逃避
前世の性欲を持て余している俺は、美女の裸体を切に見たかった……
しかし、ネットを探しても殆どが金持ちのオッサンの気持ち悪いヌードばかり……
女性もいるが、金持ちアピールのギラギラ感満載。
しかも、美女は少ない。
当たり前か。
前世で、いいところの坊ちゃんが、アダルトビデオに出るわけがなく。
絶望的に少なかった。
そして、俺は、前世と同じく、二次元に逃げることにした……
もちろん、二次元のエロ漫画も金持ちオッサンが満載だ。
なので、俺は自分で描くことにする。
性欲の力は偉大だ。
俺の画力はメキメキと上がっていった。
自分で描いて気づいたことがある。
自分の絵は意外と使えるということだ。
自分の好きなタイプの女性、展開、フェチなど全て自分の思い通りにできる。
エロ漫画家というのは、自分の絵を一番使っているのではなかろうか?
と、前世の草田の母親(腐女子)を思い浮かべながら、くだらないことを考える。
少し自信を持った俺は、同人サイトにそれを販売した。
結果は惨敗だった……
当たり前か、美女は前世の金持ち男。
金持ち男のエロい描写など需要がないのは明白だった……
仕方なしに、前世のエロ漫画の話をパクり、それをそのまま、『女男貞操逆転』として販売した。アイデアが面白いということで、少し売れた。
しかし、感想欄で、「アイデアはいいのに、貧専なのが残念」と書かれる。前世だとブス専という意味なのだろうか。俺は売れるため、自分の趣味を捨て、金持ち中年男のエロシーンを描く。
販売数は上がるものの、自分の美女を描きたいという欲求は日に日に高まっていった。
そして、俺はGLというジャンルがあることに気づく。
これは前世のBLであり、BLは金持ちイケメン達の絡みが多いのに対し、GLは金持ち美女達の絡みが多い。
ようやく、自分と社会の需要がマッチした!
いや、正確にはマッチしてはいない。
胸を舐めるシーンは、まず自分で描いて楽しんだ後、その上に金のブラジャーを描き足すことで俺は世間の需要を満たす。
こうして、俺は高校卒業後、GLを中心とした腐男子向けエロ漫画家として生きていけるようになった。
しかし、モテないのは変わらなかった。
俺は、魔法使いになった後、晩婚で娘を授かる。
色々、振り回された人生だったが、妻は、貧乏だけどヲタク仲間、かつ、優しく理解のある女性で、娘と3人で幸せに暮らした。