表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
第五章:高校生英語ディベート選手権

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/46

【30】女王と規格外の才媛、運命のくじ引き

30-1◆脚本家の神託、そして女王への助言◆

15分休憩が終わるアナウンスが流れる。

一回戦の第七試合が、ちょうど始まろうとしている。

俺は観客席には戻らず、壁に寄りかかり、スマホを取り出した。

そして、たった一言だけ、メッセージを送る。相手は、久条亜里沙。


『岡崎公園、東側のベンチで待つ』

数分後。彼女は、一人で現れた。その完璧な笑顔の裏に、隠しきれない焦りの色を浮かべて。

ミラー:「…さて、奏。ゲームマスターから情報を盗めたが、本当に彼女を勝たせるつもりか?」

奏:「ああ。勝たせるさ。勝たせておいて恩を売る。そして学園のヒエラルキーをぶっ壊すんだ」


久条は、俺の隣に腰を下ろすと、単刀直入に切り出した。

「明日のディベートテーマについてよね?…話を聞かせてもらうわ」

その声には、命令とも、懇願ともつかない、奇妙な響きがあった。


俺は、彼女を見ずに、静かに問いを投げた。

「関西大会から、今日の一回戦まで。出題されたテーマを覚えているか?」

「ええ」

「何か、共通点に気づかなかったか?」

「…もちろん。私たちの洛北祥雲学園で、実際に起こっていそうな課題ばかり。それが何か?」

彼女の答えは、的確だった。さすが女王、というべきか。


「その通りだ。そしてそれは全国のエリート校にも、同様にありそうな話だ。当然、神崎沙羅も、似たようなテーマが出題されると予測しているだろう」

「…ええ。そうでしょうね」

「ああ。だが、明日のテーマは、その傾向から少しだけずれる。もっと大きな視点から見た課題を突き付けてくる」


俺のその言葉に、久条の視線が、鋭く俺を捉える。

俺は、初めて彼女の瞳を、真っ直ぐに見つめ返した。そして俺が天宮 澄玲から盗み出した「未来」を、告げた。


「明日の7試合全て…あなたたちのような、特権階級、富裕層の存在そのものがテーマだと推測する」


久条の、息を呑む気配が伝わってくる。

俺は続ける。

「これは、今日までのテーマとは、少し質が違ってくる。特権階級や富裕層が支配する社会の事例や事件、事前にどれだけ深く、これらのデータを頭に入れておけるか。その準備の差が、勝敗を分ける。他の出場者は誰もテーマを知らない…だからあなたにとって、圧倒的に有利な戦場となる」


「ありがとう。音無くん。約束通り、あなたの情報源は聞かないことにするわ」

彼女の声には、僅かな安堵の色が浮かんでいた。だが俺は、彼女のその淡い希望を、すぐに打ち砕く。


「そして最後に、もうひとつ助言がある」

久条は視線を逸らさず、わずかに顎を引いた。

「聞かせてもらえるかしら?」


俺は久条への助言を続ける。

「この事前準備の差で、あなたの実力なら、神崎以外にはおそらく何とか勝てるだろう」

「あなたが明日、どこで神崎とあたるかは、全くわからない。それはくじ引き次第だからだ」

「しかし神崎と対戦することになったとしたら???その結果はどうなると思う?」


俺は一度、言葉を切った。そして彼女に、俺の分析結果という名の、揺るぎない「事実」を突きつける。

「俺は、あなたと神崎沙羅の能力を分析した。結果、あなたが、今からこのテーマに関するデータを、完璧に頭に叩き込んだとしても、あなたと神崎の実力は、よくて五分五分だ。負ける可能性もある」


五分――女王の冠を戴く者にとって、それは屈辱にも等しい響き。

「……つまり、あなたの力を借りて、ようやく互角ということ?」

「厳密には互角以下だな。ドーピングした女王様とノーマルの神崎。これでも少し負けてるくらいだ。やつはそれほど強敵なんだ」


俺の、その無慈悲な分析に、久条の顔から、再び色が消える。

そして俺は、彼女に本当の「脚本」を提示した。


「ここからが、重要だ」

「もし、あなたと神崎の試合が、50対50の引き分けになり、延長戦にもつれ込んだ場合。…その時、あなたの勝機は、少しだけ上がる」

「どういうこと?」

「延長戦前には、10分間の休憩がある。その時、俺はあなたに秘策をLINEする」

俺は、静かにしかし有無を言わせぬ響きで、告げた。

「…あなたを勝たせるための、最後の一手をその場で授けてやる」


「わかったわ。そのときは、必ずLINEをチェックするわ」

その言葉を聞くと、俺は、静かに立ち上がった。


ミラー:「…奏。女王様を、完全に手玉に取ったな」

奏:「ああ。だがこれはまだ序章だ。本当のショーは明日、彼女が神崎沙羅の前に立った時だ」


俺は、彼女に背を向け、最後に言い残した。

「もし神崎とあたったら、せいぜい延長戦まで生き残ることだな。女王陛下」

「今すぐ、帰って準備しておけよ」

そして俺は一人、熱狂の渦巻くホールへと戻った。


30-2◆運命のくじ引き、そして最後の戦場◆

12月14日、日曜日。全国大会、最終日。

その日、会場に現れた久条亜里沙の纏う空気は、昨日までとは、まるで違っていた。

その顔に迷いはない。覚悟を決めた、戦士の顔だった。


ミラー:「…おい!奏。女王様、憑き物が落ちたような顔をしているな」

奏:「ああ。昨夜のうちに、俺がリークした『特権階級』に関する、膨大なデータを完璧に頭に叩き込んできたんだろう。やるべきことを全てやってきた顔だ」


やがて会場の照明が落ち、大会統括責任者である天宮澄玲が、再びステージに姿を現した。

「ベスト8まで勝ち残った選手の皆さん、おめでとうございます。今日、この中から、今年の全国大会の優勝者が、ただ一人だけ決まります。今日、あなたたちにぶつけられる『問い』は、より鋭く、より個人的でそしてより残酷になるでしょう。その刃のような問いの前で、自らの魂を、どこまで曝け出せるか。私たちはそれが見たいのです。みなさんはどうですか???」

彼女のその涼やかな声が、会場の熱気を、さらに高めていく。


澄玲は、ステージ上の選手たちを、一人一人、値踏みするように、見渡す。

「さあ、始めましょうか。誰が、この知性の頂点に立つのか。その歴史的瞬間を見届けましょう」

「それでは、これより、準々決勝の対戦カードを、くじ引きで決定します」

ステージ後方の巨大スクリーンに、対戦表が映し出された。

まだ、全ての名前が空欄のままだ。


澄玲の合図で、スタッフが抽選箱を持ってステージを回る。

選手たちが、一人、また一人と、自らの運命を引き当てていく。


スクリーンに、最初の対戦カードが、表示された。

【準々決勝第1試合:磐瀬真帆(北海道) vs 湯澤大希(広島)】

会場が、僅かにどよめく。

ミラー:「…面白い。いきなり、去年のベスト4同士の対決か」

続けて、二つ目のカードが、開かれる。

【準々決勝第2試合:菅原莉子(福岡) vs 下畠花音(神奈川)】

そして、三つ目。

【準々決勝第3試合:金久保耀平(愛媛) vs 黒木悦大(宮城)】


奏:「ということは???おい、ミラー。残ったのは、あと二人だ」

ミラー:「ああ。最悪の確率が、現実になったぞ」


2年4組の仲間たちが、固唾をのんでスクリーンを見つめている。

そして運命の最後のカードが表示された。


【準々決勝第4試合:久条亜里沙(京都) vs 神崎沙羅(東京)】


その瞬間、会場全体が地鳴りのようなどよめきに包まれた。

事実上の決勝戦。

あまりにも早く実現してしまった頂上決戦。


柴田が、頭を抱えて叫んだ。

「マジかよ!いきなり、ラスボス戦かよ!」

斎藤が、冷静に、しかし、その声は僅かに震えていた。

「…最悪の相手を、初手で引いたか。だが、ここで勝てば優勝はほぼ確実だ」

結城が、祈るように、両手を固く握りしめている。

「亜里沙なら、大丈夫…!絶対に…!」


少し離れた席で、白蓮会の二人が、静かに呟く。

星野綺羅々が、興奮を隠せない。

「これ、今日一番バズるカードじゃん!最高の展開!」

鳳麗奈が、勝負師の目で、ステージを睨みつけていた。

「面白い。本当の女王が、この対戦で決まるわね」


そのあと、準々決勝の第三試合までが、滞りなく終了した。

会場の全ての視線が、これから始まる、ただ一つの戦いに、注がれている。

司会者が、マイクを握りしめ、その声を張り上げた。

その声はもはやアナウンスではない。一つの歴史の始まりを告げる咆哮だった。


「お待たせいたしました!これより、準々決勝、第四試合を開始します!」

「関西の絶対女王か!あるいは、関東の規格外の才媛か!」

「京都府代表!洛北祥雲学園!久条――亜里沙!!」

「対するは、東京代表!開明学館!神崎――沙羅!!」


割れんばかりの拍手の中、司会者が二人の名前をコールする。

俺は、ただ静かにその光景を観測していた。

俺が脚本を書き、そして俺自身ですら、結末を知らない最高の舞台が今、始まろうとしていた。


30-3◆女王と規格外の才媛、そして神が与えし残酷な“問い”◆

ステージの両袖から、二人の天才が、ゆっくりと姿を現した。

西の久条亜里沙。東の神崎沙羅。

二人が、中央で向き合った時、会場の空気が、まるで一つの意志を持ったかのように静まり返った。


先に口を開いたのは、神崎沙羅だった。

彼女は、太陽のような笑みで、静かに言った。

「亜里沙さんとは決勝戦で会うことになると思っていました。少し早くなってしまいましたね」

久条は、女王の笑みを返す。

「私たちはどうせ勝ち上がる。いずれ対戦するのは避けられなかったわ。これは観測済みの未来ですわ」


その、静かな火花が散る中、司会者の声が、ホールに響き渡った。

「それでは、準々決勝、第四試合のテーマを発表します!」


ステージ後方の、巨大なスクリーンに、ノイズが走る。

そしてそこに荘厳なゴシック体で、この戦いのあまりにも残酷な「問い」が映し出された。


『特権階級は社会の安定に必要悪である』


そのテーマが映し出された瞬間。

俺は、観客席で、静かに笑みを浮かべた。

(…来たな。俺が盗んだ未来だ。ビンゴだ)


選手席の、神崎沙羅の表情が、初めて僅かに揺らいだのを俺は見逃さなかった。

(…このテーマは…?)

彼女のそのほんの一瞬の動揺。

だがその隣で久条亜里沙は、微動だにしない。

テーマが発表されてもなお、その瞳には、全てを見通しているかのような冷たい光が宿っている。


司会者が、声を張り上げる。

「それでは両者の立場をくじ引きで決定します!」


スタッフが二つのタブレットを二人の前に差し出す。

そこに表示されるのは、「肯定」か「否定」か。

二人が同時に画面に触れる。

そしてその結果が、巨大スクリーンに叩きつけられた。


【肯定側:東京 / 神崎 沙羅】特権階級は必要

【否定側:京都 / 久条 亜里沙】特権階級は不要


会場が、どよめいた。

「マジかよ…!」「これは、面白くなってきた…!」

斎藤が、呻くように、呟いた。

「…なるほどな。神崎は、自らの信条を否定するという、最悪のハンデを背負わされたわけか。…面白い。これで、亜里沙が、どう彼女を“料理”するか、見ものだな」


ミラー:「双方にとって逆の立場…面白い。神が最高の脚本を用意してくれたな」

奏:「ああ。そして女王は俺が授けた武器で、その神の脚本をさらに面白くしてくれるはずだ」


ステージの上。

神崎は、一瞬だけ唇を噛み締めた。

だが、すぐにあの太陽のような笑みを取り戻す。

「なるほど。面白い試練ですね」


「正々堂々と戦いましょう」

久条は、ただ静かに微笑んでいる。

その笑みはもはや余裕ではない。

全てが自分の脚本通りに進んでいるという、絶対的な「確信」だった。


神崎は、静かに、そしてどこか哀れむような目で、目の前の女王に告げた。

「…あなたに、この“問い”の、本当の重さが分かりますか?」


司会者の、非情な声が、響き渡る。

「それでは、両者、準備時間は三分!試合を開始します!」

ゴングが、鳴った。

女王と俺の、本当の最終戦争が、今、始まった。

第三十話をお読みいただきありがとうございます。

作者の京太郎です。


脚本家は、ついに女王への、悪魔の助言を授けました。

そして、ゲームマスターは、あまりにも無慈悲な、最高の対戦カードを用意しました。

いよいよ、舞台の役者は、全て揃ったのです。


自らの信条と、真逆の立場で戦うことを、強いられた二人の天才。

彼女たちの魂の叫びが、皆様には、どのように聞こえましたでしょうか。


いよいよ、物語はクライマックス、準々決勝、久条亜里沙 対 神崎沙羅戦へと突入します。

事前に準備した、完璧な「論理」を操る女王。

その場で、全てを凌駕する、天賦の才を持つ「規格外の才媛」。


勝つのは、どちらか。

そして、その勝利の代償として、彼女たちは、何を失うのか。


面白いと思っていただけましたら

下にある【★★★★★】での評価

そして【ブックマーク】での応援

よろしくお願いします。

皆様の声が、何よりの力になります。


それでは、また次の話でお会いしましょう。

-----------------------------------------------------------------

おおとり 麗奈れいな

キャッチコピー:

《勝利に愛された少女/白蓮会の“切り札”》

■ 基本情報


所属:洛北祥雲学園高等部 1年

家柄:世界的プロゴルファー・鳳真一郎の娘

肩書き:現役女子高生プロゴルファー

所属:久条亜里沙率いる白蓮会1年メンバー

白蓮会加入経緯:久条亜里沙の“直々の推薦”で選抜

■ ビジュアル

健康的でしなやかな体躯と、鍛え抜かれたスポーツ選手らしい美しい姿勢が印象的。

肩まで届く明るい栗髪と、陽光に映える小麦色の肌が、アスリートとしての存在感を際立たせる。

スポンサー契約している海外ブランドの最新ウェアを身にまとい、

雑誌のグラビアモデルのような洗練されたオーラを放つ。

■ パーソナリティ

勝利こそがすべて、という強い信念を持つ少女。

誰に対しても礼儀正しく穏やかだが、内面は極めてストイックで、

「努力を積み上げることは当然」という価値観を疑わない。

それは幼少期からトップアスリートである父・鳳真一郎のもとで育ち、

常に“結果”を求められてきた環境ゆえでもある。

久条亜里沙を「完璧な女性像」として尊敬し、

白蓮会の一員であることを心から誇りに思っている。

彼女に心酔するあまり、久条の意向を一切、疑わず行動する、

忠誠心の強い“実行部隊”としての一面を持つ。

■ 久条亜里沙との特別な関係

麗奈と久条の関係は、ただの先輩後輩では終わらない。

家族ぐるみの親交

久条亜里沙の父と、麗奈の父・鳳真一郎は学生時代からの親友。

現在でも家族ぐるみで親しく交流しており、久条家と鳳家は強い信頼関係で結ばれている。

パーソナルコーチとしての縁

鳳真一郎は、亜里沙にゴルフを指導しているパーソナルコーチでもあり、

久条にとって“師匠の娘”である麗奈は、妹のように大切な存在。


久条直々の推薦

白蓮会の新メンバー選出では、久条自らが麗奈を推薦。

全会一致で承認されたのは、麗奈の実績だけでなく、

久条の絶大な信頼が背景にある。

■ 白蓮会での立ち位置

白蓮会1年枠の中でも、麗奈は「次世代の切り札」として特別視されている。

現役プロアスリートとしての圧倒的な実績とカリスマ性が、

白蓮会の“勝者の象徴”という側面をさらに強化している。

久条は、麗奈を次世代の白蓮会を担う後継者候補と見なしており、

将来的に白蓮会の中核を担うポジションが約束されている。

■ 物語における役割

「勝者の哲学」の体現者

生まれながらの恵まれた環境、父譲りの才能、努力、結果──

そのすべてを兼ね備えた麗奈は、学園における“選ばれた者”の象徴となる。

久条の「切り札」

麗奈は久条が仕掛ける様々な策略において、必要な場面で決定打を放つポジションにいる。

彼女の存在は、白蓮会の影響力をさらに強固にする。

■ プロフィールまとめ

現役高校生プロゴルファーであり、学園内外で“勝者”の象徴

久条亜里沙が直々に推薦した白蓮会メンバー

父親同士が親友で、麗奈の父は久条のゴルフパーソナルコーチ

白蓮会の中心人物であり、久条に絶対的な忠誠を誓う

「勝つために努力を惜しまない」ストイックな精神の持ち主

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ