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世界を信じる

別のペンネーム、別の作品で某ライトノベル新人賞最終選考で落選したことがあります。

ぜひ、お楽しみください。

   8


 ふぅ……――ジョシュアは人心地のついた思いで

寝台の枕元の部分に背中を預け、端に腰を下ろしたアリスに視線を向けた。場所は、例の襲撃の後に移った宿の一室だ。

 右隣のティモシーのベッドにはスザンナが同じく座っている。どこか心ここにあらずという風情でいるのが気になった――声をかけようかと思ったところで、

「――植精土壌ドライアドを調べた結果、一つの事実に行き当たりました」

 とアリスが声を上げる。

 彼女の視線の先、寝台の反対側の壁際――そこには現場から運んできた植精土壌ドライアドの骸が転がっていた。その身体は無惨にも、胸部が切り開かれ、さらに腰部は輪切りにされている。

 ……何とも気分の悪い光景だ。怪物モンスターと化したとはいえ元は人だ――良心が疼くのを抑えることはできない。

 だが一方で、これは仕方のないことだと理解している。

 常罪術者マリグナントにたどり着くヒントを少しでも多く掻き集め早急に捕えなければ被害者が増えることになる。

 少なくとも、アリスを冷血漢と責めることはできない。

 ジョシュアに怪物軀宿者モンスト・サイバーの遺骸を調べて何かの情報を得るような知識がないため、彼女がそれを担ったのだ――ある意味、押し付けたのだ。糾弾するのは筋違いだ。

 戦争が悲惨なものだからといって、末端の兵士を責めるのがお門違いなのと一緒だった。

 もっと巨視的な視点で問題を捉えて解決しなければ、単なる水かけ論に陥ることになる。

「彼らの身体はほぼ植物と化しています」

 それがどうした、と尋ねるような愚かな人間はこの場にはいない。

「そのため、彼らの身体には“年輪”が存在しています――ただ、奇異な点がありました。普通、年輪は太陽の存在する方向、つまり南に幅が狭まるものですが、植精土壌ドライアドの“それ”は北に向かってその傾向が見られました」

「北――といえば、一つだけだが植精土壌ドライアドらしい影がその方角に向かったという証言があった。他の情報と齟齬が生じるから誤情報と思って斬り捨てていたが」

 アリスの言葉にティモシーがそんな事実を明かした。

常罪術者マリグナントがそっちにいる可能性がるということかぁ」

 オースティンが腕組みして思案げな顔をする。

 見当違いの場所を探せば、それだけ常罪術者マリグナントに罪を犯す猶予を与えることになる、当然の反応だ。

 自然と判断を仰ぐようにジョシュアに視線が集まる。

「――北に向かったという裏付けを取って、蓋然性が高まったなら、そっちに向かうことにしよう」

 ジョシュアは一番、妥当だと思える判断を下した。

 ただ、その心には焦りがある。

 今回は人間に植精土壌ドライアドの被害者は前回ほど出なかったが、それでも彼らの存在に気づいたらしい町の住人が行方不明になっている。

 早く捕まえなければ……――。


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