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最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
第四章:演劇『現代版高校ハムレット』

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【16】太陽の黒点と反転する世界

16-1◆太陽との対話、そして世界の広さ◆

俺は生まれて初めて、本物の「太陽」と向き合っていた。

そして、その太陽が今、俺に話しかけている。


【ERROR】

【SYSTEM OVERLOAD: 観測不能な対象です】


俺のスカウターは、意味不明な文字列を繰り返すだけ。

初めての事態に、俺の思考は、珍しくパニックに陥っていた。


奏:「…状況が読めない。スカウターはなぜ機能しないのか?なぜ天宮は俺を追いかけてきたのか?わからないことだらけだ」

ミラー:「落ち着け。脚本家だろ。相手のセリフを待て。まずは、そこからだ」

ミラーのその言葉で、俺はかろうじて、冷静さを取り戻す。


天宮蓮司は、太陽のような笑顔を俺に向けていた。

天宮「同じクラスなのに、ほとんど話したことなかったね」

奏「…ああ。そうだな」

俺は短く答えるのが精一杯だった。


天宮は続ける。

天宮「実は音無くんに、一刻も早く礼を言いたかったんだ」

奏「礼?」

天宮「まず隼人・律・莉奈の中間試験の成績。あれだけ素晴らしい成績を取れたのは君のおかげだと、律から聞いた。本当、嬉しかったよ。ありがとな」


俺は何も答えない。


天宮「あとあれだ。長峯と三好の揉め事を仲裁してくれたとか。これは隼人から聞いたんだけど、本当にありがとう。長峯は、俺がもっとも期待している後輩なんだ。」

奏「やめてくれよ 天宮くん 当然のことをしただけだ」

天宮「とにかく大きなケガもなくよかったよ。君のおかげだ」


(…礼、か。当然だ。クラスのその他大勢と同じ。この太陽もまた俺の脚本通りに完璧に踊ってくれたというわけだ)

俺の心に一瞬だけ、傲慢な満足感が浮かぶ。

だが、すぐに、それは別の感情に取って代わられた。


(…だが本当にそうか?)

俺は目の前の男の、そのあまりにも純粋な瞳を見つめる。

そこには、一点の曇りもない。ただの善意の塊。


(俺の全てを見透かした上で、あえてこの言葉を口にしているのではないのか?)

(俺という新しいプレイヤーを試すために?)

分からない。こいつだけは、本当に分からない。


スカウターが機能しない今、俺の目の前にいるのはただの「お人よし」なのか。

それとも俺の想像を遥かに超えた「怪物」なのか。

その判断が、全くつかなかった。


俺は、思考を切り替える。

観測者として、情報を引き出すことに集中する。


奏「それはそうと、天宮くんは今日は学校に来てなかったよな?」

天宮「ああ。今日はちょっと大事な用事があってね。夕方の部活から学校に来ているんだ」

奏「へえ、どんな用事?もしよかったら教えてくれるか?」

俺は単純に、王の高尚そうな用事に興味がわいた。下世話な好奇心だ。


俺のその不躾な質問に天宮は嫌な顔一つせず答えた。

天宮「天宮財団が主催する全国高校生英語ディベート選手権が、今年は京都で開かれるんだ。その準備会議だよ。

俺も特別顧問として参加している。高校生の立場から意見を出しているんだ」


奏「…高校生の英語ディベート?」

俺の知らない言葉。

俺の生きてきた世界とは、全く違う次元の言葉。


天宮「11月の下旬から開催予定なんだ。会場は、できたばかりの天宮記念ホール。

全国から優秀な高校生が集まる。亜里沙も出場するはずだから。君も興味があれば、見に来てくれよ」


天宮は、屈託なく笑った。

その笑顔の前に、俺はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

彼が見ている世界の広さを、今初めて思い知らされた。



16-2◆太陽の善意、そして悪魔の踏み絵◆

俺のスカウターが、機能不全に陥る中


天宮蓮司は、太陽のような笑顔を俺に向けていた。

俺は必死に、賞賛の言葉を口にする。

「へえ、さすが天宮くんだね。俺とはスケールが違うな」


すると天宮は、困ったように笑った。

「俺なんて、ただの親の七光りだよ。むしろ君からは、何か人とは違う凄みを感じるよ」


「俺なんて、超凡人だよ」

その鋭い指摘に、俺は内心で、激しく動揺していた。


「あ、もう練習に戻らないと。じゃあ、またな音無くん。話せてよかったよ」

天宮はそう言うと、体育館の方向へと踵を返す。


(…なんてさわやかで、いい奴なんだ。天宮の周りには、いつも人が集まるのがよくわかる)


奏「ああ、わざわざ追いかけてきてくれて、嬉しいよ また明日な」

天宮と別れて、俺は家路を急ごうとした。


そのときだった。

「あーそうそう、忘れてた」

天宮が振り返り、俺を呼び止めた。


その瞳には、一点の曇りもない。

純粋な善意だけがそこにある。

そして彼は、その日、最高のそして、最悪の爆弾を俺に投下した。

「…もしよかったらなんだが、俺の親友の三好のことも、助けてやってくれないか?」


「え???」唖然とする俺


天宮「三好は、本当はいい奴なんだ。あんなことするには何か理由があったはずだ」


その言葉が、俺の思考を完全に停止させる。

脳内のウィンドウが緊急警報のように開いた。


ミラー:「…何だそれ?。最悪のお願いだな」

奏:「こいつは何を言ってるんだ?あんな最低のクズ野郎に」

ミラー:「そうだよな。こいつ、本心なのか?」

奏:「どうする。どう答える。YESと言えば、俺が完成させた脚本が破綻する。

NOと言えば天宮の善意を無下にし、彼との関係が悪化するかもしれない」

ミラー:「逃げ場はない。お前は今、神に踏み絵を迫られている。どうする?音無奏」


俺は数秒の沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

その顔には最大限の「共感」の仮面を被って。


「…三好のこと心配なんだな。親友なんだろ。分かるよ。その気持ち」

声がわずかに震えていることに、自分でも気づいた。


喉が乾く。舌がうまく回らない。

「協力したいけど。俺には……彼を助けられるような器量はないよ」

言葉を吐き出すたび、胸がひくつくように痛んだ。


掌にじわりと汗がにじむ。

ポケットの中で、握りしめた拳が冷たく湿っている。


しかし、天宮はそれを見透かすように微笑んだ。

まるですべてを見ていたかのように。

「そうかな。君ならそれくらいできそうだけど」


その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。

額から流れる汗が一筋、顎を伝って落ちる。

呼吸が浅くなるのを、必死に隠す。


(…こいつ!)

俺は、その鋭すぎる観察眼に戦慄する。

俺は最後に、曖昧な言葉で、その場を凌ぐしかなかった。

「…俺に何ができるか?わからないけど、俺なりにやってみるよ」


「うん。頼んだよ」

天宮は満足そうに頷くと、今度こそ、本当に体育館へと走り去っていった。


後に残された俺の心臓は、破裂しそうなほど脈打っていた。



16-3◆姉の観察眼、そして太陽の黒点とは?◆

自宅の玄関のドアを開けた時、俺の足は鉛のように重かった。


天宮蓮司との邂逅。

その衝撃は俺が思っていたよりも深く、俺の思考回路を蝕んでいた。

リビングのソファに、倒れ込むように座る。


「おかえり。あんた、いよいよ本格的に幽霊になったんじゃないの?顔色最悪よ」

スマホから、顔を上げた姉の彩葉が呆れたように言う。


俺は答えない。

答える気力もなかった。


その俺のただならぬ様子に、彩葉は何かを察したらしい。

彼女はスマホを置くと、俺の向かいに座り込んだ。

「…で?何があったのよ。最近調子がよさそうだったあんたが、そこまで魂の抜けた顔するなんて」


俺は、しばらく逡巡した。

この姉に教室リーグの話をしても、理解されるはずがない。

だが俺は、誰かに話さずにはいられなかった。

この俺の理解を超えた存在のことを。

「…姉さん」

俺は、ぽつりと呟く。

「もし、この世に完璧な人間がいたらどう思う?」

彩葉「そんな奴、いるわけないじゃない」


「それがうちの学校にはいるんだ。俺にも信じられないんだ」

俺は今日の出来事を説明した。


俺のクラスにいる天宮蓮司という男のこと。

家柄も資産もルックスも人格も人望も学力も運動神経も。

その全てが高スペックで、非の打ちどころのない人間であること。

そして話したこともなかった男が今日、わざわざ俺を追いかけてきて、礼を言ったこと。

俺は、復讐や策略などではなく、ただただ純粋な疑問として彼女にぶつけた。


「…こんなやつに、何か欠点とか人間味ってあるのかな」

俺のその問いに、彩葉は一瞬だけ、遠い目をした。

そして、まるで世界の真理でも語るかのように、静かにこう言ったのだ。


「彼はいつでも誰からも、大切にされていそうね…だからこそ、あるんじゃない?たった一つだけ」

「一度も転んだことがない人間は、本当の痛みを知らない」

「そして人の痛みや、弱い部分・人間の汚い本質を本当の意味で理解することもできない」

「なぜなら、多分、彼は周囲に持ち上げられるだけの人生だったから。」

「そういうことじゃないの」


その言葉。それは俺のスカウターが、決して導き出すことのできない答えだった。

俺の凝り固まった思考を破壊する天啓。

(…人の痛みを理解できない?人間の汚さも知らない)


その言葉が、俺の思考の中に新しい光を灯した。

天宮蓮司という太陽。

その輝きの中心にあるかもしれないたった一つの「黒点」。

俺は初めて、その存在の輪郭を捉えた気がした。



16-4◆世界の反転、そして新しい舞台◆

翌朝、俺が教室のドアを開けた瞬間

世界が反転したことを知った。

夏休み明けの9月上旬頃とは、全ての景色が変わっていた。


「音無、おはよ」

「おはよう、音無くん」


俺が自分の席へと向かう、その短い距離。

その間に、俺は数人のクラスメイトから挨拶をされた。

俺はその顔も名前もうろ覚えだ。

だが、彼らは俺を知っている。

俺は、もはや「その他大勢」ではない。

俺は「音無奏」という名の一個の存在として、この教室に認識されていた。


そして極め付けは、彼だった。

天宮蓮司。

彼は教室に入ってくると、俺の席の前で足を止め

そして、あの太陽のような笑顔で言った。

「音無くん、おはよう。昨日は悪かったな、引き止めちまって」


その瞬間、俺の視界の端で、半透明のウィンドウが、警告音と共に強制的に展開された。

**〈観識スカウター〉**が、教室内の、急激なパワーバランスの変動を感知したのだ。


ピリリ、と鳴り響く電子音。

目の前に、クラス全員の顔写真アイコンと、それに紐付けられた数値が、滝のように流れ落ちていく。

『教室リーグ』ランキング。リアルタイムでの、順位更新。

俺のアイコンが、リストの最下層――「観客席」という圏外から、凄まじい勢いで、駆け上がっていく。

38位、25位、15位、そして――。


最終的な順位が、冷たいゴシック体で、確定表示された。


【CLASS RANKING - TOP TIER】

1. 天宮 蓮司 [INFLUENCE: --- (測定不能)]

2. 久条 亜里沙 [INFLUENCE: 97]

3. 結城 莉奈 [INFLUENCE: 88]

3. 斎藤 律 [INFLUENCE: 88]

3. 柴田 隼人 [INFLUENCE: 88]


6. 音無 奏 [INFLUENCE: 82]


…6位? 俺が? 圏外にいたはずの俺が???

そのたった一言。

王からのその一言が、俺の序列をさらに決定的にした。


クラス中の視線が、俺に突き刺さる。そこには、もう侮蔑の色はない。

ただ畏怖とそして、強い好奇心だけあった。


その日の全ての授業。

俺は、その奇妙な視線に晒され続けた。


そして放課後を告げるチャイムが鳴る。

今日のホームルームでは、重要なことを話し合う予定だ。

担任の烏丸がいつものように教壇に立った。

彼のその顔には、いつもの諦めきった表情が浮かんでいる。


「さて諸君。中間試験も、無事に終了したことだし」

「いよいよ本格的に学園祭について、話し合おうと思う」

烏丸は教室を見渡す。

「ご存知の通り、我がクラスの出し物は演劇で決定済みだ」

「今日は、その演劇の具体的な演目や役割について、決めたいと思う。何か意見のある者はいるか?」


その言葉を、合図に教室が再び、ざわつき始める。

(…演劇)

俺が望んだ舞台。

だがその舞台に俺自身が、引きずり出されるとはな。

俺は静かに、その新しい戦場の始まりを観測していた。

第十六話をお読みいただきありがとうございます。

作者の京太郎です。


今回は奏が初めて「倒すべき敵」ではない「あまりにも善良な壁」と対峙する話でした。

悪意よりも、厄介な純粋な善意。

そして異能の力よりも、強い姉の何気ない一言。

皆様は、彼のこの新しい苦悩をどう感じたでしょうか。


太陽王から「親友を救え」という、あまりにも残酷な勅命を受けてしまった主人公。

彼はこの矛盾したミッションを、どう遂行するのか。

そして動き出す文化祭の準備。

次なる舞台は「演劇」。

果たしてそこで彼はどんな脚本を描くのか。


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よろしくお願いします。

皆様の声が何よりの力になります。


それではまた次の話でお会いしましょう。

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山中やまなか 駿平しゅんぺい

所属:洛北祥雲学園高等部・2年4組

キャッチコピー:

《凡人の“眼”/物語の観測者》

■ ビジュアル

平均的な身長と体格

黒髪の短髪、どこにでもいそうな普通の男子生徒

派手さはないが、表情が豊かで、親しみやすい雰囲気

■ パーソナリティ

山中駿平は、クラスで一番「普通」な男子。

特別な才能やカリスマ性はないが、誰とでも分け隔てなく話せる柔らかい性格と、程よいコミュ力を持つ。

アニメ・ゲーム・SNSに詳しく、クラスのゴシップや流行にも強い。

冗談を言って場を和ませたり、誰かが孤立していれば自然に声をかける。

しかし、強いリーダーシップはなく、あくまで“調整役”に回るタイプ。

■ 奏との関係

奏にとって、山中は数少ない「気兼ねなく話せる相手」。

クラスの派閥争いに関わらない中立的な立場で、自然体で接してくれるため、奏は安心して会話できる。

当初、奏は山中を「情報源」として無意識に利用しているが、物語が進むにつれて、その関係は親友へと変わっていく。山中もまた、ミステリアスな奏に惹かれ、「放っておけない」という感情を抱き始める。

■ 物語における役割

① “ツッコミ役”兼“読者の視点”

奏が突拍子もない行動を取ったとき、真っ先に「おい、音無、何やってんだよ!?」と反応する

彼の存在が、読者にとって物語を客観視するための視点になる

② 情報屋ポジション

クラス内の噂や、上位カーストグループの動き、先生たちの裏事情など、軽いゴシップを自然にキャッチしてくる

奏は山中から得た“表の情報”と、自分の観察結果を組み合わせて戦略を立てる

③ 奏の「人間性」を映す鏡

物語序盤では、奏にとって山中は“利用する相手”に過ぎなかった

しかし、様々な出来事を経て、奏が「本物の友情」を知るきっかけとなる

山中への態度の変化は、奏の心の成長を測るバロメーター

■ プロフィール総評

山中駿平は、特別な能力を持たない“凡人”でありながら、

奏の物語を最も近くで見守り、支えるもう一人の語り部。

クラスのムードメーカーであり調整役

奏にとって最初の「安全地帯」

序盤では“観測者”だが、終盤では“親友”になる

彼は華やかな存在ではないが、**奏の物語における欠かせない“心の支柱”**となる。

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