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前世で弟だった旦那様が超シスコンになっていてどうにか矯正したい。  作者: ありま氷炎
第一章 私の前世はちょっとおかしな旦那様の姉上
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1-2 現世(いま)と前世(かこ)の私

 マリー・ハレット

 それが私の前世かこの名前だ。

 お茶の貿易を営むハレット家の娘で、母親似の銀髪に空色の瞳の美少女だった。


 自分で、自分のことを美少女とか、言いたくないけど、確かに前世まえの私は美しかった。

 確かにロンが女装すると、似ているかもしれない。

 ……でも、ロン。女装はやめてね。


 ロンの執務室から戻って、悶々しながらメイドの仕事をしていると、メイド長ことセリーナから今日は休むように伝えられた。

 セリーナは当時からいたメイドで、赤毛でお喋り好き。よくメイド長に注意されているのを見ていたけど、彼女は今やメイド長。しかもあの頃のお喋り好きで陽気な様子はまったくない。

 記憶を取り戻してから、使用人やメイド、執事を見るとなんだか懐かしさで胸がいっぱいになる。まあ、一方的な思いなんだけど。


「メイド長。私は大丈夫です。不注意で扉にばーんと頭をぶつけただけなんです」

「旦那様から聞いてます。なんでも旦那様の開けた扉に当たってしまったとか。今日は休んでください。わかりましたね」


 食い下がろうとしたけれども一瞥されてしまい、押し黙るしかなかった。

 本当、セリーナは変わったなあ。


 元気なのに仕方なく、作業を止めて部屋に戻る。メグが心配そうだったので、大丈夫だからと手を振った。みんな忙しそうなのに申し訳ない。

 けれどもあのセリーナには逆らえないし、下手に逆らって解雇されても困る。だから大人しく、部屋に戻って、とりあえず着替えて、ベッドの上に横になった。

 寝返りを打っていると前世かこの記憶がどんどん鮮明になってきて眠れるはずもなく、いや眠ったら夜が眠れないからありがたいけど。


 ロン。

 あれから十七年経つので、今は二十九歳。

 年齢的にはおじさんになりかけなのに、全然そんなことなくて、美青年。

 よく育ったわ。

 でも、まずい。ちょっと、いや、かなりおかしな子に育ってしまった。

 そう言えば、メグからロンには何度かお見合いの話があったけど、わたしについて語りすぎて、婚約にも至っていないって聞いたことがあったっけ。

 重症。

 蘇ったばかりの記憶をたどると、子犬みたいに私についてくるロンの姿が浮かぶ。

 当時は可愛い、可愛いと喜んでいたけど、あれがよくなかったかもしれない。

 しかも庇って死んじゃったし。

 でも私が庇わなければ、彼は死んでいた。

 だから行動は間違っていない。


 だけど、今のままじゃ彼は幸せになれない。

 どうにか、あの変な癖を直さないと。

 その為にはわたしから気を逸らせる必要がある。

 さてどうしよう。


 メイドである私がロンに接することができるのはわずかな時間だ。

 しかもまだ雇用されてから二週間しか経っていない。

 でしゃばるのはよくない。

 ゆっくり時間をかけていこう。


 サイモンさんには本当に感謝だ。

 ハレット家を紹介してもらって、弟がこんなことになっているなんて教えてもらってよかった。

 前の私は死んでしまったし、過去に過ぎないけど、記憶を取り戻した私にとってロンはやっぱり可愛い弟にしか思えない。

 だから頑張る!

 今のジャネットの精一杯で。


 そうそう、今の私。

 ジャネット。苗字はあるけど語りたくない。

 あのクソ親父のことを思い出すだけで気持ちが悪くなる。

 娼館に売り飛ばされる前に逃げ切れてよかった。

 今の私はマリーと違って茶色の髪色、同色の瞳で平凡凡な容貌だ。

 母の手伝いで十歳から、教会が運営している孤児院でお手伝いをしてきた。母が亡くなっても少しだけど給金が出るので、私は通い続けた。

 おかげでろくでもない父に売り飛ばされずにすんでいた。

 けれどもある日、孤児院で火事があって私は仕事を失って、とうとう娼館へ……。

 見かねた院長様が乗合馬車の片道切符をくださって、私は町から逃げ出した。

 たどり着いたところは、院長様のお知り合いのお屋敷。

 ベルナルド様は六十歳くらい。執事と数人の使用人を雇ってお一人で暮らしていて、そこでメイドとして雇っていただいた。

 孤児院で読み書きを教えてもらっていてよかった。

 家事もそこで覚えたので、院長様の顔に泥を塗ることなく、仕事を続けていたと思う。

 だけど、体の調子を悪くしてしまったベルナルド様はとうとう家を売却して、息子夫婦と住むことになった。執事のサイモンさんの紹介で、ハレット家で雇ってもらえることになった。

 サイモンさんは別のところで執事業をしているみたい。

 そのうち落ち着いたら挨拶に行きたい。


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