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【3節終了】『英雄たちの愛娘』  作者: 西日爺
3節 天才と凡才

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66-2.リリアの見る未来

12月26日、2話?更新の2話目になります。

「……」

1人武具屋に来たリリアは、お茶も準備せずにのんびりと畳の香りと静かさに身を委ねる。

今思うと、ずっと余裕が無かった。両親が亡くなってからどこか不安と恐怖、辛さと絶望の中で足掻いていた。

ハジメとの喧嘩は気づくきっかけだったのだろう。おかげでどこか冷静に、落ち着きと安心を持って自分自身を見つめなおせた。

「……」

そのせいでとても恥ずかしい事をしたな、と自分の行動を見直す。

ハジメの才能に嫉妬し、それでも仕事だと割り切ろうとして、でも割り切れず、まともに名も呼べず抑えきれず、結局当たってしまった。

冷静とは程遠く、今思い出しても恥ずかしい。

けれど必要な喧嘩(八つ当たり)だったのだと実感している。

おかげで自分の未来を考えられるようになり、今後の目標と世界を見る覚悟が再び出来た。

今では信じられない程落ち着いている。何があってももう大丈夫、とても不思議な安心感の中にいる。

「あれ、リリアなの?」

「ソフィラ?いつの間に?」

ゆっくりと考え事をしていたら音もなくソフィラが襖を開けていた。

「覚えのない気配が居たから慌てて来たのよ」

ソフィラが部屋に入るとコトンと武器(ナイフ)を置く。「あれ?お茶は?」と不思議そうに見てくるのでリリアは「入れてない」と首を振ると、ソフィラはより不思議そうに首を傾げた。

「それで、今日はどうしたの?武器に何かあった?」

メンテナンスはまだまだ先だ。それでも来たので何かあったのかと少し不安そうに聞いてきた。

「ハジメとの件だよ。その、色々と迷惑かけたから」

リリアはそう言うと、横に置いていた箱詰めのお菓子を見せる。間違いなくソフィラは一切気にしていないが、リリアはこの辺りマメだ。

「気にしてないのに。仲直り出来たの?」

「えっと。無事に」

言葉にするのが恥ずかしく、少し躊躇いながら口に出した。その様子をソフィラはとても楽しそうに笑う。

「そうなのね。リリアがそんな表情するなんて、気配が変わったのはそのせいね」

「ちょっとどういう意味!」

どこか含みのある言葉にリリアは少し顔を赤くして文句を言う。けれどソフィラは気にしない。

「どういう意味って、ハジメと仲良くなったんだなって」

「……変な意味がありそうな言い方止めて」

「凄いわよ。どこかハジメの雰囲気もまとってるし。混じってるせいで知らない人だと思っちゃったわ」

「本当に、やめて」

もう隠せない程に真っ赤になったリリアは、恥ずかしそうに顔を俯かせる。けれどソフィラは嬉しそうに笑う。

「良い事じゃない。ずっと気を張ってたリリアが落ち着ける相手を見つけたって事でしょ」

「ソフィラ!」

誤解を招きそうな言葉に強く抗議するがソフィラは笑い返すばかり。心の底から嬉しそうなので、リリアもそれ以上強く言葉に出来ない。

けれどこれ以上ソフィラに言いたい事を言わせると大変な目に会いそうなので、早めに用事を済ませる。

「これお菓子。置いて行くね」

「貰っておくわ。ここのお菓子好きなのよね」

いつの日かアスティアが受付に渡したお菓子と同じ。王都では有名なお店だ。

「結婚報告でも良いのよ」

「何でハジメと結婚しなきゃいけないの」

「誰もハジメと、なんて言ってないわよ」

「……」

今の流れはハジメとでしょう!?と文句を言おうものなら、もっと酷い追及をされるだろう。これ以上喋るともっと遊ばれそうなのでリリアは顔を真っ赤にしながら口を閉じる。

ソフィラはその様子をとても嬉しそうに眺める。

これ以上遊ばれるのも嫌なので、ソフィラの笑顔を無視してさっさと帰ろうとする。

「私の用事はこれだけだから」

「そう?もっと惚気て行っても良いよ」

「何もないよ!」

リリアは文句を言いながらも立ち上がる。ソフィラもこれ以上虐めるつもりはないようで、ひらひらと手を振って素直に返した。

「リリア」

それでも、ふと何かに気付いたように声をかける。リリアはつい振り向いてしまうと、ソフィラはきっちりと座り、真剣な表情でリリアを見つめていた。

「な、なに?」

「お願いがあるの」

その畏まった様子にリリアも緊張する。ソフィラはじっと見つめると、ゆっくりと口を開いた。


「子供の名前は、私に付けさせてね」


「……」

「ちょっと待ってリリア!お菓子持って帰らないで!」

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