パラレルワールドへ
気づくと、俺は、白い霧が立ち込める中で、倒れていた。
ゆっくりと起き上がると、
「お前は、誰だ!」
若い女性の声が聞こえる。しかし、その口調は中年男性のようだ。
その声の方へ顔を向けると、女神と思わしき人が居た。
そして、その後ろには、霧に隠れた神殿のようなものが見える。
ここは天国か? 俺は死んだのか?
「…………ええと……本を開いたら、いきなりここに飛ばされて……」
俺は恐る恐る答える。
「……本? アイツ、やらかしたな。ゲートを適当に保管しおって……」
「ゲート?」
「そうだ。お前はパラレルワールドのゲートを開いてしまったのだ。残念ながら、あと30年は戻れない。ウチの世界の者がやらかしてしまったようだ。すまない」
女神は軽く頭を下げる。
マジか……。家族や友達の思い出が頭の中を駆け巡る……。
「代わりと言ってはなんだが、私のできる範囲で、お前の希望を一つ叶えた上で、我々の世界へ送ってやろう」
……これは、定番の異世界転生なのか?
「……それは、最強魔法の能力を付与するとかですか?」
「魔法? そんなものはない。我々の世界は、お前達の世界のパラレルワールドだ」
残念だが、良かった。また、家族と会えるのか。
「ただし、お前達の世界と異なり、性的なものへの捉え方が男女で逆転している」
男女逆転? もしかして……俺は興奮を抑えきれず、
「そ、それは、男女貞操逆転ですか? ハァ、ハァ」
息を荒立てながら訊く。
「…………まあ、そういう言葉で表現する者もいる」
よっしゃーーーーーー!!!
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
「…………」
女神は引いているが、興奮が収まらない。
スクールカースト3軍といえども、俺の容姿はそこまで悪くない。穴モテならぬ、棒モテできるはず!
いや、待て。
「さっき、望む形にと言いましたが、イケメンになることも可能ですか?」
「過去を多少変えるのが大変だが、それは出来る。やってやろう。お前の望みはそれで良いか?」
マジか!
「ハァ、ハァ、不老不死とかできますか?」
「残念ながら、世界のルールを超えることはできない。あと、叶えられるのは一つだけだ」
男女貞操逆転なら、イケメンは前世の美人だ。
若い頃は、いろんな美少女とヤリまくり、飽きたら金持ちの女を捕まえる。
超イージーモードの人生を送ってやるぜぇ!
「それではイケメンに。ハァ、ハァ……」
「…………容姿端麗になるので良いか? ただし、他のパラメーターが下がるが……」
異世界チートではないらしい。
「そうなんですか……どのくらいですか?」
「こちらで決めるより、お前が決めた方が良いだろう。これがお前の現在のパラメーターだ。これを割り振れ」
唐突にゲームで出てくるようなステータス画面が現れた。
俺のステータスは、すべてにおいて凡そ平均レベル。
前世では、美人に学歴や金は必要ない。男を魅了できればそれでよし!
俺は、『容姿』の比重を大きくし、『学力』や『家柄』をメインに他のステータスを下げた。
「それでよいのだな。それでは、転送するぞ」
女神がそう言うと俺は意識を失った。