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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園一年生

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罠の可能性

 ゲームでは仲間に王太子と王女がいたが、ただの公爵令嬢であるセシリアとその守護騎士アルヴィンには、手に余る事態だ。

 セシリアとアルヴィンが王女襲撃とはまったく関係のないことを証言してもらえば、あとは国として対応してもらうのが一番良いのではないかと思う。

 ただ、魔族の力を利用している今のフィンとアレクには、普通の騎士が何人いても適わないだろう。

 そこだけは、セシリアとアルヴィンで何とかするしかない。

 仲間たちがたくさんいたゲームのヒロインとは違い、自分たちはふたりしかいない。それでも力を合わせれば、何とか勝てるのではないかと考えている。

「わかりました。王女殿下をお助けしたら、そのまま騎士団に連絡します」

「セシリア様も、どうぞお気をつけて」

 アルヴィンがフィンの注意を引いている間に、セシリアはふたりに防御魔法を掛けてから、送り出す。

そろそろ魔力が足りなくなってきた。

 躊躇うことなく腕輪を外すと、フィンの視線がこちらに向いた。意識がはっきりとしないまま動いている彼には、本能的にセシリアの魔力が伝わったのかもしれない。

 だがそのお陰で、ふたりは無事に裏門の方に回ったようだ。

「セシリア」

 自らを囮にしたような行動に、アルヴィンがフィンと戦いながらも咎めるように名前を呼んだ。

「魔力が足りなくなってきたの。全力を出さなくては。相手は魔族の力を使っているのよ」

 ララリとリアスが王女の救出に向かったことを伝えると、アルヴィンは頷いた。

「そうか。ならばあのふたりが動きやすいように、せいぜい派手に暴れるか」

 フィンを倒せば、おそらく次はアレクが出てくる。

「王太子が出る前に、終わらせよう。援護を頼む」

 アルヴィンはそう言うと、剣を構え直す。セシリアは補助魔法で彼を援護しながら、周囲を警戒していた。

 まだアレクの気配はない。だがきっと、どこかでこちらの様子を伺っているはずだ。

(ふたりは、今のところ大丈夫みたいね)

 魔封じの腕輪を外した今のセシリアは、複数の魔法を同時に使うことができる。アルヴィンの補助をしながらも、ララリとリアスが無事に王女の元に辿り着けるように、注意深く見守っていた。

 おそらくアレクは、ララリとリアスが妹を助け出そうとしていることも知っている。

(何だか嫌な予感がする……)

 わざわざ王城に結界を張ったのはなぜか。

 彼らにとって都合の悪い王女を殺すことなく、そのまま放置していたのはなぜか。もしかしたら王女は囮で、自分たちは彼らにおびき寄せられたのではないか。

 そんな考えが浮かぶ。

 だとしたら、王女のところに向かったララリとサリジャが危険かもしれない。

「アルヴィン!」

 セシリアの声に、緊迫したものを感じたのか。アルウィンがフィンから距離を取って、セシリアの隣に戻ってきた。

「どうした?」

「もしかしたら、王女殿下は囮なのかもしれない」

「囮?」

「ええ。救出に向かったふたりが危ないわ」

 そう伝えると、アルヴィンは無言で王城を見つめた。

「危険だとわかっているのに、見捨てることもできないわ」

 そうしている間にも、フィンが攻撃を仕掛けてきた。

 当たり前だが、今は戦闘中だ。

 話し合う余裕などない。

「ここは俺に任せて、セシリアはふたりと王女の救出に向かえ」

「……アルヴィンは?」

「俺はフィンを倒してから、王太子を探す。セシリアは王女とふたりを城外まで連れていけ」

「でも、ひとりでは危険だわ」

「それを言うなら、王太子がどう動くかわからない以上、セシリアが単独で動くのも危険だ。できれば、ここにいてほしい」

「……」

 たしかにアルヴィンの言うように、セシリアがひとりになった途端、アレクがこちらに向かう可能性もある。でも、このままではララリとリアス、そして王女が危ない。

 ゲームでは王女もヒロインも生還しないと、グッドエンドにはならないのだ。たとえこの世界が、もうゲームと違うものになってしまっていても、全員でエンディングを迎えたいと思う。

 セシリアが葛藤していると、その間にもフィンが再び攻撃を仕掛けてきた。

 アルヴィンは剣に魔力を込めてその攻撃魔法を薙ぎ払う。

 その威力に、攻撃してきたフィンが弾き飛ばされた。彼から目を離さないまま、アルヴィンは静かに言った。

「今のうちに行け」

「……アルヴィン」

「最初に言ったように、セシリアが危険なことをするのは反対だ。だがお前の望みなら、すべて叶えてやると言った。その言葉に嘘はない」

 アルヴィンはフィンがまだ立ち上がれない様子を見ると、セシリアに視線を移した。

「セシリアは、思い通りに動けばいい。何があっても俺が守る」

 その穏やかな言葉と視線に、彼は最初に反対したときから、セシリアの望み通りに動くと決めていたようだと気が付く。

 自分勝手に動いてしまうことを、この場を一人で任せてしまうことを謝りたい。

 そんな自分を許して、受け入れてくれたことに、感謝の言葉を告げたい。

 でも今は、そんな猶予はない。

「ごめんなさい。ありがとう」

 今はそれだけを伝えた。

 戦いが終わったら、ちゃんと伝えよう。

 そう決意して、セシリアは走った。

 同時に、アルヴィンが攻撃を開始する。

 あれほど立て続けに攻められてしまえば、フィンに自分を気にする余裕はないだろう。

 セシリアはふたりの姿が見えなくなるところまで走ると、柱の陰に隠れてそっと周囲を伺った。

 誰もいないようだ。アルヴィンのように気配を探るのは上手くできないから、少しずつ、慎重に進むしかない。

 そういえば彼と出逢ってから、これほど離れるのは初めてだ。自分から離れてきたというのに、心細く感じてしまい、セシリアはそんな自分を律するようにきつく両手を握りしめる。

 とにかく一刻も早く、ララリとリアスに合流しなければならない。

 廊下を進んでいくと、侍女が倒れていることがあった。確認すると、眠っているだけのようだ。彼女たちは皆、廊下の隅に寝かされている。ここをあのふたりが通って行ったのだろう。

(王女殿下の部屋は、こっちかしら?)

 王太子アレクの気配は、不気味なほど感じない。

 それでも警戒しながら、あまり馴染みのない王城を手探りで進んでいく。

「ララリさん!」

 ようやく王城の奥でふたりの姿を見つけ、セシリアは走り寄った。

「セシリア様?」

 ひとりでここまで来たことに驚かれ、ふたりが心配だったと告げる。

「……それで、もしかしたら罠かもしれないと思ったの」

 理由を告げると、ララリとリアスはふたりで顔を見合わせた。

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