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最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
第六章:ヘッドコーチ追放計画

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【35】影の帝王の悲しき過去と世間に放つ矢★

35-1◆牙の由来―轟木剛造の証言◆

窓の外、冬の京都がガラスに散っている。最上階の静寂を切り裂くように、轟木剛造が低く口を開いた。

「二年前の七月。俺は高等部の一年だった。柔道部一人目の強化指定選手として奨学金で入学していた」


澄玲がうなずく。「続けて」

ミラー:「来たな。お前がスキャンで見た“傷痕”の、本人による“証言”だ」

奏:「ああ。データじゃない。魂の生の叫びだ。一言一句、聞き漏らさない」


「その日、一年六組の体育はバスケだった。うちのクラスに池松秀明ってやつがいた――運動が苦手なやつでな」

「そんな俺らのクラスの体育担当教諭は、大槻理人」

「池松が10回連続でレイアップ外した瞬間だ。大槻のスイッチが入ってしまった」


轟木は、掌をゆっくり握って見せる。

「『走れ』『吐いても走れ』大槻は、池松を倒れるまで走らせた。で、床に崩れた池松を――無理やり立たせて平手打ちだ。『甘ったれるな!』ってな。体育館中が凍りついた」


轟木の、その血気盛んな一年生の魂が、初めてこの学園の理不尽という名の巨大な壁を認識した瞬間だった。

「その折檻はしばらく続いた。俺にはどう見てもただのイジメにしか見えなかったんだ」


坂元が小さく舌打ちした。

「…あの時の空気、覚えてるぜ。衝撃で誰も声を出せなかった」


ミラー:「七年前の三上卓哉。二年前の轟木と池松。そして、ついこの間のお前の体育の授業。…あの男、やっていることが何も変わっていないな」

奏:「ああ。最低のクズだ」


澄玲は静かに先を促した。彼女はただの同情で聞いているのではない。証言の一つ一つを確認しているのだ。

「あなたが止めに入ったのね?」


「そうだ。見てられなかった俺は一歩、前に出た。『先生、それは指導じゃない。休ませるべきだ』と」

「…大槻は俺にまでキレだした。“何だ!その反抗的な態度は!”ってな」

「そして奴はいきなり俺の顔面に拳を入れてきた。乾いた音が鳴る。二発、三発。でも俺は倒れねえ。俺は奴をにらみつけたまま、目を逸らさなかった」


ミラー:「はっ。かっこいいじゃないか。絶対権力にたった一人で盾突く一年坊主。…いい“絵”だ」

奏:「影の番長の本質って、やっぱり芯が通ってるよな」


轟木は一度、言葉を切った。殴られた頬の熱が蘇ってくるようだった。

「俺は完全に頭にきた。だが殴り返したら俺の負けだ。だから待った。一週間後の柔道の授業をな。そのころ…柔道を専門とする体育教師はいなかった。柔道部の監督は、外部からの出向者、部活のみを任されていた。だから大槻が柔道の授業も担当していたんだ」


彼のその若く、そしてあまりにもまっすぐな、正義感は最も危険な復讐の形を選んだ。

「来週、正々堂々、ルールの範囲内でやり返す。…今思えば、歪んだ正義だった」

「翌週の体育の授業、俺は模範役に手を挙げた。そして大槻を挑発してやった。やつはまんまと勝負を挑んできた」

「最初は教科書通りだ。大外刈。次に内股。払腰。…フォームは完璧、あえて受け身の取れない危険な角度で投げてやった。奴は無様に床を転がってたぜ」

「たぶん十回近く、連続で投げ続けた。受け身が取れねえ大槻は、肩と腰をやった。もちろんルールの範囲内だ。だが見え方は――生徒による報復・反逆だった」


俺は、彼のそのあまりにもクレバーな、復讐の手口に内心で舌を巻いた。

「…面白い。正々堂々とやり返したと」


「そして俺は完全に大槻から、目の敵にされることになった」


坂元の拳が、ギリと音を立てて握りしめられた。

「完全な逆恨みってやつだ」


柔道という正々堂々とした、戦場から轟木が最も苦手とする、汚い「政治」の土俵へと引きずり込まれていく、その記憶が語られる。

「10年以上前から、今もずっとバスケ部は学園の顔だ。そしてその最大の功労者が大槻なのは誰もが認めるとこだった。確実に結果を出す大槻には発言力があった」

「大槻は権力を使った。この件を理事会で騒ぎ立てたんだ。『生徒による危険な報復行為』で俺の退学を上申。PTA、風紀、バスケ部OB…全てあいつの味方についた。池松も内申書を人質に取られ、黙っちまった。…俺は孤立した」

「理事会では揉めに揉めたらしい。俺はせっかく入学できたこの名門校には残りたかった。必死に嘆願した。親を悲しませるわけにはいかない」


澄玲は静かに、そして冷たく相槌を打った。

「…学園という組織が持つ、構造的な『悪』。その全てがそこに凝縮されているわね」


「結局、柔道部を廃部にすることで、騒動は落ち着くことになった。それが俺がこの学校に残るための条件だった。奨学生にしか過ぎない俺が何も逆らえるわけない。…俺は誓約書にサインした。この件を外部に一切漏らさないってな」

「柔道部の強化指定選手の俺が、柔道部が廃部になったのに、隠蔽を条件に学園に残れることになった。皮肉な話だ。俺は完全に目標を失った」


坂元は、吐き捨てるように言った。その声にはどうしようもない無力感が滲んでいた。

「大槻は、くだらない復讐のためだけに、柔道部を廃部にまで追いやった。やつはさぞ満足していただろうよ」


轟木は自嘲するように鼻で笑った。彼の二年間の青春の全てを奪った男。その男が英雄として称えられたその結末。

「俺の柔道はあの日に終わった。そして大槻は専門外の柔道でも熱心な指導をする理想の体育教師だなんて評価を上げやがった。…ふざけた話だろ」


轟木は全てを語り終えた。

社長室には重い沈黙が落ちる。


澄玲は、その全ての証言を聞き終えると、満足げに頷いた。彼女のその美しい顔には、同情の色はない。ただ完璧な駒が、手に入ったことへの喜悦だけがあった。

「“バスケ部の活動外/違法手段なし”の条件、全部クリア。使えるネタね」


ミラー:「…これが影の帝王の原点。そしてお前が手にした最高の弾丸だ」

奏:「俺は、轟木のことを改めて見直したよ」

ミラー:「…そうだな。だからあいつはあんなに一年坊主(長峯)のことを気にかけていたのか」

奏:「あいつは、長峯に二年前の夢を、果たせなかった自分自身の姿を重ねていたんだ。…轟木が潰されたように、長峯も潰されるわけにはいかないと」

ミラー:「とにかく、これで証拠も動機も役者も全て揃いそうだな」


澄玲は、指を一本ずつ折りながら、俺たちの手持ちの武器を確認し始めた。

「証拠を確認しましょう。ひとつ、保健室記録。ふたつ、轟木先輩本人の証言。みっつ、誓約書(沈黙条項付き)の写し。よっつ、池松秀明の証言――これらは揃いそう?」


轟木は頷いた。

「池松には俺から話す。あいつは今でも目を逸らして生きてる。けど俺が隣にいれば立てるはずだ」

澄玲が即断する。

「素晴らしいわ。保健室記録の照会は、私が何とかするわ。その場にいた他の生徒の証言も取れそうね」

轟木が俺に視線を刺す。

「音無…約束どおり潰せそうか。大槻を」

俺は短くはっきりと答えた。

「潰します。正義はこちらにあります」


その俺の力強い宣言に、唯一異を唱えたのは坂元だった。彼のその懸念は当然のものだ。

「待てよ。澄玲さん。告発した場合の、剛造の退学処分はどうなる?こいつは理事会と誓約書まで交わしている」


だがゲームマスターは、そのリスクすらもすでに計算済みだった。彼女は、絶対的な自信を持って俺たちに、その勝利への道筋を示した。

「安心して。そのために私はここまで待ち続けたの。少しは学園に対して影響力を行使できる立場になったわ。抑え込めないにしても、問題を先送りにはできる。理事会では退学処分について、延々と議論させておくわ。今は12月、あなたは3年生、先送りにしている間に卒業してしまいましょう。そのうち、あなたの退学処分問題なんて風化していくでしょう」


轟木剛造が奪われた二年間。

その喪失を、今度は俺たちの「武器」に変える番だ。


35-2◆ゲームマスターの神託、影の帝王の最後の懸念◆

そんな中、轟木だけは、まだ納得していなかった。

彼の鋭い視線が、今度は俺ではなく澄玲を捉えた。


「…まだ問題が一つ残っている」

その声には、先ほどまでの憎悪ではない。

ただ純粋な懸念だけが、宿っていた。


「長峯のことだ。あいつにはバスケ部で思う存分活躍してほしい。俺が果たせなかった夢をあいつに託している」

「大槻を追い出して、バスケ部は本当に弱体化しないのか?クズみたいなやつでも、采配はピカイチだ」


そのあまりにも人間的な問い。

俺が何か答える前に、澄玲が静かに、そして絶対的な自信を持って答えた。


「心配はいらないわ、轟木くん」

「私の弟、天宮蓮司の本当の力を、あなたたちはまだ知らない」

「姉の私が、弟を褒めちぎるのも、おかしな話だけど・・・」


彼女のその声には揺るぎない確信があった。

「選手としての身体能力とバスケセンス。キャプテンとしての統率力。そしてヘッドコーチとしての戦術眼と采配。…あの子は、その全てを兼ね備えているわ。さらに今年は長峯くんという、最高の相棒も手に入れた。バスケ部は、むしろ去年より好成績を残すんじゃないの?」


ミラー:「…はっ。王様への絶対的な信頼だな」

奏:「ああ。姉だからこそ分かる、本当の強さか」


澄玲は続ける。

「それに万が一の保険も、もちろん用意してある」

「ヘッドコーチが不在の間は、臨時で私の高校時代の男子バスケ部のOBを招聘する。蓮司や長峯くんの偉大な先輩よ。彼にはウィンターカップでの臨時監督をすでに内諾してもらっているわ」

「安心して、轟木くん。あなたのそして長峯くんの夢は、私が絶対に壊させない」


そのあまりにも完璧な未来設計。

轟木と坂元は、もはや何も言えなかった。

ただ目の前のこの若きゲームマスターの、その底知れない器の大きさに圧倒されるだけだった。


ミラー:「…すごい女だ。俺たちが悩む前に、全ての答えを用意している」

奏:「ああ。これがゲームマスター。…俺たちの最強の味方だ」


俺は静かに確信していた。

俺たちの最後の、そして最高の戦争が今始まろうとしていると。


35-3◆ゲームマスターの電撃戦、そして世間に放たれる矢◆

翌日。事態は動いた。俺の予測を遥かに超える速度で。


放課後、三年校舎の渡り廊下。

夕日が長く影を落とす。そこに対照的な二人の生徒がいた。

一人は熊のように屈強な影の帝王、轟木剛造。

そしてもう一人は、その影に怯えるように立つ臆病そうな三年生、池松秀明。


轟木は震える池松の肩を、掴んでいた。

「頼む、池松。お前が声を上げなきゃ、何も変わらねえ」

池松は怯えていた。

「でも…僕なんかが証言したって、どうせ潰されるだけだ…」

轟木は、静かにそして力強く言った。

「お前は一人じゃねえ。俺が隣にいる。いや、俺よりもっと強力な味方がいる」


池松の声が震えた。その瞳に初めて僅かな光が宿る。

「…それって誰なの…?」

轟木は窓の外を見た。まるでそこに俺たちの顔が見えているかのように。

「天宮蓮司の姉だ。俺たちと同じ正義を信じる人だ。さらに権力もある。すぐに会わせる」


池松にとって、正義よりも重い現実の問題を問いかける。

「でも僕の内申書は…?来月には大学受験が…」

「それも安心しろ。全て手は打ってある」

轟木のその声。もはや彼一人の覚悟ではない。俺と澄玲の存在を確信した帝王の響きがあった。


その頃、俺のスマホが頻繁に通知を受け取っていた。

俺と轟木、坂元、澄玲、「大槻追放チーム」のグループLINEだった。

まずは轟木からだ。

『池松を説得した。それとあの時の誓約書の写真データも見つけた』

続いて澄玲から。

『二年前の保健室の記録は入手済み。いつでも使えるわ』


ミラー:「速すぎる。この女。轟木が池松を説得している間に保健室の記録も入手している」

奏:「ああ。これがゲームマスター。俺たちの脚本を遥かに超える速度で世界を動かしている」


さらに澄玲からLINEメッセージが届く。

『本日中に小さな会見を開く。今から数名のネット媒体を手配するわ。19時に京都四条ゼロゲートビルに集合してください。池松くんを連れてくること』


35-4◆ガラスの城での小さな会見◆

その日の夜。俺と轟木と坂元。そして顔面蒼白の池松。

俺たちは再び、あのガラスの城へと呼び出された。

京都四条ゼロゲートビル。株式会社APEX GLOBAL。

だが、その社長室の空気は前回とはまるで違っていた。


坂元:「…澄玲さん。あんたの手際の良さには脱帽だ」

轟木:「ああ。池松も覚悟を決めた。…いつでもやれるぜ」


澄玲はまず震える池松へと向き直った。その声はカリスマ的な女王ではなく全てを包み込むような、慈母の響きを持っていた。

「池松くん。あなたのその勇気に心から、感謝します」


それでも池松の震えは止まらない。彼にとって、恐怖の対象は大槻だけではない。自らの未来を支配する学園という巨大なシステムそのものだった。

「…あの。ありがとうございます。でも…僕の内申書は…どうなるんでしょうか。学園に逆らったら…」


澄玲は、そのあまりにも切実な問いに絶対的な女王の笑みで答えた。それは神が信者に与える救いの言葉だった。

「安心して、池松くん。あなたの未来は私が保証するわ。万が一、学園があなたに不当な評価を下したとしても。天宮財団が、あなたの進学先と、その後の人生の全てを支援することを、ここに約束します。そもそも不当な評価をさせませんが」


澄玲は俺たちを見渡した。その声は氷のように冷徹だった。

「証拠を突きつけることは大事。でももっと大事なのは“世論”を先に動かすことよ」


彼女が指を鳴らす。

すると社長室の隣の会議室のドアが開いた。

そこにいたのは大手マスコミの記者ではない。

学園が最もコントロールしにくいゲリラたちだ。

SNSや匿名掲示板発の独立系ニュースサイト。

個人運営の炎上系ブロガー。

十数名のネットメディアの記者たちが俺たちを待ち構えていた。


澄玲は微笑んだ。

「彼らなら学園の圧力など意にも介さないわ。面白ければ食いつく。そして一度火がつけばもう誰にも消せない」

澄玲は、さらに付け加えた。彼女の脚本はまだこれで終わりではない。

「そしてこの会見の様子は、今から小規模のマスコミ限定でオンライン配信される。もちろん匿名で、顔にはボカシは入るわ」


ミラー:「…速すぎる。この女。全てが即座に手配している」

奏:「ああ。これが本物のゲームマスター。俺たちの脚本を遥かに超える速度で物事を動かしている」


澄玲は集まった記者たちを見渡した。その瞳には、同志を見るかのような熱が宿る。

「皆さん。今夜はお集まりいただき感謝します。大手メディアが決して報じない『真実』を世間に届けたいと考えています。それは京都の超名門高校 洛北祥雲学園高等部の闇です」

取材は始まった。俺たちの最後の戦争が今始まったのだ。

澄玲は淀みなく語り終えた。二年前の夏。一人の前途有望な柔道部員の未来が。一人の教師の歪んだ支配欲によって。いかに無慈悲に踏みにじられたのかを。


澄玲はそこで一度、言葉を切った。そして主役である二人の証人へとその視線を送った。

「それでは、これよりここにいる当事者二名への質疑応答を、開始します。皆さん、質問をどうぞ」


その一言を、皮切りに空間は熱を帯びた。

轟木の重い証言。

池松の涙ながらの告発。

記者たちのキーボードを叩く音。

無数のカメラのフラッシュ。

その全てが一つの巨大なうねりとなり、ネットの海へと解き放たれていく。


そして全ての質疑応答が、終わったその時。

澄玲は、もう一度だけ記者たちへと向き直った。

その声には、有無を言わせぬ、絶対的な力が宿っていた。

「最後にお願いがあります。今回の件、記事にする際は、バスケ部の名前は一切、出さないでいただきたい。これはあくまで一人の『体育教師』と生徒の間で起きた問題です。現在、全国大会を前に必死に練習に励んでいる他のバスケ部員たちには、一切罪はありません。彼らの夢を守ること。それだけはどうか、約束してください」


ミラー:「…はっ。見事な配慮だな。奏」

奏:「聖域には指一本、触れさせない。全てが計算ずくだ。あの女は未来を全て読んでいる」


そして俺たちの小さな会見は終わった。

記者たちが去った後の社長室。

そこには奇妙な静寂だけが残されていた。

俺たちが放ったたった一本の、矢。

それが今、学園という巨大な城の心臓部へと向かって飛んでいく。


もう誰にも止められない。

俺とゲームマスターと影の帝王。

俺たちの歪な三国同盟は、今この瞬間に血よりも濃い絆で結ばれた。


後はただ待つだけだ。世界が炎上するのを。

第三十五話をお読みいただきありがとうございます。

作者の京太郎です。


影の帝王が、その重い口を開きました。

二年半の沈黙を破り、語られたそのあまりにも痛ましい「真実」。

皆様の目には、彼の、その魂の叫びが、どう映りましたでしょうか。


その「真実」を武器として、ゲームマスターと脚本家が最後の戦争を始めます。

大手メディアではない。

学園の権力が及ばないネットのゲリラたちを使った現代の情報戦。


ついに世間に放たれた告発の矢。

この小さな火種は、果たして学園という巨大な城を焼き尽くす大火となるのか。

そして腐敗の象徴、大槻理人はどう断罪されるのか。

物語はいよいよクライマックスです。


面白いと思っていただけましたら

下にある【★★★★★】での評価

そして【ブックマーク】での応援

よろしくお願いします。

皆様の声が、何よりの力になります。


それでは、また次の話でお会いしましょう。

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【柔道部廃部事件 概要】

0 ) 前提

時期:本編より2年前

登場人物

大槻(37歳):バスケ部で実績を出し、学園内で強い発言力を持つ“若き功労者”。

轟木:高等部1年。柔道有段者。特待生。正義感が強いが粗削り。

池松秀明:1年6組。運動が苦手で平凡な成績。家庭事情により学校に逆らえない立場。


1 ) 導火線 ― 体育館の“公開処刑”

時期:2年前7月、1年6組バスケ実技

池松が連続ミスをしたことで、大槻が極度のスパルタ指導。

「走れ」「吐いても走れ」と追い込む中、池松は倒れる。

倒れた池松を無理やり立たせ、平手打ち。「甘ったれるな!」

これに対し、轟木が一歩前へ。

「先生、それは指導じゃない。休ませるべきです」

反抗的態度に逆上した大槻、轟木を殴打。

体育館に響く乾いた音。

轟木は倒れない。正義は揺るがない。

保健室送りとなった轟木と池松。

→ 保健室記録が後の重要証拠となる


2  逆流する怒り ― “静かな復讐”の決意

轟木は騒がない。「来週の体育は柔道だろ」

轟木の歪んだ正義が芽生える。“正々堂々、同じルールでやり返す”。


3 ) 火花 ― 柔道授業での“正当な闘い”

翌週、柔道の授業を大槻が担当(柔道専門教員は不在)。

轟木は投げ技の模範役を名乗り出る。

轟木は大槻を挑発→完璧なフォームで大槻を投げる。

さらに挑発を重ね、10回近く連続で投げ技。

→ 大外刈・内股・払腰を危険な角度から、次々と決める。

受け身を取れない大槻は肩や腰を負傷。

柔道のルール内ではあるが、見え方は“報復”。


4 ) 反転 ― 権力のカウンター

怪我を負った大槻は逆恨み。

理事会へ「生徒による危険な報復行為」として轟木退学を上申。

PTA、風紀委員、バスケ部OBが大槻を全面的に支持。

気の弱い池松は沈黙。内申書を気にする家庭の事情から逆らえず。

→ ここで“学園構造的圧力”が露呈する


5 ) 取引 ― “沈黙の誓約書”

水面下で交渉が進む。

結論:轟木の退学回避と引き換えに柔道部廃部。

議事録では「安全管理体制の不備」「危険行為防止」を名目化。

轟木は反省文と誓約書にサイン。

→ そこには**「SNS・外部への口外禁止」**条項。

勝ったのに負けた瞬間が、ここで決定的に刻まれる。


6 ) 余波 ― 傷跡だけが残る

柔道部顧問・日暮は配置換え。部は解散。

轟木は「柔道」という誇りを奪われたまま、退学を回避するため沈黙を選ぶ。

大槻は、屈強な生徒を恐れない“熱心な指導者”として、さらに評価を上げる。

→ 轟木と大槻の因縁が完全確定


7 ) 現在へのブリッジ

この事件は、物語本編で**音無の脚本の“攻め筋”となる。

証拠フック

保健室記録(轟木・池松の受診時刻)

轟木本人の証言

誓約書(沈黙条項付・轟木が保管)

池松の証言


◆物語的効用

大槻のパワハラ体質をバスケ部外で立証できる。

事件は体育の授業で起こっているため、バスケ部の管轄外

被害の中心は池松・轟木・柔道部であり、バスケ部活動への直接ダメージを避けられる。


轟木が沈黙を破る動機として極めて強力。

→ “奪われた青春”と“部の名誉”が直結。

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