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最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
第五章:高校生英語ディベート選手権

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25/46

【25】女王の初陣─そして刃は届かない★

25-1◆姉の警告、そしてゲームの代償◆

関西地区予選の前夜。

俺は自室で英語ディベート大会の資料や動画を分析していた。

(20年も続いているのか。歴史ある大会なんだな)

各参加者のデータや過去の大会の映像

俺がもっとも念入りに調べていたのは、もちろん女王久条亜里沙、その人だ。

彼女の完璧な弁論術。

その中に隠された僅かな癖や弱点を探し出す。

それこそが俺が彼女を陥落させるためのヒントにならないだろうか。


その時だった。

コンコンと控えめなノックの後、姉の彩葉が部屋に入ってきた。

その手には、夜食のおにぎりと麦茶。

「あんた、まだ起きてたの?受験生でもないのに何してるの?」

彼女はそう言うと、俺の机の上にお盆を置いた。


そして俺の顔をじっと見つめる。

その視線に俺は気づいていた。

「…なんだよ」

「別に」

彼女は小さく笑った。

「あんた最近、本当に楽しそうね」

その言葉に俺は虚を突かれる。

楽しそう?これは戦争だぞ。


彩葉は続ける。

「…でも気をつけなさいよ。ゲームに夢中になりすぎて、現実が見えなくなるのは一番ダサいんだから」


彼女はそれだけを言うと、部屋を出ていった。

俺は一人、残された部屋でその言葉を反芻する。


ミラー:「…見抜かれてるな奏。お前がこのゲームに夢中になっていることを」

奏:「…ダサいか」


姉のその何気ない一言。

それが俺の心に小さな棘のように、深く突き刺さっていた。


25-2◆聖域からの来訪者◆

11月22日(土)

決戦の舞台は岡崎に新設された天宮記念ホール。

俺と山中は、関西中から集まったエリート高校生たちの熱気に気圧されながら、会場へと入った。

ガラス張りの壁面。最新の音響設備。

そして数百人を収容する巨大なホール。

天宮財閥のその圧倒的なまでの力を見せつけられているようだった。


俺たちが指定された席に着くと、山中が興奮気味にパンフレットを広げた。

「すげえな音無!天宮財団主催だけあってレベルが違うぜ!大阪、兵庫、京都…関西の天才が16人も集結だ!全員超エリートだぜ」

俺は視線をパンフレットに落としながら、静かに問いを投げた。

「…久条さんはその中でも、去年は全国準優勝だったんだろう?」

山中は、あたかも自分の手柄のように誇らしげに胸を張る。

「ああ!一年生でだぜ?怪物だよ!だが今年は分からねえらしい。東京に関東代表で久条さん以上の規格外の才媛がいるって噂だ…!」

俺は、ぽつりと尋ねる。

「…その規格外の才媛ってのは去年は何をしてたんだ?」

山中は記憶を掘り返すように、眉をひそめた。

「確か、去年は留学中で不参加だったらしいけど…」

俺は肩をすくめるように言葉を返した。

「なるほどな」

ミラー:「…女王の牙城に、まだ見ぬ強敵か。女王の宣言どおり行くのか?」


俺は再び、パンフレットに目を落とす

◇関西地区予選◇会場:天宮記念ホール

大阪代表4名、兵庫代表3名、京都代表3名、奈良代表2名、和歌山代表2名、滋賀代表2名

16名で勝ち抜きトーナメント

11月22日(土)関西地区予選1回戦/16名⇒8名(全8試合)

11月23日(日)関西地区予選2回戦~決勝まで(全7試合)


その時だった。

俺の隣の空席に二人の少女が静かに座った。

俺は息を呑んだ。

一人は図書委員長の一色栞。

そしてもう一人は…白瀬ことり。


奏:「…ミラー。なぜ彼女たちがここに…?」

ミラー:「知るか。お前の脚本にはなかった展開だ」


ことりはただ膝の上で手を組み、舞台をじっと見つめている。

彼女がこんな騒がしい場所に来るはずがない。

一色栞が連れてきたのか。

俺の思考が混乱する。

戦場にいるはずの俺のすぐ隣に、俺が帰るべき聖域が存在している。

そのあまりにも残酷な対比。


やがて司会者が舞台に上がり、開会を宣言した。

その時、隣から一色栞が俺にだけ聞こえる声で囁いた。

その声はどこまでも静かで、そして冷徹だった。

「言葉は時に刃よりも深く、人を傷つけます」

「…面白い見世物ですわね」

彼女は、その言葉通りディベートではなくただそこにいる「人間」たちを観測していた。

俺はこの大会が、ただの競技ではない魂の殺し合いになることを改めて悟った。


25-3◆16人の天才、そしてたった2つの椅子◆

俺がことりたちの登場に、動揺していると

すぐ後ろの席に、聞き慣れた声が響いた。

「こんにちは 音無くん!」

振り返るとそこにいたのは柴田隼人、斎藤律、そして結城莉奈とその取り巻きの美尾敦子、福寿由紀乃たちだった。

彼らもまた、女王の戦いを見届けるためにここへ来たのだ。

柴田が興奮したように言う。

「すげえな!関西中の天才がここに集まってるって感じか!」


だが斎藤は冷静だった。

彼はパンフレットを指差しながら、厳しい現実を口にする。

「油断はできない。この関西地区予選から全国へ行けるのはたった二人だ。16人の天才の中からたった2人」

その言葉に結城が息を呑む。

「…ええ。亜里沙は去年の全国準優勝者。さらに全国大会は地元京都での初開催。こんなところで負けるわけにはいかないわ。絶対に」

その会話。そのあまりにも重いプレッシャー。


ミラー:「…たった二つの椅子を巡る16人の殺し合いか。面白いゲームだな」

奏:「ああ。そして女王はそのプレッシャーの中でどう戦う?」


俺はこれから始まる知性の戦争を

そしてその中心に立つ久条亜里沙の姿を

ただ静かに観測し始めていた。

舞台の幕が今静かに上がろうとしていた。

…だが、この戦争に完全な勝者などいるのだろうか


25-4◆女王の初陣、そして戦場のルール◆

舞台の幕が、静かに上がった。

司会者が高らかに宣言する。

「これより関西地区予選一回戦、第一試合を開始します!選手を紹介します。京都府代表、洛北祥雲学園、久条亜里沙!!!奈良県代表、西大寺学園高等学校、望月聡!入場してください。」


結城莉奈はステージに向けて、小さく声を漏らした。

「うそ、亜里沙、いきなりトップバッター?主役なのに、トリじゃないとか逆にウケるんだけど」


「それでは、ディベートテーマを発表します『理不尽な指導者に対し、生徒が力で反撃することは正当化されるか』!」

山中が俺に囁いた。

「即興型ディベート!!お題はその場で発表される。シビアなルールだな」


壇上では、久条と奈良代表の望月聡が、向き合っている。

コイントスの結果、久条は肯定側となった。


司会者は台本を手に、一歩下がって、ステージ全体を見渡した。

「両者には、これより三分間の準備時間が与えられます!」


斎藤は腕を組んで、壇上を鋭く見つめながら言った。

「たった三分で、テーマに沿った論理構築ができるのか……まさに即興の極致だな」


あっという間に三分が経過した。

「使用言語は英語のみです!それでは、先行、肯定側・久条亜里沙。スピーチを開始してください」

マイク越しに響いたその声が、場内の緊張を一段と高めた。

観客の視線が一斉に壇上へと注がれる。

まずは久条の四分間の立論スピーチから始まった。


久条が、最初の一言を英語で発した瞬間。

ステージ後方の巨大スクリーンに、その言葉がリアルタイムで美しい日本語へと翻訳され、映し出された。天宮財団の技術力か。観客はストレスなく、この高度な知性の戦いを観戦できるというわけだ。


久条の、その完璧な発音と流れるような論理展開。

会場の空気が、彼女の色に染まっていく。

俺は久条をスキャンした。

【Target: 久条 亜里沙】

【論理構築力:S+】【表現力:S】


次に望月の反論スピーチが終わると、試合は次の段階へと移行した。

斎藤の目が鋭く光る。ディベート経験者ならではの分析だ。

「来たな、クロスエグザミネーション……矛盾が丸裸になる時間」

結城も真剣な表情で、ステージを見つめている。

「うん…相手の隙を見抜いて反撃。ここが本当の勝負所ってやつね」


その斎藤の言葉通りだった。

質疑応答の時間になった瞬間、久条は牙を剥いた。

彼女は望月の主張の僅かな矛盾点を的確に、そして容赦なく突き、彼の論理を完膚なきまでに、破壊していく。

望月は完全に沈黙させられた。

【反論力:S+】


柴田は拳をぎゅっと握りしめながら、小声でつぶやいた。

「…あとは再主張と最終ステートメントか。ここでどんだけ自分が優れてたか、審査員に思わせられるか――それが決め手だ!」


試合が終わった。結果は明白だった。

司会者がマイクを掲げ、観客席に響き渡る声で言った。

「それでは判定に入ります!オンラインでご覧いただいているアメリカの高校生審査員100名の皆様、今から投票をお願いします!」


スクリーンに「Live from USA」と書かれたロゴが表示された瞬間、山中は椅子から乗り出した。

「えっ!?アメリカの高校生が向こうで審査してんの!?ヤバすぎんだろこれ!」

会場のスクリーンにアメリカの高校生百人によるオンライン投票結果が表示された。

【87 vs 13】

圧勝だった。


ミラー:「…見たか奏。あれが女王の戦い方だ。一点の情けもない」

奏:「ああ。俺はとんでもない怪物を敵に回したらしい」

俺は、そのあまりにも圧倒的な実力差に、ただただ戦慄していた。


25-5◆女王の帰還、そして騎士たちの労い◆

大会初日の全試合が終了した。

俺と山中はホールのロビーへと向かう。

ことりと一色先輩の姿はもうどこにもなかった。


ロビーの一角に柴田、斎藤、そして結城たちがいた。

彼らはもちろん帰らない。

ただ一点、選手用の出口だけをじっと見つめている。

彼らは女王の帰りを待っているのだ。

女王は選手用のモニター室で、この日の全試合を観戦することになっていた。


やがて、その扉が開き、久条亜里沙が一人で出てくる。

彼女の顔には、僅かな疲労の色が浮かんでいた。

その彼女の元へ、結城が駆け寄り、タオルとスポーツドリンクを差し出す。

「亜里沙。お疲れ様。素晴らしかったわ」

柴田が興奮して言う。

「亜里沙!マジはんぱねえな!明日もブチかましてくれよ!」

斎藤が静かに頷く。

「…見事な勝利だった。明日も期待しているよ」


その三人からの温かい言葉。

仲間からの純粋な「信頼」と「期待」

それを浴びた久条のその完璧な女王の仮面が、ほんの一瞬だけ緩んだ。


【感情:疲労(60%) 安堵(40%) そして仲間への僅かな感謝(20%)】


そして彼女は本当に嬉しそうに、そして少しだけ、はにかむようにこう言うのだ。

「…ええ。ありがとうみんな。明日も必ず勝つわ」


斎藤が付け加える。

「ああ。明日の準々決勝と準決勝、それに勝てば全国への切符が手に入る。油断はするなよ」

その言葉にElysionの女王は力強く頷いた。

明日、ここで関西代表の二名が決まる。


ミラー:「…なるほどな。あれが女王の力の源泉か」

奏:「ああ。ただの独裁者じゃない。彼女は彼女なりに仲間から信頼されている。…厄介な敵だ」

俺はその光景を目に焼き付けながら、静かにホールを後にした。

第二十五話お読みいただきありがとうございます。

作者の京太郎です。


今回からいよいよ「全国高校生英語ディベート選手権編」が始まりました。

これまでの教室という閉鎖空間での戦いとは違い、ルールと論理だけが支配する新しい戦場です。

言葉の刃が飛び交うこの舞台で、キャラクターたちがどんな戦いを見せるのか、ご期待ください。


圧倒的な力で、初戦を突破した女王久条亜里沙。

しかし彼女の前には、まだ見ぬ強敵が待ち受けています。

噂の「東京の天才」とは?

そのベールがついに剥がされる。

女王は生まれて初めて「自分を上回る才能」を目の当たりにすることになる。


面白いと思っていただけましたら

下にある【★★★★★】での評価

そして【ブックマーク】での応援

よろしくお願いします。

皆様の声が何よりの力になります。


それではまた次の話でお会いしましょう。

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★英語ディベート選手権 / 標準ルール★

◇地域予選〜全国大会準決勝まで◇

【試合形式】1対1の個人戦

即興型ディベート(Impromptu Debate)

肯定側(Pro)vs 否定側(Con) の構造

立場はくじ引きで決定

【勝敗の決定方法】

大会はアメリカ全土にネットで生配信されている

審査は、アメリカのトップエリート高校生100名によるオンライン投票制

各試合の終了後、視聴中の彼らがリアルタイムで勝者を選択

得票数が多い方が勝利

◇評価判定基準◇

論理性(構造・一貫性)

表現力(語彙・発音・リズム)

反論力(質問・応答の的確さ)

説得力(聴衆を惹き込む力)


【試合時間と構成】

1試合:30分+5分休憩

1分 / 開会(司会による導入) / 試合テーマ発表、ルール確認

4分 / スピーチ①(肯定側 / 肯定立場からの主張

4分 / スピーチ②(否定側) / 否定立場からの主張

6分 / クロスエグザミネーション / 双方で質疑応答・反論(3分×2)

3分 / 再主張①(肯定側) / 再主張・反論まとめ

3分 / 再主張②(否定側) / 再主張・反論まとめ

各2分 / 最終ステートメント(両者) / まとめスピーチ

5分 / 判定・講評 / 審査員による勝敗発表、講評

5分 / 休憩 / 次の試合までのインターバル

*全国大会決勝戦のみ別ルール*


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