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理の世界  作者: 和音
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瞬間移動

あらすじ

剣士であるコングラー・ディルメンクと魔法使いのトムファー・イルアーは、魔王を倒すために必要な鍵を作るため、そのパーツを得るべく4人の『理の支配者』を倒す旅に出ている。

前回はイノバウド草という草を求め、雪山に行ったところ、謎の雪の怪物と出会した。しかしそれは魔王から逃げた支配者が1人『生の支配者』が作り出したものだった。

2人は、『生の支配者』からイノバウド草と一度だけ蘇生できる魔法をかけてもらい、その場を後にした。

じゃ、本編へGO!

『生の支配者』と出会い、加護を受けた2人は、2人目の支配者、『重力の支配者』がいるとされる場所に最も近い、東の前線『ガルヴァー市街地』にいた。

あの日から、初めて強敵と呼べる敵と戦い、魔王から逃げている『生の支配者』と会ったあの日から、一日も経っていないのに、である。

その理由は、トムファーが作りたがっていた、とある薬に起因する。


雪山を下り、ようやく雪の積もっていない麓まで来た時、トムファーはおもむろに薬を作る準備をし始めた。

当然コングラーは何も知らされていないため、困惑することしかできなかったが。

まず、トムファーは巨大な壺をバッグから取り出し、その中に水、『カロナの街』で購入した歪み蛙をすり潰したもの、『時の支配者』が住むとされていた洞窟に落ちていたンジカの種を粉々に砕いたもの、そして、先程『生の支配者』から貰ったイノバウド草をちぎったものを入れ、かき混ぜ始めた。

すると、しばらくして、水以外の混入物は溶けて、水はどんどん緑色に変色していった。

「……よし、これで完成だ」

と、トムファーは言って、バッグから空の瓶を取り出し、その中に緑色の液体を入れた。

「……ねえ、トムファー、これ何?」

ようやくコングラーの口が動く。

「ん?ああ、これは、イノバウド草で強制的に空間的歪みを作り出した後、その空間を移動する。このときに必要な時の流れをンジカの種で無理矢理代用して、強制的に別の場所に移動する。その時にできる時間的歪みを、歪み蛙で無かったことにして、一瞬のうちに別の任意の場所に移動する、いわば空間転移魔法をそのまま薬にしたものだ」

トムファーは、聞いてもいないのに、その薬の理屈まで説明した。

心なしか早口だ。

「へ、へえ、そうなんだ」

コングラーは少し引いてしまっている。

「まあものは試しだ」

そう言って、トムファーは2人の周りを囲むように、その薬を地面に落とす。

「これで、好きなところに、行けるはず」

しばしの沈黙が2人を包んだ後、突然、薬が緑に光り、2人は姿を消す。


気づいた時には、草木がなく、閑散とした雪山の麓とは打って変わって、家々が建ち並び、人々で賑わった場所にいた。

森はないが、幾らかの木は生えている。

そう、そこは『ガルヴァー市街地』だった。

「……へ?」

コングラーは状況が飲み込めていない。

いや、意味が分からないのは周りの人も同じようだ。

ザワザワとした音が聞こえる。

「驚いたか?」

トムファーは少し笑いながら言う。

「言ったろ、空間転移ができる薬だって」

それを聞いてか、周りの人は自分たちの世界へと戻る。

案外、この世界では普通のことなのかもしれない。

コングラーは知らなかったわけだが。

「ここは『ガルヴァー市街地』。『重力の支配者』がいるとされる場所に最も近い街。別にここに寄る必要はなかったんだが、ほら、あの雪の怪物と戦って疲れただろ?だから、ここで少し休んでから行こうかと思ってな」

「いや、別にもう疲れてないけど……」

さすがは体力にだけは自信のあるコングラーだ。

「……お前は大丈夫かもしれんが、俺が大丈夫じゃねぇんだよ」

対するトムファーは知識には自信があるようだが、体力には自信がない、当然、意見に食い違いが生じる。

が、頑固なトムファーに対して、コングラーに確固とした意見は、魔王を倒すと言うこと以外にない、自然と、トムファーの意見が採用されることとなる。


2人は例の如くギルド会員無料の宿に泊まり、明日に迫った戦いに備える。

とはいったものの、コングラーの剣は自動で手入れされ、トムファーの杖は壊れない魔法がかけてある。

そのため、ただ眠り、疲れを癒すだけだ。


翌朝、東の地域のみにいる鳥の鳴き声で、2人は目を覚まされ、東門へと向かう。

木々は朝の風に揺らされ、鳥は不吉なほど騒がしく鳴く。

あの雪の怪物との戦闘を経験したからだろうか、1人目の支配者『時の支配者』の時とは違い、コングラーの手は震えていない。


ついに東門に辿り着く。

『ゴルヴァー市街地』の時と同様、2人は門兵に止められたが、同じく『ゴルヴァー市街地』の時と同様、2人は外に出る。

雪どころか雨すら降っていない。

そのため、地図などなくとも、()()を見つけることは2人にとってそれほど難しくなかった。

四角い穴があき、石でできたいびつな階段が下へと続いている。

先がどうなっているのか、暗くてよく分からない。

それほど深くまで続いているようだ。

言うまでもなく、『重力の支配者』が住む場所の入り口である。

「ここか……」

「ここだな」

トムファーは松明に火を灯し、2人は少し躊躇った後、ゆっくりと降りていく。

コツ、コツと、足音が辺りに響く。


場所は変わり、その地下。

かなりの広さがあり、自由に走り回ることができる。

天井はかなり高く、人が5人並んでも届かないだろう。

そして、それを支えるかのように、石の柱が至る所にある。必要はないはずだが。

灯りはないが、なぜか明るい。石の性質だろうか。

あらゆるところに変色した血がついていて、今まで起きた戦闘の悲惨な様子が見てとれる。

そんな、戦闘に向いているのか向いていないのかわからないそこの中央に、何かが立っていた。

階段の方向から聞こえるコツ、コツという音を聞き、ボソッと、

「……キタカ」

と声をこぼす。

身長は大の大人と大して変わらない、はずだが、血のついたボロ布で体を包み、頭にも深々とフードをかぶっているため、実際よりも大きく感じる。

決して近づくことを許さない、そんな雰囲気を纏っている。

手には何も持っていない、しかし、余裕そうだ。どこかに仕込んでいるのだろうか。

そして何より、声が『生の支配者』と似た、カタコトの声。

そう、この得体の知れない何かの正体は、『重力の支配者』、2人の次の支配者で、初めての支配者。


これからここで、壮絶な戦いが起きるだろう。

あの時の雪の怪物とは比べ物にならないほどの。

次回はいよいよ初めての支配者との戦いです。

書くのが楽しみだ。

それはそうと、読んでくれてありがとうございました!

感想とか書いてくれると泣いて喜びます!

じゃ、またいつか!

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