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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園二年生

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示した道

 そうして、翌日。

 セシリアは学園の寮の入口で、ララリが出てくるのを待った。彼女はいつもの時間より少し遅れて、重い足取りでゆっくりと歩いている。

 いつも朗らかな表情も、やや暗い。

 ゲームのときのヒロインは、どんなときでも明るく笑っていた。

 恋する相手のためなら、多少のことは耐えられたのかもしれない。だがまったく気のない他国の王太子の相手をしなくてはならず、さらにそれに嫉妬する令嬢たちに攻撃されて、かなり疲弊している様子だ。

 その姿を見ると、胸が痛む。

「ララリさん」

 声を掛けると、ララリはびくりと肩を震わせてから、怯えたようにこちらを見た。そして、声を掛けたのがセシリアだと知ると、その表情が一気に明るくなる。

「セシリア様!」

 そんなに急いだら危ないのではないか。そう思った途端に目の前で躓いて、慌てて手を差し出す。

「もう、そんなに慌てたら危ないわ」

「す、すみません」

 謝罪しながらも嬉しそうなララリの様子に、随分懐かれたものだと内心苦笑する。

「セシリア様は、どうしてこんな時間に?」

「あなたを待っていたのよ。一緒に行きましょう?」

「本当ですか? ……でも」

 一緒に行くと告げると、ぱあっと明るくなったララリの表情が、一瞬で曇る。

「あの、事情があるとおっしゃっていましたが、それはまだ解決されていないのでは……」

 ララリには、何も話していない。

 だが彼女なりに考え、セシリアが身を潜めているのは、ローダナ王国の王太子ニクラスが関係していると理解したのだろう。

 そのニクラスはまだ花嫁候補を決めていない上に、頻繁にララリの周辺にいる。

「私なら大丈夫。アルヴィンがいるから」

 そう言って振り返ると、ふたりを静かに見守っていたアルヴィンが、穏やかな表情で頷く。

 落ち着き払った様子に、ララリも安心したようだ。

「それよりも、あなたの方が大変そうね。大丈夫?」

 声を掛けると、その瞳がたちまち潤む。今まで誰にも言えずにひとりで耐えていたのだろう。

「す、すみません。わたし……」

 もしセシリアが悪役令嬢になっていたら、こんなふうにララリを追い詰めていたのかもしれない。そう思うと、断罪され、修道院に送られても仕方がないと思ってしまう。

「一番困っているのは、令嬢たちの嫌がらせ? それとも、ニクラス殿下のこと?」

「嫌がらせは、このまま黙って耐えていれば、いずれなくなると思います。ただ、父が……」

 ララリの父であるエイター男爵は、爵位に見合わず強い魔力を持って生まれた娘を、何とか上流階級に嫁がせようと必死になっているようだ。この間のお茶会も、ララリは数人だけの小規模なものを望んでいた。それなのに張り切った男爵が、あれほどまで大体的に開催してしまったらしい。

 そしてローダナ王国の王太子が、ララリに興味を持っていることを知った。ララリは市政で育った男爵家の娘だが、向こうの事情も複雑だ。

 高い魔力さえあれば、何とか婚約者に選んでもらえるのではないか。そう考えて、周囲の視線も気にせずに動き回っているという。

 嫌がらせをしていた令嬢たちも、それを身の程をわきまえずに見苦しい、と非難しているそうだ。

「私には、王太子殿下の婚約者など無理です。この国を出るのも嫌です。ですがお父様は、そんなことを口にするなと叱るばかりで……」

 実の父とはいえ、庶子のララリは、貴族の家に引き取ってもらった立場上、強く言うことができないのだろう。

「もう、どうしたらいいのか……」

「そうね……」

 ララリの困り切った顔を見て、セシリアは思案する。

 エイター男爵は、もしローダナ王国の王太子妃にはなれなかったとしても、他の縁談を持ち込むだろう。

 それに、強い魔力を必要としている貴族は多い。ララリならば子爵家どころか、伯爵家や侯爵家の者と婚約できる可能性もある。

 だが口には出さないが、ララリはまだ元王太子のアーサーを慕っている。他の縁談を持ち込まれるのは苦痛だろう。

 何か良い方法はないか思案していたセシリアは、ゲームのエンディングのひとつを思い出す。

「それなら、聖女を目指してみればいいわ」

「聖女、ですか?」

「ええ」

 ゲームのエンディングのひとつに、聖女エンドというものがあった。

 攻略対象とのエンディング条件を満たさず、聖魔法の数値を限界まで上げると、ヒロインは教会によって聖女に認定される。

(この世界の聖女は、救世主みたいな特別なものではなくて、役職のひとつだけど……)

 それでも聖女に任命されるのは相当な名誉であり、聖女を輩出した家も尊重される。そして他国の者が、その国にとって大切な存在である聖女を奪うことはできないのだ。

エイター男爵も、自分の家系から聖女が出るとなれば手放しで喜ぶだろうし、ローダナ王国の王太子も、相手が聖女では諦めざるを得ない。

(聖女になるには、ある程度神官リアスの好感度も必要だけど、それはきっと問題はないわ)

 ララリはよく、彼の元を訪ねて聖魔法を習っている。

「私にできるでしょうか……」

 彼女は不安そうだったが、次の瞬間には覚悟を決めたように両手を握りしめた。

「いえ、やるしかないですね。聖魔法を極めるのは、私の望みでもあります」

 道を示していただいて、ありがとうございます。

 ララリはそう言って、深く頭を下げた。

次の更新は2/16の予定です。

少し間が空きますが、再開後は更新頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

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