プロローグ
「美人っていいよなぁ。生まれ変わったら美人になりてえ〜」
ヲタクでカースト3軍に属していた俺は、クラス一の美人に1軍男子共が集っているのを見て、同じヲタク仲間の草田にそう呟いた。
「この前、深夜番組でやってたんだが、美人だと1時間デートするだけで10万円貰えるらしいぜ。俺達のバイト2ヶ月分を、美味しい飯を食べながら貰えるって、前世でどれだけ徳を積んだんだよ」
「クソっ、羨ましい。羨ましいっ。ああいう女は、若い頃、イケメンと恋愛を楽しんで、そのあとは、金持ちと結婚して、超イージーモードの人生を歩むんだろうな。男は、イケメンでも甲斐性ないと結婚できねえし、そのうち容姿は衰える。人生安泰じゃない。ああ、美人になりてえ〜」
「まあ、俺達には、縁のない話だな。でもな、俺達にはコレがある! 頼まれていたものを持ってきたぞ」
草田は18禁コミックを数冊出す。
「おお、男女貞操逆転!! ありがたや、ありがたや」
こいつの母親は、見た目がもろ腐女子のエロ漫画家であり、BLの他、男女貞操逆転も描く。そして、俺はその男女貞操逆転にハマってしまった。
男女貞操逆転とは、女の方が性欲強く、性に大っぴらであり、男達が盛った美女達にヤラれるというシチュエーションを楽しむエロ漫画の一つのカテゴリーである。
俺は、一捻りある男女関係と、美少女と金を貰ってヤレるという世界観が気に入っている。
「よくこんなアイデア思いつくなぁ。ああ、俺もこの世界に行きてーなー」
俺はパラパラと、借りた本を軽く見る。
「お前、ほんと好きだな、男女貞操逆転」
「金を貰ってヤレるなんて天国だろ。こんな世界でイケメンに産まれれば、人生超楽勝だろうな」
そう言って、最後の一冊を手に取った。
その本は、古ぼけた装丁だった。
「この本だけ、古くね?」
「ああ、棚の後ろにあったからな」
「お前、これ、見たのか?」
「いや、自分の母親の使い古したエロ漫画なんて見たくねえよ」
それもそうだな、と思い、本を開く。
と、その瞬間!
中から眩いばかりの光が俺を包み込み、俺は本の中に吸い込まれてしまった。