ホステスクラブ
日々絶望する中、
モテたい!
という欲求だけは、強くなっていった。
その本能は誤魔化しようがない。
俺は頭を絞った。
前世でも、金持ち女がモテるところ。
そう、それはホストクラブ!
高校生だが、すでに18歳を迎えていた俺は、新宿歌舞伎町に向かう。
早速、チャラそうなギャルに声をかけられる。
「お兄さん、ホステスクラブなんてどう?」
俺は立ち止まる。
「お兄さん、カッコいいからから、イケメン割があるよ」
そう、この世界のホステスクラブでは、容姿の良さによって補助金が出る。
俺は、ギャルに促されるまま、ホステスクラブに入った。
「「「いらっしゃいませー!」」」
けたたましいディスコ音楽に負けず、体育会系的な元気な女性達の挨拶が飛んできた。
そして、美人は少ない……
まずは、ホステスを指名する。
トップ層は美人じゃない人ばかりだった。
でも、これってお得じゃない?
こちらの美女は競争率が低い。
そしたら、俺はこの世界ではブス専になれる?
ああ、ブス専ってなんて幸せな生き方なんだと思う。
と、思ったが、下の方も大して変わらなかった。
そうだよな。前世で、根っからの金持ち坊ちゃんがホストにならないように、こちらの美女はホステスにはならない。
そもそも、前世の金持ち男がモテるように、こちらの美女もそれなりにモテる。美女の競争率はそんなに甘くない。
補助金が欲しいのか、俺についたホステスは、どんどん高そうな酒を勧めてきた。
しかし、補助が出るので、俺にとっては高い金額ではない。
どんどん、酒を頼む。
しかし、俺は20歳未満であるため、ホステスが代わりにお酒を飲む。
美女ではないが、周りのホステス達がチヤホヤしてくれるのが気持ちよくなってきた。
そして、俺は調子に乗って、ドンペリのシャンパンタワーを頼む。
「シャンパンタワーいただきましたーーー!!」
「「「ハイ、ハイ、ハイ、ハイ」」」
掛け声が続く。
俺はリンゴジュース片手に乾杯する。
その後も、どんどん頼む。
これだけ頼んでもお年玉レベルという、初めてイケメンで良かったと思った。
「「「イッキ、イッキ、イッキ」」」
さっきから、俺についていた女がそのコールに応え、シャンパンを瓶ごと一気飲みする。
「「「うぉーーーー!!」」」
場の雰囲気が頂点に達した時、一気飲みした女は、シャンパン瓶片手に、
「本当は、お前みたいな貧乏な男なんて相手したくねぇんだよ。補助金いっぱい使いやがって」
と、俺に凄む。
急いで、店長とみられるサングラスをかけた女性が謝りながら、彼女を奥に引っ込めた。
そうだよな。前世のホストクラブのホストも同じこと思ってんだろうな。
ブスなんて相手にしたくねぇ。
金があるから嫌々相手してんだよって。
そう、イケメンの俺は、彼女達にとって、性的魅力はない。
イケメン割に寄ってきて、本音は嫌がって接客している。
仕事が終わったら、彼氏と一緒に、俺のことネタにして笑ってるんだろうな。
俺は急激に冷めてきて、お金を払うとホステスクラブを後にした。
前世のホストクラブ。
金持ちの女が、普通に稼げないイケメンの男達を楽しむ。
一方、こっちのホステスクラブ。
金持ち女達が、貧乏なイケメンの男を楽しませる。
変わんねえじゃねえのか?
いや、逆か。
性的魅力がある方が、性的魅力のない方を楽しませる。
内心では嫌だと思いながら……
俺は、その後、ホステスクラブには二度と行かなかった。