表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
第五章:高校生英語ディベート選手権

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/46

【26】論理という名の怪物、女王が初めて膝を折る日

26-1◆女王のショータイム◆

大会二日目。

会場である天宮記念ホールの空気は、昨日とはまるで違っていた。

ベスト8が出揃った今日。

昨日まであったお祭りのような華やかな雰囲気は消え去り、そこには勝者だけが放つピリついた緊張感が満ちていた。


観客の数も、昨日より明らかに増えていた。

そしてその観客たちの視線もまた、昨日より鋭い。

彼らはもはやエンタメを観に来ているのではない。

本物の“知性の戦場”を観に来ているのだ。


やがて準々決勝、久条亜里沙の試合時間がやってきた。

山中が少し緊張した声で、呟いた。

「…いよいよ準々決勝だな。これに勝てばベスト4進出…全国が見えてくる」

奏は静かに答える。

「――ああ」


司会者が壇上に立ち、会場全体に響く声で宣言する。

「準々決勝・第三試合を開始します!使用言語は英語のみとします!」


京都府代表、洛北祥雲学園、久条亜里沙

大阪府代表、四海王寺高校、澤田博美

対戦相手は文武両道、モデル並みのルックスに、強烈な自信を併せ持つ実力者だ。


そしてホールの中央に表示されるディベートテーマ。

『組織の罪を隠してでも、優れた成果を守るべきか』

奏:「…面白いテーマだな」

ミラー:「ああ。まるで、どこかの高校にありそうな話だ」


開始の合図とともに、澤田は勢いよくスピーチを始めた。

その英語は、まさにマシンガン。淀みなく次々と論点をぶつけてくる。

目には自信と挑発の色が浮かび、会場の空気を一気に攻めに変える。


だが――久条は微動だにしない。


澤田の奔流のような発言を、まるで涼風のように受け流し、

言葉が一瞬途切れた、その“隙”に――静かに、牙を突き立てた。


「And that “achievement” you mentioned… who is it truly for?」

(あなたの言うその“成果”とは一体、誰にとっての成果ですか?)


たった一言だった。

だがその問いは、澤田の全論理構造を根底から破壊した。

彼女の言葉が止まる。目が揺れる。沈黙――。

論破ではない。論崩壊。それが久条亜里沙の流儀だった。


山中が口をぽかんと開けたまま呟く。

「すげえ……口喧嘩じゃ絶対勝てねえな……」

柴田も大きく頷いた。

「ああ。相手を潰すんじゃない。完全に“無力化”してる。…亜里沙を怒らせたら終わりだな」


斎藤が鋭く補足する。

「昨日、天宮から聞いたんだが・・・この大会の審査員は全米から選抜された名門校の超エリート高校生100名によって行われている。ホレス・マン校、エクセター、アンドーバー……全てアメリカの最高峰だ」

柴田は目を丸くする。

「マジかよ!?そんな連中に見られてんのか…もうプロの戦場じゃねーか…!」


やがて試合が終了し、投票結果が表示される。

【83 対 17】

その数字は、またしても圧倒的勝利を物語っていた。


久条は、涼しげな表情で一礼し、

まったく汗ひとつかかずに舞台を降りた。

その姿はまさしく――

「勝利を約束された女王」だった。


26-2◆論理の怪物、そして女王の憂鬱◆

久条の圧勝の余韻がまだ会場に残る中、次の準々決勝が静かに始まった。

兵庫県代表、神戸灘鳳学園三年、本田将也。

対するは京都代表、立志館高校三年、成山裕乃。


結城莉奈が前のめりになって身を乗り出す。

「…来た!成山裕乃さん!京都代表の三人の中じゃ、亜里沙の次に強いんだよ!」

その声に、美尾敦子が驚いたように目を見張った。

「そうなんだ。 久条さん以外、正直ノーマークだったけど…」

福寿由紀乃は、静かに頷きながら言葉を添える。

「うん、私も聞いたことある。去年は全国大会にも出場しているって」

結城はパンフレットを見返しながら、ぽつりとつぶやく。

「そうそう、ほんとはもっと注目されてもいい人なんだってば。亜里沙が強すぎるだけ!」

結城はステージに立つ成山を見つめながら、小さく笑った。

「裕乃さん、この緊張感の中で堂々としてる。京都代表として応援したくなるじゃん」


その瞬間、会場に司会者の声が響いた。

「次のディベートテーマを発表します──

『目的が正しければ、手段は問われないという考え方を肯定すべきか』!」

成山裕乃は冒頭、強い語気で情熱的なスピーチを展開した。

理想に満ちた言葉は、まっすぐ観客に訴えかける。

だがその熱量は、次に登場した本田将也の前に、あっけなく凍りつく。


彼は一切の抑揚なく、静かに、論理を解剖するように語り始めた。

無駄が一切なく、演出も感情も排された言葉が、次々と成山の主張を分解していく。


ミラー:「……まるで弁論の外科手術だな。冷たく、正確だ」

奏:「感情も空気も介さない。まさに“純粋論理”……怖いくらいだな」


クロスエグザミネーションに入り、成山が必死に問いを重ねる。

だが本田は一歩も引かない。

冷たい光を宿した目で、淡々と返す。


本田は淡々とマイクを握り、成山の激情を切り裂くように言い放った。

"Just as a physician must incise the body to preserve life, the achievement of purpose often necessitates pain."

「医師が命を救うために、患者の身体を切り裂くように、目的の達成には“痛み”が必要です」


その一言で、会場の空気が一瞬で変わった。まるで弁論という名の手術台に成山が横たえられたかのように――。


その一言が決定打となった。

成山裕乃は、言葉を探すように口を開きかけたが、声にならなかった。

彼女の瞳には、まだ伝えたい想いが残っていた。だがその余白すら、本田の論理が許さなかった。

成山は沈黙し、以後一切の反撃を封じられてしまった。


そして結果発表——

本田の圧勝、91対9。会場がざわついた。


「…強い。強すぎるわ、あの人」

背後から、結城の押し殺した声が聞こえた。

柴田も表情をこわばらせる。

「これはやべえ…。亜里沙でも、勝てるか、わかんねえぞ…」


そこへ山中がひそやかに口を開く。

「…本田将也。数学オリンピックの元日本代表。論理だけで戦う“感情なき機械”だ。灘鳳の異端にして、全国トップランカー」

ミラー:「対する久条は、言葉で観衆を巻き込む“共感の支配者”か。真逆の存在だな」

奏:「ああ。次は論理の怪物と女王の激突が始まる。…最高の準決勝だ」

ミラー:「これに勝てば、全国大会出場か!」


俺は視線を再び、ステージに向けた。

その壇上には、すでに次元の違う戦場の空気が満ちていた。


26-3◆女王の苛立ち、そして騎士たちの激励◆

午前中の準々決勝、四試合が終わり、昼休憩に入った。

俺たち七人は、天宮記念ホールのカフェテリアでテーブルを囲んでいた。


午後の部からは、いよいよ準決勝が控えている。

あと1回、勝てば全国大会出場が決定する。

…だというのに、久条亜里沙の表情はどこか冴えない。


奏:「…女王様、いつもの自信満々な雰囲気がないな・・・」

ミラー:「…女王様の戦法は、その場の空気と感情を支配すること。全く違うタイプとどう戦う?」


久条は、マグカップの縁を指先で静かになぞりながら、ぽつりと呟いた。

「……私の“感情を揺さぶるやり方”は、あの本田将也に通用するのかしら。

あの“論理の怪物”を、私の世界に引きずり込めるかどうか──そこに自信が持てないの」


その声には、いつもの女王然とした覇気はなかった。

その強さが仮面ではないと知る俺たちですら、一瞬だけ呼吸を飲むほど、脆くも人間らしい言葉だった。


その一言に、テーブルが一瞬、静寂に包まれた。

最初に声をかけたのは、やはり結城莉奈だった。

彼女は柔らかな微笑みを浮かべながら、そっと久条の肩に手を置いた。

「亜里沙…。午後の本田とかいう相手。ちょっとだけ手強そうね。でも大丈夫よ」


その言葉に柴田が拳を握って言う。

「そーだそーだ!亜里沙ならイケるって!あんな感情ゼロのロボットなんか、亜里沙のトークで秒殺だよ!」

斎藤も静かに頷く。

「もし人間に心がなかったら、論理だけで勝てるさ。でも違うだろ?

ディベートは人間が評価する。心を揺さぶるのは、君だよ、亜里沙」


これまで黙っていた山中がおずおずと口を開いた。

「そ、そうですよ。久条さん!あの本田ってやつの話は、退屈っていうか、つまんないですよ」

その山中の言葉に柴田が乗る。

「確かに、客を引き込む力が少し足りてないかもな。てことは?やっぱ亜里沙の勝ちじゃん!」


仲間からの温かい激励。

その言葉が久条の胸に、少しずつ熱を取り戻させていく。

彼女はすっと顔を上げ、ゆっくりと口角を上げて微笑んだ。


結城莉奈は、そんな久条の顔を見つめながら、そっと囁く。

「それに・・・これは“亜里沙の力”を証明する、最高の舞台じゃない?」


女王の瞳の奥に、再び炎が灯るのを俺は確かに見た。

「…ええ。さすが莉奈、よくわかってる。少し目が覚めたわ。私は私のやり方で、あの機械人形を壊してあげる」


その眼差しには、もう迷いはなかった。

そこにあるのは、ただ勝ち続けてきた女王としての光だけだった。


26-4◆女王と怪物そして悪魔の議題◆

午後の部が始まった。

準決勝第一試合。

大阪府代表、関西教育大学附属高等学校、野見山修二。対するは

和歌山県代表、智詠学園和歌山高等学校、有田光葉。

両者ともに、これまでの試合を圧倒的な実力で、勝ち上がってきた関西屈指の強豪だ。

野見山の武器は情熱的なスピーチ。

有田の武器は冷静なデータ分析。

全くスタイルの違う、二人の戦いは序盤から激しい火花を散らした。

一進一退の攻防。

会場の誰もが固唾をのんで、その応酬を見守る。


結果は54対46。

僅差で大阪代表、野見山修二の勝利だった。

敗れた有田は悔しそうに唇を噛み、そして勝者である野見山に静かに拍手を送った。

勝者と敗者。その残酷なまでのコントラスト。

会場の熱気が高まっていく。


そしていよいよ準決勝の第二試合が始まる。

司会者の声がホールに響き渡った。

「続きまして、準決勝第二試合!京都府代表、洛北祥雲学園高等部、久条亜里沙!対するは兵庫県代表、神戸灘鳳学園、本田将也!入場してください」


割れんばかりの拍手の中、二人の天才が舞台の両袖から現れる。

女王と怪物。

彼らが中央で向き合った時、本田が静かに口を開いた。

「久条さん。あなたの“語り口”は見事だ。だが…それは論理ではない。“演出”だ」

その言葉に、久条は不敵に微笑む。

「ありがとう。でも人の心を動かすのはいつだって、無味乾燥な論理ではなく、美しい“物語”ですわ」


その時だった。

司会者が二人の間に立ち、テーマを発表する。

「議題は…『愛する人の未来のために、公表すべき真実を隠蔽することは正当化されるか?』!」

その言葉に俺の心臓が跳ね上がった。


奏:「…このテーマ。まただ」

ミラー:「我々の状況と相関性が異常に高い。偶然の一致と考えるには統計的に不自然なレベルだ」

奏:「…なんだ?この悪趣味な偶然は」


くじ引きの結果、久条は肯定側、本田は否定側。

そのあまりにも残酷な配役。司会者が告げる。

「それではスタートします。スピーチで使える言語は英語のみです」

ゴングが鳴った。

俺たちの世界の真実を、問うための戦いが今始まった。


26-5◆女王の苦戦そして論理の断頭台◆

肯定側の久条がまず口を開く。

その声は誰かを思う“痛み”に満ちていた。


(※以下、すべて英語でのやり取り)

「愛する人を守るための沈黙が時には最も深い“正義”になることもあると私は信じます」


対する否定側本田の語りに感情はない。

「感情は理解できます。しかしそれは事実の隠蔽を正当化する根拠にはなりません。正義とは誰にとっても等しく機能する原理でなければならない」


▼クロスエグザミネーション。

二人の天才の知性が激しく火花を散らす。

久条は「人間らしさ」を盾に戦う。

「“例外”を認めない社会に人間らしさはありますか?」

だが本田はその盾を冷徹な論理のメスで切り刻んでいく。

「“人間らしさ”の定義が曖昧です。感情を根拠に判断を変えるその“不誠実さ”こそが人を壊すのです」

「その“曖昧さ”が社会を腐らせるのです。曖昧な愛で原理を歪めれば、社会は崩壊します」

そして本田のターン。

彼は久条の主張の核心を突く。

本田「あなたは“誰かを守る”ために他者に嘘をつく権利があるとお考えですか?」

久条「嘘ではありません。“伝えない選択”です」

本田「その“伝えない”という行為が社会的に情報の“操作”に繋がるとは考えない?」

久条が言葉に詰まりながらも応戦する。

「私は、制度や原理も大切だと理解しています。けれど、誰かを守るために“沈黙”を選ぶことが、

必ずしも“誤り”だとは、私は思えないのです」

しかし瞬間、本田は彼女のその僅かな迷いを、完璧に見抜き、そして冷徹な言葉で被せた。

「誰が?何を持って?隠蔽すると、“誤り”ではなくなるのですか?明確に定義できますか?」


その一言で会場の空気は完全に本田のものとなった。

彼の言葉はあまりにも冷たい。だが正しい。

「正義とは、“個人の思い”ではなく、構造的に公平でなければならない。

私はそれを、論理として断言します。」

――会場がシーン…と静まり返る。まるで“正解”を提示されたような空気。

論理が静かに、そして完璧に、この場を包囲していた。


久条の心に、敗北という名の影が、そっと輪郭を描き始めた。

──届かない。どんなに思いを込めても、会場の空気は変わらない。

言葉が滑っていく。私の声が、意味を持たなくなっている。

…これが、“負ける”ってことなの? こんな形で、私のやり方が否定されるの……?

彼女の視線がわずかに伏せられ、まつげの陰が瞳を曇らせる。

口元には迷いの色が浮かぶ、凛としていた女王の輪郭が、完全に揺らいで見えた。


奏:「…まずいな。空気が完全に本田に持っていかれている」

ミラー:「ああ。女王の“共感”が怪物の“論理”に喰われている」

観客席にも明確な“劣勢”の空気が漂い始めていた。


結城が震える声で呟く。

「…そんな…。あんなに追い詰められてる亜里沙、私、初めて見た…」

柴田が悔しそうに拳を握る。

「くそっ…!ダメか…?亜里沙…」

斎藤が静かに、そして絶望的に告げた。

「…万事休すか。残すは最終ステートメントのみ。だがこの空気を覆すのは不可能に近い」

その横で、山中がうろたえた表情を浮かべていた。

「こ、こんなことって…!よりによって、初めて京都で全国大会が開催されるのに、京都代表が関西予選で消えるのかよ……?」


ミラー:「……久条が完全に沈んでるな。まさか、あの“絶対女王”が…」

奏:「人生初の本当の“敗北”が、あいつを飲み込むのか?これは目が離せないな…」


司会者の非情な声が響き渡った。

「――それでは最終ステートメントに移ります!」

第二十六話お読みいただき、ありがとうございます。

作者の京太郎です。


今回は、女王・久条亜里沙の前に立ちはだかる、新しい壁、「論理の怪物」本田将也との戦いを描きました。

「共感」と「論理」、果たしてどちらが、人の心を動かすのか。

作者自身も、まだその答えを知りません。


論理の断頭台の前に立たされた、女王。

彼女に残された武器は、もはや何も無いのか。

それとも?大逆転の最後の一言を、彼女は放つことができるのか。

次回、第二十七話、ついに準決勝の勝者が決まります。


面白いと思っていただけましたら、

下にある【★★★★★】での評価、

そして【ブックマーク】での応援、

よろしくお願いします。

皆様の声が、何よりの力になります。


それではまた、次の話でお会いしましょう。


---------------------------------------------------------

★◇久条亜里沙VS本田将也【完全版】◇★

『愛する人の未来のために、公表すべき真実を隠蔽することは正当化されるか?』


▼ スピーチ①(肯定側 / 久条)

この世界には、真実を語ることが、かえって誰かの人生を壊す場合があります。

愛する人を守るための沈黙が、時には最も深い“正義”になることもあると、私は信じます


▼ スピーチ②(否定側 / 本田)

感情は理解できます。しかしそれは、事実の隠蔽を正当化する根拠にはなりません。

社会において“正義”とは、個人の感情ではなく、誰にとっても等しく機能する原理でなければならない


▼【クロスエグザミネーション(3分/久条→本田)】

*久条:「あなたは、“真実は常に公表されるべき”と主張しましたね?」

*本田:「ええ。隠蔽は常に構造の腐敗をもたらします。」

*久条:「では質問を変えます。“すべての真実は公表されるべきだ”と仮定した社会を想像してください」

*久条:「そこではどんな愛も、どんな信頼も、たったひとつの公表で瓦解することがありえます」

*久条:「それでもあなたは、“制度の正しさ”を優先しますか?」

*本田:「はい。制度の正しさは、時に個人よりも重い。例外を認めれば、原理が崩壊します。」

*久条:「…“例外”を認めない社会に、人間らしさはありますか?」

*本田:「“人間らしさ”の定義が曖昧です。少なくとも、曖昧な情によって社会の原理を歪めてはならないと、私は考えます。」

*久条:「“原理”は守れても、そこに生きる“人”が壊れてしまうとしたら?」

*本田:「壊すのは事実ではありません。感情を根拠に判断を変える、その“不誠実さ”こそが人を壊すのです。」

*久条:「……。」


▼【クロスエグザミネーション(3分/本田→久条)】

*本田:「あなたは、愛する人の未来を守るために、真実の隠蔽は許されると主張した。」

*久条:「ええ。ときに真実は、誰かの人生を破壊する毒になり得る。」

*本田:「だが、その“破壊するかもしれない”という判断は、あなたの感情によるものでしょう?」

*久条:「感情は、人間の行動の基盤です。」

*本田:「では聞きます。“感情”という不定形な基準で、誰かが“公表しない”と決めたとき、それが正義と、どうして断言できるのですか?」

*久条:「少なくとも、それは“愛”に基づく判断です。」

*本田:「“愛”があれば、倫理を曲げていいのですか?“愛”という言葉で、嘘も隠蔽も正当化されると?」

*久条:「愛がすべてを許すとは言いません。ただ――」

*本田:「その“ただ”の曖昧さが、社会を腐らせるのです。あなたは“誰かを守る”ために、他者に嘘をつく権利があるとお考えですか?」

*久条:「嘘ではありません。“伝えない選択”です。」

*本田:「“伝えない”という行為が、社会的に情報の“操作”に繋がるとは考えない?」

*久条:「私は、“沈黙”にもまた、愛と責任があると考えます。」


▼【3分/再主張①(肯定側・久条)】

*久条:「……先ほど、私は“感情は人の行動の基盤”だと述べました。本田さんはそれを“曖昧な基準”だと指摘されました。」

*久条:「ですが、私たちは皆、“人”です。完全に合理的に生きられる存在ではありません。」

*久条:「私は、制度や原理も大切だと理解しています。けれど、誰かを守るために“沈黙”を選ぶことが、必ずしも“誤り”だとは、私は思えないのです。」

*久条:「……愛が、時に正しさを捻じ曲げてしまうことがある。でも、それは“守りたい”という気持ちの証であって、欺瞞とは違う。私はそう、信じています。」


▼【3分/再主張②(否定側・本田)】

*本田:「“守りたい”という思い。それは理解できます。しかしそれは、正義の構造を変える理由にはなりません」

*本田:「社会は、“誰かの感情”を基準にして成立してはいけない」

*本田:「なぜなら感情には個人差があり、それを許せば、“真実を公表しない自由”が、恣意的に乱用されるからです」

*本田:「“伝えない選択”が他者の権利を損なう可能性を、肯定側は十分に説明していません」

*本田:「愛ゆえの沈黙が、誰かにとっての不正義となる現実を、無視すべきではない」

*本田:「正義とは、“個人の思い”ではなく、構造的に公平でなければならない。私はそれを、論理として断言します」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ