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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園二年生

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ゲームの世界を出て

 こうしてセシリアは、両親と一緒にエイオーダ王国に移住することになった。兄が学園を卒業してから、と思っていた父だったが、話を聞いた兄の祖父がかなり乗り気で、いますぐにでも、と強く勧めてくれたらしい。

 もともと父は公爵家にもシャテル王国にもまったく未練はなく、むしろ以前から魔法の研究が進んでいるエイオーダ王国に行ってみたいと思っていたようだ。だからこのチャンスを逃すことなく、王家が介入する隙を与えずにあっという間に兄を当主にしてしまった。

 母も、いまだに王国一の魔力を持つ父に愛人を持つよう進言する者がいると聞いて、ずっと気に病んでいたらしい。向こうに行けばなんのしらがみもなくふたりでいられると喜んでいる。

 もちろんセシリアも、アルヴィンと一緒にいられるのなら、どこにだって行くつもりだ。

 さすがにブランジーニ公爵家が兄ひとりを残して移住することに、シャテル王国の国王は反対した。

 けれどエイオーダ王国から、甥を保護してくれた礼として大量の魔導具が届き、甥は、助けてもらったブランジーニ公爵令嬢と一緒にいることを望んでいる。それを叶えてほしい、と書かれた手紙が同封されていたようだ。

 さらに父も、シャテル国の将来のために、エイオーダ王国で魔法と魔導具の研究をしたいと言ったため、反対し続けることは難しかったようだ。

 それに国王にとって父は、制御できない爆弾のようなものだ。むしろ手もとに置くよりも遠くにやったほうが安心するのかもしれない。

 まだまだ勉強途中のセシリアは、エイオーダ王国に渡ったあとも、向こうの魔法学園の二年生に編入して学生を続けるつもりだ。

 アルヴィンはもうセシリアの守護騎士ではなく、一緒に通うクラスメートになるかもしれない。

 でも学園を無事に卒業したら、アルヴィンと婚約することになっている。

 貴族の数が減りつつあるエイオーダ王国では、アルヴィンほど王家の血筋に近い者はいない。そんな彼の婚約者でいるためには、もっと魔法の知識が必要になる。

 エイオーダ王国のことも学ばなくてはならない。

 勉強することは多い。それでもアルヴィンと共に生きるためなら、苦労とも思わない。

 そう決めてからは、引っ越しのために慌ただしい日々を送ることになった。

 ララリはセシリアと離れることを寂しがったが、アルヴィンと共に生きるためだと説明すると、納得してくれた。

 手紙を書くと約束し、ララリと別れる。

 それにエイオーダ王国に行ったとしても、別に縁を切るわけではない。

 ララリとの友情も続いていくだろう。

 この国がもし魔族と戦うことになったら、エイオーダ王国からできるだけ支援をするつもりだ。

 使用人もほとんどはそのまま屋敷に残ることになった。長年父に仕えてきた執事と、母が生家から連れてきた侍女のふたりだけを連れていく。

 向こうではアルヴィンの叔母が、屋敷も使用人もすべて取り揃えてくれているらしい。

 引っ越し前日に、セシリアは最後にもう一度アルヴィンと町を歩いた。

 ふたりで食事をした店。デートをした場所などを、手を繋いで歩きながらゆっくりと見て回る。

 最後に、ふたりが出会った場所に行った。

 あの日のことを、ひとつずつ思い出す。

「この国を離れるのは寂しいか?」

 そう尋ねられて首を振る。

「ううん。わたしの居場所は、アルヴィンの傍だから」

 生まれ育った国を離れるより、彼と引き離されるほうが何倍も苦しい。

 そう答えると、強く抱きしめられる。セシリアも人目を気にせず、アルヴィンの背に腕を回した。


 それから数日後。

 両親、そしてアルヴィンと共にエイオーダ王国に向かう馬車の中で、セシリアはくすりと笑う。

 馬車はちょうど、シャテル王国の国境に差しかかっていた。

「セシリア?」

「やっぱりこの国からは追い出されちゃうのね、と思って」

〝悪役令嬢〟にならなかったセシリアと、登場人物ではないアルヴィンは、シャテル王国を去る。この国はきっとヒロインのララリのものだ。

 それでも不安はなかった。

 傍にはいつも、セシリアの最強の守護騎士がいてくれる。

「アルヴィン」

 名前を呼ぶと、そっと抱き寄せられた。

 両親は別の馬車に乗っているので、今はふたりきりだ。セシリアも彼の胸に頭を預けて目を閉じる。アルヴィンの指が、優しく髪を撫でてくれる。

 エイオーダ王国に行けば、立場が変わってしまう。今までのように、ずっとふたりきりでいることはできないかもしれない。

 でも心はけっして離れることはない。そう確信しているから不安はなかった。

「向こうに行っても、お弁当を持ってデートできるかしら?」

「もちろんだ。休日になったらいろいろなところに行こう。俺も、エイオーダ王国は閉じ込められていた城の中しか知らない。セシリアと一緒に見てみたい景色がたくさんある」

 思い出はこれからもたくさん増えていくだろう。

「うん。楽しみだわ」

 出立直前に、アルヴィンの叔母であるエイオーダ王国の王妃から、セシリア宛に長い手紙が届いた。そこには、アルヴィンを保護し守ってくれたことに対するお礼の言葉が何度も書かれていた。向こうで対面したら、セシリアもアルヴィンにずっと助けられていたと話そうと思う。

 これからはゲームのことも前世のこともあまり思い出さずに、セシリアとして、愛するアルヴィンと共に未来を生きていく。

 きっと過去を振り返る暇もないくらい幸せになれる。

 そう確信していた。

「セシリア」

 名前を呼ばれて顔を上げると、そっと抱きしめられた。

 彼の腕の中で、セシリアはゲームの舞台だったシャテル王国の国境を越えて、新しい世界に飛び込んだ。


書籍版のタイトルが変わったので、この小説のタイトルも変わるかもしれません。

とても素敵なタイトル、そして表紙イラストを描いていただきました!

発売は5月10日です。

もう予約が始まっているようなので、興味を持たれた方がいらっしゃいましたらどうぞよろしくお願い致します!

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