ミガレノンの街、そして『死の支配者』
あらすじ
剣士であるコングラー・ディルメンクと魔法使いのトムファー・イルアーは、魔王を倒すために必要な鍵のパーツを集めるべく、4人の『理の支配者』を倒す旅をしている。
前回、2人は『自然の支配者』と戦って、苦戦の末、なんとか勝利をもぎ取ることができた。
これで、鍵のパーツは残すところあと一つとなる。
じゃ、本編へGO!
『自然の支配者』が倒されたことで、雨や風は嘘のようになくなり、晴れが広がる。
きっと、『カーコルド自治区』の住民達はこの好天———彼らにとっては異常気象だが———から『自然の支配者』の死に気づき、今頃大騒ぎをしていることだろう。
コングラーとトムファーの2人が倒したということも、当然気付いている筈だ。
つい先程2人が訪れているということは知れ渡っているだろうから。
「ふー、上手くいってよかった……」
トムファーが安堵の声を漏らす。
「よかったね……ほんと……」
コングラーはこの戦いで少なくとも二度死にかけた。
その都度トムファーのおかげで生きながらえることができたが、生きた心地がしなかっただろう。
まだ15歳の子供なのだ。
「ああそうだ、コングラー、これ使え」
と言って、トムファーはバッグから何かを取り出し、コングラーに投げ渡した。
「おっと、何これ?」
「薬だ。回復薬って言った方がいいか。お前さっき怪我しただろ、それ飲んで治せ」
コングラーは渡されたそれを飲み始める。
あまり美味しくないようだ。
「……で、どうする?一度街に戻るか?」
トムファーがコングラーに聞いた。
「うーん……またあの祭りがあるからなぁ……」
丁度飲み終えたコングラーはあの酒場での記憶を思い起こす。
どうやら相当辛かったようだ。
「じゃあさっさと次の街に行くか」
トムファーはバッグから薬品を取り出す。
四度目の登場、空間転移の薬品だ。
トムファーは慣れた手つきで2人を囲むように薬品を撒く。
「あっ」
2人は姿を消す。
南の前線『ミガレノンの街』に姿を現す。
この街は『カーコルド自治区』のように悪天候な訳でも、『ゴルヴァー市街地』のように雪が降り続けているわけでもない。
至って普通の街だ。
そう、外側から見たらただのよくある街だ。
そんな普通の街の中央に2人は突如姿を現す。
「ここが最後の街?」
「そう……みたいだが」
2人はとある違和感に気づく。
「静かだね」
「静かすぎる」
そう、この街には住民が1人もいないのだ。
当然ギルドの人もいない。
声どころか生活音すら聞こえない。
木の葉が風に撫でられるサワサワという音と、鳥の鳴き声以外に物音がしない。
住民がほとんどいないことは特段おかしなことではない。
現に先ほどまで2人がいた『カーコルド自治区』には、数人の住民しかいなかった。
しかし、この街は異常だ。
住民どころかギルドの人もいない。
この街が破棄された街なら納得がいく。
けれど、この街は何百年もの間南の前線として使われてきた、栄えているべき街なのだ。
なぜなのか。
理由は一つを除いて考えられないだろう。
『死の支配者』だ。
「何が起きたんだ……?」
そして、もっとも大きな違和感がある。
街のあちこちに血痕が残っているのだ。
その飛び散り具合を見るに、一方的に蹂躙されたのだろう。
この街で一体何が起きたのだろうか。
2人は一通り街を探索した後、街の一角にある宿舎の中に入る。
その建物にも当然のように血はこびりついている。
「やっぱ人は1人もいないみたいだな」
「そうみたいだね」
2人は難しい顔をして思考を巡らせる。
なぜこうなったのか、2人はどうするべきか、について。
ただ、いくら思考を巡らせども一向に解は出ない。
解を得るには2人は会いに行かなければならない。
この惨状を作り出した張本人『死の支配者』に。
翌朝早く、2人は南門に向かう。
昨日と変わらず鳥と葉っぱの声しか聞こえない、寂しい街の中を。
門にたどり着く。
門の地面スレスレの場所に血痕が残っている。
門兵のものだろう。
2人は街の外で禍々しい雰囲気を放つ洞窟を見つける。
『時の支配者』の住処のそれと似ているが、壁、床、天井など、そこかしこに血がついている。
何をしたらこんな惨状を生み出せるのか。
2人は洞窟内に入る。
中は異臭で満たされていた。
誰が嗅いでもすぐにわかるだろう。
人間の死臭だ。
それを裏付けるかの如く、ポタポタと天井から血が滴っている。
つい最近ついたもののようだ。
地面には血溜まりができ、壁にはこの場所で起きたことの悲惨さを伝えるかのように血が大量についている。
そして、奥に進むにつれてその血の量は増えていく。
奥に『死の支配者』がいることを示すかのように。
2人は一言も話さない。
無言のまま奥に進み続ける。
今まで2人の『理の支配者』を倒してきた2人には、奥に『死の支配者』がいることに、奥から放たれる圧から気がついている。
『時の支配者』の時のように肩透かしでは終わらない。
おそらくもっとも強い『理の支配者』、『死の支配者』が奥にいる、その緊張感からか2人は口を開かない。
もちろん、その死臭のせいもあるだろうが。
2人は最深部にたどり着く。
そこは一つの部屋のようなもので、広さはかなりある。
直方体に近い形をしており、『重力の支配者』がいた場所と似ている。
柱はないが。
当然のように血が大量にあり、どこに足を置こうとも血が付着するほどだ。
なぜこんなにも血があるのかはわからない。
死体どころか骨すら見当たらない。
しかし、それを作り出した張本人であろうものは部屋の中央にただ立っていた。
『死の支配者』だ。
その外見は、意外にも青年のようなものだ。
『自然の支配者』と『死の支配者』を並べ、どちらが『死の支配者』かと聞けば、恐らくほとんどの者が『自然の支配者』を『死の支配者』と言うだろう。
それほど、名前と外見が一致していない。
体には人が着るようなものを羽織っており、ありとあらゆる武器を持っていない。
『重力の支配者』のように隠し持っているわけでもなさそうだ。
遠目で見たら安全な魔物。
もっとも弱い『理の支配者』。
しかし、それが放つ雰囲気は『死の支配者』そのものだ。
『近づけば死ぬ』、体がそう自身に語りかけるようだ。
2人は戦闘態勢に入るが、動かない。
今までもすぐには動かなかったが、それは相手の手に合わせるため。
今回は違う、動いたら死ぬと直感しているから、動けない。
「やあ、来たかい。早かったね」
『死の支配者』は2人に語りかける。
当然返事はない。
しかしそれに構わず『死の支配者』は続ける。
「今まで2人の『理の支配者』を殺したそうじゃないか。数日前に『重力の支配者』、そして昨日『自然の支配者』。すごいね、君たち。そんなに若そうなのに、すごい度胸だ」
そこで『死の支配者』は言葉を止める。
「2人ともいいやつだったな。『重力の支配者』は、若さ故かな?一つの魔法にこだわりすぎてた。でも、優しかったなぁ。『自然の支配者』は、ちょっとおっかないとこがあったけど、面白いんだ」
ポタッと血が一滴落ちる。
「そうか、2人とも死んじゃったのか。悲しいなぁ……ああ、気にしないで、別に恨んでないから。君たちが魔王様を倒すには、僕たち『理の支配者』を殺さなきゃいけないってことぐらい知ってるから。僕は3人目かな?まあいいか。でも、僕だってただでやられるわけにはいかないんだ。抵抗させてもらうよ、可愛い冒険者たち」
『死の支配者』は両手を上げ、呪文を唱え始める。
「オヘイサシクシーン」
「なっ……!」
トムファーは驚きの声を上げる。
なぜなら、その呪文は、もう使われていないはずの言語、『魔言語』なのだ。
『死の支配者』が呪文を唱えると、『死の支配者』の後ろ、コングラーとトムファーの見ている方向から、わらわらと人のような何かが現れ、2人に向かって歩き始めたのだ。
その数、実に百以上。
あるものは片腕がなく、またあるものは顔の半分がない。
「死魔法『死者の使役』。先にこの子達と戦って。僕と戦うのは、この子たちに勝った後」
『ミガレノンの街』に人が一人もいなかったのは、洞窟のあちこちに血がついていたのは、死魔法『死者の使役』、またの名を『オヘイサシクシーン』を発動する対象を確保するためだったのだ。
「こ、こいつ……!」
コングラーは怒りで体を震わせる。
「じゃあね、また後で」
『死の支配者』は忽然と姿を消す。
後に『死の支配者』によって操られている哀れな死者たちを残して。
2人とその死者たちの戦いの火ぶたが切られた。
『死の支配者』との戦い全然考えてないけど、まあいいか。
とりあえず、読んでくれてありがとうございました!
感想とか書いてくれると泣いて喜びます!
じゃ、またいつか!




