1-6 誤魔化し方を間違ったかもしれない。
「それで、ジャネットはどうして副団長の名前を知っているんだ?」
副団長はやっぱり、あのオーランド・ガントだった。
で、ガンド家の長男である彼がなぜ警備兵団に入団したのかは謎のまま。
オーランドは私たちがデート、デートじゃないんだけど。
まあ、とりあえず他に言い方がないのでデートということにしておくけど。
そのデートだと思って、遠慮したらしく、挨拶をしたら店を出ていった。そのとたん、ベンとスティーブがほっとため息をついたのはちょっとおかしかった。
注文をしてからしばらくすると、スティーブがオーランドについて聞いてきた。
なぜか瞳が真剣で、ちょっと怖い。
「スティーブ。知っていても別におかしくないだろう。副団長はモテるしさ」
「そうだけど」
「スティーブ。ジャネットを怖がらせてどうするの?印象悪くなっちゃうわよ」
「え、怖い?俺、怖かった?」
スティーブがとたんに困ったような表情になって、私はおかしくなってしまった。
なぜかわからないけど、彼は私のことが好きみたいだ。
今日会ったばっかりなのに、不思議だけど。
人に好かれるというのは嬉しいことだ。
でも、今はそういう気分になれないので、しっかりしなきゃ。
「怖くないよ。大丈夫。そう、ほら副団長はかっこいいから、前からファンだったの。名前は知っていたの。今日お見かけしてちょっと驚いたから思わず名前を呟いてしまって」
ちょっと苦しい言い訳?
オーランドに対しては懐かしいという気持ちしかなかったけど、とりあえず、そう言うことにした。これでスティーブも諦めてくれるだろう。ちょっと私が気になっただけだと思うし。
「まじか」
スティーブは両手で頭を抱えて俯いてしまった。
「ジャネット。そうなの?初めて聞いたけど」
「あ、ごめん。ほら、そういう話まだしたことなかったでしょ?」
メグも驚いて聞いてくる。
とりあえずオーランドを使って牽制しておこう。そういえば、オーランドは結婚してるわよね?あの頃の私と同じ年だったから、今は三十二歳のはずだし。
「スティーブ。諦めるのはまだ早いぞ。副団長は一度の結婚で懲り懲りって言っていたじゃないか。モテる割にはそういう噂もないし」
「そうか、そうだな」
え?諦めないの?
っていうか、オーランドは結婚してたけど、離婚?
懲り懲りってなんかあったんだろうなあ。
「私は、ジャネットが副団長のこと好きなら、そっちを応援するわ」
「メグ。なんだよ。それ。ベン、お前の彼女だろう?」
「うーん。メグがそう言うなら、俺は彼女の意志を尊重する。お前はお前で頑張れ」
「え〜?お前も応援してくれないのかよ」
うーん。
こういう話は対象がいないところでするのでは??
まどろこっしいので聞いてしまおう。
「あの、スティーブは私のこと好きなの?」
「そうだよ。っていうか、ああ、くそ。ちゃんと告白したかったのに」
なんていうか、スティーブが悔しがってる。
メグは驚いて、ベンは少し面白そうにしていた。
なんていうかベンはちょっと性格が悪い。
「スティーブ。初めて会ったのに好きになってもらってありがとう。だけど、今はちょっとそんな気持ちになれなくて」
「初めてじゃないよ。ジャネット。いや、話すのは初めてか。実はメグと一緒にいるところを見て一目惚れしたんだ。それからベン経由で君の話を聞いて」
「そうなんだ。ありがとう」
スティーブは少し照れながらも真剣な表情をして私を見ていた。
でも、だからこそ、きっぱり断らなきゃ。
「スティーブ。ごめんなさい。気持ちに答えることはできない。でも好きになってくれてありがとう」
「……そんなに副団長が好きなのか?」
誤解。だけど、これを利用したほうがすっきりするかもしれない。
「うん。そういうことなの。だから」
「ジャネット。そうなのね。知らなかったわ。スティーブ。きっぱり諦めなさいよ。私はジャネットと副団長のことを応援するわ」
「え?メグ?」
応援しなくていいから。
「そうだな。俺、諦めるわ。あの副団長相手じゃ無理だし」
スティーブも?
そんなに諦め早いの?いいことだけど、複雑な気持ちになる。
「そうと決まれば、副団長とジャネットを取り持つ作戦が必要だな」
「ベン。やる気ね」
「面白そうだから」
「お前、なんか、俺を応援すると言った時よりもやる気だぞ」
なんか、盛り上がってるけど。
いや、選択間違った?
でも今更、言い直せないし。
あ、でも大丈夫。オーランドはおじさん(ごめんなさい)だし、私のような小娘には興味ないだろう。しかもモテるみたいだし。
私を置きざりにして盛り上がる作戦会議を横目に、現世で初めての、マリーナのパンケーキを楽しんだ。




