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【3節終了】『英雄たちの愛娘』  作者: 西日爺
3節 天才と凡才

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49.遅れた自己紹介

今日はX話を差し込みます。

「本当に、何もなく到着しちゃった」

「当たり前だよ、まだサイシアからも近いんだから」

1日目の繰り返しのように、何の問題もなく最初の街―ルベルへと到着した。問題が無さ過ぎるせいで、冒険者や軍が居るのか疑ってしまったほどだ。

まだ日は高いが、昼は過ぎている頃だろうか。まだまだ温かい時間帯だが、時期のせいか涼しさが目立つ。

「だって、軍もギルドもかなり招集してるよね」

「出番があるとしたらもっと先だよ。この辺はスノーライト(依頼者)も単独でよく来るエリアだから」

「……俺たち、何で呼ばれたの?」

馬車に揺られながら、のんびりと前を見る。サイシア以外の街を始めてみたのでハジメも興奮したが、今は落ち着いて今後やるべきことの整理をしている。

それでも予想していたよりも穏やかで、戦闘も何もない。そのため、何を予想して良いのか分からなくなっていた。

「護衛もあるけど、大きな理由は顔つなぎだね。今後活躍が見込める人はお互いに知っておきたいって言う思惑があるの。後は早いうちにこういう場を経験させて、成長のきっかけにするぐらいかな」

リリアが簡単に言う。その言葉に驚いて顔を向けるがリリアは全く気にしない。

「それは軍も一緒かな。スノーライトは顔つなぎと実務メインだけど。それでも、普段の業務や依頼じゃ見えない部分もあるからね」

「だから普段とは違う環境でどうなるかを見てるの?」

「うん。ただ全員を試すわけにもいかないから人選は気を付けてるはずだよ。ギルドは経験者を基本に、成長が見込める人や普段の行動に問題が無い人。その辺りを中心に選出する感じかな」

「アスティア達は良いんだ?」

「あの時の事?あんなトラブルはよくあるし、その後が一切問題ないから大丈夫」

リリアが一切気にせずに理由を羅列する。その姿は冒険者と言うよりは教師と言った方が適切だ。

「それ、俺に言って良いの?」

ハジメは見定められる側なので知ってしまって良いのか疑問を持つが、リリアは気にしない。

「キミの事だし、既に予想は出来たんじゃないの?」

「そりゃあ、ね。何で俺がCランク相当(この依頼)に呼ばれたのか考えたら思いついたけどさ。でも評価されてる自信なかったし、確証は全くないよ」

ハジメはすぐに前に目線を向けると、不安を口に出してしまう。

「大丈夫、少しは自信持ちなよ。親方に評価されたんだよ」

「親方に?」

「うん。あの人は根っからの実力主義者で、ダメだった人はすぐに呼ばなくなるから」

「……本当?」

「本当。有名だから」

リリアが嬉しそうに褒める。けれど持ち上げて終わらせず、しっかりと落としに入る。

「だから、この後で評価落とすわけにはいかないからね」

「……」

「こら。嫌そうな顔しないの」

リリアの言葉に、ハジメがすごく嫌そうな顔をして溜め息を吐く。この後ハジメは、と言うより今回初参加の4人にリリアを含めた5人はクロッサが主催の食事会に参加する。

公式な物ではなく初参加の人を集めた顔合わせに近い。時間になったら向かう予定になっている。

「だって俺、テーブルマナー何て知らないぞ」

「大丈夫だよ。言ったでしょ、軍の新顔も来るって。堅苦しい物じゃない、本当に顔合わせみたいなものから。……私も出来れば行きたくないし」

「えっ」

ハジメが慌ててリリアを見る。そこには悪だくみをするかのように微笑みながら、唇に指を当てて「秘密ね」とでも言うかのようなリリアが居た。

「リリアが言っちゃうイメージ無かった」

「堅苦しくないとはいえ気を使うからね。私だって、ご飯は落ち着いて食べたいよ」

疲れきったように言う。その様子は普段のリーダー然とした頼もしさは無く、ハジメと同い年の普通の女の子だった。その様子に、ハジメは無意識に言葉が漏れてしまう。

「……依頼終わって王都(サイシア)に戻ったら、依頼達成祝いにご飯行かない?」

「良いね。エリスも誘って、のんびりと食べたいな」

「当然、いつもの場所で」

「もちろん」

目の前の苦労から逃げるようにとても気楽に笑いあう。

ただの仲間、と言えばそれまでだ。けれどどこか変わってきている関係をハジメは意識せずに素直に受け入れていた。



街に着いて、まずはスノーライト店舗にて荷下ろしが行われていた。ハジメとアマラも剛力が買われ、メイン戦力としてずっと働いて、2時間程経つとやっと一区切りがついた。

そのままスノーライトの人達に混じって少し休憩していると、リリア、アスティア、ラナラスがギルドから戻って来た。この街(ルベル)ではギルドの空き部屋を宿代わりに使える事になり、挨拶と簡単な掃除、荷物の持ち込みを行った後だ。

そのまま時間になったため軽く汚れを落として合流したとの事。ちなみにエリスはレイドへの参加は2回目、リリアと違いサポートとしての役割も無いため部屋で待っている。

ちなみにハジメとアマラに合わせて移動着のままになっている。

「自己紹介が遅れたな。俺が今回の隊商レイドの代表になるクロッサ・ベータ・ルベルだ」

クロッサはそう自己紹介すると、目の前にあった自分のカップを空にする。とても美味しそうに飲むがアルコールがかなり強い酒が入っていたらしく、軍の新顔から「うわっ」と小さく声が上がった。

「細かい事は気にしなくて良いから食え。自慢の店のを持って来たから旨いぞ」

そう言ってクロッサは、近くのお店や屋台から買い漁って来た食べ物を勧めて来た。テーブルいっぱいに広げられたそれらはとても良い匂いを放っている。

「2人には世話になったな。おかげで予定よりかなり早く荷下ろしが終わった。えっと……」

クロッサはそこで区切ると、ハジメとアマラの顔を見る。ハジメは慌てて冒険者タグを見せて自己紹介しようとしたが、「そこまでは要らない」と手で制止させらたので、言葉だけにする。

「ハジメです。ハジメ・アルファ・アズマと言います」

「アマラ。アマラ・クドラ」「……」「で、です」

「ハジメとアマラだな。助かった」

ハジメの自己紹介にアマラも追いかけるが、言葉が足りなかったため隣に座るアスティアが周りから見えないように足で突く。慌てて「です」を付けるが、クロッサが言葉使いを気にするそぶりはない。

「それで、そっちの子は?」

「ら、ラナラスです。ラナラス・タウ・クドラと、言います」

「新しいギルド職員か。今後頼むぞ」

クロッサはそう言うと傷が目立つ顔で微笑む。その表情に驚いて一瞬びくっとするので、クロッサが少し悲しそうにする。

やらかしたラナラスが焦るが、リリアがすぐにフォローを入れた。

「ラナラス、怯えないで良いから。クロッサさんは細かい所で怒るような人じゃないよ」

「リリア先輩(さん)の言う通り、この程度で怒る意味がないからな。顔が怖いのは事実だし。それに、今はただの飯だ。そんな細かい事を怒る場じゃない」

クロッサはそれ以上気にする様子もなく表情を戻すと、手元に置いていた肉を食べる。元々この街(ルベル)出身のクロッサにとっては懐かしいのだろう、どこか感慨深く食べている。

「それで、今年の軍は2人か」

味わうのもそこそこに、クロッサは軍が連れて来た新顔2人に目を向ける。

急に話を振られたので2人は少し慌てながらも背筋を伸ばした。

「アビエス・サイシアです。戦闘小隊隊員候補です」

「フィルマ・サイシアです。同じく戦闘小隊隊員候補です」

「アビエスとフィルマ、だな。今回はよろしく頼む」

クロッサはそのまま手で「食いな」と勧めるので、2人は素直に従う。

デンドン(デンドンさん)。今年の軍は2人か」

「これでも頑張ってる。4人も新顔を出せるギルドが凄いんだ」

そう言いながら軍の代表―デンドン・サイシアは気にせず酒をあおる。クロッサも気にする様子もなく別の酒を開けると、デンドンも全く気にせずその酒を受け取り酒を注ぐ。

(うち)だって新人の教育はしっかりしてるつもりだ。それでも外に出しても問題ないと言えるレベルは少ないんだ」

少し酔ってるのだろう。まるで友人に愚痴をこぼすかのように、溜息混じりに思いを零す。

普段と様子がデンドンにアビエスとフィルマが不思議そうに見る。するとクロッサが少し優しそうに笑う。

「仕方ねぇよ。俺たちだってリリア先輩(さん)には敵わねぇんだ。実際この立場に立つと、リリア先輩(さん)がどれだけ凄いか身に染みてる」

「無理矢理鍛えればそこそこにはなるが、あくまでそこそこだ。そこからもっと強くするにはそいつらの適性を見極めないといけないが、それが難しすぎる」

お互いに酒を渡しあい、どんどん加速していく。どこか緩く、けれどお互いの愚痴にピリピリし始め、リリアが呆れる。

「クロッサさんもデンドンさんも、飲み過ぎです。少し抑え――」

「良いじゃねぇかよ、リリア()()。こういう場くらい、気を抜かせてくれよ」

「新顔も居るんですよ。完全に酔ってますよね?それと呼び方――」

「この程度を気にするような奴は連れて来ないだろ。リリア先輩も、砕けた口調でも気にしねぇぞ」

「……」

とても軽い調子の2人に、リリアは溜め息を吐く。追いつけないのは新顔勢だ。アスティアが困惑しながらリリアを見ると、とても困ったような苦笑いを浮かべて溜め息を吐く。

()()()()()()()()も私が鍛えたの。クロッサはギルドに居たから頃。デンドンは隊商レイドに参加するようになってからね」

色々と諦めて呟く。そのまま少し自棄気味に自分に継がれたお酒を一口飲んだ。

「そのせいでこういう私的な場だと2人ともすぐに気を抜くんだよね。ちゃんとした場だと全く問題ないのに」

「久しぶりに会えた友達との飯だ。気を張っても勿体ないだろ」

「……はぁ」

クロッサのそれっぽい理由にリリアは溜め息しか吐けない。デンドンはしっかり酔ってきたのか「これ旨いな」とリリアの呆れも無視して食事を進める。

「……」

ハジメが「リリアが嫌がってた理由って」と視線を向けると、もっと深く溜め息を返してきた。

「……ほら、みんなも食べて。この2人、気にせず食べちゃうから」

リリアが全てを諦める様に勧めると、それぞれの手が動き出す。

やっと食事会は始まった。


「それでだ。デンドン、何か面倒事か?」

「……」

酔いが完全に回ってきた頃、クロッサは普段と様子の違うデンドンに話しかけた。その言葉に特に驚きもせず、小さくため息を吐く。

「その様子だと頼み事、か」

「……本当に、クロッサは気が回るな」

「いつもと全く違うからな。さすがに気付くぞ」

デンドンがとてもありがたそうに言うとクロッサが気楽に笑う。

「それで、何の頼み事だ?」

「頼みたいのはギルドになんだ。ハジメ、アマラ」

「俺にですか?」

「私?」「……」「……ですか?」

急に振られた事に驚きながらも返事をする。アマラはアスティアからの視線に慌てて言葉を付け足した。

「2人とも剛力で、しっかりとした実力があると聞いてる。そこで、(うち)の2人と訓練試合をして欲しい」

「「お願いします」」

アビエスとフィルマがすかさず頭を下げる。考えてもなかった頼みに、ハジメもアマラも困ってアスティアを見る。アスティアも困っているがすぐに頷くと、デンドンに目線を向けた。

「デンドンさん。なぜアマラとハジメに?」

「リリア先輩の指導を受けた剛力だからだ。特にハジメの訓練は目立つからな、アビエスとフィルマも見た事はある。だからどれほどの物か、こいつらに知ってもらいたいんだ」

デンドンが頭を下げる。アスティアが慌てて「頭を上げてください」と止めるが、それでも気にしない。

「こいつら、同年代だとかなり強くてな。だからこそ今後のためにも、色んな奴と経験させたいんだ」

デンドンの言葉に気を抜いたのか、酒を飲みブレーキが外れかけていたアビエスが口を開く。

「最初は、ギルドのリリアが強いって聞いたのでお願いするつもりだったんだ。ただデンドンさんがありえないって言って」

「当たり前」

アビエスの言葉(戯言)に何人言ったか分からない程完璧にハモり、驚いてアビエスが黙る。その信頼にリリアは嬉しそうに微笑むと、何かを思いついた。

「そうだね」

ぼそりと呟くと、そのまま少し考える。視線が集まるがリリアは気にせずに、結論が出るとニコリと笑った。

「私も2人には色んな相手を経験して欲しかったんだよね。丁度いいし受けて良いと思う。アスティアはどう思う」

リリアはそう言うと、最終判断をリーダー(アスティア)に委ねる。アスティアの答えは決まっていたようで、一緒にニコリと微笑む。

「もちろん、良いですよ。ただアマラは力加減が苦手なので、大怪我しない人選をお願いします」

「そこは自己責任でやらせ――っ」

デンドンが軽く言うと、アスティアが本気で睨む。不意打ちとは言え、軍の代表が怯むほどに意志を乗せている。

「例えそうだとしても、アマラ(こちら)に影響が出るので」

「……そうだな、分かった。フィルマ、気をつけろ」

「はい!」

デンドンはそれだけ言うと、再び酒をあおる。先ほどと違い、とても楽しそうに。

「アスティア、だったな」

「はい」

「今ランクはいくつだ?」

「Cランクですが」

アスティアが戸惑いながらも答えると、デンドンは少し悩むと何かを企むように微笑んだ。


「何かあったらいつでも言え。良い役職を準備する」


「えっ……」

「何言ってるのデンドン!?」

誰もが分かる引き抜き宣言にアスティアが固まり、リリアが引き留めるように叫ぶ。酔っ払いの戯言とは思えない程、目線はしっかりとアスティアを見ていた。



「ならアマラとハジメはこっちが貰うぞ」

「クロッサ!!」

リリアの怒りは効果が薄いようで、クロッサは笑いながら酒をあおった。

今までで一番苦労したお話。

話がうまくまとまらず、1度ほぼ全部書き直したと言う裏話を添えて。


誤字の修正:1ヶ所(2025/10/3)

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