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二人で海水浴!! 02

 日にちは飛んで二日後――。

 前日に買った水着を持って、いざ村近くの海へ。


「アリア、先行ってるからね~!」

「うん!」


 ルナには先に着替えを済ませてもらった。女の子と一緒に着替えるのは、まだ恥ずかし過ぎるから、私は後から向かうことに。

 

「これ、変じゃないかな…」


 ルナが選んでくれた、真っ白な紐のビキニ。肌の露出がまあまあ多いし、胸がぺったんこの私には、あまり似合わないものだと思ったけど、ルナがこれを着ろと言って聞かなかった。

 

「男の子の前では全然気にしないけど、やっぱりルナに見せるのは恥ずかしいなぁ…」


 隠す程の胸なんて持ち合わせてないが、一応大きめのタオルで上半身を覆い、外に出る。

 今日は日差しが強く照り付ける絶好の海日和。私たちが住んでいるカギ村の人たちを主として、他所から遊びに来ている者もちらほら見受けられる。

 さらさらした砂浜の感触を素足で確認しながら、私は真っ先にルナの元へと向かった。


 風になびく、可憐なストレートの茶髪。そのスタイルは、まさに天性の美形だ。

 私と色違いの黒ビキニを着飾る彼女に、周囲の目は自然と釘付けになる。

 だって可愛いもん。可愛すぎるんだもん!

 そんな私が憧れる美少女…ルナは、こちらに気づいて手を振った。


「あっ、こっちだよ!アリア!!」

「うん、今行くよ!」


 ルナの美しすぎる水着姿に、私の頬は自然と緩み、間抜け面になる。

 ハァ~、まさか人間の女の子と一緒に海で泳ぐことになるなんて~!もう、感激!!今日は最高の海日和だよ~!!

 なんて思いながら、(にこ)やかな表情を隠せずにいた。


「アリア、すっごく似合ってるわよ、その水着!」

「ほ、ほんとに…?」


 ルナに褒められて、恥ずかしくなりながらも喜びが込み上げてくる。


「うん!ほら、タオルで隠す必要なんてないから」

「わ、分かった…。その、ルナも似合ってるよ。凄く綺麗…」

「ふふ、ありがと。さあ、時間がもったいないわ。早く泳ぎましょ」

「うん」


 海に入るのなんて、いつぶりだろうか。あまり綺麗ではない魔界の海を、一人ぷかぷか泳いでいた記憶しかない…。

 でも、そんな寂しい思い出なんて一瞬で吹き飛ぶほど、今この瞬間、私の心は狂喜乱舞した。


「お、冷たいね~。先ずは浅瀬で慣れよっか」

「そうだね」


 海の冷たい感覚を覚えながら、膝が浸かる程度の浅瀬で体を慣らす。波に運ばれる砂が足先に纏わりついて、不思議な感じだ。

 足元を気にしていると、ルナは両手で海水をすくい上げ、意地悪な表情をしながら私に思いっきり掛けてきた。


「それっ!」

「ひゃっ!!」


 冷たい水飛沫を突然浴びて、驚きのあまり変な声が出てしまう。


「あっはは!アリア、びっくりし過ぎよ~」


 人間の体というのは、刺激に対して分かりやすく反応するものだ。ルナに変な声を聞かれ、恥ずかしさが込み上げてくると同時に、なぜか対抗心が湧いてくる。


「むぅ…私だって」


 頬をぷくっと膨らませながら、私も海水に手をつけ、そのままルナに掛けた。


「うわっ!つっめた~い!アリア、珍しく積極的だね」

「あっ、ごめんつい…」

「いいっていいって!ほら、次はもっといくよ!えいっ!」

「ふふっ、こっちもいくよ!」


 太陽の光に反射して、結晶のように煌めく水飛沫。無邪気に戯れる私たちの幸福度を、そっくりそのまま表しているようだった。


「はぁ~、濡れた濡れた~。じゃあ、そろそろ泳いでみよっか」

「うん!」

「って、言いたいところなんだけど…」

「……??」


 人差し指をツンツン…としながら、ルナは何か言いづらいことでもあるのか、目線を逸らす。


「その、私…犬かきくらいしか出来なくて、ええっと…。た、立ち泳ぎなら出来るのよ!ぷかぷか浮いたりとかね!」


 素直には言いたくないのか、水の中で出来る最低限のことを得意げに語るルナ。それがあまりにも可愛いらしくて、思わずクスリと笑ってしまった。


「もう、笑わないで~」

「ふふ、ごめんごめん。ルナにも、出来ないことってあるんだなぁと思っただけだよ」

「そりゃ、アリアに比べたらそうでしょうけど…」


 と、ルナはそっぽを向いて拗ねてしまう。もう可愛すぎなんですけど、この子!!

 

「ええっと…じゃあ、泳ぐ練習してみる?」


 宥めるように提案すると、ルナは少し照れるような素振りを見せ、こくりと頷いた。

 足先が少し砂浜につく程度の深さまで行き、早速レクチャーに入る。


「はい、ルナ。私の手を握って?」


 両手を前に突き出して、手を繋ぐことを促したが、今にも胸がはち切れそうな程に緊張が押し寄せてくる。このやり方しか思いつかなかったから、自分が教えると言った手前、最後までやり遂げるしかない。


「わ、分かったわ…」


 そっと優しく繋がれた手にドキッ!としながら、説明を続ける。

 

「で、そのまま地面と並行になるように、体を浮かせるの」

「こう?」

「うん。顔は真っ直ぐね」


 これで形はできた。後は私が後退りして、ルナが泳ぎの感覚を身につけてくれればいいのだが…。


「なんか、この体勢…ちょっと照れるわね。その、ずっと見つめ合ってるから…」

「あっ、そうだね…」


 誰だか知らないけど、このやり方を生み出した人は天才だ。

 女の子とさりげなく手を繋げるだけでなく、見つめ合ってとても言葉じゃ言い表せないドキドキ感が味わえるんだから!

 決して疾しい気持ちを抱いてる訳じゃない。あくまで、泳ぐという感覚を覚えてもらうためにしているのだ、うん。


「アリア、そろそろ深い所に行ってもいいわよ。だいぶ慣れてきたから」

「分かった。じゃあ、スピード上げてくよ」


 深い所だと足が付かないので、飛行魔法を使って水の中で体を自由に動かす。


「どうかな、これ。どこでも自由自在だよ~」

「あっはは!速いはや~い!」


 魔力を消費して、益々勢いに乗る。緊張が嘘のように吹っ飛ぶほど楽しくて、私たちは無邪気な笑顔をお互いに向けていた。

 

「はぁ~、楽しかった~!アリアったら、容赦ないんだから~」

「あはは!これが魔法の力ってね~」


 気づけば、調子に乗って浜辺から随分離れてしまった。そろそろ戻ろうかと、ゆっくり引き返していた私たちは、この場の異変を察知する。

 波打つ海が一瞬だけ巨大な影に覆われた後、何かが勢いよく海中から飛び出してきた。


「え…!?」


 そこには、怒り心頭な様子でこちらを睨みつけている、真っ黒なオオダコの姿があった。

 体長5メートルほどの魔物。いつの間にか縄張りに入り込んでしまったようだ。


「「いやぁぁぁ~~~!!」」


 オオダコを視界に入れた途端、ルナは私の手を離し、全速力でビーチへ泳いでいく。危機を前にした人間の底力(?)というのは本当に凄い。


「ルナ、今めちゃくちゃ泳ぎ上手いよ!!」


 なんて突っ込む余裕が、私にはあるけど。


「アリア~!なんとかして~!!」

「うん、ちょっと待ってて~!」


 全く。せっかく二人で優雅に海を楽しんでたのに…。

 故意に敵対したかった訳じゃないし。寧ろ、邪魔されたのこっちだし。


「人が楽しんでるところに、水を差さないで!!」


 海から勢いよく飛び出した私は、オオダコに向かって渾身のかかと落としを炸裂させた。オオダコの頭はベコッ!!と大きく凹み、そこを中心に軽い津波が生まれる。

 気絶したオオダコは、そのまま海中に沈んでいった。


「ルナ!!」


 津波がルナを呑み込む前に、いち早く救出。お姫様抱っこしながら、ビーチに着地した。


「ありがとう、アリア。相変わらず、その体のどこにあんな力があるのやら…」

「いやいや、そんなでもないよ」

「そんなでもない…ねぇ」


 私が生み出した波は、砂浜にまで及び、ちょっとしたアトラクション状態に。いつもより楽しかったと、遊びに来ていた人たちは満足そうに帰っていった。



 夕方になり、私たちも海から村へ戻る。楽しい時間はあっという間で、トラブルは多少あったものの、終始笑顔でバカンスを堪能することができた。


「アリア、ありがとね。海へ行こうって、誘ってくれて」

「ルナが楽しそうにしてるのを見れただけで、良かったよ」

「それはこっちのセリフよ~。でも、ほんと…こんなに無邪気に遊んだのって、何年ぶりかしら。ふふっ、なんだかおかしいわね」

「え…?」

「世界を脅かしてた元最恐魔王が、今や人間になって私と海ではしゃぎまわってるんだもの。こんなにおかしなことってある?」


 可愛らしいルナの微笑みに感化され、私もクスッと笑う。

 普通に考えれば、奇跡のような出来事だけど、なぜか可笑しさが勝る。私があまりにも魔王っぽくないからかな?だって、前世でも魔王っぽいことなんて何一つしてこなかったし…。


「たしかにね。私も、不思議な感じだよ」

「また来ようね。次は、ちゃんと泳げるようになってるから」

「うん」


 夕日をバックに、私たちは並んで歩く。

 これからも、こうして二人で足並みを揃えていきたい。そんな思いを心の片隅に置きながら、私たちの生活は新たな幕を上げることとなる。





 転生した元魔王の甘々百合生活 番外編① 完

短い番外編でしたが、読んでいただきありがとうございます!番外編は宣伝のため、本編と分けて定期的に上げていく予定です(その時は、随時活動報告で連絡させていただきます)。少しでもこの『転生した元魔王の甘々百合生活』が気になった方は、あらすじの本編URLからチェックしていただければ幸いです。

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