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二つの物語

作者: 冬空

朝、それは爽やかな目覚めの時。


「ふぁ~~」


俺、歌佐かさい 火落ひらは、朝が来るのを楽しみにしている男子高校生だ。


何故かって?それはだな……


「おはようー!」


幼馴染がいるからだよ。


「毎朝、元気だよな」


俺の部屋に突撃して来た幼馴染の名は、砂雷さらい 希樹きき

ポニーテールがチャームポイントの、可愛らしい女の子だ。


「ねぇ!僕の話し聞いてるの?」


おっと、見惚れすぎてしまった。


「すまんすまん。あまりの可愛さに見惚れていたんだ」


あっ、ヤベ。

つい、本音が………


「ふぅ~。火落は僕が男だって知ってる筈だよね?どうして可愛いなんて言葉が出てくるのかな~~?」


そう、希樹は男の娘なのだ。

だけど、本人は気付いていないと言う、厄介なタイプだ。

男なら分かるだろう?

女の子にしか見えない幼馴染が、無防備に近付いて来る。

こんな生殺しなんて、拷問されてる様なもんだろ!

しかし、俺は抗わなくてはいけない。

たとえ、希樹から甘い香りが俺の鼻孔を埋め尽くし、理性との勝負になろうとも!


「ねぇ、なんで戦場に行く兵士見たいな表情をしてるの?」


「ふっ、希樹には理解出来ない事さ………」


俺は、髪をかき上げ、カッコつけて希樹に言ったが、


「そ、そう。火落って、たまにおかしい時があるよね」


希樹は引きながら言った。

それは、俺に大!ダメージを与えた。


そんな!俺はただ、希樹が好きなだけなのに!

引かれる理由なんて無い筈!

まだ、まだチャンスはある筈だ!


「希樹!」


「はい!」


「俺と結婚してくれ!」


俺は何を言ってるのだろうか?

結婚の告白は二人が大人になってからする予定だったのに。

何故今してしまったんだ……


「あ、えっと。その気持ちは嬉しいけど、僕は男で、えっと、ごめんなさい!」


恥ずかしながら断る希樹の天使な姿も良いが!

やはり、


「そうか、それは残念だが。俺は諦めないからな!」


俺の闘志を甘く見るんじゃねぇ!

絶対に、希樹を俺の嫁さんにしてみせる!


「う、うん……楽しみにしてるね」


俺は闘志を燃やしていたせいで、希樹の言葉を逃してしまった!

ここは、聞くべきか……ふっ、愚問だな。


「うん?希樹、今なにか言わなかったか?」


鈍感系主人公の定番の台詞!このネタを知ってる希樹ならツッコミながらも、もう一度言ってくれる筈!


「ッ!き、気のせいだと思うよ」


あれー?いつもだったら、ツッコミを入れてくれる希樹がツッコミを入れない、だと!


うん?ある事に気づいた俺は、希樹の顔を見つめた。


「希樹」


「はひっ!」


「顔が赤い。もしかして、熱なのか?」


近付いて確かめるが、熱はなかった。

いや、逆に寒くなり始めただと!


「希樹!体は大丈夫か!」


くっ!未知のウィルスにかかってしまったのか!

希樹のウィルスを俺に移して、希樹を助ける方法はないか!


「ねぇ、火落」


「はい!」


なんだこれは!

希樹から吹雪が吹き付けてくる!

もしや!


「希樹!戻って来い!いや、俺が助け出してみせる!」


俺の可愛い幼馴染に手を出しやがって!

希樹の体に取り憑いてる奴を追い出してやる!


「えっ?」


「ウォォォォォオオオーーーー!!」


俺の真なる力を使ってでも、希樹を救い出してみせる!


「キャアーーー!!」


ドサッ!


「待っててくれ!今、助けに向かう!」


真実のキスをして、希樹姫を助けに向かうぞー!


「はっ!えっ?……イヤァーーー!!」


バチィー!


「ブバッ!」


なっ………素晴らしい張り手、だ…………


「はれ?火落!しっかりしてー!」


どうしよう!私の張り手で火落が倒れちゃた!死んでいないよね!大丈夫だよね!


混乱していた私の下に、


ガチャ


「アンタ達。朝から夫婦漫才やってないで、ご飯食べに来なさい」

__________________


俺の名はスナイパー百中。どんな奴だろうと俺の手にかかれば一発で倒すことが出来る。そんな俺に、とある依頼が舞い込んで来たんだ。その内容を最初に見たとき、俺は意味が分からなかった。だが、依頼主と話すとあっさりと理解できた。その依頼内容がこれだ。

__________________


女の前で、とある男を倒して欲しい。


それも決まった日時で、だ。


日時については、会ったときに伝える。


それが達成できた場合、私はいくらでも出そう。


良い返答を期待してる。

__________________


ふっ、俺と同類だからこそ分かるんだ、依頼主の気持ちが。だからこそ俺は、この依頼を失敗する訳には行かない。その為の努力は怠らず、俺は慎重に指定された日時を武器の手入れをしたり、位置取りを確認しながら待った。その間、俺は嫉妬の炎で心がどうにかなってしまいそうなほどに燃え上がり、標的の写真を撃ち抜いた数、数知れず。そんな炎に焼かれながらも俺は標的を待ち続けた。どれくらいの時が経っただろうか……一日かも知れないし、一年かも知れない。だが、ついに標的は俺の前に現れた。それも恋人を連れている。依頼主が言っていた通りに標的が来たのだ。後は、俺がタイミングを合わせて撃てば良い。


「ふふふ」


おっと、つい口から喜びのあまりに笑いが漏れてしまった。それだけ俺が高揚してるってことでもあるが、だが今は、標的に集中しなくてはな。俺がタイミングを間違えれば、それは俺の敗北に繋がる。それだけは駄目だ。だからこそ今は、慎重に、そして、冷静に標的を見ろ。


「ッ!?」


なっ!標的は公衆の面前で手を繋ぐだと!!許せん!俺が成敗してやる!!


「ッ!!」


いや、待て俺!今ここで嫉妬に任せて撃てば、この依頼が失敗に終わるぞ!落ち着け、深呼吸をしろ。


「すぅー、はぁーー、すぅー、はぁーー」


よし、落ち着い……


「ッ!?」


今度はキスだと!?奴らはどこまでハレンチな行為を晒すんだ!!


「ハハハ……終われ」


俺はこれ以上、奴らの暴挙を見たくない。ならば、依頼が失敗しようとも、奴らを道連れにしてやる。そんな思いが込められた銃弾は、奴ら……もとい、男に向かって突き進んで行く。


「俺の人生……悪く無い終わりだな」


確実に当たると思った俺は、つい油断してしまい、死亡フラグを建てるような事を言ってしまったが、俺の名において、外すなどと言う失敗は起こらないのだ。それは遠く離れた場所から聞こえて来る悲鳴からも証明されている。


「さて、誰にも見つからない内にトンズラするか」


俺は標的を見ることも無く、その部屋から消えて行く。これで俺の任務は完了した。


「そんなに恋人が欲しければ、私を恋人にしてくだされば良いのに……」


いや……怖い幼馴染みから逃げなくては。逃げなければ俺はバットエンドを迎える事になる。それだけは嫌だ。俺の人生に、幼馴染みと言う名のヤンデレは居ないのだ。


「では、さら「逃がさない……」ば……」


どうやら、俺の人生……ここまでみたいだ。短かったな。今度こそは幼馴染みから逃げ切ってみせる。


「あっ、一つご報告がありまして。私、妊娠したんです」


はは、俺の人生終わったな……


「これからは、明るい家庭を築きましょうね。あ、な、た?」


「はい」


ヤンデレと明るい家庭……果たして、俺に築けるものだろうか?分からないが、俺の未来には幼馴染みと添い遂げるしか道はないみたいだ。


俺はスナイパー百中と呼ばれる暗殺者だ。そんな俺でも、嫁には勝てない。未来永劫、俺は尻に敷かれるだろう。逃げれば殺されるだろう。それほど弱気になるほどに、嫁たる幼馴染みの愛が一方的で、重く、そして、俺は何度誘拐されるのだろう……



頼む!!誰か俺をヤンデレと名の幼馴染みから救ってくれ!!!

__________________

さて、どうだっただろうか?


面白かったか?それとも、つまらなかっか?


まぁ、だが、楽しんでくれたのなら良かったよ。

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