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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園二年生

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束の間の平穏

 それから二人で、寮にある自分の部屋に戻った。

 学園に入学した当初は若い侍女が二人いたのだが、今は母親よりも少し年上の女性がひとりいるだけだ。

 公爵令嬢とはいえ、セシリアには前世の記憶があるので、大抵のことはひとりでできる。むしろ着替えなどを手伝ってもらうのは、恥ずかしいくらいだ。

 でも公爵家の令嬢が寮に入るときに侍女をひとりも連れていないのは、さすがに疑問に思われるだろう。

 だから最初から、一年だけの約束で彼女達を寮に連れてきた。二年目になれば、それほど注目はされないだろうし、部屋にはアルヴィンの結界が張ってある。

 彼女達が公爵家の屋敷に戻ったあとは、アルヴィンとふたりでまったりと暮らすつもりだった。

 でも母は、さすがに異性の守護騎士と二人きりでは体裁が悪いと思ったようだ。自分の馴染みの侍女をひとり、寮に寄こしてくれたのだ。

 さすがに母のお気に入りだけあって、有能な侍女だった。

(でも、全部お母様に報告されているんでしょうね……)

 セシリアに仕えているが、彼女の主はあくまで母である。

 最近娘のことを気に掛けるようになった母に、すべて報告されているかと思うとやっぱり憂鬱だった。

「かまわないさ」

 そう愚痴を言ったセシリアに、アルヴィンはそう言って笑った。

「今後のことを思えば、公爵夫人は味方につけたほうがいい。俺達がどんなに互いを大切に思っているか、離れがたく感じているか。そのすべて報告してもらおう」

「たしかに、そうね。お母様が味方になれば、お父様はもう攻略したようなものね」

 もともと、魔法と母以外には興味のない父だ。母が頼めば、どんなことでも承諾してくれるだろう。

 たとえば、娘の婚約者を守護騎士にする、という提案でもだ。

 守護騎士は、仕える主の婚約が決まれば傍を離れることになっている。そして守護騎士は下位貴族出身が多く、主と結ばれることは、ほとんどない。

 だがアルヴィンの魔力の高さを考えたら、彼を普通の守護騎士と同等に考えることはできないだろう。

 しかもアルヴィンはこの国ではなく、他国の、おそらく高位の貴族だ。

(悪役令嬢だったセシリアは王太子と婚約していたけれど、もうその可能性は完全に消えているはず)

 彼は王都から遠く離れた場所で静養中であり、次に王位継承者となるのは王女のミルファーである。むしろ魔力の高さから、アルヴィンが王女の婚約者として目をつけられているのではないかと心配になる。

 兄の分まで頑張ろうと必死に努力している彼女を応援しているし、支えたいと思っているが、アルヴィンだけは譲れない。

 それを告げると、アルヴィンは心配ないと笑った。

「素性の知れない男を傍に置くような物好きは、セシリアくらいだ。それに、向こうもブランジーニ公爵家の機嫌を損ねるようなことはしないだろう」

 父の魔力の高さは警戒されているが、今のところ父は、権力争いに興味はない。

 母が傍にいて、魔法の研究さえできれば満足しているので、下手に刺激するのは危険だと思われているようだ。

「そうね」

 さわるな、危険。

 父の存在はきっとそう思われている。

「それに、もし俺とセシリアを引き離そうとするなら、セシリアを連れてこの国を出る。だから、何も心配するな」

 腕を引かれて、導かれるまま彼の膝の上に座る。

 セシリアにしか向けられたことのない笑顔でそう言われてしまえば、不安など綺麗に消えてしまった。

「うん。わたしも、アルヴィンがいてくれたらそれでいいわ」

 王女ミルファーを支えたいと思っている。

 友人となったララリも、ヒロインだけあって良い子で、頑張る彼女に何か手助けができれば思っている。

 でも、ゲームの舞台であるこの国を出たら、もっと自由になれるような気がするのも事実である。

(さすがにそれは、最終手段ね。逃げ道があるとわかれば、気持ちも楽になるし)

 もうこの先の未来には、ゲームのシナリオは存在しない。

 どうなるかわからないという不安はあるが、何があってもアルヴィンが傍にいてくれる。

 だから大丈夫だ。

 そのままセシリアは、しばらく自らの思考に沈んでいた。

 前世のこと。

 ゲームだった世界のこと。

 そして、魔に魅入られてしまった王太子アークのこと。

 ふと気が付くと、近くのテーブルにまだ湯気の立つ紅茶が置いてあった。

「あれ、アルヴィンが淹れてくれた?」

「いや、この体勢では無理だろう」

 セシリアは彼の膝の上に乗ったままだ。では、用意してくれたのは侍女だろうか。

「……っ」

 そう思ったところで、アルヴィンの膝に甘えるように座っている姿を見られたかと思うと、恥ずかしくて頬が紅潮した。

「見られた、よね。どうしよう……。これも報告されちゃうのかな?」

「別にかまわないだろう。むしろ、どんどん報告してほしいくらいだ」

 アルヴィンはそう言うけれど、さすがに母親にこの状況を説明されてしまうのは気恥ずかしい。慌ててアルヴィンの膝から降りようとするものの、彼は背後からセシリアを抱きしめたままだ。

「もう。そろそろ離して?」

 促すように腕を叩くと、ようやくセシリアを解放してくれた。

 それから冷めないうちに紅茶を飲み、ゆっくりと寛いだあとは、屋敷から持ち出してきた魔法書を開いた。


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