。

『教室リーグ』は終わり。

戦いを終えた、登場人物たちはそれぞれの未来へと歩き出した。


…ですが君は気づいているだろうか。

まだたった二人だけ、本当の“最後の対話”を終えていない少年と少女がいることに。


全ての“脚本”を書き終えた音無奏。

謎の少女、白瀬ことり


彼らが、全ての“役割”から解放されたただの「人間」として、最後に何を語り合うのか。

そして奏のあの呪われた〈観識〉の本当の“意味”とは何だったのか。


物語の本当の最後の1ページ。

次回、最終話『君がくれた、優しい呪い』。

その最終章を、最高の形で皆様に、お届けすることを約束します。


もしこの長かった卒業式を最後まで見届けてくださった、あなたがいれば。

どうかページ下の**【☆☆☆☆☆】**での評価や、ブックマークでその「感動」を教えてください。

それが彼らの最後の物語を書き上げるための私の最高の力になります。


それではまた次回の、本当の「最終回」でお会いしましょう。


京太郎

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ