決闘 決着
「では……神器解放!」
「クッッッッソォ間に合えぇッッ!」
ヴィネア言う通り、俺が現状操ってる神器を別の神器へ変える場合には時間を空ける必要がある。
紅蓮の指輪で神器解放したときとその後エレインの神器に切り替えたとき、そしてさっき。全て3秒以上の間があった。
だがこれはブラフ。
実際、俺が切り替えに必要な時間は約1秒。
ただヴィネアが本気で俺を倒そうとしたら0.1秒も掛からないだろう。
「だから少しでもっ!」
ヴィネアの神器相手に真正面から受け止めるとか逃げるとか言うのは無駄だ、パワーもスピードも勝てる訳がない。
そのため俺が狙ったのは発動前のヴィネアの手元、神器解放をこちらに向けて放たれた瞬間負けが確定するためそもそも発動させないと言うことを狙っての行動。
ヴィネアの左腰で構えられている神器に向かって、折れていない方の脚で蹴りを入れにいった。神器開放は繊細な魔力操作を必要とする。些細な狂いであろうと膨大なエネルギーを扱う以上暴発の危険というのは常に存在する。
「甘いですね……。」
その瞬間ヴィネアの神器の先から閃光が放たれた。
超高密度の光に形をした魔力が辺りを席巻し、その明るさと爆音、圧倒的な魔力量によって目、耳、魔力による探知全てが封じられる。
刹那の間何も認知できない暗闇に落とされる。
俺が妨害するより早く神器解放をしたのだろう。しかし放たれた方向は俺とは真逆。これによって俺の感覚器官が麻痺するが、俺は別にこの状態でも神器を操作するのに支障はない。
俺を1秒以内に倒す数少ない手段である神器解放をここで使ってくれるなら俺の勝利は確定したようなものだ。
「これで……いっっ⁉︎」
他の感覚器官が潰されたとなれば必然唯一残っている触覚に意識を向ける。
だがこれが間違いだった。
蹴りを入れるためヴィネアのそばに出されていた左足に激痛が走る。なまじ意識していたためにその痛みは想像を絶するものになっていた。
何か硬いものに猛烈な勢いで骨ごと砕かれていっているのがわかる。おそらく感触からして剣の柄。
俺と反対側に神器解放されたということは、その反動は俺の方向に向かってきているという事。ヴィネアはその勢いをあえて殺さず俺の足を攻撃してきたのだ。
カクン……
そんな虚しい音が足元から聞こえてくる。
両方の足が無惨に折れ砕かれ、量の足をついて地面に立っていることが不可能になったのだ。
そして激痛による影響がここでやってくる。
本来回復していたはずの他の感覚器官。そこから聞こえてくる音を認識するのにわずかな誤差を生んでしまった。
「神器……解放。」
もう一回だと?
普通は不可能だ。先ほどの神器解放から0.2秒ほどしか経っていない。
魔力の消耗量に純粋な肉体の疲労、本来人間の許容量を上回る神器解放の魔力による身体の損傷。間に合うわけがない。
だが実際に可能にしているのだろう。彼女はハッタリをするようなタイプではない。
俺が神器を操作できるようになるまで残り0.4秒。
そして目が見開き、状況を理解して動き出せるようになるまでそこから0.一秒かかった。
さっきの神器解放よりもさらに一段階上の魔力を纏った光の剣が、俺の首筋まであと一息のところまで差し迫っていた。
これは……
「終わりですね。」
「どうだろうなぁ?……後ろを見てみろ。」
「……そんなハッタリにひっかかるほど私は……え?」
俺の身体を首から上と下で二つに分けようとしていたその剣は直前で停止した。
いや、どんどんは離れていく。剣ではなくヴィネア自身も、後ろにある何かに吸い込まれていく。
そこにあったのは空間の裂け目とも言うべき現象。前にヴィネアがやってみせた魔術次元とこちらの世界を繋いだのと原理は同じ。
超越的なエネルギーに世界が耐えられず生まれたバグのようなもの。
「これは先ほどの余波⁉︎いいえ、私はここまではやっていないはず?」
「ここがどこだか忘れたのか?現実世界じゃない、結界によって作られた仮想世界。流石のマーリンでもそこまでの強度にはできなかったようだな。」
おそらくその裂け目を覗き込めば外にいるであろうトリス達の顔が拝めるだろう。
「そして……時間切れだ。」
紅蓮の指輪の使用をやめてから約1秒。
このケースも想定はしていた。だが、条件が厳し過ぎた。あと0.1秒早くヴィネアの攻撃が間に合っていたらどうしようもなかったし、裂け目が俺の味方になるか敵になるかも未知数だった。
しかし間に合った。
「戦闘経験の差が出たな。」
今まで人間相手であろうが魔物相手であろうがまともに勝負になったことすらないであろう。圧倒的な力が故の経験不足。
次はない、そもそも俺の弱点を知られてしまった以上勝ち目なんて無くなった。
だが今回は俺の勝ちだ、
「これがお前の神器か……なんちゅうもん扱ってるんだお前は?」
俺に向けられていた神器解放の方向を真逆に変更する。
本来はあり得ない動きだが、それを可能にできるのが俺の強み。いくつもの神器を使ってきた経験によってなせる技。
……あれ?
「⁉︎……今すぐ操作権を私に返しなさい!勝敗とかそう言う話ではなくなりますよ!」
「何で……!」
これは後から分かった話だが……
そもそも俺が操作できる神器の範囲はかなり広い。これは効果範囲という話ではなく、神器というものへの解釈の話。
神器を通して放たれた魔力であれば、撃たれてから多少時間が経っているものであっても変幻自在に操作できる。そしてこれは俺だけができるものではない、神器の扱いに精通できれば誰にでもできるものである。
ただそこまでのレベルに達しているのが俺のみだったというだけ。
……ヴィネアを除けば。
要するに何が言いたいかというと、俺が安全だと思っていた次元の裂け目が無害だったのはヴィネアが被害を出さないように魔力をコントロールしていたからだった。
そして同じことが俺にはできなかった。
「ぐッッッ……抑えきれない⁉︎」
その瞬間、何かが砕け散り爆発する音と複数の悲鳴が二つの世界に響き渡った。
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今回初めてあとがき書きましたが、私は読んでる最中にあとがき挟まるのがあまり好きではないので、最新話を投稿したら前の話の後書きは消すようにしていこうと思います。




