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理の世界  作者: 和音
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幕開け

処女作ですので多めに見てね。

ほんとに許してね。

これは、とある村に住んでいる2人の少年の物語




ある日、コングラー・ディルメンクは、木陰で涼んでいるトムファー・イルアーに言った。

「なぁトムファー、俺魔王倒したいから一緒に来てくれ」

「……は⁉︎」

トムファーはその言葉に素っ頓狂な声をあげた。

この世界において『魔王』とは、人類全員の敵であり、倒さんと勇敢にも立ち向かった者は数えきれないほどいた。

しかし、その偉業はいまだに達成されていない。

それほど、魔王を倒すということは困難で馬鹿げているものなのだ。

しかし、

「いきなり過ぎるだろ!なんで急にそんな…はぁ、まあいいや。お前一度言ったら曲げねぇからな。ついていってやるよ」

トムファーはその頼みをあっさりと聞き入れた。

何年も一緒にこの『ヒリカ村』で暮らし、仲が深まっているからだろうか。

「さっすがトムファー!よくわかってる!」

コングラーは嬉しそうに言った。

トムファーは何かを訴えかけるかのような目でコングラーをじっと見る。

「ちなみに言っとくが俺らまだ11だからな?15にならねぇと魔王を倒すどころかこの村から出れねぇのは流石に知ってるよな?」

「え?そうなの?」

コングラーは首を傾げて言う。

そんなコングラーを、トムファーは呆れた目で見つめ、

「はぁ…せめてそれぐらいは知っててくれよ…いいか?この世界は至る所に魔物がいるだろ?だから危険だから少なくとも15になるまでは外にでちゃいけないんだよ」

と、説明した。

「へぇ……初めて知った」

トムファーはわざとらしくため息をつく。

「まあいいや。とりあえずコングラー、お前15になるまでの4年間毎日鍛錬しろ」

「ええええええええ!やだよそんなめんどくさいこと!」

「お前魔王を倒したいんだろ?そのためには力が必要なんだよ。わかるだろ?わかったら早く始めろ」

いやいやながらコングラーは木刀を構える。

「トムファーはしないの?」

「俺は魔法が使えるからな」

「じゃあ魔法で俺を強くしてよ」

「無理だな。ズルしようとしないでさっさとやれ」

「ちぇっ」

「まあ頑張れ」

こうして、コングラーは15になるまで毎日嫌がりながらも鍛錬を続けた。


そして、ついにコングラーは15になり、村の外に出られるようになった。

「よし、旅の準備終わりっ!後はトムファーと会うだけか」

コングラーはトムファーの元へと向かった。

「ようトムファー、いよいよ今日だな!」

「ああ、そうだな。その前にコングラー、お勉強の時間だ」

「ええ…気分下がるなぁ…」

「そう言わずに、まずはこれを見ろ」

トムファーは1枚の紙を広げ、コングラーに見せた。

「何、これ?」

「これはこの世界の地図だ。ここが俺たちの村。で、ここが魔王がいる魔王城」

「へぇ、こんな感じなんだ。四方が囲まれてる」

「そう、魔王城を中心とすると、丁度四方が断崖絶壁で囲まれるんだよ」

面白いだろ、とトムファーは言った。

「じゃあ、俺達は魔王城に向かって真っ直ぐ下に行けばいいの?」

「バーカ。今のままで勝てるわけねぇだろ。そもそも魔王に会うには鍵が必要なんだよ」

「カギ?」

「そう、鍵。で、その鍵を作るには断崖絶壁付近にいる理の支配者を倒す必要がある」

「コトワリノシハイシャ?」

「東が『重力の支配者』、西が『自然の支配者』、南が『死の支配者』、で、俺たちがいる村のすぐ近くにいるのが『時の支配者』。この4人の支配者を倒すと、鍵のパーツが手に入る」

「なんか…めんどくさいってことだけはわかったよ」

「しょうがないだろ。それよりお前、準備終わったのか?」

「もちろんさ!それよりも、トムファーは何持ってくの?まさかその小さなバッグだけじゃないよね?」

トムファーの顔よりも小さなバッグをコングラーは指差して言った。

「そのまさかだ」

コングラーは驚きを隠せないといった表情でトムファーを見る。

それを察してか、トムファーは言った。

「実はこのバッグはなんでもいくらでも入るんだ。もちろんこの中に色々入れてるぞ」

杖とか剣とか、とトムファーは付け足す。

「へー、すごいね」

「そんなことよりコングラー、なんでお前そんな荷物あんだよ」

トムファーはコングラーが背負っている、彼よりも横幅が大きなリュックを指差して言った。

「だってしょうがないでしょ?ご飯とか着替えとか色々いるもの」

「あー……」

その瞬間、トムファーの左目に付いていた眼帯から紫色の光が漏れる。

「……何したの?」

コングラーは聞いた。

「別に。ただ『腹が減らなくなる魔法』と『服が汚れなくなる魔法』をかけただけだ。これでその荷物の大半を置いていけるだろ?」

「えっ?えっ?すご!!」

コングラーは初めての魔法に興奮が抑えきれていない。

「でも、魔法ってなんか言わなきゃいけなかったり杖とかいるんじゃないの?」

「よく知ってるな。でも別に魔言も杖も魔法の力を上げるだけだからなくてもいいもんなんだ」

「へぇ、そうなんだ。……じゃあこの荷物置いてくるね」

コングラーはそう言って、荷物の大半を置きにいった。


数分後、コングラーは再びトムファーの前に現れた。だいぶ小さくなったリュックを背負って。

「今度こそ準備出来たか?」

「うん!剣も持ったし!」

「じゃあそろそろ行くか」

「おー!」

2人が村を出ようとして、唯一の出口に向かうと、そこには村長が立っていた。

「あれ?村長さんがいる。なんか持ってるし。トムファー、あれ何かわかる?」

「さあな」

2人は村長の近くまできた。

「よう2人とも。魔王倒しに行くんだってな。これでこの世界も安泰だ。ワハハハハ!」

村長は陽気に笑って2人に話しかける。

「で、だ、お前らにわしから贈り物がある」

「え!ほんとですか?ありがとうございます!」

「ほれこれだ。気をつけて行ってこいよ!」

そう言って、村長は袋を手渡した。

「はい!」


2人は村を出て、早速村長から貰った袋を開けた。

「…これって剣だよね?」

「みたいだな」

村長から貰った袋の中には、先端に緑色に輝く石がはめられた鉄剣が2本入っていた。

「持ってきた剣無駄になっちゃったな」

コングラーはそれを天に掲げて言った。

鉄剣が陽光を反射してキラリと光る。

「この緑色のやつなんだろう?」

「……こりゃ魔石だな」

トムファーは言った。

「マセキ?何それ?」

「魔石ってのはだな……あー、まあ簡単に言うと、大昔に鉱石の支配者が作った石だ」

「鉱石の支配者?支配者は4人だけじゃないの?」

「ん?あーそうか、言ってなかったっけな。大昔には理の支配者が何人もいたんだ。言葉の支配者、鉱石の支配者、音の支配者、他にも色々いた」

トムファーはコングラーに説明する。

「へー。ん?じゃあなんで今は4人だけになったの?」

「魔王が取り込んだんだよ」

「え?」

コングラーは目を丸くする。

「特に強かった3人の支配者と、いろんな支配者をくっつけて作った自然の支配者、あと、魔王から逃れた2人の支配者。この合計6体の支配者を除く全ての支配者を取り込んだんだ」

「なんで?喧嘩でもしたの?それに逃れた支配者って?」

コングラーは驚きながらトムファーに聞いた。

「順番に答えてやる。まず、何のためか?これはな、強くなるためだ。あいつらには寿命ってもんがない。だから、永遠に生き続けるためには敵として向かってくるもの全てを倒さなきゃいけないだろ?だから強くなる必要があったんだ」

トムファーは言った。

「次に、逃れた支配者についてだ。1人は否定の支配者。で、もう1人がせ———」

その時だった。


ドオオオオオオン!


突然何かが空から降りてきて、2人の目の前に現れた。

「うわっ!」

舞い上がった砂埃の中から出てきたのは、赤く、大きな鳥のようなものだった。

「クルアアアアァァァァ!!」

トムファーなら3人分、コングラーに至っては3~4人分はあろうそれは、2人に向かって雄叫びを上げる。

「……ついてないな」

トムファーは耳を塞ぎ、冷や汗をかきながら言った。絶望の色を含んで。

「まさか1番最初に出くわすのが紅鳥だなんて」

「な、何こいつ…」

コングラーはトムファーに聞いた。

「とりあえず説明は後回しだ!剣を抜け!爪に気をつけて戦えよ!」

「う、うん!」

トムファーは声を荒げ、杖を地面に突き刺して、魔言を唱え始めた。

「ウェンティオルーグノイヌイクンジ!」

それを唱え終わるや否や、2人の体が微かに紫に光る。

「これは力を底上げする魔法だ!思いっきり戦え!」

と、トムファーはコングラーに大声で早口で言う。

しかし、コングラーは動かない。紅鳥が雄叫びをあげ、生い茂る緑を爪で刈りながら近づいてきているにも関わらず、だ。

「おい!」

トムファーが大声をあげても、コングラーは動かない。いや、動けない。身体が盛んで。

「クルアアアアァァァァ!」

紅鳥が高く飛び上がり、爪を振り下ろしながら降りてくる。コングラーの頭目掛けて。

「ちっ!」

トムファーは地面を蹴り、コングラー目掛けて駆け出す。その時、眼帯から紫色の光が漏れていた。

紅鳥の爪がコングラーの頭に触れた瞬間、紅鳥の動きが止まる。

「ウ"ウ"ウ"ウ"ゥ"ゥ"ゥゥ!」

くちばしが開かず、鳴き声にならない鳴き声が響く。

トムファーがコングラーの体を抱え、3歩ほど進んで後ろを振り返ると、ちょうど紅鳥の爪が空気を切り裂くところだった。

「おい!なんで動かない!死にたいのか!」

トムファーは大声で言う。

「……せ……よ」

「あ?」

「殺せないよ!」

コングラーも大声をだす。

「生き物を殺すなんて無理だよ……」

その手に剣はもう握られていなかった。

「クルアアアアアァァァァ!」

紅鳥が接近し、またも爪を振り下ろす。今度はトムファーの頭目掛けて。

「ッ!ンティソウオイシク!」

トムファーは振り向き、魔言を唱え、爪をギリギリのところで停止させる。

「……なぁ、コングラー」

トムファーがコングラーに優しく話しかける。まるで、子供に言い聞かせるかのように。

「生き物を殺せないのはわかった。けどよ、今まで鍛錬してきたんだろ?今日を楽しみに毎日頑張ってきたんだろ?それが1日目で無駄になるんだぜ?それに、戦ってくれねぇと俺が死んじまう」

「ッ……!」

コングラーが顔を上げる。

「クルアアアアァァァァ!」

「ッ!」

紅鳥が更に力を加え、トムファーは少し地面にめり込む。

「俺は戦闘に向いてないんだ。頼むよ、コングラー」

「…………わかった」

そう言って、覚悟を決めたコングラーは再び剣を抜き、紅鳥に向かって駆け出す。

「ウオオオオオォォォォォ!」

コングラーが鉄剣を、少し躊躇いながら紅鳥向かって振り下ろし、赤い羽毛で守られたお腹が切られる。

「クルアアアアァァァァァ!」

今までよりも更に高い声で紅鳥は鳴き、地面に横たわった。

その後2度と紅鳥が動きだすことはなく、パラパラと魔力として崩れ始めた。

「はぁ……はぁ……」

コングラーは血に塗れた手を見て、

「……ごめん」と呟く。

紅鳥はすでに魔力として空気に溶けてしまっていた。

後には、一部だけ草が刈られ、剥き出しになっている地面だけが残った。

まず、読んでくれてありがとうございます。

至らぬ点も多々あると思いますので、日々精進していきます。

指摘も是非是非!

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