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満員電車

 俺の記憶には今世のものもある。高校は、前世と同じ。ただし、スポーツ推薦で入っている。モテたいがため、少しスポーツにも能力を割り振った。しかし、残念ながら、怪我で辞めている。


 高校へは、電車で向かう。最寄り駅までは徒歩だ。

 駅に着き、通勤通学途中の人々を観察する。

 男女共に同数いる。


 男女貞操逆転には、幾つかのパターンがある。

 その一つは、男子の割合が極端に少なく、ハーレムになり、貞操逆転するというものだ。

 しかし、この世界は違うようだ。まあ、パラレルワールドだからな。


 今は、朝8時。

 いつもの如く満員電車だ。

 俺は満員電車が嫌いで、前世では遅くなってもいいから普通列車に乗っていた。


 しかしだ!

 男女貞操逆転で、満員電車と言えば、痴漢ならぬ、痴女列車!

 前世では、ほとんどいない、痴漢してくる痴女がいるはず!!


 俺は、混んでいる快速列車の乗車列に並ぶ。

 隣に男性専用車両があった。

 もちろん、その車両は避ける。


 列車に乗ると、予想通り痴漢に最適な混み具合。

 痴漢してくれそうな女性を探すため、周囲を見渡す。


 周りを見て気づいたが、前世と若干違う。

 女性は薄化粧であまり着飾っていない。

 一方、男性は高そうな腕時計、ネックレス、ギラギラしたスーツやネクタイをつけて着飾っている。


 やはり、男女貞操逆転だとそうなるのか。

 でも、彼らの服装はギラギラしていて趣味が悪い。


 次の駅に停まる。

 俺の隣に、30代ぐらいの女性がなだれ込む。

 30代の女性、つまり、前世だと30代の男性だ。

 痴漢しそうだよな、すごい偏見だけど。

 いきなり若い女性をターゲットにするのはハードルが高い。

 なので、まず、目の前の彼女にする。


 どうやって、痴漢させるか。

 ひとまず、手でも触れてみるか。

 そして、俺のイケメンフェイスで、笑顔で謝る。

 向こうが照れれば、脈アリだ。

 そこから、痴漢を誘う。


 俺は偶然を装い、軽く彼女の手に触れる。


 そして、笑顔で、


「すみません」


 と目を見てニコッと謝る。


 超イケメン高校生が、爽やかに謝る。

 これで落ちるはず。




――チッ




 彼女は、苛立った表情で舌打ちをした。


 えっ、舌打ち? 酷くない?

 イケメンが、爽やかに謝ってるんだよ。

 30代男性が美少女高校生と手を触れて笑顔で謝られるのはご褒美だろ。


 意気消沈した俺はそのまま高校がある駅まで大人しくする。


 着くまで、女性と隣り合う機会は幾つかあったが、なんとなく冷たい態度を取られているような気がした。


 美醜逆転世界?


 いや、容姿のパラメーターはほぼマックスにしたはず。


 疑問に思いながら、電車から降りる。


 と、その時!




「やめてください!!」




 後ろから男性の声がした。


 振り返ると、禿げた中年男性が、若いOL風の美女を指差す。

 周りは、どうした? といった感じに少し騒ぐ。


 彼女が逃げようとすると、



「あの女性を捕まえてください!」



 と、中年男性が叫ぶと、女性の何人かが、プラットフォームで早歩きしていた彼女を捕まえる。


 なんだ? 痴漢か?

 流石に禿げた中年男性をわざわざ痴漢する美女がいるか?


 捕まった女性は喚き散らす。


「テメェが、札束で厚くなっている財布を見えるようにしてるのが悪いんだろ! 誘ってるようなものだろ!」


 スリなのか?


「でも、犯罪ですよ。財布を触ろうとするのは」


 禿げた中年男性は諭すように言う。


 財布を触ろうとする? 盗るという意味か?


 俺は、その続きを見たかったが、後続の人に押し出されるように、その場を去った。

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