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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園二年生

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今日の夕食はクリームシチュー

 エイオーダ王国の古語で書かれた魔法書はなかなか難解で、読み解くのに時間が掛かる。

 アルヴィンならすぐに解読してくれるだろうが、自分で理解できなければ意味がない。わからないところは辞書を使いながら、根気よく読み進めていく。

 集中して魔法書に読みふけるセシリアの隣では、アルヴィンが物思いに耽った様子で、窓の外を見ている。

 何度調べてもわからないところがあり、アルヴィンに聞こうと思って顔を上げたセシリアは、しばらくその横顔を見つめていた。

(本当に、綺麗な顔よね)

 彼と出会い、強引に連れ帰ってから、もう六年。

 まだ少年らしい甘さが残っているが、数年も経てば精悍な青年になるだろう。それをこれからも傍で見守ることができる。そう思うと、幸せだ。

 王太子の事件でわかったことだが、アルヴィンは魔法が発展した国、エイオーダ王国の出身だった。あれだけ強い魔法が使えることを考えると、間違いなく貴族出身だろう。

 エイオーダ王国はこの国と違い、まだ強い魔力を持つ者が多い。けれどその分、貴族の数の減少に悩んでいるらしいと聞く。

 いくら実の父に虐げられて国外に逃亡したとはいえ、これほど強い魔力を持っているアルヴィンを、あの国は放っておいてくれるだろうか。

「セシリア?」

 声を掛けられて顔を上げると、アルヴィンがセシリアを覗き込んでいる。少し心配そうな顔をしているのは、自分が不安そうな顔をしていたからだろう。

「どうした?」

「何でもないの。少し難しいところがあって」

 そう言ってごまかした。

(馬鹿ね。不安に思う必要なんて、まったくないのに)

 アルヴィンがセシリアの傍を離れることはない。そう信じている。

 そう言うと、アルヴィンはセシリアの読んでいた本を覗き込む。

「どこだ?」

「ええと、ここ。この記述がよくわからなくて」

 聞こうと思っていた箇所を指し示すと、アルヴィンは丁寧に教えてくれた。

 あいかわらず、教えるのが上手い。

「うん、ありがとう。よくわかったわ」

 教えてもらったことを何度か反芻し、セシリアは頷いた。

「アルヴィンの教え方は、先生よりも上手ね」

「あの魔法学の教師は、セシリアに近付きすぎる。教え方も下手だ。もしわからないことがあっても質問などしない方がいい。俺が教えるから」

「……そうね」

 拗ねたような口調が年相応に見えて、思わずくすりと笑ってしまう。独占欲が強いのも、相手が好きな人なら嬉しいものだ。

「わたしも、アルヴィンに教えてもらった方がいいわ」

 そう答えると、安心したように笑う姿も愛しい。

 保護者だった気持ちが、少しずつ恋人としての気持ちに変わっていく。

「今日の夕食はわたしが作ろうかしら。アルヴィン、何がいい?」

「セシリアが作ってくれるものなら何でも好きだが、今日はシチューがいいな」

「うん、いいわね。材料はあるはずだから、さっそく準備しなきゃ」

 学園寮には食堂もあるが、セシリアに宛がわれた場所はとても広く、料理もすることができた。他の令嬢ならば、専用の調理師を連れてきているのだろう。

いつもは侍女に作ってもらっていたし、たまには食堂に行くこともある。けれど休日や時間のあるときはこうして、アルヴィンのために料理を作っていた。

(本当にここって、不思議な世界よね)

 調理室に向かい、魔道具のひとつである冷蔵庫を開けながら、セシリアは思う。

 ゲームの世界なので、ファンタジーと現代の技術が融合しているのだ。現代並みに便利な道具もあるが、魔法があったり、町の外には魔物が出たりする。

(便利なのは良いけど……)

 シチューの材料を取り出して、手早く下拵えをする。

 アルヴィンが手伝ってくれることもあるが、今日はひとりで料理をしたい気分だったので、自分の部屋で待ってもらうことにした。こうして無心に材料を刻んでいる時間が、結構好きだったりする。慣れた手つきでクリームシチューを作り、侍女が焼いてくれたパンを温めて、食卓に運ぶ。

 少し多めに作ったので、明日はクリームコロッケにするつもりだ。

「アルヴィン、できたよ」

 彼の部屋に向かって声を掛けると、寛いだ格好をした彼はすぐに出てきて、漂うシチューの香りに嬉しそうに笑みを浮かべる。

「いい匂いだ」

「たくさん作ったから、いっぱい食べてね」

 ふたりでゆっくりと夕食を食べ、後片付けは侍女がしてくれたので、そのまま自分の部屋に戻る。

 アルヴィンはこれから、剣の鍛錬に向かうようだ。学園寮には主とともに入学した守護騎士も多い。彼らのために、学園寮の隣には鍛錬場があった。

 そこに向かうアルヴィンを送り出してから、セシリアはひとりで着替えると、ベッドの上に座った。

 まだ寝るには早い時間だから、ベッドの上で魔法書を読むつもりだった。

 前世のセシリアはゲームが好きだったからか、魔法を学ぶのはとても楽しかった。

「どれにしようかな……」

 何冊かある本のうち、どれを読もうか迷っていると、ふと一冊の本が目に留まった。

 魔法書ではなく、エイオーダ王国の歴史書だった。間違えて持ってきてしまったようだ。

(エイオーダ王国……。アルヴィンが生まれた国……)

 ゲームでは名前しか出てこなかったので、どんな国だったのかセシリアも詳しくは知らない。

 少し迷ったが、セシリアはその本を読んでみることにした。


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