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理の世界  作者: 和音
8/26

二度目の初戦 『重力の支配者』

あらすじ

剣士であるコングラー・ディルメンクと魔法使いのトムファー・イルアーは、魔王を倒すために必要な鍵のパーツを集めるべく、4人の『理の支配者』を倒す旅をしている。

前回、トムファーは念願のある程度自由に瞬間移動することのできる薬を作り、2人はそれを使って、東にいる支配者『重力の支配者』の住処に最も近い『ガルヴァー市街地』に来た。

翌日、2人は『重力の支配者』がいるとされる地下室へと潜っていった。

やっっっっと戦闘シーンだ!

上手いかどうかは別として楽しく書けた!

まあそんなことは置いといて、本編へGO!

コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ……

2人の足音が深く、深くへと消えていく……


10分程度だろうか、2人がゆっくりと歩いていたからか、決して短くない時間が過ぎた時、2人は最深部に到着し、即座に戦闘態勢に入る。

左にいるコングラーは、右手で握った剣を体の前で斜めに構える。右にいるトムファーはバッグから杖を取り出し、左手で地面と垂直にたてる。

なぜなら、その部屋、発光する石の壁に囲まれた地下室の中央に、()()がいたからに他ならない。

大きさは大の大人と同じくらいの、体をボロ布で覆い、頭には深々とフードを被った、手ぶらな何か。

そう、2人の次の敵、二人目で一人目の支配者、『重力の支配者』。

「ヨク、来タナ」

ゆっくりと、そいつは話す。

2人は一言も話さず、それを、ただ、聞く。

「オ前達ガ、今マデドノヨウナ生活ヲ送リ、ドノヨウナ旅ヲシテキタカ、私ニハ分カラナイ」

カタコトの言葉だが、それがより不気味さや恐怖を増長する。

「ダガ、一ツダケ確カナコトガアル」

そこで一旦言葉を区切り、

「オ前達ノ旅ハ、今、ココデオワル」

と、言い終わるや否や、『重力の支配者』は呪文を唱える。


「重力魔法『永落下』?」

「ああ、『重力の支配者』が主に使う魔法だ」

場面変わって、地下への階段の途中。

コングラーはトムファーに、『重力の支配者』について聞いたところ。

「トムファーの呪文と違うんだね」

そう、トムファーの呪文は、魔言語というものでできているが、『重力の支配者』の呪文は、人の言葉でできている。

「まあ、呪文なんて魔法の力を上げるためのもんだから、ほんとはなんでもいいんだよ。むしろ、俺の呪文の方が珍しいくらいだ」

「ふーん」

「まあそれは置いていて、重力魔法『永落下』についてだな。ジャンプした後、普通は下に向かって落ちるだろ?」

コングラーはジャンプする。

コングラーの足が石を叩き、大きな音が辺りに響く。

「そうだね」

「それが重力ってやつだ。その重力のかかる方向を変えて、その方向に落ちていく。これが重力魔法『永落下』。当然落ちてるわけだから、だんだん速度が上がる。で、超高速になったら斬りかかる。これが、あいつの主な戦い方だ」

「やけに詳しいね」

「お前が村で鍛錬してる間に色々調べたからな、大体のことは知ってるさ」


トムファーが言っていたことは、結論から言ってほとんど当たっていた。

しかし、トムファーが唯一知らなかったことがある。

それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

そのために、2人は苦戦を強いられることとなる……


場面戻って、『重力の支配者』がちょうど呪文を唱え終わったところ。

フードの奥にある目が紫に光ると同時に、『重力の支配者』の体が、魔法によって天井へと落ち始める。

2人は身動き一つとらない。

いや、とれない。

大きな緊張が、その部屋を包み込んでいる。

『重力の支配者』が半分くらいまで落ちたところで、落下方向が上から右へと変わる。

壁まで行ったら今度は前へ、次は左、そして後ろと、地下室の床と天井のちょうど真ん中あたりを、2人から見て時計回りにぐるぐると回る。

徐々に徐々に速度を上げながら。

ビュンッ、ビュンッ、と、高速で回る『重力の支配者』から出る音のみが、地下室のあちらこちらに反響する。

それ以外には、2人の唾を飲み込む音、しかない。

すでに2人は目で追えなくなってしまっていた。


音速を超えたかどうかのその時!

「おわっ?!」

突然、コングラーの後ろから『重力の支配者』が近づき、どこからともなく取り出した石の大剣で斬りつけた!

いや、それだけなら、殺気に気がついたコングラーの剣がそれを受け止めていただろう。

しかし、そうはならなかった。

なんと、『重力の支配者』は斬りかかると同時に、重力魔法『永落下』をコングラーに掛けたのだ!

2人が、それを生物にも掛けられるということを知らなかった弊害がここで出る。

その結果、剣で受け止める直前、『重力の支配者』の大剣がコングラーの右脇腹に直撃してしまった。

「っ!!」

ベキッ、と、骨が折られる乾いた音が響く。

コングラーは後方に飛ばされ、柱にぶつかり、気を失う。

右脇腹からはドクドクと血が流れている。

「コングラー!」

駆けつけようとしたトムファーに、『重力の支配者』は躊躇いなく斬りかかる。

「クソッ!」

トムファーの左目が紫に光り、大剣の動きが止まる。

「……動キヲ止メル魔法カ」

トムファーと『重力の支配者』は、向かい合ったまま後方に飛ぶ。

トムファーは、ちょうどコングラーのそばに来た。

「……よかった、まだ、生きてる」

トムファーはバッグから包帯を取り出し、手早くコングラーの傷を処置した。

対する『重力の支配者』は、身に纏っているボロ布から杖を取り出す。

いや、そのボロ布の一部が白い穴になっているようで、そこから取り出す。

あの大剣もそこから取り出したのだろう。

「重力魔法『引』」

『重力の支配者』の目が光り、突然天井が崩れ落ちる。

石でできた杖によって強化された魔法で、天井が引っ張られたのだ!

「ヤバッ!」

トムファーは、すんでのところで降り注ぐ石から脱することができた、が、トムファーにそれ以上の余裕はない。

そのために、気を失っているコングラーは、逃げることができず、石の下敷きとなった。

「アトハ、オ前ダケダナ」

『重力の支配者』はトムファーをじっと見つめて、そう言った。

「……それはどうかな」

トムファーは、杖をしまい、バッグから剣を取り出しながら、そう言う。

「あいつは……コングラーは、頭は弱いが腕っぷしだけは強い。あいつの強さは異次元だ。計り知れない。だから、これしきのことで、落石程度のことで、死ぬわけが、ない」

それは単なる虚勢か、それとも真理か。

どちらにせよ、一対一に変化はないが。

「……イクゾ」

そう言い放った『重力の支配者』は、石製の弓矢を取り出し、一度に五本撃った。

と同時に、

「重力魔法『永落下』」

『重力の支配者』は魔法を唱える。

「ッ!」

そのために、放たれた矢は、トムファー目掛けて落ち続ける。

「ハッ!ヤッ!テヤッ!」

トムファーはなんとかそれを剣で受け流し、五本全てを壁に深々と突き刺す。

しかし、それで全てではない。全てな訳がない。

当然のように、『重力の支配者』は矢を放ち続ける。

「イツマデ、モツカナ」

少し笑いを含んだ声で、『重力の支配者』は言う。

対するトムファーは剣で受け流し続ける。

何本も、何本も、何本も、何本も。

『重力の支配者』の攻撃が止むまで。

一つ奇妙なことに、魔法を使わない。

呪文を唱える暇がなくとも、魔法は使えるはずなのに、だ。


「ナカナカ、ヤルナ」

ちょうど三十本目の矢をトムファーが壁に突き刺した時、『重力の支配者』は感嘆混じりの声を上げた。

当のトムファーは、完全に息が上がってしまっている。

魔力でなんとか耐えているようだが、限界は近いだろう。

「少シ、本気ヲ出ソウカ」

弓矢をしまい、次に取り出したのは、つい先ほどコングラーを斬り、コングラーの血が付着した石製の大剣だった。

トムファーの顔に絶望が浮かぶ。

「サア、私ヲ楽シマセテミロ、重力魔法『永落下』」

『重力の支配者』は、自分自身とトムファーの両方にその魔法を掛けた。

お互いがお互いに落ちるように———!

「イッ!」

トムファーは、突然だったために、コングラーほどではないが左腕に傷を負う。

剣を持っている方の手だ。

剣で受け止めようとしたが、失敗してしまったのだろう。

「マダ、終ワラナイゾ、重力魔法『引』」

「おわっ!」

トムファーはさっきよりも強い力で引っ張られ、そこを目掛けて『重力の支配者』は大剣を振るう。

「っ!」

トムファーはすんでのところで受け止めることができたが、その衝撃までは無くせなかった。

「ガハッ!」

衝撃によって地面に叩きつけられたトムファーは、『重力の支配者』に上に乗られ、首元に大剣を押し付けられる。

トムファーはなんとか剣で押し返そうとするが、それが叶うことはなかった。

「……驚イタナ、マサカ、コレデモ倒レナイトハ」

「クソがっ!」

トムファーは抵抗するが、段々と大剣を押し付ける力が強まり、逆に押し返される。

『重力の支配者』の魔法だろうか。

「ダガ、コレデ、オ前達ノ旅ハ、終ワリダ」

トムファーは『重力の支配者』の後方をチラリと見て、そして、笑う。

「ナニガ可笑シイ」

「……確かに、終わりかもな」

その声には、幾らかの希望が含まれていた。

「「お前がな!」」


ザンッ!


「!!」

『重力の支配者』の首元が、何者かによって斬られる。

「……よお、ようやく抜け出したか、コングラー」

そう、『重力の支配者』に斬りかかったのは、つい先程大剣で右脇腹に重傷を負い、気を失ったところを石の下敷きにされたコングラーだった。

この短時間で意識を取り戻し、あの石の山から抜け出してきたのだ!

「思ったよりも早かったな。さすがだ」

「ああ、俺の力をなめるなよ」

ニッ、と笑う。

しかし、強がってはいるが、肋骨は何本も折られ、右目からは血が流れ、利き手である右腕にも満足に動かせない程の怪我を負っている状態だ。

トムファー同様、コングラーにも限界は近づいている。

しかし、それは『重力の支配者』も同じようだ。

「……私ハ数百年間生キテキタ」

『重力の支配者』は語りだす。

首の傷は決して浅くはなく、魔物ゆえに血こそ流れないものの、既に倒れていてもおかしくない程の傷だ。

話す速度が更に遅くなる。

「何千モノ人間ト戦イ、殺シテキタ。ソノ中デ、傷ヲ負ッタノハ数エル程シカナイ。オ前達ハ強イ。認メヨウ」

そこで言葉を区切る。

「ダカラ、モウ出シ惜シミハナシダ」

そう言って武器を全てしまい、呪文を唱え出す。

「重力魔法・奥義『黒球』」

現れたのは、黒く小さななんでも吸い込む球体、そう、()()()()()()()だ。

地下室の壁、柱、天井、床、全てがそれに吸い込まれていく。

2人も石と同じように、それに吸い込まれ、跡形もなく消えてしまう、———()()()()()

「ナ、ナゼダ!ナゼ吸イ込マレナイ!」

2人は、石が飛び交う部屋の中を、変わらぬ様子で立っていたのだ!

「やっぱりな、『重力の支配者』なんだからそれくらいはすると思ったぜ」

トムファーはまたも笑う。

今度は勝利を確信したかのように。

「悪いが、俺は俺らに『吸い込まれないようにする魔法』を掛けさせてもらった。まあ正確には違うが、なんにせよ、お前の奥義は無駄に終わったってわけだ」

「ッ!」

『重力の支配者』は、悔しそうに拳を握りしめる。

「で、それ、奥義なんだろ?てことはそれほど長く発動できるわけがないよな?俺はまだまだ魔法を発動できる。さっきまで魔法なしで戦ったおかげでな!」

そう、魔法使い含む魔力を操る者は、魔力がなくなると死んでしまう。

『理の支配者』だって例外でない。

事実、トムファーがそう言い終わるのとほぼ同時に、黒球は消えてなくなった。

それを見計らい、コングラーは『重力の支配者』に斬りかかる。

「うおおおおぉぉぉぉ!」

「アアアアアアァァァァ!」

2人の咆哮があたりに響く。

既に『重力の支配者』に動けるほどの力はなく、ただ斬られるのを抵抗せずに待つことしかできなかった。

少しして、スパンッ、と、『重力の支配者』の首が飛ぶ音がし、カランッ、と、何かが落ちる音がした。

それは、2人がついこの前、『時の支配者』が住むと言われていた洞窟に訪れた時、そこに落ちていたものと同じ、鍵のパーツだった。

「や、やった……やった、やった!」

コングラーはそれを拾い上げ、大怪我にも関わらず全身全霊で喜んだ。

「よかった……勝てて、よかった……」

トムファーはその場にヘタッ、と座り込む。


こうして、2人の初めての『理の支配者』との戦いは幕を閉じた。

私重力についてあんまし知らないから、もしかしたら物凄い矛盾とかがあるかもしれんが、大目に見てね。

あと、本編じゃ書けなかったけど、白い穴ってのはホワイトホールってやつね。

ブラックホールで吸い込んだものが出てくるってやつ。

合ってるか知らんが。

まあそれはそれとして、読んでくれてありがとうございました!

感想とか書いてくれると泣いて喜びます!

じゃ、またいつか!

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