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阿穗田《あほだ》さん

作者: 松武 重男

新入社員として、形竹商事かたちだけしょうじに入社した僕の先輩阿穗田あぼたさんは、天然なのか?いつも服装はバラバラでしかもパジャマだったりもする…それを回りの同僚や上司、お得意先の人も驚く事もなく普通に対応していると言うおかしな状態。


今回は入社編、少し笑わせてくれる先輩の阿穗田あぼたさんの行動をどうかひ見てください




入社編



僕の名前は、本当目まじめ 吉春よしはる25才


4月…


大学を卒業をして、世界中がコロナウイルスで広がり色々な人達が制限をしている中、僕は就職が出来ず、この3年間は色々とバイトで何とか凌いでその間、何件か面接をした中、(株)形竹商事かぶ かたちだけしょうじに決まり本日僕は出社となりました。



10階建てのビルの中にある、その中の3階が本社のテナント…新入社員は僕だけのようで、職場内容や部署の配置を今日命ぜられるとの事。



本当目まじめ 「緊張するな…」僕は本社の入っているビルに向かう。


3階…ここが、今日から僕が働く会社、形竹商事かたちだけしょうじ…ドアを開けると受付、その奥には20個はある机に10人程の従業員がいた。


「おはよーございます!今日からお世話になります本当目まじめ 吉春よしはると申します!よろしくお願いいたします。」と深々とお辞儀をし、受付のテーブル越しから、髪の長いスレンダーな女性が立ち上がり

「おはようございます。私は後姿こうし 美人子みとこです、よろしくお願いいたします。」とお辞儀をし「こちらへどうぞ」と事務所内に案内をしてもらった。


受付の後姿さんが奥の方に向かい「新入社員の本当目まじめさんが来ました。」と言うと、奥の方から、少し小太りな男性が「おはようございます…私は部長の光頭こうとう 光岳みつたけです」

名前がひかると言うだけに頭のてっぺんが光っている。


光頭こうとう部長が先導する後に付いていくと、社長室のドアをたたく光頭こうとう部長「おはようございます。本当目まじめくんが来ましたのでよろしくお願いいたします。」とドアを開けて、社長室に入ると、手前にはお客様をもてなすためのソファーが置いてあり、その奥には大きめな社長用の机とゆったりとした椅子…その椅子から立ち上がると、黒の上下のスーツに赤いネクタイで肩幅の広いく背筋がスッとした紳士でカッコいい社長…


社長は僕の元へと近づいてきて、

社長 「おはよう…。面接の時も挨拶をしたけど、社長の形竹かたちだけ かしらです。色々と覚える所があるけど、光頭こうとう部長の下で働いてもらうよ…部長、阿穗田あぼたくんに教育を頼むか…」


部長 「阿穗田あぼたですか……分かりました。」


社長に挨拶を済ませた後、部長に誘導されたのが企画部の所に案内をしてもらい


部長 「阿穗田あぼたくん、今日から新しく入った、本当目まじめくんだ、頼むよ。」


本当目まじめ本当目まじめ 吉春よしはるです、よろしくお願いいたします。」

深々と頭を下げて見上げて見ると、そこには少し長めの髪の毛をオールバックにして黒渕メガネと顎ひげでディスクに紺色のスーツで座り

こっちをジロッと見て一見怖そうな人に見えた。


阿穗田あぼた 「おはよう…」言葉数が少ないところが、余計怖く見える。


阿穗田あぼたさんは立ち上がり、僕の所に近づいてきた。オールバックの髪型で紺色のスーツでスラッとしたスタイルで……ズボンはピンクのパジャマ?これは…ファッション?僕は阿穗田あぼたさんの格好を見てはいけないのか、どのように見ていいのか混乱しているところ


部長 「阿穗田あぼたくん、また下パジャマじゃないかぁ~!」


やっぱり、パジャマだったんだ…なぜパジャマ…寝ぼけてたのかな?


阿穗田あぼた 「あっ、すみません…まだリモートのクセが残ってまして…でも、子の格好が何かリラックスできて自宅感覚で良いですね。」 と、照れ笑いし右手を頭に付けて、部長にペコペコと何度も頭をふった。


部長 「ここは会社!自宅感覚では困るの!ちゃんと仕事モードに切り替えてくれよ!」と呆れた様子で叱った。


新人の俺もそう思う。


阿穗田あぼた本当目まじめくん今、僕の事を呆れたと思った?」


よっ読まれてる?顔に出てたかな?


阿穗田あぼた 「顔に出てる。」


完全に読まれてるヤバイ…


部長 「そんな事より、今日は取引先の、売猟工業うっかりこうぎょうに頼まれてた、企画書を持っていくんだろ!本当目まじめくんを連れていって、ベテラン先輩の仕事を教えてやってくれよ!」


阿穗田あぼたさんの顔の顔色が青ざめた「ああああっ…」と両手をあたまにやりひざまつく


部長 「まさか、忘れてた…なんて無いよね~!」ジロッと阿穗田あぼたさんを睨む。


阿穗田あぼた売猟工業うっかりこうぎょうの件…ウッカリ忘れてました…」


だっ…ダジャレ?


そうだろうなと言ったようなかおで

部長 「だと思ったよ…今から玉野たまのさんにも頼んでもらったから、今から企画書を取りに行きなさい」


落ち込んでいたように見えた阿穗田あぼたさん、突然の切り替わり。

阿穗田あぼた「さすが部長~!さすが玉野たまのさん!」救われたって様子のニッコリ笑い玉野たまのさんの所へと小走りで向かい、僕も一緒に付いていき、社長室の隣にある社長秘書室ドアをあけて、阿穗田あぼたさんは「どぉーもー!」と頭を少し下げながらニッコリ笑い入る。


阿穗田あぼた玉野たまのさん!いつも、いつも、すみません~!」と何回もペコペコとお辞儀をして両手を出して玉野たまのさんの作成した企画書を貰おうとする。


ドアを開けると直ぐ目の前にショートのボブカットの高めのヒールで細身のスレンダーな女性が腕組みをして、右手にはA4サイズの茶封筒を持ち立っていて、

玉野たまの 「あのね…阿穗田あぼたさん!いつもの事だけど、ズボン!またパジャマじゃない!」


そっち!企画書を忘れて怒るでなく…パジャマ?…確かに、パジャマで仕事はおかしいけど、何か怒る所が変!


玉野たまのさんは僕の方を見て「君が本当目まじめくんね、私は社長秘書の玉野たまの 興子こしこです、よろしく。阿穗田あぼたさんはこんな人だけど、頑張って仕事覚えてね!」


玉野たまのさんはその封筒を「感謝しなさいよ!」と阿穗田あぼたさんに渡して、僕に2、3回手を振り、後ろに振り向きディスクへと戻っり、それを見届けて、阿穗田あぼたさんは封筒を賞状を両手で取るように持ち頭を下げて「はっはぁ~!」と、そのまま後退りして社長秘書室を出て、阿穗田あぼたさんの顔がキリッと引き締まり「本当目まじめくん、行くぞ!」と会社を出た。


ビルを出て、阿穗田あぼたさんの運転で僕も同乗で売猟工業うっかりこうぎょうへと向かっう、阿穗田あぼたさんの運転は教習通りのハンドルの持ち方で座席はかなり前にでて法定速度より少し遅い運転をしている…阿穗田あぼたさん…ここ60キロだけど、40キロで走ってる…後ろの車も何かイライラしてそうで、右、左と後ろの車は揺れながら、距離を詰めて来た。


阿穗田あぼた「後ろの車…あおり運転だな…」


確かに、煽っているのは間違いないけど…阿穗田あぼたさん、もう少しスピードを出して欲しい…なんて、今日入社した僕が言えないよな…


真面目まじめ「そっ、そうですね…煽ってきているって言うか…スピードが…」

いっ、言っちゃった…


阿穗田あぼた「そうだよな、後ろの車スピード出しすぎだよな!」


違うんだけどなぁ…


阿穗田あぼた「くそっ、目障りだ!」

と言い、いきなり車を止めて後ろの車に駆け寄っていく…


ヤバイ!このままだと暴力とか、警察とかに通報されて仕事どころか、これから向かう売猟工業うっかりこうぎょうさんにも迷惑をかけてしまう…どうしよう…しかも、下パジャマだし、変態扱いされてしまって…。


降りるか、降りないか、阿穗田あぼたさんに代わって謝るか、それとも一緒になって抗議するか…色々と悩んでいたら、阿穗田あぼたさんが戻って、車にもどり運転席シートに座る。


早っ…あまりの早さに何が起こったのか分からなくただ、阿穗田あぼたさんの顔をみて


「大丈夫でしたか?」


阿穗田あぼた「あの車…ベンツだってよ!ベンツに煽られたら仕方ねぇ」


えっ?べ、ベンツ?「ベンツって、どんな話しをしたんですか?」


阿穗田あぼた「後ろの車見て、見慣れない車だったから…オイ!何だこの車!って、言ったら、運転手が女の人でベンツです…って、言ったから俺は…カッコいいですね…て、言ってやったぜ」


何だ?この人…よく分からないけど、大事にならずにすんだ…阿穗田あぼたさんの運転で、得意先の売猟工業うっかりこうぎょうへと付いた。


阿穗田あぼた「さっ、行くぞ」と車から降りて気合い十分の阿穗田あぼたさん…


「あっ阿穗田あぼたさん、ズボンは…」まだピンクのパジャマを履いていて、話しかけても振り向くこともなく、そのまま売猟工業うっかりこうぎょうの受付へと入り


「うわぁ~どぉーしよ…」怒られたら…


阿穗田あぼた「どぉーも!形竹商事かたちだけしょうじ阿穗田あぼたです。」ドアを開けたら直ぐに受付があり、受付の女性が「阿穗田あぼたさん、またパジャマで来たんですか」


阿穗田あぼた「今日はお気に入りのピンクです!」と笑いながら応対しているのお見た僕は、ここの会社の人も普通に話してる…阿穗田あぼたさんて、いつもパジャマなの?不思議な阿穗田あぼたさん、誰もがこの人のおかしなところを普通に受け止めている…僕が変に気にしすぎなのか、それとも回りの人達が変なのか…阿穗田あぼたさんだから皆が暖かく見守っているのか…

今日、仕事を覚えると言うより、阿穗田あぼたさんの行動をたた不思議で見ているだけだった。



事務所奥の談話室に案内をしてもらい阿穗田あぼたさんと僕は椅子に座って待つと間もなく、売猟工業うっかりこうぎょうの社長が入ってきて「どうも阿穗田あぼたくん、今日も個性的だね…前は上着がパジャマで下がパンツの時もあったね、それには事務所の娘も目のやり場にも困ってたよ」笑いながら答える社長は僕の顔をみて「君は新入社員だね…私は売猟工業うっかりこうぎょうの社長の売猟うっかり 下増しもまさです。よろしく頼むよ…まっ、阿穗田あぼたくんのみたいに楽しく頑張ってくれ!」


本当目まじめ「はい、よろしくお願いいたします。」と言ったもの、楽しくって…阿穗田あぼたさんのを見習ってしまうと、ダメになってしまうと思ったけど、無難な答えで「阿穗田あぼたさんを見習って頑張ります。」なんで…言ってしまった僕は今日一番後悔している。


売猟うっかり社長 「さすが阿穗田あぼたくん、なかなか良い企画書だね…いつも丁寧に仕上げられてるね、この通りに進めてみるよ。」


阿穗田あぼた「いやいや、このぐらいはすぐですよ」僕の顔をみてニヤって笑った阿穗田あぼたさんは少し不気味…



あのぉ~売猟うっかり社長…この企画書は、僕の会社の社長秘書が考えて作成されたものです…って、言ったら怒られるだろうな…。


穏やかに談話を終えて、会社に戻り阿穗田さん光頭こうとう部長に報告をそこそこにして、直ぐに社長秘書室へと駆け足でノックもせずいきなりドアを開けて「玉野たまのさぁ~ん」と甘えたような声で入って行き


玉野たまの阿穗田あぼたさん!パジャマ!」


そっち!怒るところ…確かに今日朝からパジャマで外出中もパジャマ、色々と言いたい事もあるけど、秘書室にノックもしないで入って、怒るポイントが色々とあるけど、この会社といい、阿穗田あぼたさん、どうなってるの?


僕はこの会社でやっていけるのかな…阿穗田あぼたさんて一体何なんでしょ……。



1日が過ぎ2日目の朝、昨日の阿穗田あぼたさんの服装が気になって、今日もパジャマだったり…と、思いながら会社近くの駅に降りて、歩いていくと後ろから走る足音…バタバタとマラソンとかそうではない足音、段々と近づく足音、そのまま抜かしていくその足音の人は、やっぱり…と言うか阿穗田あぼたさん…今日は下はスラックスなんだけど、上着がパジャマ…ピンクのパジャマ


バタバタと足音はスリッパ、施設とかで使われているトイレのスリッパだ、そのスリッパを履いているのに凄く足が早い、

「おはようございます。」と挨拶をしても僕を振り向かず、パンを加えて走り会社へと向かう阿穗田あぼたさん、まるで漫画のワンシーンの様で可笑しい。


会社に入ると光頭こうとう部長の怒鳴り声がした。


何事なのかと遠くから見ると、やっぱり阿穗田あぼたさんが怒られている

光頭こうとう阿穗田あぼた!矢倍株式会社やばいかぶしきがいしゃの企画相談の件一週間前に以来があったと言うじゃないか!先方から、何時になったら来るのかって、しかりの電話があったぞ」


阿穗田あぼた「やっヤバイ!忘れてた!」


光頭こうとう「ダジャレ言っている暇は無いぞ!今日一番に行ってこい!」


服装で怒られているんじゃなく、仕事で怒られている、僕は事務員の後姿こうしさんに「阿穗田あぼたさんはどんな人なんですか?不思議です」


後姿こうし阿穗田あぼたさんは私が入社した時からあんな感じの人なんですよ…何か忘れっぽいと言うか…でも、あの陽気な性格だからね、憎めないの…光頭こうとう部長もあの様に怒ってはいるけど、可愛がっているって言うか愛情だと思う。」


そうなんだ…確かに見た目は怖いけど、実際は楽しんでいるみたいだ…


しばらく時間がたち阿穗田あぼたさんの服装上下紺色のスーツに着替えて

阿穗田あぼた本当目まじめ!よし、矢倍やばいに行くぞ、付いてこい!」


「はい!」阿穗田あぼたさんの後ろに付いて会社を出た。


会社を出て1時間もかからない所に、矢倍株式会社やばいかぶしきがいしゃがある、

阿穗田あぼたさんと僕は会社に入る。


阿穗田あぼたさんが受付をして、事務所へと一緒に案内してもらい、応対室にて待っていると、若い男性が1人入ってきた「お待たせしました。」


阿穗田あぼた矢倍やばい専務、すみませんでしたぁ~!」直立の阿穗田あぼたさんは僕の頭を押さえ深々と下げる…「えっ?」下げさせられた。


阿穗田あぼた「新人教育で色々とかくかくしかじか」


えっ、かくかくしかじか?ちゃんと謝ってないし、新人教育って…僕はまだ入って2日目なんですけど…


矢倍やばい「はははっ!阿穗田あぼたさんらしい!全然気にしてないですよ…阿穗田あぼたさんの性格だから来ないことは、今までにもなかったことだし、それに対しても怒ってもいません、こっちから催促の電話をしたら、来てくれるじゃないですか、そして企画や相談も頼んだら答えてくれる、親父もその阿穗田あぼたさんの事が気に入ってくれてるんだから、大丈夫ですよ。」


すごい、やさしい人だな…阿穗田あぼたさんの事を理解してるんだ。



1時間位の企画の打ち合わせを無事に終えて、阿穗田あぼたさんと僕は応対室から離れた「ありがとうございます。また、よろしくお願いいたします。」と阿穗田あぼたさんは、深々とお辞儀をし、僕もそれに従い頭を下げて会社を出ようとした時、矢倍やばい専務は笑いながら「今日はスリッパだったんですね」


阿穗田あぼた「いち早く矢倍やばいさんの所に行かないと…と思い、靴を履き替えるのを忘れてました。」と大声で笑い軽く会釈したのに対し、矢倍やばい専務は軽く手を振って見送ってくれた。


4月も半ばも過ぎてもうすぐゴールデンウィーク、仕事も慣れ、皆とも打ち解けてきた感じがして楽しく生活を送ってき、今日は久しぶりの阿穗田あぼたさんと、得意先の訪問、阿穗田あぼたさんの運転する車で移動していると、鯉のぼりがあっちに立っている。

赤信号で停車、ふっと阿穗田あぼたさんが「そっか…もうすぐ子供の日か…」今までにこやかに話をしてたのに、何か少し悲しそうに鯉のぼりを見ている。


阿穗田あぼたさん…過去に何かあったのかな?子供の事とか奥さんと何かあったのかな…勇気をだして聞いてみた「阿穗田あぼたさん…鯉のぼりを見て何か寂しそうにしてたもんで、奥さんとかいますか?」


阿穗田あぼた「俺かい?結婚してないよ…1度も、そんなに寂しそうな顔をしてたか…今年もゴールデンウィークは給料日前だから金が無いなぁ~と思ったらなんだか、悲しくなっちゃって…本当目まじめくん、金貸してくれないかな…!」


本当目まじめ「働いてまだ給料貰ってない人にお金を貸してなんて、無理っすよ!」

その寂しそうにしてた顔は、財布が寂しかったと言うことなのか…


阿穗田あぼたさんは何か思い出しかなのように「そう言えば…鯉のぼりで思い出したけどね、得意先の訪問の近くで、鯉のぼりが本物の鯉になっているのを見かけたよ!」


えっ!鯉のぼりが…布でできた鯉のぼりが本物に?


本当目まじめ「本当ですか?本物の鯉が上がってたんですか!?」


阿穗田あぼた「いやぁ~あれには本当びっくりして、二度見どころか十度見してたね!」


僕はそんな事があるんだなんて思って、実際に見に行きたいと思って「何処ですか?見たいです!」


阿穗田あぼた「見たい?」


本当目まじめ「ハイ!見たいです!」

目を輝かし「連れていってください」とお願いした


阿穗田あぼた「エイプリルフール!!」


???


本当目まじめ「えっ?エイプ…?」


阿穗田あぼたさんはニコニコと笑いながら「やぁ~い引っ掛かった~エイプリルフールだもんねぇ~!」


あのニコニコとした笑いは、まるでイタズラをしていて喜んでいる小学生の様に見えた…何か腹が立つ


本当目まじめ「あの~エイプリルフールって、4月1日の1日だけなんですけど…」


阿穗田あぼた「ええっ!エイプリルフールって、4月中何時でも嘘をついても良いて言う月間じゃないの?」


本当目まじめ「嘘をついても良い月間って…交通安全月間じゃないんですから…それに、毎日の様にウソを言うと信用が無くなりますよ…新人の僕が言うのも変ですけど…」


阿穗田あぼた「しっ…知らなかった…だから皆に本当の事を言っても信じてくれなかったんだ…」

少し強めに言っちゃかな…ガッカリした様子…でも、ガッカリする位ウソをついてるのかこの人…



車の中やっぱり会話がないと少し気まずい…

本当目まじめ阿穗田あぼたさんはここの会社は勤めて長いんですか?」


阿穗田あぼた「僕ね…昔はスパイをしてたんだ…」


本当目まじめ「スパイって…また、冗談を、エイプリルフールは1日の日だけですって」


阿穗田あぼた「まっ、信じてもらえないのは仕方がないか…僕は、毎日のふざけて変な格好をしたり、ふざけた行動をとっているけど、この行動をしていると僕の過去がスパイ行動をしてるなんて思わないでしょ…」


本当目まじめ「そうなんですか?」

だから阿穗田あぼたさん、回りの人に怪しまれないようにわざと服装や行動が変な事をして、自分の過去がスパイと言うことを隠していたのか…凄いことを聞いてしまった。


阿穗田あぼた「信じた?…エイプリルフール!」

また、引っ掛かってしまった事に僕は悔しいのと、その仕草を見た阿穗田あぼたさんのニヤけた顔が腹が立って仕方がなかった。


本当目まじめ「あのぉ~エイプリルフールて、さっきも…」


阿穗田あぼた「ごめん、ごめん、分かってる…本当目まじめ君をからかっただけだから、ごめんよ」笑いながら会社まで戻って行った。




ゴールデンウィークも過ぎてもう5月の半ば、連休も遊びすぎてちょっと気分がブルー…でも、仕事をしなきゃ給料が貰えない…仕事をしないと


会社までの道のり景色も見馴れてきた。


何時もの時間同じ道を歩いていると、後ろからまた聞き慣れた足音が「パタパタ」と走ってくる足音が、阿穗田あぼたさんだな…

上下パジャマ上が黄色で下が青い柄が揃ってないパジャマ?!

何時もはジャケットに下がパジャマとか上がパジャマで下がズボンなんだけど、今日はパジャマ!しかも上下バラバラ…髪の毛もボサボサで走り去っていく「おはようございます!」と言っても、振り向きもせず走って行った。


会社に入るとやっぱり…光頭こうとう部長が怒ってる「阿穗田あぼた!休み明け書類提出はどうした…まだ、休みボケか」


そっち?服装でなく叱るポイントが何かずれてる…


阿穗田あぼた「すみません…休みの間、飲み食いし過ぎてお腹の調子が…」と言いトイレへと駆け込む。


光頭こうとう「全く…ブツブツ」休み明けなのに気持ち良く仕事をしたかったのに、光頭こうとう部長の怒鳴り声からのスタートとは残念…


休み明けの仕事初め、書類などをまとめたり色々と忙しい…阿穗田あぼたさんの姿が見えない、まだトイレなのかな?


1時間経つのにまだトイレ…と考えていたら、僕もお腹が痛くなってきた…とっトイレに行かなきゃ


男子トイレの大の方は一つだけ、同じ解のテナントにもあるけど、そこまではもたないかも…

男子トイレに入り大のドアを見たら赤の表示、誰か入ってる…「ええ~」

僕は大のドアを「コンコン」ノックをした。


阿穗田あぼた「はい…どうぞ…」


「はっ…はい…どうぞって…阿穗田あぼたさん、まだ入ってたんですかぁ~!…いい加減出てくださいよ!…1時間も経ってますよ~」僕はドアの前で崩れそうになった。


その時、「ガチャ」とドアが開き阿穗田あぼたさんが出てきた、「ふわぁ~寝た、寝たぁ~」アクビをしながら出てきた阿穗田あぼたさん


「寝てたんですかぁ~?…どいてください…」急ぐようにトイレに入り用を足す…


阿穗田あぼた「まだぁ~本当目まじめくん~まだぁ~」


「まだ…って、入って直ぐじゃないですか…」


阿穗田あぼた「まだぁ~本当目まじめくん~僕、眠いんですけどぉ~」


はぁ~眠い!ね、む、い、だぁ~!

「早くオフィスに行ってください!光頭こうとう部長に言いますよ!」と強めに言ったところ、


阿穗田あぼた「やっべぇ~チクられる!」と「パタパタ」と足音が去って行ったようだ。


トイレを済ませオフィスに戻ると、阿穗田あぼたさんはディスクに座りボーッとしていた。


全く…阿穗田あぼたさん、


本当目まじめ「阿穗田さん仕事に対してどう思ってますか?」

新人だけど、思いきって聞いてみた。


阿穗田あぼた「僕はね、仕事だけが生き甲斐だ…なんて、自他共に認めぬ!」


本当目まじめ「認める?」


阿穗田あぼたは首を横に振り

阿穗田あぼた「認めぬ!」


……「ぬ?」


「る」じゃなく「ぬ!」


「認める」じゃなく「認めぬ!」


認めないのか~い!



6月も過ぎる頃、阿穗田あぼたさん未だに5月ボケでボーッとしている頃、朝からオフィスはバタバタとしていた。

明日から光頭こうとう部長はサンフランシスコに出張だそうで、ウチの会社海外にもあったなんてビックリ…。


光頭こうとう阿穗田あぼた!僕は明日から、1ヶ月程サンフランシスコに出張だから頼むよ!1週間に1回リモートで会議をするから…朝9時には通話出来るようにしてくれよ!」と光頭こうとう部長は明日の出張の支度をしていた。


阿穗田あぼた「良いなぁ~サンフランシスコ!光頭こうとう部長、サンフランシスコで何をするんだろぉ~」


光頭こうとう「仕事!遊びに行くのと違うよ…本当、お前は遊ぶ事しか考えてないな…まったく…ブツブツ」また、怒りだした。


午前中には飛行機に乗るために、光頭こうとう部長はカバンー持って出掛けようとした時「部長~お土産待ってるねぇ!」大きく手を振る阿穗田あぼたさん


光頭こうとう「しぃ~ご~と!土産は買ってこない!」またブツブツと言いその足で空港に向かった。


光頭こうとう部長の居ないオフィス、何時もは阿穗田あぼたさんを怒鳴る声がしたり色々と動き回る人が今日は静か、仕事だけど、穏やかでたまには良いかも…もう1人喜んでいる人がいる。


阿穗田あぼた「今日は何してよっかなぁ~」と自分のディスクに座り両手を伸ばし背伸びをしている。


仕事をしてくれ…


後姿こうし「仕事してください!」


事務員の後姿こうしさん、ごもっとです。


後姿こうし阿穗田あぼたさん、光頭こうとう部長からちゃんと仕事スケジュールをもらってますからね、私が部長の代わりに目を光らせて監視してますからね!」


阿穗田あぼた「ええ~っ」まるで宿題の嫌いな子供がごねる様な顔で後姿こうしさんを見てた。

「そんな顔をしてもダメですよ!仕事、仕事!」後姿こうしさんお母さんみたいだ。


光頭こうとう部長が居ない間もそれなりに仕事は順調に進んで、もう3週間リモート会議の時間…9時になった頃、阿穗田あぼたさん手慣れた作業でリモート通信のため接続作業をしていた。


阿穗田あぼた「おはよーございます。光頭こうとう部長、9時になりました…サンフランシスコは午後の5時頃ですね、この会議を終わったら、乾杯ですか?」


光頭こうとう「あのね、確かにこの会議終わったら、ホテルへ帰って飯食べて寝るだけ…じゃなく、会議の後の話しでなく…」


阿穗田あぼた「じゃ…リモート飲み会しませんか?今から乾杯しましょう!」

缶ビールをモニターの前に出し、「プッシュ」とプルタブを開ける。


光頭こうとう「コラ!阿穗田あぼた何が乾杯だ、勝手に飲むな!ちゃんと仕事しろ」


阿穗田あぼた「はい?、聞こえないです!」

グビグビとビールを飲む阿穗田あぼたさん、モニターの画面が光頭こうとう部長の顔でいっぱいになる。

光頭こうとう「ふざけるな!阿穗田あぼた仕事しろ!」


阿穗田あぼた「あれ…部長…声が…遅れて…聞こえるよ!」


光頭こうとう「誰がいっこく堂の物まねをするかぁ!」


阿穗田あぼた「……」モニター越しで阿穗田あぼたさんが動いていない


光頭こうとう阿穗田あぼた!阿穗田あぼた!あれ、フリーズしたのか?おい、阿穗田あぼた!」


阿穗田あぼた「……」


光頭こうとう「おかしいなフリーズなのかな…阿穗田あぼた聞こえるか?」


阿穗田あぼた「……」


光頭こうとう「画面がびくともしてないなフリーズかも…音声は入ってないか?阿穗田あぼた


阿穗田あぼた「あっ、思い出した!部長は今、サンフランシスコに似た名前が思い出せなくって、モニターに写っている部長をみて、フランシスコ、ザビエルが今思い出しました。部長はサンフランシスコにいるから、サンフランシスコのザビエルですね」大声で笑いだした。


光頭こうとう阿穗田あぼた帰ったら覚えてろよ~」と回線が切れた。


阿穗田あぼた「あれ?切れた…部長~部長、ザビエル部長~じゃなく、光頭こうとう部長~」

あちゃー部長を怒らせちゃった、帰ってきたらどうなるのか知らないぞ…


後姿こうし阿穗田あぼたさん、悪ふざけもいい加減にしてくださいね…寂しいからって、ノンアルビールを飲むなんて…バレバレですよ。」


全てを飲み干して、空になった缶を「クシャ」と潰し「さぁーて、外回りしてきまぁ~す」と出ていった。


阿穗田あぼたさん、寂しくってわざとあんな事をしてたのか

後姿こうし阿穗田あぼたさん、ああ見えても、光頭こうとう部長の事が好きなんですよ、社長から聞いた話しですけど、阿穗田あぼたさんは人と少し…大分違う所があるんだけど、それも個性と言って阿穗田あぼたさんを雇ったのは光頭こうとう部長なんですって…それまでは、他の会社ではまともに相手にされないまま、辛い目にあったとかで、私達も阿穗田あぼたさんを特別扱いするのではなく、阿穗田あぼたさんを理解して一緒に仕事をすると決めてるんです。…本当目まじめさんもあの人の事を理解して下さいね。」


そうか…って、言うかやっぱり


この2ヶ月程、一緒に仕事をしてもおかしな所がいくつもあったけど…皆理解して阿穗田あぼたさんと一緒に仕事をしてきたのか…そう思うと、今までの悪ふざけも少し許せるか…まっ、ふざけ過ぎだけど…


僕はこの会社も、阿穗田あぼたさんの事も好きになれそうだな…。
















































人は色々な人がいて、一般的の常識というのは皆から見てどれが正解か分からないと思います。

服装にしろ態度など、少し…大分大げさだけど先輩阿穗田あぼたさんみたいな人も世の中の常識の一つで、それを回りの人達は認めてくれるのではないのかなと思って書いてみました。

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