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最底辺の俺が、観測スカウターを使ってエリート学園にはびこるスクールカーストの頂点を目指す  作者: 京太郎
第二章:初めての標的、最初の犠牲者

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【11】英雄の仮面と影の帝王の視線

11-1◆職人の貌、そして亡霊の死◆

その日の帰り道。

俺の足取りは,不思議なほど軽かった。

三好を断罪し、長峯を救ったという達成感ではない。


もっと別の感覚。

自らの書いた脚本通りに、世界が動いたという

冷徹な創造主だけが、知る万能感。

それが俺の全身を、満たしていた。


自宅の玄関を開ける。


「おかえり」

リビングから、姉の彩葉の声が飛んできた。

彼女はソファに寝そべり、スマホをいじっている。

俺が、その横を通り過ぎようとした時だった。


「…あんた」

彩葉が、スマホから顔を上げる。


そして訝しげな目で、俺の顔をじっと見た。

「なんか、今日、雰囲気違うね」


「そうか?」

俺は無表情を装って、答える。


「うん。いつもは陰キャ代表みたいな顔してるくせに」

彩葉は、容赦ない言葉を続ける。

「今日はなんかこう…面倒な仕事を、やり遂げた職人みたいな顔してる」


(…職人か)

面白いことを言う。

俺は彼女のその鋭い観察眼に、内心で感心していた。


「気のせいだ」

俺は、それだけを言うと、自分の部屋へと向かった。


背後で彩葉が「ふーん」と呟くのが聞こえた。


部屋に入り、ドアを閉める。

外界からのノイズを、完全にシャットアウトする。

俺はベッドに倒れ込み、深く息を吐いた。


そして、目を閉じる。

脳裏に浮かぶのは、今日一日で起きた出来事。

そして三好央馬のあの哀れな姿。


(…終わったんだ)

中学の、あの夜からずっと俺の心に、重くのしかかっていた亡霊。

俺の臆病さの象徴でもあった三好央馬。


中学から続く長かったあの男との因縁。

今日、その亡霊は俺が書いた脚本通りに、醜態を晒し、そして舞台から、完全に引きずり下ろされた。

胸がすくような快感はない。


歓喜もない。

ただそこにあるのは、一つのタスクを完璧に完了させた時のような

静かで、そして底冷えのするような満足感だけだった。

そうだ。これで完了した。俺の長い復讐が。



11-2◆下剋上の代償、そしてその計算式◆

翌朝の教室。

その空気は、昨日までのそれとは全く違っていた。

俺が教室に足を踏み入れた瞬間、いくつかの視線が俺に突き刺さり、そしてすぐに逸らされる。


俺は、まず三好央馬の空席を確認する。

そして天宮蓮司の席も、また空であることを。


(…天宮は今日も欠席か。また何か“高尚な”用事だろう)


俺は〈観識〉スカウターの広域スキャンを起動する。

クラス全体の力関係が、俺の視界に表示された。


【クラス内序列変動:三好央馬】

【評価:Cランク(Elysion中位)→ Gランク(追放者)】

【タグ:“道化” “敗北者” “圏外”が付与されました】


(…当然の結果だ)

俺の視線は教室の中心、Elysionの周辺へと向かう。


女王、久条亜里沙が冷たい声で、側近たちに告げていた。

「昨日の三好くんの件だけど。あの土下座はありえないわ。彼はもうElysionのメンバーじゃないから」

「二度と私たちの周りに近づけないようにしなさい。彼の席は、もう観客席よ」


その瞬間だった。

俺の視界の隅で、システムメッセージがポップアップした。

【あなたのクラス内、序列カーストレベルが変動しました】

【Lv. 18(観客席)→ Lv. 49(Elysion下位と同等レベル)】


(…なるほどな)

俺は自分のステータスを、無感情に確認する。

【参考データ:三好央馬の最大レベルはLv. 48でした】

(三好と入れ替わっただけではない。俺は奴のいた場所を、わずかに超えたのか)

(…なぜだ?)


俺の問いに答えるように、スカウターが分析結果を表示する。

【レベルアップ要因分析】

・要因A:三好央馬の土下座による社会的地位の失墜(+20pt)

・要因B:体育会系グループからの支持率上昇(+10pt)

・要因C:天宮蓮司への間接的貢献による評価上昇(+15pt)

・要因D:一般生徒からの「英雄的行為」への評価(+5pt)


ミラー:「見たか奏。お前のレベルが、三好を超えた理由、ただ奴を排除したからだけじゃない」

奏:「ああ。『長峯昌吉を三好の暴力から守った勇気ある行動』か。まあ奴の土下座も大きいよな。完全に醜態をさらしやがった」

ミラー:「そうだ。そしてお前自身も怪我を負った。その『悲劇性』がその他大勢の同情を買い、お前を悲劇のヒーローへと仕立て上げた。実に滑稽だな」

奏:「だが目的は達成された」

ミラー:「三好央馬という存在が、虎の威を借るただの滑稽な道化であるという事実を、学校全体の共通認識に変える。そして1軍から観客席に座らせること、だな」

奏:「そうだ。その脚本は完璧に遂行された」

ミラー:「ああ。そしてお前は脚本以上のものを手に入れた。その『新しい地位』という名の武器をな」

ミラー:「で?その武器をどう使う?脚本家先生」


俺はその問いに答えずただ思考を巡らせながら。

次のゲームの始まりを静かに待っていた。



11-3◆裏の王の使者、そして新たな憶測◆

その日の放課後。

ホームルームが終わった直後のことだった。

教室の空気が、再び凍りついた。

後方のドアが静かに開き、そこにまた数人の屈強な三年生が立っていたからだ。


その中心にいる男。

坂元要介の腹心であり、轟木一派のNO3高島だ。


教室中の視線が、彼に集まる。

高島はその視線を、ものともせず氷のような瞳で室内を見渡した。


そして低い声で言った。

「ここに音無奏とかいう奴はいるか」


その名前にクラスがざわつく。

今度は俺か?

俺の背筋に、冷たい汗が流れた。


スカウターが彼の脅威レベルを表示する。

【Target: 高島】

【脅威レベル:A-(危険)】

(…轟木一派。なぜ俺が?)


(昨日の件か?俺はただの仲裁役のはずだ…むしろ英雄だ)

恐怖が俺の心を、支配しようとする。


(…そうだ。ビビッていてはいけない)

俺は、思考を切り替える。


(これはチャンスだ)

昨日、三好が見せたあの無様な姿。完璧な土下座という醜態。

俺がここで、堂々としていれば、その格の違いをクラス全員に見せつけられる。


俺は、ゆっくりと立ち上がった。

そして、高島を真っ直ぐに見据える。


「俺が音無だが」

俺のその態度に、高島は少しだけ目を見開いた。

だが彼の口から、出た言葉は意外なものだった。


「ボスがお呼びだ。ついて来てくれ」

その声に威圧感はない。

ただの事実を告げるような事務的な響きだけがあった。


俺は無言で頷くと、自分のカバンを肩にかける。

そして高島たちと共に教室を出ていった。

俺たちが去った後、教室が爆発的なざわめきに包まれたのを俺は背中で感じていた。


「おいマジかよ…音無って轟木一派と知り合いなのか?」

「てか高島先輩、全然怖くなかったな。むしろ丁寧だったぞ…悪い話ではなさそうだった」

「まさか、音無って、裏ではすげえ大物だったりして…」


彼らの勝手な憶測。

それも、また俺が望んだ脚本通りの展開だった。

俺の存在は、今や、この教室で最も不可解で、そして最も無視できない「謎」へと変わりつつあった。



11-4◆王の尋問、そして観測者の仮面◆

高島に案内され、俺がたどり着いたのは新校舎の屋上だった。

フェンスに囲まれただけの殺風景なコンクリート。


そこには、五人ほどの男たちがいた。

轟木一派。


その中心で、給水タンクに腰掛けている男。轟木剛造。

夕日を背にしたそのシルエットは、王の風格を漂わせていた。

俺のスカウターが、警告を発する。


【Target: 轟木 剛造】

【腕力レベル:測定不能(MAX)】

【戦闘シミュレーション:勝利確率0.1%】

(…喧嘩しても、絶対に勝てない)


俺はゴクリと唾を飲み込んだ。

轟木は、静かに俺を見ている。

そして意外なことに、彼の口から出たのは感謝の言葉だった。


「音無奏。長峯の件は聞いた。あいつを助けてくれたそうだな。礼を言う」

その声は、低く穏やかだった。


しかしその直後。

彼の隣に立つNO2坂元要介が、氷のような視線を俺に向けた。


空気が一変する。


「ところで、音無」

坂元が尋問を始める。

「お前は三好と同じクラスだよな。なぜあのとき、一年の渡り廊下にいたんだ?お前に用はないはずだ」


「たまたまです。忘れ物を取りに行く途中でした」

俺は用意していた答えを返す。


しかし、坂元は鼻で笑った。

「偶然か。ひとつ教えてやる。三好が長峯に因縁をつけたきっかけは一枚のメモだったそうだ」


心臓が跳ねる。

「長峯に因縁をつけたのも、二年四組の人間。そして長峯を救ったのも二年四組の人間」


坂元「何だか違和感を感じるな。知っているなら真実を説明しろ」


(…まずい。こいつら、俺がメモを書いたと疑っているのか?)

(不良のくせに馬鹿じゃない。腐っても超名門、洛北祥雲学園の生徒なんだ。頭は切れる)

(これは、絶対に認めるわけにはいかない)


俺は答えた。「何のことだか、わかりません。ただの偶然では?」


坂元は、俺の正面に移動し、ゆっくりと俺の目を見つめる。


俺が黙り込んでいると、今度は轟木本人が口を開いた。

その瞳は、俺の全てを見透かすように鋭い。

「なあ音無。単刀直入に聞く」

「長峯の奨学金のこと、知っていたのはお前じゃないのか?」

「そして三好の机に、メモを入れたのもお前じゃないのか?」


俺は動揺を完璧に隠し、無表情の仮面を被る。

「さあ、何のことだか分かりませんね」


轟木と坂元は、しばらく無言で俺を見ていた。

重い沈黙が続く。

やがて、轟木がため息をついた。

「…要介。もういい。今日のところはこいつを帰せ」

「こいつが、長峯を助けたのは事実だ。それに不義理はできねえ」

「だが音無奏。お前のことはマークしておく。次に何かおかしな動きをしてみろ。その時は容赦しねえ」


坂元も口を開く

「俺らは、徹底的に調査する。自分の口から話したほうが賢明だぞ」


俺は何も言わず、一礼するとその場を立ち去った。

屋上のドアを閉めるまで、決して背中の緊張は解かなかった。


そして一人になった瞬間。

俺の体は、壁に崩れ落ちた。

心臓は破裂しそうに脈打ち、全身は冷たい汗で濡れていた。


(…助かった…)

何とか無事に、屋上を出ることができた。

内心は、恐怖で完全にびびっていたが。

俺は安堵の息を漏らした。



11-5◆観測者の凱旋そして次なる戦場◆

恐怖の屋上から、俺は二年四組の教室へと戻った。

ほとんどの生徒は、もう帰宅している。


がらんとした教室。

その中で、ただ一人。

山中駿平が、俺の席で、落ち着かない様子で待っていた。


俺の姿を認めた瞬間、彼は駆け寄ってくる。

その顔には、畏怖と好奇心が混じっていた。


「音無!大丈夫か!?お前生きてたのか!」

「轟木一派に呼び出されるなんて、前代未聞だぞ!」

「一体、何をされたんだ?何の話だったんだよ!?」


山中は、質問を矢継ぎ早に浴びせてくる。

俺は、彼のその心配に感謝しつつも、答える気はなかった。


「…別に。何でもない」

俺は、ただ短く答える。

「ただの人違いだったみたいだ」


「人違いだあ?んなわけあるかよ!」

食い下がる山中。


だが、彼は俺の鉄の無表情を見ると、それ以上何も言えなくなった。

そして、何かを思い出したように話題を変える。


「…まあいいけどよ。それより、お前すげえじゃん!」

「三好から、長峯を助けたんだってな!お前の仲裁、マジで神だったって、噂になってるぞ!」

山中の瞳が、再び興奮に輝き始める。


俺の株が、上がっていくのを俺はただ冷静に、観測していた。

そして俺は「正義の味方」という、最高の隠れ蓑を手に入れた。


全ては、脚本通りだ。

山中はさらに続ける。

「はあ。まあ色々ありすぎだろこの数日間。…ああそうだ。それよりヤバいぜ。再来週から中間試験だってよ」


(…中間試験か)

その言葉に、俺の思考は轟木剛造から教室リーグへと引き戻される。


山中は、自分の成績を嘆いている。

山中が続ける。

「俺なんかマジやばいよ 下から数えたほうが早いよ。成績・・・」


山中の、その何気ない一言。

それが、俺の脳内で新しい回路を繋げた。


俺の口元に、冷たい笑みが浮かぶ。

(中間試験。次のゲームとして舞台になるかもな)


俺は、新しい戦場の匂いを、確かに嗅ぎ取っていた。

第十一話お読みいただきありがとうございます。

作者の京太郎です。


観客席にいたはずの主人公が気づけば

王たちの、視線を集める危険なプレイヤーへと成り上がっていました。

彼の急激な「昇格」は、果たして、彼に何をもたらすのか。

作者自身も、固唾をのんで、見守っています。


次なる戦場は「中間試験」。

しかし彼の目的は、良い点を取ることではありません。

彼は「勉強」という名のゲーム盤を使い

女王の王国に、仕える三人の騎士たちを

同時に“詰ませる”ことを計画します。

果たしてその悪魔的な脚本とは。


面白いと思っていただけましたら

下にある【★★★★★】での評価

そして【ブックマーク】での応援

よろしくお願いします。

皆様の声が何よりの力になります。


それではまた次の話でお会いしましょう。

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轟木とどろき 剛造ごうぞう

所属:洛北祥雲学園高等部 三年七組

年齢:18歳

肩書き:洛北祥雲初にして最強の不良・不良グループ総長

家柄:一般家庭(父は小さな建設会社を営む)

入学経緯:中学全国ベスト8の柔道実績を評価され、スポーツ奨学金で入学

キャッチコピー:

「優等生だらけの洛北で、ただ一人“異端”を貫く男。」

■ ビジュアル

身長191cm / 体重88kg

鍛え抜かれた体躯と圧倒的なフィジカル

黒髪短髪、鋭い眼光で近寄りがたいオーラを放つ

制服は着崩しているが、だらしなさよりも“威圧感”の方が勝つ

■ 人物像

中学時代、柔道界で名を轟かせた天才

高校入学後は柔道部のエースとして将来を期待されるが、**「柔道部廃部事件」**で部を失う

栄光を奪われた過去から、組織やルールに縛られず**“孤高の番長”**として生きる道を選ぶ

洛北祥雲学園始まって以来、唯一と言っていい本格的な不良グループを組織

他校の不良ともタイマンを繰り返し、20戦無敗の伝説を誇る

■ 学園内での立ち位置

洛北祥雲学園は、政治家・医師・実業家の子息が集う超富裕層エリート校

その中で、奨学金で入学した轟木は明らかに“異物”

しかしその圧倒的な強さとカリスマ性から、スクールカーストの外側にありながらも一目置かれる存在

「関わらない方がいい」――教師も生徒も、彼を刺激することは避けている

学園の1軍グループ「エリシオン」ですら、彼に対しては一定の距離を保つ暗黙の了解がある

■ 坂元要介との関係

常に行動を共にする右腕であり相棒

坂元は情報収集・交渉役、轟木はフィジカルでの突破役という鉄壁のコンビ

他校の不良たちからも「洛北祥雲の双璧」と恐れられ、学園史上最強コンビとして有名

■ 音無奏との関係

当初は接点すらなかったが、ある事件をきっかけに奏の“胆力”を認める

一度認めた相手には決して裏切らないタイプで、以後は奏にとって最大の後ろ盾となる

■ キャラクター総評

轟木剛造は、優等生と上流階級に支配された洛北祥雲学園において、

唯一、完全に異質な“暴力の象徴”として君臨する存在です。

スクールカーストの外に立ちながらも、誰もが無視できない――

まさに、学園始まって以来の「異端の王」。

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