ー第4話排除
ー第4話 排除
佐々木が去った後…合川は、オカルト対策室を出て、1人東京駅に向かった。皆川も平野も施設の立ち上げの仕事が有った。自然と二荒清明を確保するのは、合川の役割になる。
合川は、右手首を見た。平野が開発した腕時計型の測定器が数字を表示している。周辺の空間メモリーデータ群の量を示している。
東京駅の新幹線自動券売機の前に合川は居た。
「86%だぁ…。」
平野は80%あれば心霊スポットと呼べると言っていた。虚ろな目の人々に合川は、ゾッとした。
名古屋まで乗車券を買い改札を抜ける。ホームに上がると数値は79%に落ち着いた。
さらに、新幹線車両内に入ると20%まで落ちる。車両の素材に遮断能力が有るらしい。
合川は少し気持ちが楽になったような気がした。のぞみのシートに体を沈めると目を閉じた…。
バンッ…。
驚いて、音がした床を見る。不意を衝かれた合川は、素早く周囲に視線を走らせる。
乗った時と変化は無い…。
右手首の測定器を見る。
94%。
バンッ…。
今度は天井から来た。合川は憑依された乗客を警戒する為に椅子から降りて床にかがんだ。窓を背にしている。
ビシッ…。
窓に亀裂が走るような音が後ろから来た。わずかに背中に気をとられる。意識を前に戻す。
目の前に、女性車掌の顔が有った。
両肩をつかまれて、座席から通路に引きずり出される。女とは思えない引きと握力だ。合川は逆に車掌を向かいの座席に押した。女性車掌は座席に後ろ向きに転び、合川は覆い被さる形になる。
すると今度は、両足首をつかまれるのを感じた。足が持ち上げられる。女性車掌は立ち上がりながらも肩を離さない。肩と足首で宙に浮いた。座席が視線の方向に流れる。
ー外に!
デッキに出た。もう1人車掌が居て、激しく風が吹き荒れている。乗降口のドアが開いているのだ。
女性車掌の方向に体が運ばれて行く。体がグッと持ち上げられた。開いているドアから、流れ去る街並みが見える。
顔が乗降口から出た。ガッチリと体を固められている。
合川は可能性を探した。
「お客様の安全を最優先します!お客様の安全を最優先します!お客様の安全を…。」
肩まで出た。頭の先を何かがかすめて行く。合川は繰り返して叫び続ける。
腕まで出た…そして。
キッーィィ〜ィィッ〜ィィィィッ
長く長く切り裂くブレーキ音が、合川の耳をつんざいた。
風が止まり、合川はゆっくりと車内に戻されて床に下ろされた。
「お客様?。お怪我は有りませんか?。」
肩をつかんでいた女性車掌が、茫然とした顔で聞いてきた。その向こうに、やはり茫然として、非常ブレーキのレバーを握った車掌が合川を見つめていた。
ー次話!
第5話誤爆に続く…




